不倫ブーム | 1997年夏

1997年夏

1997年の夏。ある出来事がおきました。その出来事により私は夫婦の関係について見直すことになり、そして恐らく人生も変えたと思います。その時のことを思い出しながら書いていきたいと思います。


あの手紙書き損じを見つける前に、妻とちょっと話をしたことを思い出した。
1997年の5月頃だったと思う。
二人ともワインを飲んでかなり酔っていた。


「森瑶子って作家知ってる? 不倫小説を書いてる」

「知らない」

「今、それ読んでるんだけど、読んでる途中から、だんだん腹が立ってくるの。どうしてかなとは思うんだけど」

「ふーん。まあ、ただの三流小説だってことじゃ?」

「ええ、多分ね・・・私ならこうは書かないわっていう展開になるのよ。いつもね。でも、頭に来るけど、結局、最後まで読んじゃうの」

「へえ・・・」

「ねえ・・・あなた・・もし、私が浮気してたらどうする?」

「え?(笑) お前ができるわけないだろ(笑)」

「あら、わかんないわよ」

「ふーん。もしかして、してんの? ホントに?(笑)」

「もしも、ってことよ(笑)。もしも!」

「まあな。・・・場合によるな」

「・・・」

「体だけの場合と、心も入っている場合だな・・・。体だけだったら、しょうがねえなぁ、って感じになると思うよ。これだけやってもまだ足りないっていうんだから。こりゃ病気だって(大笑)。・・・でも・・・心が入っていると、キツイなぁ」

「そう・・・」

「ともあれ、今、一番熱いのは、人妻だよ(笑)。いや、笑うかも知れないけど。一番ホットなのは、ひ・と・づ・ま。注意しろよ(笑)」

「・・・」


***


当時、『マディソン郡の橋』や『失楽園』などの小説や映画が話題になっていた。
それを念頭に置いてのコメントだった。
自分がそういう世界をまったくの他人事として考えていたのだった。
間抜けと言うか、情けないと言うか・・・