(静岡テレビニュースより)

【袴田事件再審 】一家4人殺害の強盗殺人放火事件から58年…

1966年、当時の静岡県清水市で味噌会社の専務一家4人が殺害され、現金が奪われたうえ自宅が放火される事件が発生しました。

逮捕されたのは味噌会社で働いていた袴田巖さん(88)。当時30歳でした。

 

袴田さんの自白録音テープ

 

袴田さんは当初犯行を否認していましたが、連日10時間を超える取り調べの末に犯行を自白しました。供述を録音した当時のテープが残っていました。

袴田巌さん:
大変に恐ろしいことをやったと思ってます。もう夢中で見られちゃったからしょうがないと

 

裁判で無罪主張も死刑判決確定

 

犯行着衣とされた「5点の衣類」

 

しかし、裁判では一貫して無罪を主張。

裁判所も45通の自白調書のうち44通は強要された疑いがあるなどとして認めませんでした。

ところが、事件から1年2カ月後に味噌工場のタンクから発見された「5点の衣類」について、裁判所は犯行着衣と認め袴田さんに死刑判決を言い渡しました。

そして1980年、最高裁は上告を棄却し死刑が確定しました。

 

静岡地裁が再審開始を決定

 

再審開始決定を喜ぶ弁護団(2014年)

 

弁護団は裁判のやり直しを求め事件から47年以上が経過した2014年、静岡地裁の村山浩昭 裁判長(当時)はやり直しの裁判の開始を決定。

袴田さんの死刑執行の停止を命じ釈放を認めました。この時、袴田さんはすでに78歳となっていました。

 

村山浩昭さん

 

元裁判官・村山浩昭さん:
健康状態が非常に危ぶまれていました。後でどういう批判を受けようとも私たちとしては釈放するしかないという結論になったということです

 

再審開始決定を東京高裁が取り消し

 

検察は不服を申し立てる「即時抗告」を行い、東京高裁は裁判の開始決定を取り消しました。

 

「証拠ねつ造の可能性」東京高裁が再審開始決定

 

再審開始決定を喜ぶ弁護団

 

しかし2023年3月、差し戻された東京高裁が出した結論は…

松下翔太郎アナウンサー:
弁護団が2人出てきました。再審開始です。再審開始です

東京高裁は5点の衣類に残る血痕の赤みについて「赤みは消失すると推測される」「犯行着衣であることに合理的な疑いが生じる」と指摘。「捜査機関の証拠のねつ造の可能性がある」として裁判のやり直しを認めました。

検察側は「主張が認められなかったことは遺憾である」とコメントしたものの特別抗告はせず、やり直しの裁判の開始が確定しました。

 

袴田さんの姉・ひで子さん

 

袴田さんの姉・ひで子さん:
56年間闘っている。この日が来るのを本当に心待ちにしていました。これでやっと肩の荷が下りたという感じ。本当にありがとう

 

2023年10月 再審公判開始

 

法廷に向かう弁護団

 

2023年10月、静岡地裁の前には大勢の人の姿がありました。

この日からやり直しの裁判が始まり、わずか26席の傍聴券を求め280人が朝から列を作りました。

齊藤力公 記者:
弟のため闘った57年。その答えを求め、ひで子さんが弁護団とともに法廷に向かっていきます

 

法廷スケッチ

 

出廷が免除された巖さんに代わり、姉のひで子さんが支援者に笑顔を振りまきながら
法廷に向かいました。

冒頭、起訴内容を認めるか問われた ひで子さんは「弟に代わって無実を主張します。
弟に真の自由をお与えくださいますようお願いします」と無罪を主張。

 

袴田巌さん

 

一方、検察側は冒頭陳述で「犯人はみそ工場の関係者で凶器のくり小刀や放火に使った油などはみそ工場から持ち出した」「こうした行動を袴田さんがとることが可能だった」と説明しました。

また、5点の衣類について事件前に袴田さんが着用していた衣服と酷似している点や
血痕に赤みが残る可能性があるなどと指摘し、袴田さんの犯人性について主張してきました。

そして、15回目となる5月22日の裁判で検察側は再び死刑を求刑。

 

(毎日新聞の記事より)

狭山事件の石川一雄さん「死刑求刑に怒り」

1966年に静岡県内で一家4人を殺害したとして強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判は22日、検察が改めて死刑を求刑した。袴田さんと交流があり、狭山事件で再審を求めている石川一雄さん(85)は「(死刑求刑に)とても怒りを覚えた。無罪を確信し一日千秋の思いで待っている。次は狭山だ」と語り、支援者らも憤りの声を上げた。

 石川さんは63年5月、埼玉県狭山市内で女子高生が殺害された事件で逮捕。翌年1審で死刑判決がくだり東京拘置所の死刑囚監房に入った。その4年後に、同房に収監されたのが袴田さんだった。2審の無期懲役判決(74年)で石川さんが一般房に移るまでの約6年間、「イワちゃん」「カズちゃん」と呼び合う仲だった。

 石川さんは94年に仮出所。2014年に袴田さんが法的には「死刑囚」のまま釈放されると、浜松市の袴田さん宅を訪れるなど交流を重ねた。深刻な拘禁症状が残る袴田さんだが、石川さんについては認識しているという。その様子を見守ってきた石川さんの妻早智子さん(77)は「ともに冤罪(えんざい)を闘ってきた2人。苦しみや怒りの中で心を通わせていたのでは」と推し量る。

 袴田さんの再審を巡っては、検察の即時抗告を退けた東京高裁が唯一の物証とされる「5点の衣類」について、捜査機関による「捏造(ねつぞう)」の可能性に言及。再審公判でも弁護団は捏造の立証に傾注し、「『5点の衣類』は捏造の集大成」とまで論じ、「無罪」判決への自信を深めている。石川さんも「無罪獲得は当然のこと」と言う。

 「部落差別が生んだ冤罪事件」と訴える石川さんの第3次再審請求審(東京高裁)は、06年5月の申し立てから間もなく18年が経過する。物証とされる、石川さん宅から見つかった万年筆について、弁護団は「被害者のものとは言えない」とする鑑定書などを新証拠として提出したが、証拠調べは見通せない。それだけに石川さんは「袴田さんの裁判で捏造が満天下に明らかになった。狭山事件も同じ構造。光が見えてきた」と期待を寄せる。

 早智子さんの言葉は悲痛だ。「巌さん88歳、一雄も85歳。長い裁判の闘いで、皆高齢になっていく。いつどうなってもおかしくない。一日も早く再審を開始してもらいたい」

 石川さんを支援してきた部落解放同盟の片岡明幸県連委員長(75)は「東京高裁が『捏造』とまで言及して始まった再審というのに、死刑を求刑した検察は許せない。裁判所には速やかに無罪判決を出してもらいたい。袴田さんの次は石川さんだ」と話した。

袴田さん支援組織、石川さん救援へ

 一方、袴田さんの再審開始の大きな原動力になったのが「5点の衣類」のみそ漬け実験。主導した「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」の山崎俊樹事務局長(70)は「私が初めて冤罪事件に接したのは狭山事件。今度は袴田さんの救援運動で得た経験と知識を生かし、石川さんを何としてでも無罪に導きたい」と語った。

 石川さんの逮捕から61年となる23日、東京・日比谷野外音楽堂で再審実現を求める市民集会が開かれた。

 

(関テレニュース)

“冤罪”で12年服役の女性「ひきょうなやり方をするんだな」 ウソの自白させた警察官が法廷に 捜査の正当性をかたくなに主張

滋賀県の病院で入院患者が死亡したことをめぐる冤罪事件で、無罪が確定した女性が捜査機関の責任を追及する民事裁判。23日、女性を取り調べた滋賀県警の警察官が出廷した。

やり直しの裁判で「ウソの自白をさせた」と指摘された警察官は、捜査の正当性をかたくなに主張した。 

西山美香さん:ひきょうなやり方をするんだなとすごい思った。 裁判の最大の山場を終え、冤罪被害にあった女性は落胆の表情を見せた。

■厳しい取り調べで「否認しても無理や」と自白を引き起こし やり直し裁判で“無罪”確定

滋賀県の湖東記念病院の看護助手だった西山美香さん(44)は、入院患者を殺害したとして12年間服役したが、やり直しの裁判で事件の存在そのものが否定され、無罪が確定した。

 当時、逮捕の決め手となったのは西山さんの“自白”だったが… 西山美香さん(2017年):(患者が)亡くなった時の写真を机に並べて、『これを見て何も思わないのか、責任を感じないのか』と。厳しい取り調べを受けていたから『否認しても無理や』と思って… 

やり直しの裁判の判決では、西山さんに軽度の知的障害などがあることに加え、取り調べに迎合しやすい傾向があると指摘。「警察官はこれらを認識したうえで、西山さんが知り得なかった情報を教えるなどして、不当に誘導し、ウソの自白を引き起こした」と認定している。

■捜査機関の責任を追及する裁判 取り調べした警察官「一切ない」と否定

その後、西山さんは捜査機関の責任を追及する民事裁判を起こしていて、23日、当時取り調べを行った滋賀県警の現職警察官が出廷した。

 

 -Q.逮捕前の自白について 

取り調べを行った警察官:西山さんは『刑事さん、私の不安を取り除いてください。私がしたのは人殺しです』と話したが、供述に変遷があったので信用しなかった。しかし、後日まっすぐ私を見て、涙ながらに話し始めた。

 

 西山さんの代理人弁護士:机の上に亡くなった方の写真を並べて『何も思わないのか』と言った? 

取り調べを行った警察官:一切ありません。

取り調べでの誘導や指示などについて繰り返し尋ねられたものの、警察官は「一切ない」と否定した。 

 

そのうえで… 西山さんの代理人弁護士:あなたは、西山さんが患者を殺害していると思っているのか? 取り調べを行った警察官:再審無罪の判決が出ております。組織の一員として、取調官として捜査した。私がお答えすることはできません。 

 

滋賀県警はこれまで捜査に問題がなかったとする姿勢を崩していないが、核心を突いた質問に対し、警察官は明確な回答を避けた。

 

 裁判終了後、

西山さんの代理人 井戸謙一弁護士:(警察官は)組織を守るための証言に終始した。裁判所も言っていることは不合理で、(警察官の証言は)信用できないという印象を、色んな点で与えたのではないか。 

 

西山美香さん:(警察官は)いまでも犯人と思っていると言うか、再審無罪が出たので『犯人と言えない』と言うかと思ったが、変にごまかされたので、あんなもんだと思うしかない。 

 

来週の裁判では当時、捜査を指揮した元警察官の証人尋問が行われる予定だ。

 

 

 

 

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