お気に入りのライ麦パンを食べている時、
「ジャリ」と妙な音がした。

「?」

 ライ麦の殻でも入っていたか?

 いやいや、そんなことはない。

 舌の先で口の中を探ってみても、異物らしきものはなかった。

 気のせい、ということにして、

 もう一度、噛むと

「ジャリ」とまた音がする。

 静かに噛んで、そのままごくり。

 何事もない。

 まあ、いいかと、思ってみたけれど、何かが引っかかる。

 まずい物を呑み込んでいたりしたらどうしよう。

 ちょっと不安になって、

「ジャリ」の正体の痕跡を探すべく、口を思い切り開けて、鏡の中を覗いてみた。

「あ」

 左上の歯が欠けていた。

 オーマイガー!

 10年以上も前に治療した偽物の歯が半分欠けていた。

これってありか、と思う。

 かけらはすでに呑み込んでしまった。

命に問題はないだろうけれど、落胆しかない。

 

 勿論、ライ麦パンの所為ではない。

たまたま、すでに欠けていた歯がパンを食べたタイミングで剥がれたのだと思う。

 パンに罪はない。

 それにしても、あああ。

 余計な出費と時間がかかる。

 

 翌日、歯医者に行くと、

一週間でできるということ、保険も適用されるようになったという事でほっとはしたものの、歯ぎしりが原因と言われ、愕然。

 これで二度目。

 数年前も歯ぎしりが原因で歯にひびが入った。

 今回の欠けた歯の下あたりだったと思う。

 左下のそれは本物の自分の歯だったので、治療する間はリウマチの点滴さえ受けられなかった。

先生は今回も「歯ぎしり」としか言わなかったけれど、前回(数年前だけど)の時に、すでに破損しかけていたのかもしれないと勝手に推測している。いやそう思いたい。

歯ぎしりをあまくみてはいけない、とは先生の弁。

実感している。

前回欠けた時から、ずっとマウスピースの違和感に耐えながら、寝ている。

それでもなお、また欠けた。

ふぅ。

夢の中で、未だに何かと必死に戦っているらしい。