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ま、今日も気ままにいきましょ。

本、映画、ライブ、食べ物などの感想を徒然に書いていきます。

東野圭吾の作品。

 

2025年に集英社から刊行。

 

「マスカレード」シリーズの5作目だ。

 

前作で刑事の新田は、ホテルマンへの転身を勧められる。

 

「この展開なら次作もあるだろう」と思っていたので、本作は「待っていました」という作品である。

 

今回、タイトルに選ばれたのは「ライフ」という言葉。

 

初めてそれを見た時、「スケールの大きな言葉を使ってきたな」と感じた。

 

だが作品を読み終えると、「ライフがふさわしいな」と思う。

 

話は、新田が高校生の時のエピソードから始まる。

 

これが少し冗長で「早く本編へ行きたい」と思うが、後から振り返ると、このエピソードも重要だったと気付く。

 

本編は、2つの出来事を軸に進む。

 

1つは、ある文学賞の選考会に向けて、受賞者になるかもしれない人物について。

 

もう1つは、ある母娘の足取り。

 

新田は山岸とともに、ホテルの保安課長として動く。

 

そして本作では、新田の父も重要な人物として登場する。

 

今まで話には聞いていたが、これが新田の父、という風に読み進める。

 

ラストは、これら全てが絡み合って、「そうだったのか」という結末を迎える。

 

「人生とは、何なのだろう」と思わせる内容である。

 

新田は刑事時代の読みを劣らず発揮し、山岸のホテルマンとしての行動も見事である。

 

また次の作品も読みたいと思う、良いシリーズ。

 

書き下ろし作品。

町田そのこの作品。

 

2025年に小学館から刊行。

 

話は、老女の遺体を男女3人が埋めるところから始まる。

 

「これが話の核になるのだろう」と思いながら読み、第一章からは、主人公・飯塚みちるの目線で話が進む。

 

みちるはかつて、東京の出版社で記者をしていた。

 

ある事件の取材をきっかけに辞め、実家のある福岡に戻ってきた。

 

フリーでライターをしていたが、出版社で上司だった男性から、取材を依頼される。

 

それが冒頭の事件とつながり、男女3人のうち1人は、みちると中学の同級生だったこともわかってくる。

 

著者は福岡在住なので、会話文も福岡の言葉(北九州、小倉もあり)で描かれる。

 

つながりを見ていくと、「小さな街なのだな」と思う。

 

文章はどんどん読めて、一気に読むほうが話に入っていきやすい。

 

最後、みちるはある決断をするが、「うーん、やっぱりそうなのか」と思わされる。

 

取材のサポートで車を運転してくれる近所の男性・井口も印象的。

 

「アマリリス」の意味は、なるほどとも思う。

 

ミステリーが初めての著者にとって、新境地になったのではと思う。

馳星周の作品。

 

2020年に文藝春秋から刊行し、文庫版を読んだ。

 

「オール讀物」に2017年から2020年にかけて連載していた。

 

2020年の直木賞受賞作で、映画化もされた。

 

7つの短編が入り、1つは文庫版で初めて収録された。

 

連作短編集で、最後の話は最初につながるという、円環のような作品。

 

主人公は多聞(たもん)という犬。

 

シェパードに和犬を掛け合わせたような、雑種だ。

 

話の始まりはいつも、多聞が人の前にすっと現れる。

 

人に慣れているが、栄養状態が悪く、けがをしている時もある。

 

出会った人はみな、多聞に惹かれ、看病して飼うようになる。

 

多聞のもともとの飼い主は、東日本大震災で亡くなった。

 

それから5年かけて、多聞の西への旅が続く。

 

最後の話「少年と犬」で、多聞がなぜ西を目指していたのかが明かされる。

 

「そうか、そういうことなのか」という思いと、「そんなことが」という驚きが交錯する。

 

どの話も、人は悩みや孤独を抱えている。

 

突然現れた多聞に新しい名前をつけ、人は癒される。

 

犬と人間の関係、犬がもたらす力を感じる。

 

解説は北方謙三が書いている。

 

最近読んだ連作短編の中では、地に足がついた良作だと思う。