(マチューさんの映画紹介です)

 

関心領域

THE ZONE OF INTEREST

「大量殺戮者の穏やかで平和な日々」

 

タイトルの関心領域(英:THE ZONE OF INTEREST/独:interessengebiet)は、
ポーランドのオシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために親衛隊が使った言葉とのこと。

生存率0.052%以下の歴史上最悪最大の殺戮工場であり、本作は
塀を隔てた収容所長の家族を描いた英国作家マーティン・エーミスの同名小説の映画化。

 


やっと観に行けた。
公開と同時に行くつもりだったが、日程あわず、娘にも先んじられ今日は満を持して平日昼間の鑑賞。
それでも15人程がちらほら座席を埋めていた。

関心領域を無関心でいることの皮肉。

「許しがたい残虐行為の背後にある俗悪さを冷徹に見つめさせる」

一言でいうと、
「おぞましい」
吐きそうになる。
この無関心さに反吐がでる。塀のなかの惨劇が想像される音と叫び声


塀の外で
美しく時間をかけて作り上げた庭園にしか興味を持たない妻。家族みなが日常の音として慣れ。そして大きな煙が煙突からゆっくりと不気味に立ち昇る。


重厚なサウンドとドキュメンタリータッチな淡々とした映像が不気味さを助長する。

 

収容所運営で管理者らが図面をひろげ焼却炉の流れを誇らしげに力説する。
ドイツ人特有の効率さを求め、焼却炉二つを交互に稼働させ、荷を焼却していくことを相談する。

「何も知ろうとしなかった国民全体の態度がひとつの庭園に凝縮されている」とドイツの批評家も自戒を込めて寄稿。

今、この映画を上映する意味を問う。
身近でおきていることを
無関心によそおう、自分にふりかかるときのみ関心を持つこと。
それは私達に静かに訴えかけてくる。
皆が直ぐに感じること。


ロシアによるウクライナの破壊、市民子ども達の犠牲。
ガザのイスラエルによる
一般人、子ども達の殺害。
ユダヤ人が今度は迫害する側とはなんと歴史の皮肉だろう。

我々はそれを傍観者として映像で観ている。
自身の身にふりかからないからこその関心はあるが傍観者。塀の中の出来事に無関心であることと変わらないではないか。

災害についても然り。
コロナは身近に起こりえたので自分ごととして必死だったことは
たやすく思い出せるのでは?!
関心領域、言いえて妙だ。


この映画が秀逸なのは
それぞれにイメージさせること、彼らは当たり前の日常を、与えられた日常をよりよく快適に生きようとしているだけ。
与えられたことを疑いもせずに生活を守っていく。妻の母親はそれがよくわかっていたからこその違和感。
その場に居たたまれなくなって黙って姿を消した。外からくるとおかしいことが分かるのだろう。ずっといると感性を麻痺させる術を覚えるのか。


「Boil the frog」(ゆでガエル)


我々は目の前の幸せのみを追うこの家族を非難することはできないかも知れない。

手酷いしっぺ返しを被る映画
「The Boy in the Striped Pyjamas (縞模様のパジャマの少年)」を思い出した。

 

 

これはフィクション映画だがもしもこの映画の最後のように最悪な形で身にふりかかってやっとわかる程人間は愚かなのかも知れない。

 

途中から字幕が出るのも計算された演出か?
観客にはドイツ語がわからないので意味が頭にはいってこなければ雑音にするのに好都合だからだ。子どもが遊びに取り入れてつぶやいたり、
ユダヤ人の歯と思われるものをながめたり、ヘンゼルとグレーテルの絵本を読み、魔女を暖炉に閉じ込めて殺すこと、全て子ども達は遊びの中に自然に取り入れて、ゾッとさせる。

ヘス(収容所長)が歩く廊下が急に現在の展示室に変わる、大量のガス室送りにされたユダヤ人の山のように積み重ねた履き古した靴の展示、そしてなんのストレスか何度も吐こうとするヘス。

謎の女の子の行動はいったい?
暗示的で静かな迫力を感じ音楽も迫ってくる、寒気を感じ思わず首を竦めた1時間45分の映像であった。しかし、人によって気づきは果てしなく拡がるように思う。

 

 

 

 

 

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