ま、今日も気ままにいきましょ。

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本、映画、ライブ、食べ物などの感想を徒然に書いていきます。

2004年に長崎県佐世保市で起きた、小6児童殺害事件。

 

『謝るなら、いつでもおいで』を書いた記者が、被害者の兄2人のその後を、聞き語りの形でまとめた。

 

2019年に新潮社から刊行。

 

タイトルの「僕」は上の兄、「ぼく」は下の兄。

 

それぞれの視点で、少しずつ話が進む。

 

最初は、家族が平穏に過ごしていた日々。

 

母の病気がわかり、亡くなり、それからしばらくして、妹が同級生に殺される。

 

「僕」はその時、大学生だった。

 

「長崎を出る」と決めて、四国で生活していた。

 

「ぼく」は中学2年生。

 

学校で呼び出され、「これを読んで」と先生から、ヤフーニュースの記事を渡される。

 

妹の死を知り、「ここにいる大人は何もしてくれない」と思う。

 

「僕」は人と話すのが好きで、開放的な性格だが、「ぼく」は人見知りで、場の空気をものすごく読むタイプ。

 

自分の感情を押し殺しているなと、読んでいて感じた。

 

事件のきっかけになったかもしれない秘密についても、事件そのものの話も、「してはいけない」とふたをする。

 

「僕」は波乱万丈な数年間を過ごすが、1人の女性と知り合い、結婚して子どもを授かる。

 

娘を亡くした父は、孫娘ができた。

 

家族を支えてきた、母の母も、病に倒れながらひ孫を抱く。

 

事件から今年で20年経ち、当時を詳細に記憶する人は少ないかもしれない。

 

でも本書を読むと、被害者家族が歩んできた日々を、自身の語りで追いかけることができる。

 

「これが、彼らの生活と人生なのだな」と思える。

 

これからも人生は続くのだから、2人の兄弟が、ただひたすらに日々を歩んでほしいと願う。

 

まとめ方のうまい良作だった。

小谷野敦の著作。

 

2015年に新潮社から刊行。

 

新潮新書で読んだ。

 

「古代から幕末までを一気に学びなおす」と帯にある。

 

小谷野の歴史観を知りたく、「一気に学べるなら読んでみてもいいかも」と読んだ。

 

手元にずっとある本だったので、読み終わるまでに1年くらいかかった。

 

全体的な感想としては、「日本史をある程度習ってきた人でないと、面白くはない」だった。

 

私は学生時代に日本史を数年は学んだので、読んでいると「あ、この人は授業で出てきた」「そうだったな」と思い返せる。

 

小谷野が知っている「こんなエピソードがある」も合わせて書いているので、「そうなんだ」と知れる。

 

大河ドラマへの思いは熱く、「これは好きで、これは嫌い」というのがはっきりわかる。

 

新選組は嫌いのようで、「新選組!」は出てこなかった。

 

「平清盛」はわりと好きみたい。

 

「光る君へ」のあたりは結構細かく書いているので、復習と予習になる。

 

最後は明治維新で終わる。

 

いくつかあるコラムも、まったく知らないような学者のことを書いていて、「思いが強いなあ」と感心する。

 

日本史をもう一度文章で学びたい人、小谷野の歴史観を知りたい人、人名の読み方を勉強したい人におすすめ。

芹澤桂のエッセイ集。

 

幻冬舎plusの連載に加筆修正した。

 

2021年に幻冬舎文庫から刊行。

 

芹澤のエッセイは『フィンランドは今日も平常運転』を以前に読んだ。

 

フィンランドに移住してフィンランド人と結婚し、2人子どもがいる。

 

フリーで書く仕事をしている。

 

読みやすくフィンランドの実状がわかったので、2冊目で本作を読んだ。

 

本作は、6,7ページで1つのテーマが書かれる。

 

内容は、フィンランドの男性、自然、子育て(保育園、病院)、食べ物・飲み物、男女の関係(離婚が多い)など、多岐にわたる。

 

多くの日本人が、フィンランドに対して思っているのと「違うのでは?」と想定して書き連ねる。

 

なので、「住んでいる人の実感はこれなのだろう」とわかる。

 

「フィンランドは北欧ではない」と言い切っているのも、「そうか」と思った。

 

どちらかというと、ロシアなのだ。

 

いいところもたくさんあって、住みやすそうだなと感じることもあるが、地域格差や寒さは気になる。

 

最後の方で、物件探しをテーマにいくつか出るが、日本よりも「個人でできるところは進めよう」感が強い。

 

人口が少ないから、良くも悪くもできてしまうところはあるだろう。

 

「フィンランドに住みました、家族ができて、こんなことがありました」と知るエッセイだった。

 

コロナ禍のフィンランドの様子もわかる。

 

また他の作品も読んでみたい。