『有頂天家族』の続編はいつ出るのだろう。2月に出ると聞いているのですが、ほんといつ出るんだろう……。
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・小林泰三『見晴らしのいい密室』('13早川書房)
・平谷美樹(よしき)『採薬使佐平次』('13角川書店)
・高橋源一郎『非常時の言葉 震災の後で』('12朝日新聞出版)
・森博嗣『赤目姫の潮解』('13講談社)
・皆川博子『皆川博子コレクション2 夏至祭の果て』('13出版芸術社)
・新井素子『チグリスとユーフラテス』('99集英社)
・小林泰三『見晴らしのいい密室』
――核シェルターにひとり篭った男の胴体が捻り切られていた怪事、柩の中で数十カ所刺されて発見された男…。あまりにも完璧すぎる密室殺人は、本当に実行可能か!?「不可能犯罪など存在しない」と豪語する“超限探偵Σ”の華麗なる活躍を描く「見晴らしのいい密室」ほか、電子仕掛けの謎を秘めた本格ミステリ「探偵助手」などこれまで誰も見たことも聞いたこともない、精緻で巧妙な論理遊戯が導き出す唖然呆然の結末7篇。――
前々回読んだ『モザイク事件帳』に出てくる超限探偵Σや丸鋸博士が登場する作品。時系列的にはこちらのが先なのですが、体感的に。
『見晴らしのいい密室』(バカミス、身も蓋もないΣ)『目を擦る女』(ホラー寄りSF)『探偵助手』(QRコード付き! の叙述系ミステリー)『忘却の侵略』(ロジカルなSF……コメディ?)『未公開実験』(丸鋸博士のロジカルなSFコメディ)『囚人の両刀論法』(SF)『予め決定されている明日』(ファンタジー寄りホラー)の7編収録。
グロテスクはありませんので、苦手な方も大丈夫。
しかしΣと丸鋸博士はオチがあんなことになっているのに、よく続編を出そうと思ったもんだ。
平行世界とか別宇宙とかなのかな。
面白かったのは『忘却の侵略』。量子力学がなんなのか、よく解らないながらも解った気分になれる話で、しかも「侵略者との戦い」というテーマなのに何故かほんわかした気分になりました。噛み合わない会話もいいですね。
『未公開実験』の脱力系の会話とポーズも面白い作品でした。
小林泰三の作品はグロテスク・ホラーとロジック・ミステリーでは全然作風が違うので不思議です。
・平谷美樹『採薬使佐平次』
――大川で惨死体が上がった。吉宗配下の御庭番にて、採薬使の佐平次は探索を命じられる。その死体が握りしめていたのは、昇降図と呼ばれる代物で、温度を測るものだった。一体何のために使うのか…。同じ頃、西国では蝗害が広がり、ほかの採薬使仲間は原因を究明すべく、江戸を立つが…。――
SF作家だと思っていたので、時代劇を書いていると知ってびっくり。
『ノルンの永い夢』から『エリ・エリ』『銀の弦』などSF作品しか読んでいなかったんですが、最近は時代劇のほうをよく書いていらっしゃるようですね。いやー知らなかった。
『エリ・エリ』の榊神父(でしたっけ)が、宇宙船に乗るのに普通コールドスリープするところを、宗教上の理由から出来ずに長い間一人で起き続けているところとか好きでしたねえ。『ノルンの永い夢』の設定も面白くてはまりましたし、好きな作家さんです。
で、この作品はそうですね、面白かったです。が、続編に期待したいというか、この作品だけではキャラクターの魅力を伝えきれていないというか。
主人公の佐平次は切れ者で人望もあるし強いんだろうなとは、ニュアンスでは伝わってくるのですがいかんせん具体的なエピソードがあまりなく、活躍している場面がそれほどありません。
同じ採薬使の仲間も、80歳を過ぎているのに矍鑠としてまだまだ現役なおじいちゃんとか、博識だけど愛想のない梨春とか、やる気はあるけどちょっと抜けている同心とか、もっと書きこんだら面白くなりそうな素材が揃っているのでもったいない気がしました。
敵も味方も、登場人物が多すぎるのもわかりづらいかなあ。
ストーリーはミステリーとしてみれば、半ばあたりで犯人が地の文で出てきちゃうので「ん!?」となりました。犯人当てではないです。
ただ、死体が握っていた温度計(テルモメイトル)がどういう目的で使われていたのか、というところは面白いです。
蝗害(こうがい。イナゴじゃなくても、稲を枯らすウンカ被害も蝗害と言います)や、飢饉の問題が重要になってきてそのあたりの時代背景や描写は素晴らしいと思います。
続編も借りてきたので次回期待です。
・高橋源一郎『非常時の言葉 震災の後で』
――ジャン・ジュネや石牟礼道子のことばの美しさの秘密をさぐり、政治家から小説家まで「2011年の文章」を深く読み解く。文章教室特別編。――
小説ではなく、『ぼくらの文章教室』として連載されていたものの特別篇です。『ぼくらの文章教室』はまだ読んでいませんが。
3.11の後で、何を書けばいいのか、何を読めばいいのか、何を言えばいいのかがわからなくなった高橋源一郎が、戦地や公害の被害者たち、いわゆる「この世の地獄」を見てきた人の文章から答えをみつけようとする本です。
難しい問題ですよね。『苦海浄土』の引用は胸をつかれたような印象を受けました。
でもこういう大切で、でもこう言ってはいけないのでしょうが面倒くさい問題は向き合うのが大変です。真面目に考えても揶揄されるし、考えないのは逃げだし。
人それぞれ、なんでしょうねぇ。
・森博嗣『赤目姫の潮解』
――赤目姫とよばれる超越した美女。
その瞳に映るのは我々が見るのと同じ景色なのだろうか――。
哲学的示唆に富んだ幻想的長編小説。
赤い瞳、白い肌、漆黒の髪をした赤目姫。彼女の行く先々で垣間見える異界……。思考の枷、常識の枠をやぶることが出来るものだけが、受容できる世界。そしてその世界に存在する自由と心理。透徹なイメージと魅惑的な登場人物で構築された哲学的幻想小説。――
装丁からして『女王の百年密室』『迷宮百年の睡魔』のシリーズだと思って……。
ミチルとロイディの話好きだったから……。
でもこれは正直に言って理解できませんでした。
かろうじて同じシリーズな雰囲気はあるものの、混乱する内容だし面白いかと言われれば微妙なところです。
といいますか、これを面白いと絶賛できる人は相当な森博嗣ヘビィユーザです。断言します。
超絶美人の赤目姫。『神様が殺してくれる』でも絶対的な美の存在がありましたね。だからどうだといわれると困りますが。
この作品のストーリは――うーん、語り手が変わるし場面転換が多いので理解は出来ていませんが、他人の意識に乗り移れる赤目姫が通して見た幾人かのエピソードが中盤まで。
中盤からは何人かの特別な目の色を持つ人物たちがなぜ存在するのか、人間と人形の違いは何か、存在とは何か、みたいな……よくわかりません。
歴史的な白さのシーツ、とかの装飾語が多くてポエジィでした。印象的な作品ではありました。
・皆川博子『皆川博子コレクション2 夏至祭の果て』
――キリシタン青年を主人公に長崎とマカオを舞台に壮大な物語を構築。第76回直木賞の候補にも選出された表題作ほか9篇。――
1、3ときて2を読んでいます。今回は時代小説を集めた短編集です。『笑い姫』が好きなのでこの時代の話は嬉しい。
表題作の『夏至祭の果て』はかなり好きな雰囲気の作品です。
信仰も無いのにキリシタンになり、かといって情や追い目から弾圧された仲間を見捨てることも出来ない。棄教した故キリシタンからも疎まれて感謝されず、キリシタン狩りからは追われ逃げなければならない。
このどっちつかずのニュートラル感は圧巻です。普通の人なんだよなあ市之助は。
メシアンとガイアーズに罵られルシファーに馬鹿にされ神聖4文字に怒られた女神転生2を思い出しました。
他に収録された短編もすべて時代物で、流れるような口上というか、江戸言葉? が面白く、どの話も視覚的に暗いような陰鬱な感じで好きでした。
・新井素子『チグリスとユーフラテス』
――遠い未来。地球の人々は他の惑星への移民を始めた。その九番目の惑星「ナイン」に向かう移民船に搭乗したのは、船長キャプテン・リュウイチ、その妻レイディ・アカリを含む30余名の選りすぐりのクルーたち。人々は無事ナインに定着し、人工子宮・凍結受精卵の使用により最盛期には人口120万人を擁するナイン社会を作り上げる。だが、やがて何らかの要因で生殖能力を欠く者が増加しだし、人口が減少しはじめ、ついに恐れられていた「最後の子供ルナ」が生まれてしまう。たった一人、取り残されたルナは、怪我や病気のために「コールドスリープ」についていた人間を、順番に起こし始める。最後の子供になると知りながら、母親は何故自分を生んだのかを知るために。また、ナインの創始者でもあるアカリに惑星の末路を知らしめるために。ルナと四人の女たちで語られる、惑星ナインの逆さ年代記。――
夢に見た。というのもインパクトが凄い。
文体は笙野頼子的な口語体の一人称を、くだけた感じにした、漫画チックな文体。
だからもちろん読みやすいのだけど、その割にはなかなか進まないのは内容が詰まっているからだと思うんですよね。
「最後の子供ルナ」は一人ずつ順番にコールドスリープから目覚めさせていきます。
フリフリのドレス、ピンクのリボンに埋もれた、無邪気で無知な「ルナちゃん」。
その最初が『マリア・D』の章。章ごとに起こされた女性の目線で語られていきます。
ルナの母親の親友だった女性で、「生殖能力がある特権階級」のマリア・D。
しかし自分には子供が出来なく、子供を3人も産んだルナの母親でもあるイヴ・Eを憎んでいます。子供が出来ないという事は人生の全否定に他ならないから。
少子高齢化のシャレにならない末期の様子を描いた章。
次に起こされたのがダイアナ・B・ナイン。惑星管理局で働いていた女性で、ダイアナの生きていた時代は人口過密で食糧供給が間に合わず、貧しい者や社会的に役に立たないものは切り捨てられていた。ダイアナは「管理側としての特権階級」。
起こされてからも惑星ナインの状況把握に努め、死の間際までナインの為に生きていた。
それでもナインはもうルナしかいない。
次に起こされた関口朋美(トモミ・S・ナイン)は人工子宮で生まれた人々の血が混ざらない、純血の地球の血筋。祖父母が移民船のクルーだった時代の女性。
貴族として特権階級にいた朋美は、その特権階級故の贔屓に悩み、それを受け入れて肯定するしかなかった女性。
絵描きとして芸術に生き、人生を芸術に捧げたが、世界の終末にルナに起こされ芸術の無意味さを突き付けられる。
最後に起こされたのが惑星ナインの母であり女神である、レイディ・アカリ。
偉大なるキャプテン・リュウイチの妻であり、半ば信仰されてもいる現人神のアカリ。
人生を掛けた惑星移民に従事し、象徴としてコールドスリープにつき、二度と目覚めることはないと思われていたが「最後の子供ルナ」に起こされ、移民計画の失敗を見せつけられて……。
二重人格としか思えないルナ。無邪気な子供の面と、自分が可哀相だから復讐の為に余命の少ない人を起こして、その人生が無駄であったと知らしめる。
子孫を残すことにも、仕事に生きることにも、芸術に身を捧げることにも、何の意味もないのだとルナは一つずつ読者にも示していく。
じゃあ何の為に人は生きているのか。
アカリの答えは真実だし、ルナの主張も正しい。それで自分はどう考えるだろうかと言うと……。アカリの決断はどうかなとちょっと思う。
問題の解決にはならない、というか問題を解決することが不可能な状況か。
でもルナは救われたようだし、良かった、のかな。
しかし最後の章は想像するだにビジュアルがすさまじいなぁ。
アカリの半生や心情は面白かった。女性は怖い。
文体が特殊だけど、結果とても面白い作品だったのでおすすめです。人は選ぶだろうけれど内容は保証します!
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それではまた。
さようなら。
『さぁ、ちからみなぎる、おれが相手だ!』