そのマッサージ店は駅近くのビルの2階にあった。
店に入ると出てきたのは、カタコトの日本語を話すおばちゃん。
もう一人若い女性もいたけど、担当してくれるのはどうやらこのおばちゃんらしい。
予約していたのは、80分のアロマオイルリンパ+ドライヘッドコース。
紙パンツ一丁になって横になるとおばちゃんが入ってきた。
「どこがイタイ?」
「つよさダイジョブ?」
「どこからキタ?」
「どこにスンデル?」
片言の日本語なのに、ノンストップで話しかけてくる笑。でもなぜか嫌な感じはしない。
今日は病院からここまできたこと、これから病院に戻って入院すること、甲状腺を取る手術をすること
家に二人の幼い子供がいることを話し、怖いし、不安だと正直に話した。
おばちゃんは、
「たのしいことカンガエル、びょうきすぐナオルヨ」
「コワーイ、イターイ カンガエナイヨ」
「わるいとこトル、ダイジョウブにナルヨ」
「ニホンのぎじゅつツヨイヨ すぐナオルヨ」
と前向きな言葉をたくさん掛けてくれた。本当に大丈夫な気になってくるのが不思議・・。
「シュミ タイセツ」
「わたし ウンドウ スキ、しゃべるの スキ、おりょうり スキ」
「いやなコトたくさんアルヨ」
「でもいやなコトカンガエナイヨ、たのしいコト カンガエルヨ」
「びょうきすぐナオルヨ」
そうか、ポジティブに考えるのって大事だな。そうするのがいいのは頭では分かっているけど、自分だけでは中々切り替えるのは難しい。おばちゃんのポジティブワードのシャワーでなんか、気持ちが上向いてきた。
おばちゃん、これから入院して大変だからと、足のマッサージを15分くらいサービスしてくれた。
なんて優しい人。
そしたら
「これからナニスルノ?」
「じかんアルノ?」
と聞かれて「あるよ」と答えると
「うえのこうえん アンナイスルヨ」
「いつもサンポ シテル」
「おまいり イコウ」
「サイフ だいじもって、おおきいの ここにオイテオイテ OKヨ」
「イコウ!」
ええ?出会って1時間半の中国人のおばちゃんと上野公園に行く!?
都外からせっかく東京に来てるのに、遊ばないで病院だけなんて可哀想だと思ってくれたみたい。
ここは、このおばちゃんのポジティブパワーと優しいおせっかいに乗っかってみるか!とお願いしてみることに。
毎日3時半に起きて歩いてるだけあって、めっちゃ早歩き。
「これ レンコン」と蓮がたくさんある池や、上野東照宮や神社をどんどん案内してくれる。
自分はクリスチャンだからと、神社の前で待っていて写真だけ撮ってくれる。
わたしはそんなに信心深くない人だけど、お参りしたらなんだか心が落ち着いた気がする。
30分強早足で歩いて、お店に戻る。
これも何かの縁だなと思って、蓮のところで写真を撮ってLINEも交換。
手術終わったら連絡するね、本当にありがとう!と言ってお別れ。
エレベーターが閉まる直前まで声をかけてくれた。
「ダイジョウブヨ ガンバッテ!」
気持ちが上向いたまま入院することが出来たのは、このおばちゃんのお陰だと心から思う。
この不思議な縁に感謝しかない。
手術、頑張れそうだ。