死刑執行が死刑囚に告知されるのは当日の1~2時間前・・・憲法違反との死刑囚の訴えを退ける大阪地裁判決 絞首刑はこう行われる【news23】

現在の日本の死刑執行は当日の1~2時間前に本人に告知されています。

「当日の告知」が憲法に違反するかどうか、大阪地裁で判決が言い渡されました。

 

 ■死刑執行の当日告知は合憲

 死刑の執行は、いつ死刑囚に伝えているのでしょうか? 

10代女性 「知らないです。1年前ぐらい?1か月前とか?」 

記者 「当日の2時間前なんです」

10代女性 「心の準備とか出来てないですよね。急に…」 現在、日本の死刑執行は、当日の執行1〜2時間前に本人に告知されます。

 60代女性 「2時間はちょうどいいかもしれないですね。“いま”の方が心の準備できないままで終わった方が本人にとってはいいかもしれない」

 80代女性 「2時間は良くないと思います。やはり人間にはいろいろ覚悟がありますからね。せめて1週間は、その方にも家族がいますしね。家族の対面や何かもありましょうから、一週間は必要かしらと思う」

 死刑執行の告知について当日に知らせるのは、刑罰執行の手続きの面でも、人間の尊厳の面でも、憲法などに違反しているとして、死刑囚2人が国を訴えた裁判。

 国側は1〜2時間前の告知も必要はなく、当日に即刻、刑場に連れていく形でも問題はないなどと反論。 4月15日の判決で大阪地裁は、死刑囚側の訴えを全面的に退け、当日告知は合憲という判断を下しました。 

 

■見えない日本の死刑制度の実態 

そもそも死刑はどのように行われているのか。 執行の約2時間前に突然告知された死刑囚は、独房から刑場に移動。 刑場の中の教誨室で遺言や所持品の整理が行われ、精神を安定させるために教誨師と約30分間過ごします。 その後、執行室の隣の部屋へ。拘置所長が「お別れのときがきました。今日までよく頑張りましたね」などと、死刑の宣告をします。 死刑囚は、目と口を大型のマスクで覆われ、体の前で手錠がかけられます。 カーテンが開き、踏み板の上に。両足を縛られ、首にロープがかけられます。首に触れる部分は柔らかい鹿の皮が使われています。 

そして、3人が一斉にボタンを押します。誰のボタンで作動したかはわかりません。踏み板が開き、体がおよそ4m落下。 10分後、拘置所の医務部長が心臓に聴診器を当て、心音が消えたところで、所長に“絶命”と合図を送ります。 約15分後、死刑囚の死亡が確認されます。死亡が確認されても、遺体はすぐには下ろされません。 六法全書 「死刑を執行するときは、絞首された者の死亡を確認してから5分を経過した後に絞縄を解くものとする」 死刑の告知のあり方を問う裁判は日本では初めてで、原告側の弁護団は控訴する方針です。

 

■アメリカでは“最後の食事”の希望も 死刑囚の人権は? 

藤森祥平キャスター: 死刑執行の当日告知について皆さんご存知でしたでしょうか? この死刑執行の手続きについては各国で違いがあります。日本と同じように死刑制度のあるアメリカ・オクラホマ州の例を見ていきますと、死刑囚には35日前に告知をするということになっていて、その中で執行に立ち会う人、前日に面会する人、さらに最後の食事などを死刑囚に希望として聞くようになっているそうなんです。 

一方、日本はお伝えしているように当日告知です。この理由について、これまでの国会答弁や法務大臣は会見でこのように話しています。 

「死刑囚の心情の安定を害さないようにするため」当日告知であると。

 小川彩佳キャスター: マライさん、ドイツでは死刑制度は無いですよね?

 ドイツ公共放送東京支局 プロデューサー マライ・メントラインさん: ないですね。ナチスの時代の反省から、やはり“国家権力は人の命を奪ってはいけない”という考え方なので日本とは違うんですね。 今回のケースは結局、人道的な思考というのが、いつなのか。1週間前の通告がいいのか、1日前が良いのか。考えれば考えるほど、むしろストレスを与えるのではないかと、難しい問題だと思います。 最終的には「冷静な法的思考」というのが大事になってきます。

ドイツの場合だったら憲法裁判所っていうのがあって、そういう難しい問題、国のあり方を問うような問題を、議論できる場としてあります。 今回は大阪地裁だったので、ちょっと大阪地裁だと大変な話なんじゃないかなと思ったので、そういう憲法裁判所があった方が冷静な判断がくだされるのではないかと思いました。 

小川彩佳キャスター: 星さんはどう思われました? 

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 人権という考え方が、欧米では生まれてから亡くなるまで人権はあるという考え方ですが、日本の場合は例えば判決が確定した後の死刑囚に対する人権は比較的明確になってない面もありまして、そこは議論の余地があると思いますし、今、実は日弁連でも死刑そのものについてどうあるべきかという議論を始めていまして、死刑制度全体を含めて、もう1回考え直してみるということが必要だと思います。 

藤森祥平キャスター: 今回の判決については原告である死刑囚側は控訴する方針です。

 

 

 

 

 

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