医療を崩壊させ、医師の過労死を増やす「医師の働き方改革」

 

(NHK みみより!くらし解説 より)

2022年の調査で、21.2%の医師が過労死ラインを超えて労働していたことがわかった。

そして今回の「働き方改革」では「医師は労働基準法を守らなくて良い。960時間の過労死ラインまで働かせてよい」と、医師の過労死ライン労働を大っぴらに認めてしまう内容となっている

 

ある医師のケース。大変なのは「当直」で、夜間救急や入院患者の急変に対応。翌日もそのまま勤務し、36時間連続勤務!しかもこの診察や治療が終わった後も、勉強会や学会発表の準備をしたり、新しい薬の勉強したり、が更に続く。

しかしこの図のピンクの「勉強会資料作成・論文検索」の部分は「自己研さん」であり「労働とは見なさない」のが常識になっている。

(編集部注:つまり「当直で救急対応や緊急治療をした時間」や「資料作成・論文検索」などの労働時間を「労働とは見なさず」、労働時間が短かったように見せかけて、「過労死認定を減らす」、それが今回の「医師の働き方改革」なのです。)

ある調査では、「健康である」と答えた医師が半数以下、20代医師の14%が日常的に死や自殺を考えている、というショッキングな結果が出た。

今回の「働き方改革」、本来なら労働時間を減らすため、人数を増やさなければいけないのに、逆に「今後人口が減る」「医師が多いほど医療費がかさむ」などの理由から減らそうという動きもある。

ただ地域によっては既に深刻な医師不足になっていて、今回の「働き方改革」はこうした地域を直撃し、こんなことになってしまう。

これを防ぐために、こうした医師不足の地域では、特例として「年間1860時間までの残業(過労死ラインの2倍!)を認める。更に「宿日直許可」制度で、「睡眠がとれるなら」宿直した時間を労働時間に入れない(サービス残業!)措置をとる。

 

この「宿日直許可」が長時間労働の隠れ蓑になるのではないか、と言われている。つまり「睡眠が十分とれない」医療機関でも、この「宿日直許可」の許可をもらっているそうです

更に医師不足の地域では病院の集約化=統廃合も避けられないのではないか、と考えられている。

勤務医を対象にしたアンケートでは、「働き方改革に期待している」と答えた人は、わずか3割。また3割の医師が不安を感じている。

医療の質の向上のための改革と言いながら、なぜこういうことが起きるのか?

今までは大学病院が、地域の病院におよそ6万人の医師を派遣し、それがアルバイトにもなっていた。

ただ今回制限される労働時間は大学病院での仕事と派遣先の病院の仕事を合算したものになり、「働き方改革」のために大学病院が医師を派遣先から引き揚げてしまう可能性がある。

すると派遣先だった病院は更に医師不足。更に労働時間の制限(年間960時間以内)により、診療だけで手いっぱい。研究にまで手が回らなくなり、医療の進歩がスピードダウンする。

(読売新聞の記事より)

病院、宿直を「休憩」扱い…残業規制対策で申請急増し「書類が整っていればおりる」

 

 午後5時から約15時間、対応した患者は20人に及ぶが、病院に申告しても残業と認められるのは一部だ。病院は労働基準監督署から「宿日直許可」を得ており、宿直中は原則として「休憩時間」とみなされる。

仮眠を取れる日もあるが、多くても3時間ほどだ。専攻医は「宿直中は気が休まる時間なんてほとんどない。これが労働でなくて何なんだろう」とつぶやいた。

 勤務医が夜間や土日の患者対応に備えて待機する「宿直」と「日直」。労働基準法は、業務内容が軽度で睡眠も十分取れる場合、病院が労基署の許可を得れば、特例で労働時間とみなさないと規定している。

 4月に始まる「医師の働き方改革」で、勤務医の残業時間の上限が原則年960時間となり、残業時間を抑制したい病院からの許可申請が相次いでいる。

 ユニオンの植山直人代表は「夜間の業務が軽度と言えない3次救急病院にも許可が出ている。『名ばかり宿日直』が広がっているのではないか」と声を強める。

 

船橋二和病院労組の医師・看護師、過労死した医師の遺族の方たちが3月8日、「働き方改革で医師を殺すな!」と厚生労働省に申し入れを行いました

 

(共同通信の記事より)

 大学病院などの勤務医の残業時間に罰則付きの上限を設ける医師の働き方改革が4月から始まるのを前に、高度医療を担う特定機能病院を対象に共同通信が調査した結果、回答した57病院の9割が「時間内に収めることは不可能」とし、上限を2倍近く引き上げる特例を申請すると答えたことが9日、分かった。

 新設される上限は休日労働を含め医師1人で原則年960時間だが、特例を申請し、適用されれば年1860時間まで認められる。申請すると答えたのは51病院で、年960時間に収められるとしたのは6病院だった。

 

(TBS報道特集より)

「限界です」26歳医師が自殺 100連勤・月200時間超の残業も…院長「自己研鑽」

 

 

 

コメントをお寄せください。(記事の下の中央「コメント」ボタンを押してください)