自転車の季節 | 読書日記

読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

お久しぶりです。最近夜の冷え込みもおさまって、自転車で遠回りして帰るのが楽しいです。
この細い路地はどこに出るんだろうとか思って知らない道に入ると、酔っぱらったおじさんが全力で吐いていたりとかして楽しいです。





・島田荘司『占星術殺人事件』講談社; 改訂完全版 (2008/1/11)
・柴田勝家『ニルヤの島』早川書房 (2014/11/21)
・古谷田奈月『ジュンのための6つの小曲』新潮社 (2014/11/21)
・西條奈加『秋葉原先留交番ゆうれい付き』KADOKAWA/角川書店 (2015/10/2)
・恩田陸『消滅 - VANISHING POINT』中央公論新社 (2015/9/24)



・島田荘司『占星術殺人事件』

――密室で殺された画家が遺した手記には、6人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。彼の死後、6人の若い女性が行方不明となり肉体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から40数年、未だ解かれていない猟奇殺人のトリックとは!? 名探偵・御手洗潔を生んだ衝撃のデビュー作、完全版!――


知らなかったんです。どっちかというと知りたくなかったというか、いや、驚きました。
有名な作品らしいですね。何故有名なのか知らなかったので普通に読んでいたのですが、途中でおや? となりました。
そして読んだ後すぐ調べました。やっぱり、そうですよねえ。

ご存じない方もいらっしゃると思うので思わせぶりな前置きはこれくらいにします。
要はですね、この小説のトリックと、『金田一少年の事件簿』の「異人館村殺人事件」のトリックが同じもので、しかも先に出していたのは小説の方。訴えるとか訴えないとかそんな話になったこともあると、そういうことなんですねえ。

ショックです。コナンより金田一派としてはショックです。しかも異人館村ってかなり好きなエピソードです。切ない終わり方もいい。なによりトリックがいいと思っていたのに、あかんやん。
金田一は犯人を指摘して終わりじゃなくて、情緒があるところがいいですよね。どうしてこんなことしちまったんだよ、っていう金田一の人間らしいところがぐっときます。
コナンはそもそも根本的に、薬飲んで体が縮むという現象がまかり通っている時点で、証拠が~アリバイが~とかの問題じゃねえって思いますよね。それがいいならじゃあトリック全部謎の組織の怪しい薬でいいじゃん。だいたい伸び縮みの時の質量どうなってるの? そこ曖昧でいいの? ファンタジーなの? 思うんですが、実は工藤新一が薬で子供になったというのは嘘で、コナンは本当に子供なんですよ。ただ自分が薬を飲まされて子供になった工藤新一だと思い込んでいるだけの。本物の記憶を移植されたとかなんです。そっちの方がまだ説得力ありませんか。もしくは、コナンがサザエさん方式なのにも注目です。実は本人たちも気づかないうちにループ世界に取り込まれており、新一が子供になってしまったのは時空間のゆがみの影響なんです。あんなに殺人事件起きないよ普通。最終回はそのループに気づいたコナンが世界を正しい時間軸に戻すために黒幕に戦いを挑むというSFになりますきっと。わしじゃよ。

ということをコナン好きの同僚に話したら「別にそこ(薬)はどうでもいい」と言われました。幸せな感じでうまく終わればいいそうです。ですよねー。


というわけで、名探偵・御手洗潔初登場の今作はホームズとワトソン式で進行する小説でした。科学捜査の進んだ現代では到底実現できないだろう事件でしたが、(特に靴とか。本当になんで誰も検証しなかったのか)ミスリードが上手く途中までは本当に全然わかりませんでした。
キャラクターとしては御手洗の変人っぷりがまだちょっと戸惑う感じです。今後どうなっていったのかわかりませんが、今はまだショックが大きいのでしばらくしたら他の作品も読んでみようかと思います。



・柴田勝家『ニルヤの島』

――生体受像の技術により生活のすべてを記録しいつでも己の人生を叙述できるようになった人類は、宗教や死後の世界という概念を否定していた。唯一死後の世界の概念が現存する地域であるミクロネシア経済連合体の、政治集会に招かれた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の旅のためのカヌーを独り造り続ける老人と出会う。模倣子行動学者のヨハンナ・マルムクヴィストはパラオにて、“最後の宗教”であるモデカイトの葬列に遭遇し、柩の中の少女に失った娘の姿を幻視した。ミクロネシアの潜水技師タヤは、不思議な少女の言葉に導かれ、島の有用者となっていく―様々な人々の死後の世界への想いが交錯する南洋の島々で、民を導くための壮大な実験が動き出していた…。民俗学専攻の俊英が宗教とミームの企みに挑む、第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。――


この間作者の柴田勝家をとあるイベントで見掛けたんですよ。目立ちますねえ。そこで、以前途中まで読んで返してしまった本作を思い出し再読しました。

人物ごとに章が変わり、一見、全体としてこれは何をしている人たちのどういう話なのかはじめは分かりません。ストーリーの説明も特にないので。
でも交互に話が進んでいくにつれて徐々にそれぞれの目的、立場、時系列が分かってきて、ああそういう話だったのかぁとなる小説です。

言ってることはたぶん半分も理解できていないし(ミームとか記憶の記述とか)共感もできない(宗教ってそんな簡単に否定されるのかとか)けど、面白かったなあと思えるしよくこんなの書けるなあと感動すら覚えました。
いや読んでる時はなんかわかった気になるんですが、説明するとなるとわからなくなる……。
タイトルのニルヤの島というのは死後の楽園みたいな場所のことで、そんなものはないと言われても信じずにはいられない場所、みたいな。
宗教は死んだ人のためではなく生きている人に必要だということですね。たぶん違うと思いますがそう思いました。

読み通すのが大変ですが、後半辺りから収束感があって好きです。おすすめはそんなにしません。難しいので。



・古谷田奈月『ジュンのための6つの小曲』

――学校では「アホジュン」と蔑まれ、友達はひとりもいない。でも、孤独じゃなかった。「音」があった。自転車があった。歌われることを待っている「歌」もあった。14歳。夏の少し前。同級生のトクが奏でるギターを聴いて、ジュンは、やっと気がつく。自分が楽器であることに。「僕、楽器なんだ!」小説の愉楽、ここにあり!!歓喜。興奮。ささやかだけれど奇跡的な物語。――


『星の民のクリスマス』が面白かったので同じ作者。あらすじだけ読むとすごい青春な感じがしますが、これはそんなさわやかな話ではありません。

まず「アホジュン」がどの程度のアホさかわかりませんよね。まあせいぜいちょっと空気が読めないとか、一つのことに熱中しちゃうと周りが見えなくなるとか、よくある何とかと天才は紙一重的なものかなと思いますよね。
結構衝撃的です。ジュンはたぶん発達障害かな? 迷子札を下げていたり、クラスメイトには同じ教室で授業を受けているのもお情けなんだろみたいなことを言われたりしています。困ると近くにあるものを口に入れてしまう癖があって、木の皮(カナブンだったのかも)とかソファのビニールとかよく見ないで噛んでしまう。
でもジュンには独特の世界があって、ジュンにしか見えないもの聞こえない音がある。それに気づいているのはクラスメイトのトクだけで、でもトクもジュンとのかかわりに戸惑っている。

自分が歌をうたう楽器であることにジュンは気づいて、少しずつジュンのことを理解してくれる人も出来て、とストーリーは王道なんですが、なんか、重いです。
気軽に読むにはこの世界はへヴィです。
それを分かったうえで読みたいというのなら、とても良い作品だと思います。でも知らずに読むと衝撃を受けるかも。
好きな作者なのでもっと本出してほしいです。



・西條奈加『秋葉原先留交番ゆうれい付き』

――「さきどまり」という不吉な名を持つ交番に勤める権田は、秋葉原をこよなく愛するオタク。コンビを組む向谷はコミュニケーション能力の高さがこうじて、足だけの幽霊を連れてきて…!?ネオンまたたく電気街の裏路地に隠された5つの人情ミステリ。――



今回は現代ものですよ。『三途の川で落とし物』もそうでしたけど、この人の現代もの好き。
気が付いたら山の中で足だけの幽霊になっていた季穂は、幽霊がみえるイケメン警官の向井に連れられて秋葉原の先留交番にやってきます。そこで巨漢でオタクの警官権田と向井とともに自身の死因を探しながら他にも様々な事件を解決していく、という連作短編。

キャラがわかりやすいです。ライトノベルっぽいノリかもしれません。イケメンで幽霊がみえるけど女性問題が後を絶たず警官としても頼りない向井と、オタクで不細工だけど東大出で切れ者の権田。出来る両津とダメな中川みたいな感じ?

メインに季穂の事件の謎を据えつつ、秋葉原特有のメイドカフェとか高価なフィギュア盗難事件などを盛り込み、登場人物の背景にもそれぞれ悲哀があり、抑えるツボは抑えてあります。
読んでるだけでただ楽しいので、おすすめでございます。続きは出るのかな。



・恩田陸『消滅 - VANISHING POINT』

――202X年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。超巨大台風の接
近のため離着陸は混乱、さらには通信障害が発生。そして入国審査で止められた11人(+1匹)が、「別室」に連行される。この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こす人物がいるというのだ。世間から孤絶した空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる!読売新聞好評連載小説、ついに単行本化。――



恩田陸はもういいかなと毎回思うのに、新しいのが出ると毎回読んでしまう。というか最近立て続けに本出していますね。新聞連載の単行本化です。

やっぱりね、上手ですね。読ませるもの。
これはジャンルはSFでいいのかな。ミステリーとかサスペンスかと思っていましたが近未来推理会話劇。
この中にテロリストがいると言われて一つの部屋に閉じ込められるって怖いです。ミスリード満載。しかしみんな頭いいなあ。少年は常野の子かな?

読後感としては落ち着くところに落ち着いた感じです。もう一度このメンツで何か事件に挑んでほしいと思いました。





ところで最近自転車で事故ったのですが、その衝撃なのかぶつけてもいない体の関節がすごい痛い。なぜなのか。


それではまた。
さようなら。



『じてんしゃ 1000000円』