新聞で報道された習志野市の「19回も繰り返した虚偽公文書作成」という悪質な事件。「虚偽公文書作成はなぜ重罪なのか?」を説明した記事があります。
(AERA.dot10の記事より)
虚偽公文書作成は、「騒乱の首謀者」と同等の重罪
虚偽公文書作成、これはどのような罪に当たるのか。ジャーナリストの田岡俊次氏が解説する。
「虚偽公文書作成」に関する刑法156条は「公務員が、その職務に関し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造……」、印章、署名のある虚偽の公文書を作成した公務員は1年以上10年以下の懲役に処すとしている。
単純収賄や背任は「5年以下の懲役」だから、公文書偽造や公務員による虚偽公文書作成ははるかに重大な犯罪だ。特に下限が1年以上で最長10年、は騒乱の首謀者、脱獄を助けた看守、麻薬を密輸入した税関職員と同等の刑だ。
検察当局には「改ざん後の文書は不都合な箇所を削るなどしているが、内容は全くの虚偽とは言い難く、起訴はしにくい」との論も出る。だが、改ざん前と後の文書の番号、決裁の日付は同一で、少なくともその部分は虚偽の疑いが濃い。もし改ざん後の文書が虚偽とされないなら、同じ番号、表題、日付で、内容が異なる公文書が、ともに真正なものとして残る。それが先例となれば行政は大混乱だ。
公文書の一部を削除したり書き換えることが罪に問われないのなら公務員はやりたい放題だ。昭和2年の大審院(今日の最高裁判所)判例では、熊本県川口村(現熊本市内)の村会が紛糾したのに議長は経緯を議事録に記載させなかったため、公文書偽造で有罪となった。ウソを書かなくても、書くべきことを記載しなかったり、削除することも犯罪なのだ。
偽造、虚偽の公文書ならそれを行使した者も同罪だから、改ざんを知りつつ会計検査院や国会に提出させた人々も1年以上、10年以下の懲役になる。国会への提出は3月8日、5日には国土交通省が元の決裁文書の存在を内閣官房と財務省に通知していたし、改ざん指示ははるか前だから事情を知って行使した疑いは濃い。
個人的な収賄などと異なり組織ぐるみの公文書偽造は政治、行政の秩序を侵害する点で国事犯に近いから刑は騒乱の首謀者と等しい。
改ざんの内容が虚偽とまで言えるか否かの判断は裁判にゆだね、検察官は訴追することで国民の法治への信頼を保てるだろう。(ジャーナリスト・田岡俊次)