下水道課不正事件、住民監査請求で、習志野市が隠ぺいしていた不正の数々が明らかに

何度も新聞報道されてきた習志野市の下水道課不正事件、昨年12月18日に市民オンブズマンが住民監査請求を行いました。

これまでも市議会議員、市民、メディアなどがこの不正事件について内容を明らかにするよう、市議会での追及、情報公開請求を繰り返し行ってきましたが、

情報公開請求しても「黒塗り」「ほぼ白紙」で、事実を隠ぺい

 

市議会でも、まるで自民党裏金問題のように「答弁はひかえる」を連発

 

と、徹底して事実の隠ぺいをおこなってきました。

ところが、19日に監査結果が公表され、今まで習志野市が隠ぺいしてきた事実も一部明らかにされ、ようやくこの不正事件の概要が明らかになってきました。

(朝日新聞記事のURL)

 

(東京新聞の記事)

 

 習志野市監査委員による19日付の監査結果では、市がこれまで明らかにしていなかった不正発注の方法の一部が示された。

 花火大会の観覧場所で行った道路段差すり付け工事(74万3千円)では、業者が日付のない見積書を提出。整備費用の支払いは他の請負工事費に上乗せすることにし、公共下水道事業会計予算から拠出した。

 清掃イベントで清掃用胴長とレーキ(熊手)が必要になり、所管の環境政策課から下水道課に「普段付き合いのある業者から借用できないか」と相談があった。借りることができなかったため購入することにし、一般会計予算ではなく、公共下水道事業会計予算に上乗せして45万8千円を充てていた。

 同じ業者に発注したこの2件などの費用は、別の発注工事である防臭弁設置、汚水桝(ます)改良などに分割し、計96万6千円を上乗せして支払っていた。

 また、別の業者への費用捻出方法として、フェンス補修工事や下水道管補修工事に20万円ずつ上乗せして契約していたことも判明。

 契約しておらず、支払いができない費用を捻出するため、ある業者が19年度中に契約した8件のうち、4件で上乗せがあった。別の業者は19年度に契約した11件のうち3件、20年度も15件中3件で上乗せがあった。

ところが、市のホームページでこの監査結果を見るのは大変。市民がアクセスできないよう小細工をして隠ぺいしているから?

この監査報告は市のホームページで19日に次のように公開されました。

 

 

ところが、このページにたどりつくのは大変です。こうしたお知らせは、ふつう市のホームページの「新着情報」で表示されますが、19日の「新着情報」には全然出てきません。

これでは市のホームページをしょっちゅうチェックしている人でも監査報告のページになかなかたどりつけません。市民にはとことん情報隠しをする習志野市の隠ぺい体質にはホトホトあきれてしまいます。

 

監査結果の概要

3つの業者に「契約なしに」口頭で工事を発注

業者A 4件、計1,568,000円。
業者B 1件、総額1,397,000 円の内525,000 円
業者C 1件、総額2,520,000 円の内1,370,000 円

計3業者で6件、3,463,000円が無契約で発注された。

あとからつじつまを合わせるため、他の工事に「水増し」、ウソの契約書や請書、伝票を作成。19回もくり返し「虚偽公文書作成」(有印・署名入りは1年以上10年以下の懲役。それ以外は3年以下の懲役又は20万円以下の罰金)の違法行為をくり返した

これを決済するために
業者Aにつき 7件、計966,000円分
業者Bにつき 5件、計280,000円分
業者Cにつき 7件、計1,000,000円分 

計19件に、総計2,246,000円が水増しして支払われた。

この不正について職員による内部通報が行われたあとも2年間放置して知らん顔。最終的に業者への未払い金を「解決金」の名目で支払った。そして市議会議員にすら事件の全容も「解決金」の説明もないまま、令和4年度の下水道会計決算にまぎれこませ(議員にわからないように)、令和5年12月の市議会で通してしまった


 未払金
 業者A 602,000円
 業者B 245,000円
 業者C 370,000円
 の計1,217,000円については、令和5年3月29日に「解決金」名目で支払われた。

不正の内容。「緊急工事のため契約をせず、口頭で発注した」と議会では「違法行為」について弁解していたが、どれも「緊急性のない通常の工事」ばかり

ア. 業者Aに履行させた工事等の概要
 ① 清掃用胴長、レーキ購入(458,000 円)
 平成30年度に市都市環境部で実施した清掃イベントに向け、清掃用胴長とレーキを大量に購入する必要が生じた。所管課は環境政策課であった。
 当時、環境政策課と公園緑地課を所管していた都市環境部副技監は、下水道課主幹に対して「清掃用胴長及びレーキについて、普段付き合いのある業者から借用できないか問い合わせてほしい」と相談した。
主幹は業者に問い合わせたが、着用者に合ったサイズ確保の問題もあり、貸し借りできるような物品ではないとの回答を受けたことから、下水道課において購入することを決定した。
 正式にはメーカーに問い合わせる必要性を認識してはいたものの、すぐに調達に応じることができる業者として、業者Aに依頼した。なお、当該胴長及びレーキは、市公共施設に納品され、当該施設で保管された。
元々下水道課ではこのような物品の大量購入のための予算を計上していなかったため、主幹は支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。
 主幹への聞き取りによると、一連の経緯については課長及び係長Eも把握はしていが、課長には事後的な報告をしたに留まるとのこと。係長Eには支払いに関する指示をした記憶があるとのこと。

 ② 〇〇管理用道路段差すり付け工事(743,000 円)
 平成30年度に開催された第25回市民まつり習志野きらっと花火大会に際し、当該地を花火大会の観覧場所とするため、市民まつり事務局から会場整備への協力依頼があった。市民まつり事務局の職員Fからの依頼に際しては、下水道課の課長と主幹が応対した。
 課長は係長E及び職員Dに整備を指示し、指示を受けた係長E及び職員Dは現地を業者Aと共に確認し、会場整備の一環としての工事の必要性を認め、業者Aに発注した。工事に要した実際の費用については、日付のない 743,000 円の見積書が職員に提出され、同人が保管していた。
 当地の整備は一般会計予算からの支出が必要であるところ、当時の下水道課では本件工事に対応できるだけの予算を一般会計では計上しておらず、支払いについては他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。
 職員Dの聞き取りでは当人の確たる記憶がないことから、指示の主体となった者が課長か、係長Eであったかを特定するに至らなかった。


 ③ 〇〇水路ネットフェンス補修工事(120,000 円)
 平成30年度に水路にあるネットフェンスが破損していたため、緊急的に対応する必要があったことから、職員Dが当該工事を発注した。
 職員Dは、支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などの支払いに関する事務を行った。


 ④ 〇〇管理用道路車止め撤去他工事(247,000 円)
令和元年度に下水道課が企業局の組織として編入するに際し、所管する当該地を公園緑地課に移管するために協議を重ねていたところ、公園緑地課から公園として管理するにあたり不都合となる車止めの撤去を行うよう依頼があった。
 当該要請があった段階では、企業局の組織としての予算編成時期に当該地の整備に係る費用の計上が既に間に合わない状態であったことから、主幹は支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。

 イ. 業者Bに履行させた工事の概要
 ① 〇〇人孔内副管補修工事(総額 1,397,000 円)
 令和元年度に職員Dが当初見積もり 872,000 円の工事として発注・着工していたところ、管内に想定外の出水があることが判明し、工期及び工賃が増えてしまったことを業者Bが職員Dに報告した。金額は 1,397,000 円(税抜)で、担当課契約の上限額1,300,000円を超えるものだった。
 職員Dは、当初見積額 872,000 円(税抜)で契約を締結し、支払いまで済ませたが、残金 525,000 円(税抜)に関しては他の請負工事等に上乗せすることを決定した。
 本件と前後して職員Dから、職員Gが金額の管理などの支払いに関する事務を行った。
 なお、支払い事務の引き継ぎの経過に関しては、職員間の証言にやや食い違いが認められた。最終的に職員Gが支払い事務を担うことになった点は一致しているが、職員Dは以前から職員Gが業者Bに発注していた工事への上乗せ処理を相談していたと証言したところ、職員Gは従前からの引き継ぎ等は無く、職員Dの後、係長Hから工事の概要などについて説明を受けたと証言した。

 ウ. 業者Cに履行させた工事の概要
 ① 実籾3丁目地内下水道入替工事(総額 2,520,000 円)
 令和元年度に、開発を行う民有地に入っていた下水道管とマンホールを移設する必要が生じたが、職員Dはこれを覚知した段階では、係る工事の入札依頼から施工までに要する期間が開発業者の要望に応えられないと判断し、業者Cに直接工事を発注することにした。
 なお、工賃の総額は 2,520,000 円(税抜)で、担当課契約の上限額1,300,000円を超えるものだった。
 発注に際して職員Dは、総額のうち 1,150,000 円(税抜)で請書を取り交わして契約し、支払いまで済ませたが、残金 1,370,000 円(税抜)については他の請負工事に上乗せすることを決定した。しかし職員Dの後、金額の管理などの支払いに関する実務は職員Gが引き継いだ。

 

以上の監査結果、下記のURLをクリックしてご覧になれます。

https://www.city.narashino.lg.jp/material/files/group/113/jyuminkansaseikyu0219.pdf

以下、その全文です。

習志野市監査委員告示第1号

地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定に基づき、令和5年12月25日に受理した習志野市職員措置請求について監査を行ったので、その結果を別紙のとおり公表する。

令和6年2月19日

習志野市監査委員 福 田 佐知子

習志野市監査委員 斉 藤 賢 治

別紙

第1 監査の請求

1. 請求人

   (略)

2. 請求書の提出日

   令和5年12月18日

3. 請求内容

   住民監査請求書の一部を抜粋し、以下枠内のとおり、請求の要旨となるものを原文のまま記載した。ただし、( )書きで付記された会議名称、添付資料名称については省略し、表記を統一した。

習志野市長に関する措置請求の要旨

1請求の要旨

(1)対象となる財務会計上の事実

その一

令和5年10月25日付習志野市発表の「職員の懲戒処分について」によると、習志野市企業局工務部副技監58歳、都市環境部課長56歳、企業局工務部主幹51歳は平成30年度から令和元年度に下水道課において本来必要な契約手続きを行わないまま、業務を実行させた。

その後、当該業務にかかる経費を別契約において数回に分けて上乗せし、分割して支払いをしていた、という。

このことは次の問題点を明らかにしている。

 ① 契約手続きもしないままに工事を発注していること。これは市及び市幹部と業者がなれ合っていること、癒着関係にあるということができる。

② 別の工事契約に契約書無しで発注した工事金額を上乗せしたという事は、まさに水増し請求をしたという事である。

③ そればかりではなく、この行為は公金の違法、不正、不当な支出である。

④ 更に、このことは契約書という公文書を偽造したという事であり、これは明白な刑事事件でもある。

その二

令和5年11月21日付け東京新聞「習志野市 下水道課問題」の記事によると市側(宮本市長)は記者の「業者への未払い金は残っていたのか。」との問いに対して、「業者への未納金が121万7千円(消費税別)あった。市と業者双方に(金銭的な)被害は出ておらず、解決金との名目で業者3者へ債務を返済することで合意している。」と述べている。

これは具体的工事内容と工事費用が明確であれば、書類を整えて工事費用で支出できるはずである。それを解決金で支払うという事については、如何なることなのか、理解ができない。

また、解決金というのは、会計上は欠損という事になるが、令和4年度習志野市公営企業会計決算審査意見書の(2)経営状況(消費税等控除後)ア経営成績 事業収支比較表の下段に特別損失とあるがこの項目に含まれているのか?含まれているとすれば、市側は監査委員にその内容の説明をしたのかしなかったのか?も疑問となるところである。

また、特別損失の項目ではない、別の項目で支出していた場合においても、その支出の説明を市側は監査委員にしたのかどうかという問題について、市側が内容の説明をしなかったとなると、これまた事実上の隠蔽工作と言わざるを得ないと考える。

(2)以上の事実は地方自治法並びに習志野市財務規則及び習志野市公営企業会計規程違反である。

(3)このようなことは日常的に行われているという事になれば、そもそも工事契約金額の信憑性そのものが疑われるということである。さらに工事金額の正当性、合理性、妥当性がなく、違法かつ不当な財政支出であるという事になる。

水増し請求という事実はその上乗せ部分は違法かつ不当な支出であり、習志野市にそれだけ損害を与えていることは明白である。

(4)請求する措置の内容

今回問題となった事実については、この一事だけではなく、過去において同様のことが頻繁に行われていたという話や、この事件以降について、現在においても行われているのではないかといううわさがある。

また、企業管理者も市長もこうした事実について、この事件が発覚する前から知っていたのではないかという話も漏れ聞こえている。

宮本市長はこの事件につき、あってはならないこと、明白な違法行為であると謝罪しながら、具体的な違反案件はどのような事案であったのか、どうしてそのような方法を用いたのかその理由、相手方企業名、案件の金額、水増しされた具体的な数字等々について何も開示していない。これは謝罪よりも事件の隠蔽化を図っているのではないかと勘繰られても致し方ないのではないか? こうした具体的な部分での監査が必要である。

類似事件として岩手県盛岡市での事件や宮崎県延岡市での事件があるが、いずれも迅速な処理、市長の謝罪、そして関係文書の開示、再発をさせないための機構改革などを実施しているが、それらの対応と比較すると習志野市宮本市長の謝罪や処分は極めて当たり障りのない謝罪と言わざるを得ない。

この事件を機に二度とこのような事態を起こさないためには、習志野市各部局及び企業局において、事務にかかわる抜本的事実調査が必要と思われる。この点についても、監査委員の徹底的監査が必要であると思料するところである。

更に、処分内容についても、その処分内容が他市の類似事件や習志野市の他の処分案件と比べて妥当性があるのかについても疑問がある。

習志野市民・住民は処分内容が他の事件と比較衡量して、考えられない程、軽いのではないかとも考えている。法規に照らして相当な処分なのかどうかも監査していただきたい。よって、今般の不祥事について監査を行い、必要な措置を請求する。

(5)財務会計行為から1年以上経過している正当な理由

習志野市の発表によると平成30年度から令和元年度ということであるが、我々市民が知ったのは習志野市の懲戒処分発表である。従って1年以上経過しているとしても、住民としては今回の市の発表がなければ知り得ないことなので、この件の住民監査請求については1年以上経過している正当な理由があると考える。

蛇足ではあるが、業者への未納金121万7千円の支払いが終わってからまだ1年は経過していないと考える

4. 請求人から提出された事実証明書

(略)

第2 請求の受理

本件請求は、自治法第242条第1項の規定に基づく形式的要件を具備しているものと認められるため、令和5年12月25日付けで受理した。

 

第3 監査の実施

本件請求について、自治法第242条第5項の規定により、次のとおり監査を実施した。

1. 請求人の証拠の提出及び陳述

令和6年1月18日、自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に証拠書類の提出及び陳述の機会を設け、請求人から新たな証拠書類等が提出された後に陳述がなされた。

その際、自治法第242条第8項の規定に基づき、市関係職員が立ち会った。

2. 請求人から追加提出された証拠書類等

(略)

3. 関係職員の陳述

令和6年1月18日、住民監査請求における陳述等の取扱基準第2条第1項第2号の規定に基づき、市関係職員の陳述を行った。その際、自治法第242条第8項の規定に基づき、請求人が立ち会った。

4. 監査対象事項の決定

 請求書記載事項及び陳述の内容を考慮し、契約行為について次の事項を監査対象事項とした。

(1) 不適切な事務処理によって履行させた契約

(2) 上記(1)の具体的な問題点

なお、上記監査対象事項以外の請求書記載の事項については、具体的な財務会計上の行為に関する主張ではなく、監査対象事項とすべき理由がないと判断し監査対象外とした。

5. 監査対象部局

企業局 工務部 下水道課

(その他、監査意見の形成の参考とするため、本件請求に先立ち行われた内部調査担当部署

の職員等に事情聴取を実施した)

6. 監査の経過

(略)

第4 監査の結果

1. 主文

本件措置請求は棄却する。

2. 理由

(1) 関係法令

本件請求の関係法令は次のとおりである。

 

習志野市財務規則(抜粋)

(随意契約の見積書の徴取等)

第 137 条

予算執行者等は、随意契約に付するときは、2 人以上の者から見積書を徴さなければならない。

ただし、次の各号の一に該当する場合は、1 人の者から見積書を徴するものとする。

(1) 契約の目的又は性質により契約の相手方が特定されるとき。

(2) 市場価格が一定している物品を購入するとき。

(3) 1 件の予定価格が 130 万円以下の工事又は製造の請負をさせるとき。

(4) 1 件の予定価格が 50 万円以下の修繕又は設計、測量、地質調査及び補償の業務委託又は役務の提供をさせるとき。

(5) 1 件の予定価格が 10 万円以下の物品の購入又は印刷製本をさせるとき。

2 予算執行者等は、前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する場合は、見積書を徴さないことができる。

(1) 郵便はがき、郵便切手、収入印紙等専売価格の定めがあるものの購入

(2) 官報、新聞、法規追録等の定期刊行物及び図書の購入

(3) 食糧品の購入

(4) 1 件の予定価格が 5 万円以下の契約

(5) その他契約の内容又は性質上見積書を徴することが適当でないと認められるとき。

(契約書の作成)

第 140 条

予算執行者等は、契約を締結しようとするときは、次の各号に掲げる事項を記載した契約書を作成しなければならない。ただし、契約の内容によりその記載事項の一部を省略することができる。

(1) 契約の目的となる給付の内容

(2) 契約履行の場所

(3) 給付の完了の時期

(4) 対価の額

(5) 対価の支払方法及び支払時期

(6) 監督又は検査の方法及び時期

(7) 契約保証金

(8) 当事者の債務不履行の場合における遅延利息その他の損害金

(9) 危険負担

(10) かし担保責任

(11) 契約解除の方法

(12) 契約に関する紛争の解決方法

(13) 前各号に掲げるもののほか、契約の履行について必要な事項

2 工事又は製造の請負契約に係る契約書には、工程表、図面、設計書及び仕様書の添付がな

ければならない。

3 第 1 項の場合において、議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分等に関する条例(昭和 39 年条例第 4 号)の規定に基づき議会の議決を必要とする契約については、当該契約書に議会の議決を得たときに本契約が成立する旨の文言を付記しなければならない。

4 予算執行者等は、前項に規定する契約の締結について議会の議決を得たときは、直ちにその旨を契約の相手方に通知しなければならない。

(契約書作成の省略)

第 141 条

前条の規定にかかわらず、予算執行者等は、次の各号の一に該当するときは、契約書の作成を省略することができる。ただし、公有財産に関し契約をするときを除く。

(1) 1 件の契約金額が 130 万円以下の工事又は製造の請負の契約をするとき。

(2) 前号の契約以外の契約で、その契約金額が 50 万円以下の契約をするとき。

(3) 物品を売り払う場合において、買受人が直ちに代金を納入してその物品を引き取るとき。

(4) 物品を購入する場合において、直ちに現品の検査ができるとき。

(5) 国、若しくは政府関係機関又は地方公共団体と契約するとき。

(6) せり売りに付するとき。

2 予算執行者等は、前項の規定により契約書の作成を省略するときは、契約の目的となる給付の内容、履行期限、契約金額その他必要な事項を記載した書類(以下「請書」という。)を契約の相手方(以下「契約者」という。)から徴さなければならない。ただし、同項第 4 号に規定する場合又は予算執行者等が特に必要がないと認める場合は、この限りでない。

(検査調書の作成)

第 151 条

検査職員は、1 件の契約金額が 130 万円を超える工事又は製造の請負契約について、第 149条に規定する検査の結果、給付の完了が確認されたときは、検査調書又は出来高調書を作成しなければならない。

2 検査職員は、前項に規定する契約以外の契約について、関係帳票類にその旨を記録することによつて、検査調書又は出来高調書を省略することができる。

 

習志野市公営企業会計規程(抜粋)

第 11 条

公営企業の経理は、損益勘定、資産勘定、負債勘定及び資本勘定に区分して行うものとする。

2 前項に規定する勘定科目の区分は、別表第 1 に定めるところによる。

 

なお、担当職員は上記規則及び規程のうち、契約行為に関連する事項について抜粋し事務処理手順等を解説した「契約事務の手引き」、「習志野市随意契約ガイドライン」及び「工務部発注行為及び設計変更ガイドライン」を適宜参照しながら実務を行っている。

 

(2)認定事実

総務課が実施した内部調査の報告書及び関係職員の事情聴取に基づく監査によって確認した事実は以下のとおりである。

※本件は、内部通報を端緒として発覚したものであり、習志野市職員等の内部通報に関する要領に基づき、総務部総務課が調査を行っている。令和 5 年 2 月 20 日付「内部通報中間報告書」および「令和 5 年 6 月 30 日付「内部通報報告書」が市長に提出されている。

各業者を相手方とした契約行為において共通している不適切な事務処理は下記①~③のとおりであった。

① いずれも契約書ないしは請書を作成していないか、適切な内容で作成されておらず、習志野市財務規則第140条及び第141条に則った手続きが行われていなかった。

② 上記①に挙げた状況により、報酬の支払い時期及び方法についての取り決めを客観的に確認する事ができない。報酬を支払うべき本来の時期は請負業者の債務履行(目的物の引き渡し)と同時期であるべきであった(民法633条)。

③ しかしながら、実際にはこれら報酬を不定期に分割して支払うに至っており、工事等を実施した業者に対する支払いを遅延させるものであった。また、その払出しの手続きについても、残金の支払いを管理していた職員の指示により、各業者が請け負った無関係な別の工事請負契約等の見積書、契約書ないしは請書及び請求書等に分割した金額を、工事費を水増しする形で上乗せ記載させ、それらを支出証拠書類として使用し、内部手続を通過させるというものであった。

これら一連の行為は社会通念に照らしても各業者や組織内の会計経理担当部署に対して不誠実な事務処理であったと言わざるを得ない。

 ア. 業者Aに履行させた工事等の概要

 1.内部通報報告書及び、関係職員の聞き取りから下記の四件について、不適切な事務処理に基づいて物品購入ないし工事を履行させていたことが確認された。総額は1,568,000円であった。

① 清掃用胴長、レーキ購入(458,000 円)

平成30年度に市都市環境部で実施した清掃イベントに向け、清掃用胴長とレーキを大量に購入する必要が生じた。所管課は環境政策課であった。

当時、環境政策課と公園緑地課を所管していた都市環境部副技監は、下水道課主幹に対して「清掃用胴長及びレーキについて、普段付き合いのある業者から借用できないか問い合わせてほしい」と相談した。

主幹は業者に問い合わせたが、着用者に合ったサイズ確保の問題もあり、貸し借りできるような物品ではないとの回答を受けたことから、下水道課において購入することを決定した。

正式にはメーカーに問い合わせる必要性を認識してはいたものの、すぐに調達に応じることができる業者として、業者Aに依頼した。なお、当該胴長及びレーキは、市公共施設に納品され、当該施設で保管された。

元々下水道課ではこのような物品の大量購入のための予算を計上していなかったため、主幹は支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。

主幹への聞き取りによると、一連の経緯については課長及び係長Eも把握はしていたが、課長には事後的な報告をしたに留まるとのこと。係長Eには支払いに関する指示をした記憶があるとのこと。

 上記行為の問題点

  1. 当該イベントに供する用具の購入費用については一般会計予算からの支出が妥当であるところ、費用を上乗せした工事はいずれも公共下水道事業会計予算の執行とされていた。
  2. 習志野市財務規則第137条においては物品購入に係る契約を締結する場合、購入額

が10万円を下回る場合を除き、原則として見積書を2者から徴取するよう定めており、胴長及びレーキの購入費用が458,000円であったことと照らし合わせると、必要な手続きを怠っていた。

iii. 胴長・レーキの検収について証拠書類の所在が不明確であり、不備なく契約が履行されたかを確認することができない。職員の証言からは当時、納品をめぐってトラブルがあったことは伺えなかったことから問題なく契約が履行されたものと推測できるものの、検収の結果については記録を残すことが前提となっており、本件では習志野市財務規則第151条第2項の規定に基づく記録を怠っていることになる。

  1. 胴長・レーキについて、関係職員への聞き取りから市公共施設で保管されているとの証言を得たが、台帳の作成などが適切に行われていたかを確認するに至らなかった。

② 〇〇管理用道路段差すり付け工事(743,000 円)

平成30年度に開催された第25回市民まつり習志野きらっと花火大会に際し、当該地を花火大会の観覧場所とするため、市民まつり事務局から会場整備への協力依頼があった。市民まつり事務局の職員Fからの依頼に際しては、下水道課の課長と主幹が応対した。

課長は係長E及び職員Dに整備を指示し、指示を受けた係長E及び職員Dは現地を業者Aと共に確認し、会場整備の一環としての工事の必要性を認め、業者Aに発注した。工事に要した実際の費用については、日付のない 743,000 円の見積書が職員に提出され、同人が保管していた。

当地の整備は一般会計予算からの支出が必要であるところ、当時の下水道課では本件工事に対応できるだけの予算を一般会計では計上しておらず、支払いについては他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。

職員Dの聞き取りでは当人の確たる記憶がないことから、指示の主体となった者が課長か、係長Eであったかを特定するに至らなかった。

上記行為の問題点

  1. 当該地は下水道課の企業局編入前から一般会計予算にて管理していたところから、本来であれば所定の契約手続きを行ったうえ、一般会計予算の執行と処理すべきところ、未払代金がいずれも公共下水道工事に上乗せして支払われたため、公共下水道事業会計予算の執行として処理されてしまった。

③ 〇〇水路ネットフェンス補修工事(120,000 円)

平成30年度に水路にあるネットフェンスが破損していたため、緊急的に対応する必要があったことから、職員Dが当該工事を発注した。

職員Dは、支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などの支払いに関する事務を行った。

上記行為の問題点

  1. 緊急性のある工事については、発注するにあたり、上司や経理担当職員に相談することが求められるにもかかわらず、相談したことが認められる客観的な事実が確認できなかった。本来あって然るべきと思しき相談体制が整っていなかった様子が窺われた。
  2. 緊急工事を発注した後、ただちに契約手続きをすべきところ、処理を失念していたため、それを糊塗するために、支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定したこと。

④ 〇〇管理用道路車止め撤去他工事(247,000 円)

令和元年度に下水道課が企業局の組織として編入するに際し、所管する当該地を公園緑地課に移管するために協議を重ねていたところ、公園緑地課から公園として管理するにあたり不都合となる車止めの撤去を行うよう依頼があった。

当該要請があった段階では、企業局の組織としての予算編成時期に当該地の整備に係る費用の計上が既に間に合わない状態であったことから、主幹は支払いについて他の請負工事に上乗せすることを決定し、金額の管理などを事務担当者であった職員Dに指示し、支払いに関する事務を行わせた。

上記行為の問題点

  1. 当該地は下水道課の企業局編入前から一般会計予算にて管理していたものであるところから、本来であれば所定の契約手続きを行ったうえ、一般会計予算の執行と処理すべきところ、未払代金の費用を上乗せした工事はいずれも公共下水道工事に上乗せして支払われたため、公共下水道事業会計予算の執行として処理されてしまった。

2.費用を上乗せした契約

前記①~④の物品購入及び工事について契約手続きがなされていなかったため、支払も行われていなかった。このため発注者が当該工事等の代金を、それ以後の契約に、工事費用を水増しする形で上乗せして支払っていた。費用を上乗せしていたのは下記の7件の契約であり、上乗せ総額は966,000円であった。

なお、上乗せ額はいずれの業者との間のやり取りにあっても、職員Dないし職員Gが指示しており、特段の規則性はないが担当課契約を締結できるよう、契約金額が 1,300,000 円以下になるように調整していたとのことだった。

① 平成30年度 ○○防臭弁設置工事

契約金額324,000円(上乗せ額110,000円)

② 平成30年度 〇〇人孔蓋調整工事

契約金額343,440円(上乗せ額100,000円)

③ 平成30年度 〇〇汚水桝改修工事

契約金額379,080円(上乗せ額106,000円)

④ 平成30年度 〇〇人孔蓋補修工事

契約金額399,600円(上乗せ額100,000円)

⑤ 令和元年度 〇〇公共桝蓋補修工事

契約金額676,500円(上乗せ額200,000円)

⑥ 令和元年度 〇〇公共桝蓋補修工事

契約金額377,300円(上乗せ額100,000円)

⑦ 令和元年度 〇〇公共桝補修工事

契約金額935,000円(上乗せ額250,000円)

3.未払金及び清算

発注者である職員Dは未払いになっている工事等の代金総額および上乗せによって支払った金額をエクセル表で管理し、共有フォルダに保管していた。当該フォルダは同じ係員でも常に参照するものではなく、実質職員Dが単独で使用していた。総務課による内部調査に際し、当該表が提出され、これに基づき、市は請書等を取り交わさなかった契約総額1,568,000円から、上乗せによって支払済みとなった966,000円を差し引いた602,000円を未払金として認定し、令和5年2月20日付けで中間報告を市長及び企業管理者宛で発出した。なお分割して支払った代金を、前記①~④のどの契約に充当したかという管理について、担当者はしていなかった。

このため①の代金及び②~④のどの工事がいくら未払になっているかは明らかでなく、業者 Aに対する総額でしか把握されていなかった。企業局は令和5年3月3日付けで業者Aと当該金額に相違が無い旨合意書を取り交わし、令和5年3月29日に清算した。

 

イ. 業者Bに履行させた工事の概要

 1.内部通報報告書及び、関係職員の聞き取りから下記の一件について、不適切な事務処理に基づいて契約を履行させていたことが確認された。

① 〇〇人孔内副管補修工事(総額 1,397,000 円)

令和元年度に職員Dが当初見積もり 872,000 円の工事として発注・着工していたところ、管内に想定外の出水があることが判明し、工期及び工賃が増えてしまったことを業者Bが職員Dに報告した。金額は 1,397,000 円(税抜)で、担当課契約の上限額1,300,000円を超えるものだった。

職員Dは、当初見積額 872,000 円(税抜)で契約を締結し、支払いまで済ませたが、残金 525,000 円(税抜)に関しては他の請負工事等に上乗せすることを決定した。

本件と前後して職員Dから、職員Gが金額の管理などの支払いに関する事務を行った。

なお、支払い事務の引き継ぎの経過に関しては、職員間の証言にやや食い違いが認められた。最終的に職員Gが支払い事務を担うことになった点は一致しているが、職員Dは以前から職員Gが業者Bに発注していた工事への上乗せ処理を相談していたと証言したところ、職員Gは従前からの引き継ぎ等は無く、職員Dの後、係長Hから工事の概要などについて説明を受けたと証言した。

上記行為の問題点

  1. 市財務規則及び企業局会計規程には契約の「公平性・競争性・透明性」の確保を旨として、担当課における契約締結可能額に上限を設けているが、上記経過にもあるとおり事実上の分割発注をもって処理をしており、規則等の制定趣旨を没却した処理だった。
  2. 担当課契約可能額を越えてしまった段階で、上司や経理担当職員に相談したことが認められる客観的な事実が確認できなかった。本来あって然るべきと思しき相談体制が整っていなかった様子が窺われた。

2.費用を上乗せした契約

下記の5件の契約について費用を上乗せしていた。上乗せ総額は280,000円であった。

① 令和2年度 〇〇下水道管調査業務委託

契約金額440,000円(上乗せ額50,000円)

② 令和2年度 〇〇人孔補修工事

契約金額792,000円(上乗せ額80,000円)

③ 令和2年度 〇〇下水道管調査業務委託

契約金額462,000円(上乗せ額50,000円)

④ 令和2年度 〇〇下水道管調査業務委託

契約金額364,100円(上乗せ額50,000円)

⑤ 令和2年度 〇〇下水道管調査業務委託

契約金額405,900円(上乗せ額50,000円)

3.未払金及び清算

総務課による内部調査に際し、発注担当者であった職員Dが管理していた未払い残高を管理するエクセル表が提出され、それに基づき、市は請書等を取り交わさず発注して未払いとなった工事費総額525,000円から、上乗せによって支払済みとなった280,000円を差し引いた245,000円を未払金として認定し、令和5年2月20日付けで中間報告を市長及び企業管理者宛で発出した。企業局は令和5年3月6日付けで業者Bと当該金額に相違が無い旨合意書を取り交わし、令和5年3月29日に清算した。

 

ウ. 業者Cに履行させた工事の概要

1.内部通報報告書及び、関係職員の聞き取りから下記の一件について、不適切な事務処理に基づいて契約を履行させていたことが確認された。

① 実籾3丁目地内下水道入替工事(総額 2,520,000 円)

令和元年度に、開発を行う民有地に入っていた下水道管とマンホールを移設する必要が生じたが、職員Dはこれを覚知した段階では、係る工事の入札依頼から施工までに要する期間が開発業者の要望に応えられないと判断し、業者Cに直接工事を発注することにした。

なお、工賃の総額は 2,520,000 円(税抜)で、担当課契約の上限額1,300,000円を超えるものだった。

発注に際して職員Dは、総額のうち 1,150,000 円(税抜)で請書を取り交わして契約し、支払いまで済ませたが、残金 1,370,000 円(税抜)については他の請負工事に上乗せすることを決定した。しかし職員Dの後、金額の管理などの支払いに関する実務は職員Gが引き継いだ。

上記行為の問題点

  1. 市財務規則及び企業局会計規程には契約の「公平性・競争性・透明性」の確保を旨として、担当課における契約締結可能額に上限を設けているが、上記経過にもあるとおり事実上の分割発注をもって処理をしており、規則等の制定趣旨を没却した処理だった。
  2. 当該工事は総額2,520,000円について習志野市公営企業会計規程第11条の規定に基づき資産勘定として経理されるべきところ、残金1,370,000円分について費用を上乗せした工事はいずれも費用勘定となっていた。これは執行当時の仕訳としては適切ではなかった。なお、請書を取り交わした1,150,000円の支払いについては資産勘定として経理されていた。

iii. 上記ⅱ.に加え、本件契約に係る清算額については令和4年度決算報告上は特別損失(過年度損益修正損)に計上されている。支出総額の表示としては影響はないが、本件契約に関して正しく事務処理が行われていれば発生しなかったであろう「歪み」が生じている。最も、清算額を特別損失に計上した点については決算処理の慣例上、特段の問題はない。

2.費用を上乗せした契約

下記の7件の契約について費用を上乗せしていた。上乗せ総額は1,000,000円であった。

① 令和元年度 〇〇フェンス補修工事

契約金額935,000円(上乗せ額200,000円)

② 令和元年度 〇〇取付管補修(その2)工事

契約金額1,155,000円(上乗せ額100,000円)

③ 令和元年度 〇〇公共桝蓋補修工事

契約金額462,000円(上乗せ額200,000円)

④ 令和2年度 〇〇下水道管補修工事

契約金額902,000円(上乗せ額200,000円)

⑤ 令和2年度 〇〇他舗装復旧工事

契約金額726,000円(上乗せ額100,000円)

⑥ 令和2年度 〇〇人孔蓋取替工事

契約金額935,000円(上乗せ額100,000円)

⑦ 令和3年度 〇〇人孔蓋取替工事

契約金額825,000円(上乗せ額100,000円)

3.未払金及び清算

総務課による内部調査に際し、発注担当者であった職員Dが管理していた未払い残高を管理するエクセル表が提出され、それに基づき、市は請書等を取り交わさず発注して未払いとなった工事費総額1,370,000円から、上乗せによって支払済みとなった1,000,000円を差し引いた370,000円を未払金として認定し、令和5年2月20日付けで中間報告を市長及び企業管理者宛で発出した。企業局は令和5年3月6日付けで業者Cと当該金額に相違が無い旨合意書を取り交わし、令和5年3月29日に清算した。

 

エ.その他問題点

 1.費用が上乗せされた契約については、上乗せ額を加算した見積書を基に工事等を実施させていた。工事等の実施記録の一部を成す書類として、工程や単価が正しく記録されていない。

2.各事業者との清算においては消費税も含めて清算を行っている。この税率については10%が適用されている。契約書や請書を取り交わさなかった工事等については日付を遡って契約することはできず、結果的に清算に際しては全額に10%の税率を適用せざるを得なかった事情がある。

しかしながら消費税率が8%から10%に改定された令和元年10月以前の諸行為については適切な事務処理手続きを踏んでいれば、適用税率が8%の状態での支払いによって完結していたであろう部分がある。

 

オ.その他監査結果を形成するにあたって認定した事実

1.平成30年度から令和3年度にかけて下水道課が発注した工事について確認したところ、上乗せ支払いを請け負った業者の受注件数に著しい増加は見受けられず、利益供与の存在を客観的に認め得る証拠は確認されなかった。

 

※下記は下水道課にて管理している工事発注一覧に基づき監査事務局にて集計した。

事業者 A

平成 30 年

下水道課発注工事全契約数 68件 A との契約数 14 件 うち上乗せがあった件数 4件

令和元年

下水道課発注工事全契約数 51件 A との契約数 8件 うち上乗せがあった件数 4件

 

事業者B

令和元年

下水道課発注工事全契約数 51件 Bとの契約数 2件 うち上乗せがあった件数 1件

 ※業者Bについては、上乗せした契約5件のうち4件が業務委託契約であるため、11頁記載の「2.費用を上乗せした契約」と、工事発注件数と受注件数を表した上記適示

内容に差異がある点に留意されたい。

 

事業者C

令和元年

下水道課発注工事全契約数 51件 Cとの契約数 11件 うち上乗せがあった件数 3件

令和2年

下水道課発注工事全契約数 56件 Cとの契約数 15件 うち上乗せがあった件数 3件

令和3年

下水道課発注工事全契約数 51件 Cとの契約数 9件 うち上乗せがあった件数 1件

2.(略)

3.未払金は、請書等を取り交わさずに履行させた契約を行った職員がエクセル表を使用して支払い状況を管理していた。当該記録からは内部通報に起因する調査によって発覚した以外の事案で不適切な事務処理に基づく契約があったことを確認できなかった。

4.適切に請書等を取り交わさなかった工事等について、業者からは施工前後の写真を含めた報告を徴しており、出来高の確認を含めた施工管理が行われていたことが確認できた。購入物品の検収については書面上確認できるものが残っていなかったが、聞き取り内容から滞りなく納品に至ったことは合理的に推測できることから、いずれの契約も支払根拠の存在に特段の疑義は認められなかった。

 

(3)監査委員の判断

ア. 各業者に履行させた工事等及び契約とその具体的な問題点について

各業者に履行させた工事等及び契約事案の概要及び当該事案が抵触した法令・例規等については上記「(2)認定事実」に列挙した通りである。

企業局は、令和5年2月20日付「内部通報中間報告書」に基づき、未払金を清算したほか令和5年6月30日付「内部通報報告書」及び令和5年7月7日付の市長から企業管理者に対し出された、「内部通報にかかる是正措置について(勧告)」に基づき、主に再発防止の観点から下水道課に係る是正措置として、以下の11項目に渡り報告を行った。

令和5年8月2日付「内部通報に係る是正措置について(報告)」より抜粋

① 従前より作成されていた業務執行フローを「担当課契約工事等執行マニュアル」として改めて策定、周知し、事務の明確化及び適正化に努めること。

② 同じく従前より作成していた「担当課契約工事等進行管理表」の確認頻度を月単位とし、確認者を係長、確認作業に企業会計システムの参照作業を徹底し、機能強化を図ること。

③ 職員個々人の緊急工事発注事務に対する習熟度の向上及び担当者判断が困難な場合の上申の徹底を目的とした、育成に努めること。

④ 適時適切な人事異動により、同一の担当者が同一の業務を担当する状況の改善に配慮すること。

⑤ 技術職員がその専門性を発揮すべき業務に専念できるよう、事務職員でも担うことが可能な業務を選別し、分担するなど、業務執行体制の改善に努めること。

⑥ 職員間の情報共有・意見交換を活発化する為、適宜係内会議や係長会議を開催し、職員間のコミュニケーションの機会を従前以上に増やすこと。

⑦ 組織行動規範の明確化のために、課の朝礼を行う場合にはスローガンを活用し、職員一人ひとりが意識向上を図れるよう取り組むこと。

⑧ 担当課発注を実施する際は、内容精査時、及び請負者との協議においては、原則として複数名で行い、見積時に必要となる重要的事項がある場合は書面で示すことを徹底すること。

⑨ 契約以降の協議内容は、常用の打合せ簿を活用し、協議経過について業者と確認のうえ業務を進めること及び協議内容を課内で共有することで、業務の透明性の確保に努めること。

⑩ 本件事案に係る具体的な非違行為を職員一人ひとりが確認し、法令遵守を徹底する意識の啓発を進めるため、コンプライアンス意識の定着にかかる研修を年1回以上、全企業職員が受講する機会を継続的に確保すること。

⑪ 各課業務の技術継承の習得だけにとどまらず、関連した法令等の知識の習得に努めること。

 

関係職員の事情聴取における担当職員の証言には、業務が多忙であったことや、事務処理に必要な知識に関する指導や教示を受けられなかったことから、正当な手続きでないことを認識しつつも安易な手法を取ってしまったという趣旨のものがあり、企業局の報告には再発防止策としての一定の効果が期待できると思料する。

その他「(2)認定事実」に記載した問題点については、未払金の清算及び是正措置に加えてさらなる是正を要する必要性までは認められなかった。よって、請求人の措置請求には理由がない。

併せて書類調査及び関係職員の事情聴取を実施した範囲では、他の類似事案の存在を裏付ける明確な証拠は確認されなかった。

 

イ. 監査対象事項としなかった事項について

① 抜本的事実調査の請求について

請求人の措置請求書「(4)請求する措置の内容」の書き出しには、本件不適切な事務処理事案以外の類似事案の存否を疑う内容が記載されている。

しかしながら平成2年6月5日最高裁判示にて「住民監査請求は、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を他の事項から区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示し、また、右行為等が複数である場合には、右行為等の性質目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き、各行為等を他の行為等と区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示してしなければならない。」とされており、類似事案の存否にかかる疑念だけでは請求の対象の特定を欠くものと言わざるを得ないことから、この点については監査対象事項としなかった

② 懲戒処分の軽重の適切性にかかる請求について

請求人の措置請求書「(4)請求する措置の内容」には本件事案に係る懲戒処分が他の自治体における類似事案と比較して、その処分が不当に軽いという趣旨の疑念が述べられている。

しかしながら地方公務員法第6条第1項の規定のとおり、職員の懲戒処分を含む人事に関する事柄については地方公共団体の長や人事委員会の所掌となっており、監査の権限が及ぶ余地はない。また、地方自治法第242条第1項に規定された財務会計上の行為にも該当しないことから監査対象事項としなかった。

 

(4)要望・意見

本件請求は棄却するが、以下のとおり要望・意見を述べる。

本件事案につき関係職員に対して実施した事情聴取では、いずれの事案も関係職員間におけるそれぞれの職位に基づいた指示、命令、報告、相談といった、組織運営上あって然るべきコミュニケーションの欠如に端を発して、正規の手続きを履践することを回避し、課題の解決にあたり簡便ながら不適切な事務処理に基づいて業務を実施してしまった結果であると思料する。

当事者となった職員及び新たに着任する職員が同様の手法によって類似事案を発生させることのないよう、業務の負担やその進捗に対して苦慮している状況を早期に組織として覚知・共有し、対応する体制づくりに努めるとともに、本件を契機として企業局において執られた是正措置については、実効性あるものとして運用されているか、継続的に検証されるよう要望するものである。

 

※業者や職員個人の特定に結び付く情報は非公開とした。

以上

 

 

 

 

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