西尾道徳氏「検証 有機農業」より

 

この本のなかで、有機農業の環境保全効果について、

実際のところどうなのか検証されていました。

 

1.土壌改善効果

 有機物(マメ科牧草などの緑肥や、家畜糞尿などのたい肥)を

 施用することにより、土壌内の有機物含量が増え、

 また、土壌の表面が植物でおおわれている期間が長いため

 豪雨や強風による土壌侵食が減少することが確認されている。

 

2.地下水水質への影響

 慣行農業では作物の吸収量を超えた窒素が施用されることで

 余剰になった窒素が硝酸塩になり、地下水に溶け出してしまう。

 

 有機農業では化学肥料による窒素の過剰投入がないため

 それを抑えることができる。

 また、化学肥料由来の窒素よりもマメ科植物由来の窒素のほうが

 土壌内の有機物に多く吸収されるため

 硝酸塩として溶け出す量が削減される。

 

 さらに、作物を栽培しない期間中に「カバークロップ」として

 栽培されるマメ科の植物は、土壌内の窒素分を吸収する効果がある。

 

 ただし、有機農業であっても

 作物の吸収量を超える有機態窒素の投入をすれば結果は同じになる。

 あくまでも慣行農業よりも窒素の過剰投入が少ないことが前提。

 

 ヨーロッパでは家畜糞尿の施用量に上限を設定しているため

 慣行農業と比べて過剰施肥になりにくいが

 日本ではそのような規制がないため、

 過剰に施肥していれば慣行農業との差異はあまり出ない

 ということになる。

 

3.気候変動の抑制

 有機農業では土壌内に炭素を蓄積するため

 大気中の二酸化炭素量を削減できる、という点について

 その効果は50年程度で、その後は投入量と同程度が

 二酸化炭素として放出されるようになる。

 したがって、永続的に効果があるというわけではない。

 

 

そのほか「なるほどなー」と思った記載がありました。

有機農業では一般に単位面積あたりの環境影響は

慣行農業よりも小さいものの、

収量が低かったり、農地の肥沃度形成の必要性もあることから

生産物量あたりでは必ずしも影響が小さいとは言い切れないとのこと。

 

たしかに、どの単位で比較するのが妥当なのかも

考慮が必要な点なのかもしれません。