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読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

今日図書館へ行ったついでに、隣駅の大きな公園へつつじを見に行きました。
丁度見頃の花々と、新緑が目にやさしくたいへんいい気持ちでした。
GWということもあって家族連れや恋人、友人達、多くの人で賑わい、帰りたくないと泣く女の子が微笑ましかったです。芝生の上を飛んでいくシャボン玉はなんとなく幸せな気分になれますし、はためく大きな鯉のぼりや屋台のならぶ通りはわくわくとした気分を誘います。

だがな大学生。屋台の前で溜まって騒ぐのはよせ。おかげでベビーカステラが買えぬ。





・吉田篤弘『つむじ風食堂の夜』筑摩書房 (2005/11)
・冲方丁『天地明察』角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/12/1)
・イランゴー・アディハル『シラッパディハーラム アンクレット物語 タミル叙事詩』きこ書房 (2003/04)
・吉田親司『マザーズ・タワー』早川書房 (2008/07)
・江戸川乱歩『孤島の鬼』東京創元社 (1987/06)



・吉田篤弘『つむじ風食堂の夜』

――懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。――


今までのように凝った写真が載っていたり、レイアウトが変わっていたり、摩訶不思議な品物などは出てきませんが、どこか童話を思わせるような小説です。
万歩計を二重空間移動装置と呼んで何処までも遠い所へ到達することを夢想するなんて素敵ですね。そしてちょっと『シャドウハーツ』を思い出してしまった。月面到達。

腕だけで手品をするマジシャンの父を持ち、自身は雨降りの研究をする主人公。といっても科学者ではなく、雨に関する文献を集めて研究するという文学的なお仕事で、現在は本業の傍らなんでも書く文筆業。唐辛子のことや宇宙の事も書きます。

雨降り先生は月船町に越してきて、四方から吹いた風がつむじ風を巻き起こす十字路の、その角にあるつむじ風食堂で食事を摂るのが日課。
無口な店主はフランス帰りで、コロッケ定食もフランス風にクロケット呼ぶ。常連は帽子屋の主人に、同じアパートに住む舞台女優。商店街には渋い古本屋の親方や、悩める果物屋の青年。

彼らのもとに何かが起きる訳でもなく、何も起きない訳でもなく。そうですね、日常のあれやこれやがおしゃれに描き出されている、という感じです。
なんでもない人生も、この人のフィルターを通して見ると素敵に見えちゃうものなんでしょうかね。純文学とエンターテイメントの中間な印象でした。



・冲方丁『天地明察』

――江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。――


冲方丁も渋川春海も暦もあらすじも知らない状態で手を出したのがいけなかったのか、中盤までは一体何の話なのかわかりませんでした。冒頭で終盤の重要なシーンを出して、後は進行形の回想という形で進んでいくのですが、なんとなくはわかっても理解までは至らず。歴史小説を読むには元々の素養もないといけませんね。
というかSFだと思っていたので戸惑いも大きく。

渋川春海という実在の人物をもとにした小説で、江戸幕府の碁方であった彼がいかにして日本独自の暦を確立するに至ったか、という一代記です。

面白かったのですが……えー、書き方でしょうか、あまり合わなかったです。中盤からの収束感はよかったのですが、そこまでが長く感じてしまって。

その分目標がはっきりしてからは純粋にはらはらしながら楽しめました。でも一番印象に残ったのは、建部・伊藤のおじいちゃんコンビです。あの二人のキャラクター好きだなあ。

難しい題材なので執筆は苦労されたと思いますが、歴史上の人物を、今残されているものから推測してこんな性格で、こんな事情があったんじゃないか、と肉付けしていくのはとても楽しそうだなと思いました。
それを人が読んで楽しいと思えるようにするのもまた大変だと思いますが。



・イランゴー・アディハル『シラッパディハーラム アンクレット物語 タミル叙事詩』

――花の都プハール。花婿のコーワランは16歳、花嫁のカンナギは12歳、豪華絢爛たる結婚式、だれもが羨む仲睦まじい夫婦、やがてこの二人に訪れる数奇な運命とは…。――


インドのタミル叙事詩です。古典です。神話です。外国の古典って興味深いです。
ただ、難しい。これこそ下地になる素養が必要だと思いました。

理解できたあらすじだと、コーワランとカンナギは仲睦まじい夫婦でしたが踊り子にコーワランが魅了され、妻を置いて家を出ていってしまいます。すっかり財産を失くして帰ってきたコーワランは、唯一残ったアンクレット(足首にする装飾品。中に宝石や財産を入れていた?)を元に再起することを誓います。
しかしそのアンクレットが女王の物でありコーワランは盗人だと嫌疑を掛けられ処刑されてしまいます。カンナギが駆けより首と胴体をくっつけると、コーワランは立ち上がりなぜそんなに泣いているのか? と言って昇天してしまいます。
これにより無実を確信したカンナギはアンクレットを叩き割り、中に入っている宝石を示して潔白を証明します。
それを見た王は非を認め命を絶ち、女王も同様に命を絶ちます。
しかし怒りの収まらないカンナギは、左の乳房を投げつけると(!)町は炎に包まれます。
その時天より神の声がして、これはカンナギの怒りによるものではなく、神の怒りによるものだと告げます。この町の悪徳がこのような事態を招いたのだ、と。
カンナギは迎えに来たコーワランと共に昇天し、後に貞淑の女神として祀られるようになりました――。

という話です多分。
宗教やカースト制度なども絡んでくるので、おおざっぱですけど。
でも神話のこの無茶な感じ、嫌いではありませんねえ。



・吉田親司『マザーズ・タワー』

――西暦二〇三八年、スリランカ―インド間を結ぶ巨橋を拠点とする「マザーズ教団」は、難病の子どもたちの末期医療に従事していた。教団代表の葵飛巫女はインド州軍の襲撃を予測し、巨橋を崩壊させて教団ごと避難する決意をする。攻撃開始の日、それぞれの理由で巨橋に居合わせた4人の男たちは、飛巫女の素顔と、人類の未来を左右する真の目的を知った。医学、財産、電脳、怪力―それぞれの要素に恵まれた男たちは、彼女のため命と才覚のすべてを賭け、太陽系最大の建造物・軌道エレベータの建造に挑む!架空戦記の俊英、初の本格SF。――


ハヤカワSFシリーズJコレクションです。SFが読みたくて。
作者がライトノベル作家だというのでそんなにSFSFしていないかなと思いつつも、感想は面白い、と思う気持ちと、つまらない、と思う気持ちが半々です。

軌道エレベータ建設に関する部分は多少つっこみながらもSFしてて面白かったです。
キャラクターやストーリーは、読んでいると引き込まれるけれど冷静になると恥ずかしくなる感じです。良くも悪くもライトノベル臭が。
うーん、地の文で「この~が~であることを、~はまだ知らなかった」という記述が多いのはなんでしょうか。単に癖ですかね?

そうですね、SFファンより、ライトノベルファンが読んで楽しめる作品だと思います。
ネタばれに触れてしまうところでいうと、後半4人の男たちが順番に死んでいくところはちょっとやり過ぎというか出来過ぎというか、DDSアバタールチューナー2を思い出さずにはいられない。宗教的なところとかも。
そして最後、地球外生命体が接触してくるのはまあいいですが、あんなに必死に防ごうとした若年性アルツハイマーの原因その宇宙人たちでは? 友好路線でいくの? と、若干思いました。

スピード感があって面白くなくはないです! おすすめ出来るかは微妙です!



・江戸川乱歩『孤島の鬼』

――密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで2人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった…!『パノラマ島奇談』や『陰獣』と並ぶ、江戸川乱歩の長編代表作。――


長編代表作というから、結構王道な話なのかと思っていたがとんでもない。まさかこんな想像の斜め上をいく作品だとは思いませんでした。江戸川乱歩は本当に怖い。

密室で殺された恋人や、人ごみの砂浜で殺された探偵のトリックはいかに!? までは非常にわくわくしながら読んだのですが、そういうやつでしたか。乱歩はポー好きですよね。

そして中盤。推理ものから一転、サスペンスホラー+αものになります。
なんといっても癖者の友人諸戸が凄い。屋敷の面々がすさまじい。今こんな作品書けないです。時代的にも。

終始うわーうわー言いながら読みましたが、実際面白いから困ります。題材がこういうものなのに、低俗になっていないというのも凄いです。
江戸川乱歩は本当に怖いなあ。





一人で歩いている人間なんてカメラ抱えたおじいちゃんにしか会いませんでした。
少し会釈してきました。いい一日でしたね。


ということでまた。
さようなら。


『愛(ラブ)も情熱(パッション)も知らない物質霊(くずてつ)めッ。
 そんな生き方、楽しいのォッ!?』