紅テント(状況劇場)の唐十郎さん逝く

 

 

劇作家、演出家の唐十郎さんが亡くなりました。84歳でした。

  劇団唐組によりますと、唐さんは1日午前中に自宅で転倒し都内の病院に緊急搬送されましたが、4日夜、急性硬膜下血腫で亡くなりました。84歳でした。

  唐さんは明治大学を卒業後、1963年に劇団「シチュエーションの会」、後の「状況劇場」を結成しました。 

 東京・新宿の花園神社などに移動式の「紅テント」を仮設し、大都会の喧騒とテント1枚で隔てた空間を使って上演されるアングラ演劇が熱狂的に支持されました。 

 

わが青春の紅テント

「紅(あか)テント」と言っても、かなり年配の方でないとご存知ないと思いますが、1960〜70年代に青春期をすごした方たちにとっては忘れられない存在です。
唐十郎(から じゅうろう)ひきいる状況劇場の「紅テント」、上野の不忍池(しのばずのいけ)、新宿の花園神社、大久保のロケット工場、下北沢などあちこちに「紅テント」を張り、ゲリラ的に公演を行いました。テントの中に入ったら、そこはワンダーランド、別世界でした。不忍池からザッパーンと観客に水しぶきを浴びせながらクジラ(もちろん作り物です^_^)が登場したり、ロケット工場では小林薫が舞台でオートバイを乗り回したり。もう大興奮でした。

 

唐十郎(大鶴義英)さんは、東京の下町「下谷万年町」で幼少期を過ごしました。

 

初めの頃は、金粉をからだに塗り付けた「金粉ショー・ダンサー」でキャバレー回りをして劇団の資金を作っていました。

 

李礼仙さん(唐さんの前妻で状況劇場の看板女優)と結婚。

状況劇場のポスター:左上から順に「李礼仙」「根津甚八(ねづじんぱち:2016年没)」「常田富士男(ときたふじお:2018年没)」「十貫寺梅軒(じゅっかんじばいけん)」「御旅屋暁美(おたやあけみ)」「安保由夫(あんぼよしお)」「川崎容子」「天竺五郎(てんじくごろう:1992年没)」「小林薫」「不破万作(ふわまんさく)」「唐十郎」です。
常田富士男さんは市原悦子さんとやっていた「日本昔ばなし」が有名ですし、小林薫さんはテレビや映画で大活躍ですね。

 

「紅テント」(状況劇場)公演のポスター

 

 

 

ソウル、パレスチナ難民キャンプで公演

当時軍事政権下にあった韓国で詩人の「金芝河(キムジハ)」と大学キャンパスで合同公演を敢行。韓国語で公演を行った。しかし、その直後金芝河は逮捕され、長期獄中生活に入ることになった。
その後「唐版・風の又三郎」をパレスチナ難民キャンプで公演。アラビア語による公演が大好評でした。

زيارة إلى جهنم ズィヤーラ イラ ジャハンナム(地獄を訪問)

というアラビア語のタイトルで上演されました。

帰国して1か月後、その難民キャンプはイスラエルによる空爆で破壊されました。

(下の2つの画像はパレスチナ難民キャンプ公演の時のものです)

 

 

(これらの他、バングラデシュでの公演もありましたが、「ブラックリスト」に載っていたため、妻の李礼仙さんは参加できませんでした)

 

大島渚監督「新宿泥棒日記」にも出演

 

李礼仙さんと離婚

1988年に李礼仙さんと離婚。離婚の1か月前、李さんは瀬戸内寂聴(せとうちじゃくちょう)さんに言われ、芸名を「李 麗仙」に改名。
離婚を決心する1か月前に京都に旅行。寂庵(じゃくあん)に寄ると瀬戸内寂聴から「礼儀の礼より麗しい方がいいんじゃない」と言われ、姓名判断のできる友人にも「家庭を大事にしたいなら礼、仕事なら麗」と言われ、まよわず「麗」に決めた。その1か月後離婚。

 

李さんはその後テレビドラマ「3年B組金八先生」で教頭先生役を演じるなど、テレビでも活躍。
2019年10月脳梗塞にたおれ、女優復帰に向けてリハビリ中でしたが、2021年6月22日帰らぬ人になりました。

 

 

状況劇場公演「糸姫」(音声のみ)

 

劇中で歌われた「ジョン・シルバーの合唱」

ジョン・シルバーは「宝島」という小説に出てくる海賊の名前です。

この他にも、戦後の子ども達を熱狂させた「新諸国物語」(笛吹童子、紅孔雀、オテナの塔)「豹(ジャガー)の眼」(月光仮面の後継TVドラマ)など懐かしいテーマが劇中にちりばめられているのも魅力でした。

 

習志野市で亡くなった、唐さんの盟友「天竺五郎」さん

状況劇場草創期から看板俳優として参加し、根津甚八さん、小林薫さんなどを育て上げた「天竺五郎(椎名彦四郎)」というアーティストがいます。状況劇場を去った後も、天竺さんが案出した、声を発しない劇「黙劇」を幕張の浜や浅草・常盤座などで上演しました。晩年は習志野市に住んでいましたが、ご自分の住居でも「黙劇」を上演したりしました。

1992年に49歳の若さで亡くなり、鷺沼の慈眼寺でお葬式を行いました。

「唐=天竺コンビ」、今頃天竺(あの世)で再会しているかも知れませんね。

 

唐さんのご冥福をお祈りします。

 

 
コメントをお寄せください。(記事の下の中央「コメント」ボタンを押してください)