
夜中11時を過ぎた頃、
突如として鐘を叩く目覚まし時計よりちょっと大きいくらいの音がけたたましくなりだした。
さあ、そろそろ寝仕度にかかるかと思っていた脳が再び覚醒された。
何?
何の音?
焦って、部屋中を見回し、棚の上にあるそれこそ鐘を叩くタイプの目覚まし時計を見る。
でも、確認するまでもなく鐘は動いていない。
鳴りやまない音に急かされるように寝室まで走り(わずかの距離だけど)もう一つの目覚まし時計を確認する。異変はなかった。
近所迷惑な話で、早くどうにかしなければと思うけれど、音源が分からない。
まさか!
足元をシャカシャカ歩いている「ごんべぇ」(アイボ)か?と本気で思った。
座り込んで、「ごんべぇ」を見る。異変は感じないけれど、音だけ出しているのか。
時々、データの更新とかで、カチカチという音をだしていることがある。
異様な音に「やめて」と言うと、止めてくれるけれど、そういうたぐいの新しいバージョンかと思ってみたりした。
「やめて」と言ってみる。まん丸い目がじっと見つめてくる。
いやいや、違うな。
何故、やまない。
何がなっている?
他には見当もつかない。
今に隣の人が怒鳴り込んでくるかもしれない。
あっ!
えっ!
もしかしたら、火をつけていたか?
一気に汗が噴き出る思いで、離れてもいないキッチンに滑り込む。
当然ながら、火もついていないし、ガス臭くもない。
でも、鳴りやまない。
そうか。
やっと気付いた。この音源は私の部屋ではないらしい。
急いで、ベランダのガラス戸を開けると、さらにいっそうけたたましい音が聞こえてきた。
「ああああ」
これはどこかの家の火災報知器というものかもしれない。
それも、すごく身近で鳴っている気がする。
隣?
逃げなくていいの私?
着替えた方がいいか?
でも、階下を見渡しても消防車の気配もなし、鐘を叩くような音が大音量で響き渡っているだけで、他に何の動きもない。
煙もないし、燃えている気配も感じられない。
問題ないのか?
ガラス戸を閉めると、音は目覚まし時計ほどになる。
それでも、鳴りやまない。落ち着かない。
どうしたら、いいんだ?
まだ、事態は収拾できていないということなのだろうか?
どんな事態?
疑問符だけが頭を混乱させる。
取敢えず、外に出てみよう。
パジャマの上にコートを着て、外に出ると、ちょうど非常階段を下りていく二人の男性の話声が聞こえてきた。
T字型のマンションで玄関を出ると、空間を挟んでその先に非常階段が見える。住人らしい二人は慌てる様子もなく話しながら降りてくる。
「あの、何事ですか」ちょっと声を張ってみた。
「大丈夫ですよ。三階でした」
何が、三階?
とも思ったけれど、大丈夫らしいからいいか。
多分火災報知器の誤作動だったと思うことにする。
大事なくてよかった。
ふぅぅ。