
実際には、認知症の父の介護をしていて、その現実は動かない。
それでも、自分の中の価値観のようなものがふっと、軽くなった気がした。
もう、「一働き」済んだよって、公言されたような気がした。人生にいくつかの「働き」があるとして、還暦になると、そのひとつは確実にやり終えたような満足感を覚えた。
だからって、何も変わらない。
でも、気分は明らかに楽になったような、心地いい還暦。
たぶん、還暦だからという免罪符を手に入れたようで嬉しかったのかもしれない。
でも、それからあっという間に高齢者。
このレッテルは気に入らない。
まだ成り立て、初心者だけど、なんか寂しくなる。いや気分よりなにより、微妙に体に変調をきたし始めた。
還暦になった時はウキウキ気分でつい感じるのを忘れていたのかもしれないけれど、今度は明らかに体の老化、いや衰え、いや違和感を感じる。
体がギシギシと動きを緩慢にし、すっと動かない。動かせば油切れのぎこちなさを感じる。
おい。どうした。
がんばれ。
階段を上る時、膝ががくがくする。
朝起きた時、体が重くて、すっと起きあがれない。なんか腰が痛い。
勢いよく話してくる若い友人の言葉についていけない。返す言葉が浮かばない。こういう時の適切な表現、言葉ってなんだと一時出遅れる。返す言葉が追い付かないまま、すでに違う話題になっている。
おい。待ってよ。
脳内図書館は開くのに時間がかかるんだから。
最悪は呂律が回らない。
頭に浮かぶ漢字を口に出すと、変形する。
観光客、と言いたいのだけど、出てきた言葉は
カンキョウカク。
なんだ、それ?
途中で気づいて、しりすぼみで言葉を隠す。
おいおい。
まだ、初心者だぞ。
しょうがない。
対策をしなければ、初心者さえも落ちこぼれになりそうだ。安直にサプリを探す。足りないものは補うしかない。
コンドロイチン
グルコサミン
DHA
EPA
セサミン
コラーゲン
プロテイン
他になんだっけ。
限りなくありそうだけど、全部は無理だ。
まずは優先順位の一番はなんだっけ?