「今日のお客さんは20人ですよ。」
店長である佐々岡比奈は俺に話しかけてきた。
「そうですか…」
「頑張ってねエース。 君だけが頼りだから。」
俺は投資屋と言われる。 投資屋とは、金が不足している人へ金を貸す商売。 金融業だ。
だが俺の勤務している投資屋は普通の銀行とはちょっと違う。 金以外のものも貸すのだ。
俺の勤務している投資屋は佐々岡比奈、倉沢真吾、そして、俺、雁原太一の3人で切り盛りしている。
「太一くん。 お客さん、名指しで君だ。」
俺はエースと呼ばれるだけのことあって、売り上げは3人の中で一位だ。 最近では名指しのお客さんまで来るほど。
俺はそれくらい、お客さんの要望にこたえられるものを貸すということに関してだけは自信があった。
お客さんの名前は宇治京子。 俺は宇治さんと向かって90度の位置に座る。
「すみません。 私、90万円を貸してほしいんです。」
「え? 90万円ってそんな大金すぐには用意できませんよ? それにちゃんとした目的がないと貸せません。」
「目的ならあります! 私の恋人が病気なんです。 でも彼はとある研究室で新薬の開発に務めていて・・・新薬が開発できれば、90万円なんて優に超える額のお金が手に入るんです。」
「なるほど。 返済はそのお金で。 ということですか?」
「はい。」
「じゃあ、料金は利子つけて91万円ね。 よろしく。」
「はい。」
宇治さんを送り出すと、倉沢は早速知り合いの資産家に問い合わせた。
「もしもし? 依頼で90万円必要になったんで貸してくれない?」
倉沢は人脈が広く、行動力に優れている。 すぐに資産家から金を取り集めてきた。
「一週間以内にかえさねーと撃ち殺すだってよ。」
倉沢の知り合いの資産家は冗談を言わない。 そうとう苦し紛れに出したお金だったのだろう。 90万円くらいすぐに出せそうではあるが・・・
俺はその90万円を宇治京子の元へ持って行った。 宇治京子は何度も謝っていた。
そして宇治京子の恋人、井浦和彦も同じように何度も頭を下げるばかりだった。
そして一週間後。 返済日がやってきた。 がしかし、宇治京子が来るどころか連絡の一つもよこさない。
「大丈夫かよ・・・宇治さん・・・。」
「ニュースみな。 井浦和彦の開発した新薬が世界中で取引されてるんだってよ。」
比奈の言うとおりテレビをつけると井浦和彦が映っていた。
井浦和彦は90万円をもらったあとすぐに手術を受け、退院。 新薬を開発し、100万円ほどの遺産が手に入ったのだ。
しかし返済の兆しが全く見えない。 俺らは宇治京子の携帯電話に何度も連絡を入れるが、出ない。 さらに折り返しの電話もメールもない。