二度あることは | 読書日記

読書日記

神郡が読んだ本の感想や、諸雑記を書いていくブログ。
知り合いには見せられないなあ。

一昨日。目の前でお金を落とした方がいたので拾って差し上げました。

昨日。目の前で薬の袋を落とした方がいたので拾って差し上げました。

ふむ。さて。

 

 

・越谷オサム『空色メモリ』東京創元社 (2009/11/27)

・山白朝子『死者のための音楽』 KADOKAWA/メディアファクトリー (2013/11/22)

『エムブリオ奇譚』メディアファクトリー (2012/3/2)

・乙一『メアリー・スー・を殺して』朝日新聞出版 (2016/2/5)

・古谷田奈月『星の民のクリスマス』新潮社 (2013/11/22)

・恩田陸『EPITAPH東京』朝日新聞出版 (2015/3/6)

 

 

 

・越谷オサム『空色メモリ』

 

――たったひとりで県立坂越高校文芸部を守る、ハカセこと河本博士に春が来た。なんと、可愛い新入生が入部してきたのだ。彼女の名前は、野村愛美さん。ブンガク少女らしからぬ彼女が、なぜ人気のない弱小文化部に入部を決めたのだろう?不思議な雰囲気の彼女には、何か秘密がありそうだが。そんなあれこれを、部員でもないのに文芸部に入り浸っているおれは、おもしろおかしく空色のUSBメモリに綴り始めた。その空色メモリが思わぬ騒動を巻き起こして―。気鋭の著者が満を持して贈る、学園青春小説の決定版。――

 

 

前回読んだ『金曜のバカ』が面白かったので同じ作者。今回は長編です。

主人公のブーちゃんこと桶谷陸という太った少年が、日記代わりに文章を綴るという一人称展開で話は進みます。テンポの良い文体で読みやすく、ストーリーも部活、恋愛、いじめ、友情、とてんこ盛り。

今後の展開を期待させるような終わり方で非常にさわやかでした。

 

かなりライトノベル系のノリなので苦手な人はいるかもしれない文章です。小難しいこと考えたくないときにさらっと読める作品です。

 

 

 

・山白朝子『死者のための音楽』

 

――教わってもいない経を唱え、行ったこともない土地を語る幼い息子。逃げ込んだ井戸の底で出会った美しい女。生き物を黄金に変えてしまう廃液をたれ流す工場。仏師に弟子入りした身元不明の少女。人々を食い荒らす巨大な鬼と、村に暮らす姉弟。父を亡くした少女と巨鳥の奇妙な生活。耳の悪い母が魅せられた、死の間際に聞こえてくる美しい音楽。人との絆を描いた、怪しくも切ない7篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。

 

 

乙一です。『幽』という怪談専門の雑誌で活動中とか。他にも『幽』には小野不由美が書いたりしているそうです。

 

それぞれに繋がりのない独立した短編集。

『長い旅の始まり』、『井戸を下りる』、『黄金工場』、『未完の像』、『鬼物語』、『鳥とファブロッキーズ現象について』、『死者のための音楽』所収。

 

時代小説もあれば現代ものもあり。ホラーというよりは確かに怪談と言った方がしっくりくる感じはしました。グロというよりは残酷。『鬼物語』とか特にそうですね。でも切ない家族の話です。

 

一番ぞっとしたのは『井戸を下りる』。罪を犯した男女がどんどんどんどん井戸の底に下りていき、そこに広がるのは明らかにこの世じゃない場所。それなのに生きているんです。子供だって生まれる。でも、この世じゃない。ここはどこなのか、地獄なのか、煉獄なのか、ただただ暗い終わりのない世界。恐ろしすぎる。

 

『鳥とファブロッキーズ現象について』はミステリー風味の奇妙な話。ファブロッキーズ現象は空からあり得ないものが降ってくる現象のことです。ちょっと乙一テイストというか、不思議な話で好きです。

 

全体的に、怖いというよりも寂寞感を感じさせる作品でした。いやあ、いいね。

 

 

 

・『エムブリオ奇譚』

 

――社寺参詣や湯治のため庶民は諸国を旅するようになった。旅人たちは各地の案内をする道中記を手に名所旧跡を訪ね歩く。『道中旅鏡』の作者・和泉蝋庵はどんな本でも紹介されていない土地を求め、風光明媚な温泉や古刹の噂を聞いては旅をしていた。しかし実際にそれらがあった試しはない。その理由は蝋庵の迷い癖にある。仲間とともに辿りつく場所は、極楽のごとき温泉地かこの世の地獄か。江戸――のような時代を舞台に話題の作家・山白朝子が放つ、奇妙な怪談連作。――

 

 

和泉蝋庵という旅行本の作者と、その荷物持ちの男が遭遇する怪異を描いた連作短編。基本は耳彦(荷物持ちの男)の視点から描かれていますが、二人と行動を共にした少女や蝋庵の少年時代が出てきたりもします。(関係ないですが『夜長姫と耳男』がすごく好き。『桜の森の満開の下』の女が鬼女だとしたら夜長姫は確実に鬼神です。超素敵。)

 

とにかく蝋庵先生があり得ない道の迷い方をしてこの世のものじゃない怪異に遭遇しまくり、だいたい耳彦が酷い目に遭うのが常です。『エムブリオ奇譚』、『ラピスラズリ幻想』、『湯煙事変』、『〆』、『あるはずのない橋』、『顔無し峠』、『地獄』、『櫛を拾ってはならぬ』、『「さあ、行こう」と少年が言った』所収。

 

『湯煙事変』の不気味な村の描写が素晴らしいです。住人は元より、出てくる食事の気持ち悪さとか、部屋を荒らす野良犬の行動とか。わくわくしました。

印象的だったのは『あるはずのない橋』の最後。「私はただ……」というのがもう、切ない。

『〆』も後味悪くて好きですねえ。タイトルはどういう意味なんだろうと思いながら読んでいたのですが、そういうことかと思ったときのあの嫌悪感。いい。『地獄』は『ZOO』にこんな話があったような気がしましたがグロいです。Coccoっぽい。

 

『ラピスラズリ幻想』に出てきた少女・倫が出てくるシリーズ第二弾が新しく出たんですが、どうしよう、買おうかな。文庫になるまで2,3年かかるしなあ。

 

 

 

・乙一『メアリー・スー・を殺して』

 

――「もうわすれたの? きみが私を殺したんじゃないか」
(「メアリー・スーを殺して」より)

合わせて全七編の夢幻の世界を、安達寛高氏が全作解説。
書下ろしを含む、すべて単行本未収録作品。
夢の異空間へと誘う、異色アンソロジー。

<収録作品>
乙一 愛すべき猿の日記 / 山羊座の友人
中田永一 宗像くんと万年筆事件 / メアリー・スーを殺して
山白朝子 トランシーバー / ある印刷物の行方
越前魔太郎 エヴァ・マリー・クロス――

 

 

まあ全員乙一です。名義が違えば作風違う。使い分けられていて凄いです本当。

 

乙一名義の『山羊座の友人』はコミックで出ていますね。そちらは読んでいないのですが、同じストーリーなんでしょうかね。ファンタジーの混じった現代小説で、救いのないああ嫌な話です。ど暗いというわけではないのですが、重い、切ない。そんなベランダがあったら確かに、救いに見えるかもしれませんね。あ、ちなみにこの話大好きです。好きすぎるくらい。

 

中田永一は恋愛小説家ですが、二編とも恋愛ではありません。

『宗像くんと万年筆事件』は、小学校で起きた万年筆盗難事件の犯人にされた少女と、その無実を推理してくれた宗像君のハートフルかとおもいきや意外とさわやかじゃない話。まず宗像君がさわやかじゃない。貧乏で、お風呂に入れないし服も着替えられないしいつも飢えている。だから、正しいことを言っていても主張をまともに先生に受け入れてもらえなかったりと偏見の目で見られている。

面白かったけど、素直に面白かったーと言えない考えさせられてしまう話でした。

表題作『メアリー・スーを殺して』は少なからず衝撃を受けた作品。

そもそもメアリー・スーが何かというと、二次創作の中で作者の願望を反映させた万能なキャラクターのことです。元は『スタートレック』の二次創作小説で、最年少で高い地位におり、優秀で、皆から愛され、当然強くて美人で……というのを揶揄したキャラクターの名前がメアリー・スーでした。それからこういう万能なオリジナルキャラクターをメアリー・スーというらしいです。

いやでもね、やっちゃいますよね、こういう妄想って。特に思春期の少年少女で身に覚えのない人の方が珍しいんじゃないんでしょうか。いや、わからないですけど。

ストーリーは、二次創作にのめりこんでいたオタクの少女が、自分の小説内のメアリー・スーを指摘されて以来そのメアリー・スーを「殺す」ために腐心。よりリアリティを持たせるためにまず自分自身の生活を変えることからはじめ、いつの間にか生活が充実してくるにつれてオタクではなくなり、同時に小説も書かなくなって、というサクセスストーリーなのかなんなのか、とにかくいい話でした。うまくまとめるものです。『愛すべき猿の日記』ともちょっと似ています。

そうか、メアリー・スーかぁ。二次創作は書いたことないですけど、キャラクターに自分の願望を反映させていないかと言われると、うーん。ちょっとためになる作品でした。小説を書くうえでも。さすが乙一。

 

山白朝子は『トランシーバー』と『ある印刷物の行方』ですね。

3.11を題材にした『トランシーバー』はほっこりするいい話風怪談。いい話なんですけど、地味にぞわりとする描写が入ります。

『ある印刷物の行方』はSFっぽい話です。なんとなく北野勇作を彷彿とさせるような感じ。

 

越前魔太郎というのは、何人かの作家で作り上げた作家らしいです。その乙一パート。『エヴァ・マリー・クロス』は唯一外国が舞台の短編。

人間楽器という存在に関わってしまった人々の不幸。ちょっと耽美? 後味は悪いです。はい。

 

やっぱこの人上手だなあ。

 

 

 

・古谷田奈月『星の民のクリスマス』

 

――最愛の娘が家出した。どこへ?クリスマスに父が贈った童話の中へ。父は小さな娘を探すため小説世界へともぐりこむ…。残酷でキュート、愛に満ちた冒険譚。第25回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。――

 

 

さすがファンタジーノベル大賞、外れがない。なんでこの賞無くなってしまったんだろう。はあ。

デビュー作らしいですが抜群に好きです。作者が外国の作家が好きなせいか、翻訳もののような簡潔な文体でいい。

なによりキャラクターの造詣がグッドですね。キツツキ少年の不遜なところと少年らしいところがかわいらしい。ストーリーは独特の世界観があるのでちょっとわかりづらいところもありますが、場面場面の描写は上手です。熊の話グッときました。

最後はそうなるのか、という感じでしたが、ラスト、最後の一文がね、やられたって思いました。

個人的にバッチシな作品です。全員が全員好きではないと思いますが、好きです。

 

 

 

・恩田陸『EPITAPH東京』

 

――東日本大震災を経て、東京五輪へ。少しずつ変貌していく「東京」―。その東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている“筆者”は、ある日、自らを吸血鬼だと名乗る謎の人物・吉屋と出会う。吉屋は、筆者に「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。将門の首塚、天皇陵…東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作「エピタフ東京」。吉屋の視点から語られる「drawing」。三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは―。これは、ファンタジーか?ドキュメンタリーか?「過去」「現在」「未来」…一体、いつの物語なのか。ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!!――

 

 

うーん。どうですかね、日々のエッセイ風の雑記の中に紛れ込んだ非日常。「吉屋(ヨシヤ」という微妙に滑舌が悪くて名前がヨシュアに聞こえる自称・吸血鬼の男。血を吸うのではなくて、情報を取り込むことで活力を得ているらしいです。その男と「筆者」は顔見知りで、特に何かあるわけではないです。

本当たまに筆者の雑記の中にちょっと出てくる程度。街で見かけたとか。

そして間に挟まれる吉屋の、東京という街の変遷を見つめる章。それから筆者の書こうとしている戯曲の章。

それらが混然一体となり、うーん、なんだろう。

正直よくわからないです。すいません。ところどころ為になる知識とかはあるんですが、基本的にどこかに出かけて悠々自適の生活を送っているように見える筆者さんいいなあとしか。

 

最近やっぱり恩田陸そんなに好きじゃないかも。といいつつ『消滅』手に入れました。うーん。

 

 

偶然とか運とか、信じられません。でも気になるから占いは見ません。矛盾してるんですが、今日悪いことが起きるって言われたら嫌でしょう? もちろん逆でも気になります。

もちろん幽霊も宇宙人も神も魂も信じていません。でも墓参りはするし初詣には行くしおみくじも引くんですよ。

だから二日連続で同じことが起きると気になるんです。次は何を拾うのだろうと。お金、薬ときたら――とか。そこになんの意思も介在していなのはわかっているんですけどねえ。

ただ、本の中から偶然や運命や幽霊や神や魂が消えてしまったら超絶つまらないですよね。

あってほしい、信じていないけど!

 

それではこのあたりでまた。

さようなら。

 

 

『売り切れじゃ』