※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Sweet-chestnut/Spanish-chestnut
[和名]ヨーロッパグリ
[学名]Castanea-sativa
ブナ科/落葉高木
高く茂った樹幹は30mにもなる
周囲は12m以上にもなる
[花期]:6月頃開花
[花]:サンザシ・ナナカマドに似てトリメチルアミンの不快な匂いを放つ
[実]:9~10月に成熟/野生のものは小さく痩せている

【分布・育て方】
◆主として地中海沿岸諸国で栽培される/上質の実はこの地域に限る/大木もこの地域が多い
◆栽培の始まりは古代ギリシア以前/ヨーロッパには小アジアのサルディスから伝わる/Castanea(属名)はマグネシア地方(テッサリア地方のエーゲ海沿岸地域)の古都Castagnaに由来する
◆暖かい(特に冬)/日向/水はけの良い土地/乾いた砂地を好む

【伝承・歴史など】
◆[イギリス]:古代ローマ人によって伝えられた/特に南東部に多い/グロスターシャーの“トートワースのクリ”は境界木として標とされていた(12世紀)古木がある
◆[シチリア島]:エトナ山の東斜面に世界最大の栗の木があった(~19世紀)/樹齢は3000年以上/周囲は68mで100人の騎士が樹冠の下で嵐を避けた(16世紀)

【花言葉】
 『独立と不正』『私を見損なうな』

【民俗学的なこと】
◆[死者の祭祀食]:万聖節(11月1日)の前夜には食卓に何粒かを残しておく(ピエモンテ地方,タスカニア地方〔イタリア中部〕)
◆[食料として]:カール大帝によって栽培を奨励された(クワ・アーモンド・イチジクと共に)/暖かい地方の貧しい人々にとって貴重な栄養源だった/おかげで凶作時にも生き延びられた
◇栗が農村経済を支えていた場所では、収穫期には共同体生活は賑わった
◇賑わいの後に村の貧しい人々が落ちた栗を拾い、最後の残りは豚の飼料となった
◇干され・砕かれ・その粉は家の中の箱に貯蔵された
◆[断食の表現]:“水とクリでしのぐ”(フランス語圏)/“水とパンでしのぐ”(英語圏)
◆[まじない]:背痛除けにポケットに入れて持ち歩く(ドイツ)/ただし人から貰う(or)借りた実でないと意味がない(イギリス)
◆[民間医療]:血によいと昔は言われた/食べ過ぎは頭痛のもと

【特徴と利用法】
◇葉:夏に摘み取る/乾燥させて成分浸出液・成分抽出液にする
◇実(種子):秋に集めて料理にする/(皮を剥いて)そのまま・茹でる・炒める・オーブンで焼く料理向けに粉にする/ジャガイモの2倍のデンプン+少量の脂質を含む
◇樹皮:産業向けに使う
◇木の材質は固いので利用価値がある/ただし木目の美しさ・耐久性はオークよりも劣る
◆[建材]:オークと併用する
◆[ホップ栽培に用いる]:ホップの蔓に細い支柱として(ケント地方など)
◆[垣][門][柱][水車][死棺][はしご][床板][家具][器具][ろくろ細工][彫刻]:耐久力がある・水にも強いという利点を生かす
◆[粗朶/そだ]:クリの木の枝を集めて束にした(暖房用にも使える)
◆[皮なめし剤]:樹皮からタンニンを抽出した(これを皮革産業向けの皮なめしに用いる)/オークの7倍も得られた
◆[染料]:樹皮・幹材・果殻を使う(色彩は不明)/木の灰は安い媒染剤として使われた

【料理】
◆[スナック][野菜]:焼く(or)茹でるかして食べる
◆[乾燥果実]:保存用に
◆[パン]:必要に応じて挽き臼にかけてライ麦と一緒に焼く/都市では中世盛期の間に登場しなくなった
◆[詰め物][プディング]
◆[デザート][ピューレ][砂糖漬け]
◆[ソース]
◆[スープ]:しっかり味付けしたクリのソースと茹でたレンズ豆を和える料理(古代ローマの料理書『アピキウス』にある)

【症状と薬効】
◇収斂性のハーブ
◇咳の予防/抗リウマチ作用がある
◇古くから[熱病][おこり][百日咳]などの薬とされた
“非常に情欲をかきたてる/そして咳・喀血のじつに見事な治療薬である”(byカルペパー:1653年『英国の医師・増補版』)
[発作的な咳][百日咳][痰の詰まり][下痢][リウマチ]:葉を内服する
[咽頭炎]:葉をうがい薬にする
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Commom Ash
[学名]Fraxinus excelsior
モクセイ科,落葉高木
30m以上(ヨーロッパ最大級),幹は1本
[樹皮]:灰緑色/平滑/後には黒褐色となりひび割れる
[葉]:十字対生/葉柄は長い/4~5月に葉が出るが花期の後である/霜に弱いので確実に降りない時期にようやく葉が出る
[花期]:4月
[花]:紫色/総状花序
[果実]:平たい楕円形/翼の中にある

【分布・育て方】
◆イギリスからカフカス地方まで分布/ウォーリックシャーの森にはこんもりと茂っている/バルト海以北の寒冷地では主要な森林樹となっている
◆小川の岸/水辺の森/標高1000mまでの所に生育する
◆(根が傷付ける可能性があるので)建物の近くには植えられない/良質の土壌で堂々とした大樹に育つ
◆オークほど長寿ではなく標準的寿命は200年/コピスにすると500~1000年となる/キツツキがつつくようになると伐らなければならない

【伝承など】
◆[北欧神話]:
◇全世界の上に枝を広げる宇宙樹イグドラシルはトネリコ(ただしそれは正しくないという説もある)/イグドラジルから滴り落ちる露が蜂蜜とされた(蜂はこれを食べて生きていた)
◇オーディンが自己を犠牲にしてぶら下がった木
◇新鮮な葉をかじるのは2頭の雄鹿・山羊のハイドルン/樹冠のてっぺんに君臨するのは大ワシ/竜のニドヘルクが根を噛んでいる
◇ヴォーダンがトネリコから最初の人間Askrを作った
◆[古代地中海世界]:ゼウスも最初の人間をトネリコから作ったとされる/トネリコを氏祖と仰ぐ部族もあった(ギリシア)
◆[北ヨーロッパ]:「ナラ(オーク)に次ぐ有益な木」とされて“Husbandman's tree”と呼ばれた(イギリス)/寒冷地の日常生活には欠かせない
◆[太陽の象徴として]:樹冠は光を通して太陽を湿った大地まで届ける/白い材は高温で燃えて綺麗な白い灰を残す
◇トネリコの槍は「大地の水を豊穣にする太陽光」であり「聖杯とセット,槍の刃先が聖杯の中に浸ると国・民は祝福されて豊穣・治癒を与えられる」という
◇これはロンギヌスの槍と同じとされる/ゲイボルグの槍・大天使ミカエルの光の槍も太陽の槍とされる
◆[魔女の箒の柄がトネリコ製]:かつてのインド・ゲルマン語族が馬を太陽神(=戦車で天を横断する馬の御者)に捧げた時、トネリコは「植物の姿をした馬」とされた。さらにオーディンがトネリコの木に9日間ぶら下がって(呪術のための)ルーン文字を得た。これらを背景にして魔女(ヨーロッパの最後のシャーマン)の乗り物=馬はトネリコ製となった

【花言葉】
 『思慮分別』

【民俗学的なこと】
◆[豊凶を占う]:トネリコがオークより早く咲くと凶作/遅く咲くと豊作(レーン地方:ドイツ)
◆[占い棒]:鉱脈を探る・水源を知るのに用いる/トネリコの若枝をよく使う(特に銅を見つけるのによいとされる)/これにはひねって育った若枝を使う(幹を切るとそこから生える若枝がそのようになる)
◆[杖からトネリコ]:(聖者伝説で)土に突き刺した杖が根付いてトネリコになるという話しは多い/「教会に必ず植える」はこれと関連する
◆[易者のしゃく杖]:先の曲がったトネリコの枝から作ったものをを持っていた
◆[カトリック教会の司教杖]:元は羊飼いの杖を真似たもの/トネリコの切り枝が多い
◆[思慮深さのシンボル]:byビンゲンのヒルデガルド(12世紀)
◆[水に強い][雨乞いの術]:湿った立地を好む/「水の破壊的な力から人間を守る」とされた/ドルイドが雨乞いに用いた
◆[家と樹]:トネリコは家に陰を与えて保護する/子供たちが独立する時に結婚費用に充てられた
◆[クリスマスに燃やす薪]:一般家庭・田舎の旅籠・居酒屋でもトネリコの薪を燃やすのが慣例(サマセットシャー,デヴォンシャー:アルフレッド大王の時代より)
◆[クリスマスの朝]:
1.小枝を9本のたが(これもトネリコ)で束ねたものを用意する
2.麦・りんご酒を振りかけたり束に娘を乗せたりする
3.賑やかに屋内へ運び込む
4.(切れ目ない時の流れの象徴として)1年間保存しておいた前年最後の薪で新しい火を起こす
5.いろりの火が勢いよい燃え上がる
◆[旅籠・居酒屋にて](クリスマス):最初のたがが弾けるのを乾杯の合図にする/残りの8本が次々と燃えて弾ける度に(一座は)歓声を上げてりんご酒・卵の混合酒をあおる
◆[蛇除け]:蛇・マムシは決して近寄らない/トネリコの枝の一撃で即死する
◆[魔除け]:教会に必ず植える/小枝を屋内に吊す/枝から作った十字架を身につける(以上ウェールズ)/悪夢に悩む不眠症患者は小枝を枕元に置いた
◆[バター攪拌棒]:トネリコで作ると魔除けになる

【特徴と利用法】
◇葉(5~6月に収穫)/樹皮(春・秋)/種子(10月)を利用する
◇種子は採集したものを細かく刻んでよく乾燥させる
◇材:淡黄褐色/やや重い/硬く曲げやすい/磨くと光沢が出る/生育が早い
◆[武器]:古代からあらゆる武器の製造に用いられた(例:弩,投げ槍,槍,弓,矢,楯)
◆[船]:トネリコで細部を仕上げた/水を強いというシンボル性から
◆[垣根の支柱][杭]:若木を伐ると良い防御柵となるので/村・耕地の名前にトネリコの名か入り込んでいる(例:エシェン,エッシェンバッハ,エシェンベルク)
◆[机][作業台][食器・台所用具][梯子][荷車][車輪][農具][杖][耐久性の必要な道具][取っ手][雪靴]:トネリコの材から作られた
◆[飼料]:冬に葉を牛に与える(ただしバターの味が悪くなるという)/聖ヨハネの日・聖霊降臨祭には家畜(主に山羊)に葉を餌として与えた/山羊は実際には年中ずっと葉を食べていた(だから昔から農場の近くに植えられていた)
◆[染色]:葉を使って緑色を作る
◆[燃料]:生木でもいったん燃え出すと火力が強い/生木でもすぐに点火する/煙を出さない/薪としてはイギリス随一とも
◆[皮なめし]:タンニンを含む樹皮で

【症状と薬効】
◇トネリコエキス:トネリコの種子(翼付き)・ネズの実・セイヨウヤマハッカの葉・マジョラム・セイヨウハッカの葉・ヨモギギクの葉・70%アルコール,からなる
◇作り方:1.材料全てを同量ずつ混ぜる/2.広口瓶に入れる/3.アルコールを注ぐ(瓶の半分くらい薬草が入っているのが良い)/4.これを3週間暖かい日の当たる場所に置く(時々振る)/5.漉して暗色瓶に移す
[リウマチ][痛風][ぎっくり腰][筋肉痛]:種子のエキスを塗布する
[傷]:救急手当に/皮を剥いで内側を傷に当ててその上から包帯をする/1日2・3回取り替える
[蛇の咬傷]:樹皮・葉・根を煎じた汁を外用薬として用いてきた
[リウマチ][痛風]:利尿作用がある/便秘にも効くという(byヒポクラテス)
◇リウマチ用のハーブティー:トネリコの葉・ヤナギの葉・イラクサの葉・セイヨウメギ(Commom Barberry/Berberis vulgaris)の葉を同量混ぜる。小さじ2杯に1カップの熱湯を注ぐ
[膀胱結石][腎臓結石][肝臓病][脾臓病]:種子の利尿/浄血作用を用いる
[解熱剤]:若枝の樹皮を冬に剥ぐ/それを乾燥させて煎じ汁を作る

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◎マンナノキ/Manna Ash

F.ornus
落葉樹
15mほど

【分布・育て方】
◆南ヨーロッパから小アジアに分布
◆開けた/水はけのよい/中性~アルカリ性の土地を好む

【伝承など】
◆マンナの採取のためにシチリア島では栽培されたこともある(15世紀~)
◆聖書の時代から“マンナ”は「様々な植物の甘い浸出物」に使われてきた。それがこの木に限定されたのは後になってから(1927年)

【特徴と利用法】
◇樹液を利用/甘い/ここから(食用になる)マンナが採取される/樹齢8年以上・幹の直径7.5cm以上のものから樹液を採る
◇暖かい・乾燥した季節に、幹の表裏に斜めの切り口を連続してつけ、シミによってできた樹液の乾いた表面を掻き取る

【料理】
◆[甘味料]:砂糖を加えられない薬剤に

【症状と薬効】
◇緩下剤作用のあるハーブ,炎症を起こした組織の慰撫作用がある
◇樹液に触れると皮膚(or)全身にアレルギーを起こすこともある
[緩下剤]:水に溶かして小児/妊娠中の女性用にする,他の下剤に加える[
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Commom-Olive
[学名]Olea europaea
モクセイ科/常緑高木
5~6m(15mになるものも)
小さな木でも枝分かれする
[幹]:直径1mにもなる/ややグレーがかっている/根元が多肉質なので強風で折れやすい
[葉]:表面は光沢がある緑色/裏面は細毛が密生して白色
[花期]:春
[花]:小さい花を房状につける/受粉後すぐに散る/それから果実をつける
[果実]:赤紫色を経て紫黒色に熟する/樹齢8年頃から長年にわたり実をつける/10~15年で初めて大収穫が可能となる/数百年も実をつけるという

【分布・育て方】
◆日照豊か/温暖地/土壌には石灰分・通気性があること/防風対策が必要
◆(一方で)表層土壌の発達の悪い/岩剥き出し/保水力の低い/乾燥した荒れ地でも生育可能
◆寒さに弱い/比較的温暖な場所ではかなりの乾燥地でも育つ(逆に湿潤を嫌う)
◆ヨーロッパ南部に分布/エルサレムには幹径7.5m・推定樹齢1000年を超える大樹がある/北イタリアではオリーブは育たない
◇北イタリアの料理は乳製品ベース/南イタリアの料理はオリーブとそのオイルを使った軽い料理が目立つ

【伝承・民俗学的なこと】
◆[枝葉がシンボルとされた]:果実があまり目立たない形だからシンボルにはしにくかったので、枝葉は勝利・平和の意味を与えられた
◇アテナ(ギリシア)・ミネルヴァ・ユピテル(ローマ)の木とされた
◇ノアの洪水後にハトがオリーブの枝をくわえてきた(旧約聖書:平和の象徴)
◆[国王の塗油]:戴冠式に用いられる/古代イスラエル起源で初期キリスト教を経由して導入されたらしい
◆[死者の顔に塗る]:古代ギリシアで行われていた/これも初期キリスト教に引き継がれた
◆[教会での洗礼]:司祭が赤ん坊の額に聖油(純粋のオリーブ油)で十字架の形をなぞる
◆[光の象徴]:オリーブ油を灯火に用いるから

【花言葉】
 『平和』『貞節と多産』

【歴史】
◆[経済的に重要な作物]:オリーブ油の輸送・販売は古代地中海世界交易の中核だった/“液体の黄金”と呼ばれた/この地域の食物の基本的な材料の1つだった/古代ローマ人はオリーブ油以外の植物油を使おうとはしなかった
◇クレタ島・フェニキアは大生産地だった
◇スキタイ人(南ロシアのステップに住む)は黒海に点在するギリシアの植民市にまで買い付けにやって来た(B.C.6世紀)
◇ギリシア・フェニキアの植民市周辺には、オリーブ畑(&)その地に根付いた文明が広まっていた
◇シチリア島・イタリア・北アフリカ・カタルーニャで搾油が行われた
◇ヌミディア(マグレブ地方)の部族にはそれぞれ年間3,000KLのオリーブ油を納めるよう求められた(カエサルの時代)
◇チュニジアには(反抗的な遊牧民を定住させるために)広大な農園を作った。そこのオリーブ油の生産量は(一時期)ローマ帝国内で消費される量の大半を占めていた
◇プロヴァンスでも古代から栽培が始まっていた(ただし沿岸地帯のみ)
◇エジプト(地質的にオリーブ栽培に向かないのでゴマ油・ヒマ油などを用いていた)でもギリシア人によってオリーブ栽培が始まる(プトレマイオス朝期)
◇シリアでの栽培は帝政ローマ期に始まる
◆[特殊な土地賃借契約]:資本投下からしばらくは利益を生まない(10~15年)ので、土地を賃借してオリーブ栽培を行うための仕組みが発達した
①収穫開始までは地代をきわめて低額にする(場合によっては免除)
②いったん資本回収期に入れば、所有権に近い権利を借地人に保証する(地主から安易に返還を求められないようにするため)
③その代わりに賃借人は栽培を途中で放棄しない義務を課された
◇プトレマイオス朝エジプト(国土は王有だった)に私有地が発生した
◇ローマ帝政期シリア北部でローマ人の大土地所有が解体し、オリーブ生産者村落に取って代わられた
◆[集約的な労働]:いったん毎年実をつけるようになると「冬季に枝を刈り込む/春に土をかえす」だけで足りる(施肥・灌漑は不要)。しかし収穫期(10月~)には「短期間でオリーブの実を採取・搾油するので労働力を集約的につぎ込む」必要がある
◇古代シリアの栽培地帯には、収穫期に多数の季節労働者がいちどに流入した
◇彼らはそれ以外の時期には石工となった/槌・鑿で岩場を切り開いてオリーブ園のテラス・搾油用水の溜め池を作った/その他の建築工事にも携わった
◇古代末期シリアにはこうした建設活動によって、家屋・集会所・キリスト教の教会などが建設された
◆[中世初期]:シリア北部の栽培農家は(ペルシア人とイスラム勢力の進出によって)地中海への販路が閉ざされ、栽培村落は急速に廃村化した
◇ガリアではこれによってオリーブ油が手に入れられくなり、教会は(オリーブ油に代えて)蝋燭を灯明に用いることを余儀なくされた
◆[中世後期プロヴァンス地方]:たくさん栽培されていたのは海岸地帯だけ/生産量の大部分はフランス国内の取引(&)外国貿易に回された/庶民の食事の基本は[エンドウ+ソラマメ+キャベツ+豚の脂身からなる]ポタージュだった(他のヨーロッパ諸地域と同じ)
◇修道院での栽培には小麦・葡萄というライバルがあった(どちらも短期間で利益が上がる,それほどの努力・設備が不要)
◇羊と山羊の増加(中世後期)によって、オリーブの幹・低い枝が食べられてしまい大きな被害が出た/羊飼いたちはオリーブのことを気にかけなかった
◇生産量の増加は近世のこと(16世紀~)
◆[中世後期イタリア]:大都市の富裕層は自分の農地でオリーブを栽培させた/ただし(初めのうちは)葡萄7株対オリーブ1株でしかない(ブランドイメージを落とさないよう気遣っていた)/それでも丹誠込めて育てた木々が成長すると2作物の収益性は均衡していった
◇オリーブ畑は徐々に増えていく
◇品質も向上していった
◇これの手本となったのはトスカーナ地方(14世紀):トスカーナ人といえば銀行家だが彼らは長期の投資に熱心だった

【特徴と利用法】
◇収穫は手作業による(今でも):棒で叩いて実を落として集める/傷がつかないように手で摘み取る/加工は収穫して3日以内に行わねばならない
◇実・オイル・葉を利用する
◇種子からもオリーブ核油が採れる
◆[祭祀に]:古代地中海世界の宗教からキリスト教に至るまで
◆[灯火用に]:古代クレタ文明には無数のオリーブ油のランプがあった
◆[皮膚・毛髪の乾燥・フケ症の外用薬]:オイルを用いる
◆[化粧品][香水]:古代ギリシアで既に香水が使われていた
◆[石鹸]:(高品質・高価格な)オリーブ油を使って作ったスペイン製の固形石鹸/もちろん中世の庶民はもっと低品質なもの(苛政ソーダと動物性油脂を煮詰めて作る自家製の柔らかいもの)を使った
◆[健康の秘訣]:“内には蜂蜜、外にはオリーブ油”(byデモクリトス:B.C.460頃~370頃)
◆[薪材として]:パン焼き窯の燃料にはオークとオリーブの木が良い(中世南フランス)
◆[搾油原料用]:濃紫黒色に完熟した頃に収穫する/オイルに漬けて保存する/搾油にも水車を用いるようになる(中世後期)
◇オリーブ油には精製されずに販売されるという特徴がある
◇果肉に含まれる15~30%の油分が高級なオリーブ油となる
◇エクストラ・ヴァージンオイルは最上質のもの/(しばしば)味の悪い種類から採れる/酸度が最も低く(約1%)そのために最も風味がよい
◆[グリーンオリーブ](緑果塩蔵):果実の緑色があせて淡黄緑色になった頃に収穫する/塩味・渋味がやや強い
◆[ライプオリーブ](熟果塩蔵):果実がわずかに紅紫色を帯びた頃に収穫する/穏やかな風味を持つ
◇塩蔵法:オリーブ果実の苦味成分をとるために/①約2%の苛性ソーダ溶液に漬けて渋抜きをする/②水洗いして塩水に漬ける/③本漬をして発酵させる/食べられるまで少なくとも十数日を要する

【料理:中世後期】
◇揚げ物は当時の重要な調理法の1つ
◇しかし中世の料理は(香辛料をふんだんに使ってはいたが)油はごく僅かしか使っていなかった/(西ヨーロッパでは)四旬節など肉断ちの日には動物原料の油が追放されて植物性油脂が求められる
◇中世では北ヨーロッパ・南ヨーロッパ(ロワール川とアルプスで分けられる)どちらでもバター・油の生産量はそれほど伸びなかった
◆[オリーブ対バター]:オリーブが生えている所ではオリーブ油で調理した/生えていない場所ではバターを用いた/(後者では)四旬節にバターが使えなくなるのが何よりも辛かった
◆[揚げ物]:卵・魚・ソラマメを揚げるのに使われた
◆[茹で肉のサラダ][生野菜・レタスのサラダ]:ヴァージンオイルがたっぷり使われていた/もちろん贅沢品(フランス南部:ロワール川以南)
◆[クリスマスのお菓子]:オリーブ油で生地をこねて作る(プロヴァンスの伝統的菓子)
◆[魚肉のソース]:古代ギリシア人が食べていた
◆[長距離航海に積載]:ヴァスコ・ダ・ガマは3年分の食料を持参したが、乗組員1人に1日当たりオリーブ油1/10Lを支給する予定で積み込んだ

【オリーブの生産:中世盛期~後期】
◆[イタリア南部]:以前よりも広範囲に普及するようになった(12・13世紀)/カンパーニア地方・カラブリア地方で盛んに生産された/プーリアでは耕作に占めるウェートが極めて大きくなり風景を圧倒する要素の1つになる(13世紀)
◇プーリア産オリーブは商品化され、イタリア市場の外でも知られ、賞味されていた
◇南部も北部も、農民階級・最貧層の食生活では動物脂が広く使用された。このためオリーブ油には「贅沢品」という明白な意味合いが与えられた
◆[イタリア北部]:こちらは南部とは違って折半小作制地域/オリーブの木は(少なくともトスカーナでは)ささやかにしか普及していなかった(15世紀初頭)/前アルプスのイタリア湖沼地帯・リグリア地方など
◆[キリスト教地中海地域では]:各地域経済へのオリーブの貢献は地域ごとに全く違った/エクス=アン=プロヴァンスやリュベロンの農村では地元の消費分すら生産していなかった/他の地域ではオリーブの木が見渡す限りの土地を覆っていた(例:13世紀半ばにオリーブ栽培地の中で最高とされたセヴィーリャ)
◆[それ以外の地域]:フランスで生産が重要だったのはヴィヴァレとドーフィネだけ/オリーブの繁殖可能な気候地帯の外では(いくつかの地域で)クルミ油が無視できない役割を果たしていた/やはり動物脂が支配的だった

【オリーブの流通:中世後期】
◆[オリーブを使わない人々]:(オリーブ油のくせのある味・価格のせいで)アンジュー公ルネ善良王(1409‐80)は揚げ物にオリーブ油を使わなかった/イギリスの料理書(中世末~ルネサンス期)には「料理にオリーブ油を使わなければならない」とはめったに明記されていない
◆[混ぜ物オリーブ油]:ヴァージンとな名ばかりの混合油がよく出回っていた(ロンドン・ブルッヘ・パリ)/そうした油は“揚げ油”だと明記するように規制が掛けられた
◆[ひどいオリーブ油]:“グリニョン油”(オリーブの搾り粕油:茶色い)はこの規制によって命名された/3回目に搾った輸出用の油/ラングドックから山羊の革袋に入れてテムズ川沿岸にまで運ばれたこの油はいっそう酷い悪臭がした
◇1級品はフランス人が使ったという
◇悪質なオリーブ油の流通が「イギリスの料理は不味い」という評判の形成に寄与したらしい
◆[いんちきオリーブ油]:フランドル・アルザス・ロレーヌ・ブルゴーニュの大商人が扱った/ケシ油・亜麻仁油(亜麻から採れる油)にテレビン油(マツ科から採れる)を混ぜて「オリーブ油」のラベルを貼って売っていた

【症状と薬効】
◇殺菌・収斂性のハーブ
◇解熱・血圧降下・鎮静作用がある
◇緩下剤・軟化効果もある
◆(古代より)ヴァージン・オリーブ油には風邪・寄生虫・毒などに効くといったあらゆる種類の効能が認められていた
◇常食にすると循環器系の疾患にかかる危険が下がると考えられている
[軽い発熱性疾患][緊張][高血圧]:葉を内服する
[便秘][消化性潰瘍]:オイルを内服する
[胃酸過多]:胃液分泌を抑える作用があるので
[擦り傷]:葉を外用薬として
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Hauthorn
[学名]Crataegus laevigata(oxyacantha)
バラ科/双子葉植物
灌木(まれに木となる),耐寒性
高さ4mまで
[成長]:若木のうちは生長は早いが一定の高さになるとなかなか伸びない/しかしイギリスにはかなり高い古木は珍しくない
[花期]:5~6月
[花]:白かピンク色/花柱は2・3本/直立の多散花序
[果実]:深紅/2~3個の核あり/果実は堅いので“小さな小麦粉の樽”とも

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◎ヒトシベサンザシ

[学名]Crataegus monogyna
灌木(or)10mまでの高木
高さ3~5m
[幹]:刺が多くついている/樹皮は赤褐色
[葉]:深く切れる/長楕円形/鈍頭/葉面は暗緑色・無毛
[花期]:セイヨウサンザシより14日遅い
[花]:白色/花柱は(通常)1本/6~12個くらいが散房状に集まる
[果実]:深紅/核1個(まれに2個)/球状卵形

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【分布・育て方】
◆全ヨーロッパ/アフリカ北部/西アジアに広く分布
◆標高900mまでの叢林/森の縁
◆セイヨウサンザシは中部ヨーロッパの北>南,ヒトシベサンザシは中部ヨーロッパの北<南
◆日向・日陰・アルカリ性の土壌も含めてほとんどどのような土地でも育つ(ただし日当たりのよい・開けた場所の方が花・実ともによくつく)
◆繁殖は種子/乾燥しすぎたら発芽力を無くす/(そこで)秋に成熟した果実を砂に埋めて春に播種する

【伝承など】
◆サンザシは女神ダナ(太陽神ベレノスの花嫁)に捧げられ、彼女が復活する(=サンザシが白い花盛りに光り輝く)時に5月祭が開催される。“5月の女王”として復活し、最も力強い青年(太陽の勇士の化身)に配偶者として与えられる。この女神は茨の冠を被せられた(■これがキリストの受難ドラマに取り入れられた)
◆キリストの荊冠がサンザシで作られたという。冠を被せられた時に飛び散ったキリストの血がサンザシを清めた
◆アリマタヤのヨセフ(キリストの手足から釘を抜いて葬ったとされる)が聖杯をグラストンベリーに運び込んだ際、疲労のあまりサンザシの杖を地面に突き刺して休むと、杖はたちまち根付いて花開いた(この伝説は数多く存在する)。これらは“聖なるサンザシ”と呼ばれて「聖金曜日に花が開く」と言い伝えられる
◆グラストンベリーには1本の非常に古いサンザシの木が泉に生えている。そこは赤い鉄分を含んだ水(=女神の月経血)が湧き出している。このサンザシは毎年クリスマスに花を咲かせたという(12月・5月の2度咲き)
◆市民の健康を守る女神カルナの聖木/この女神は新生児の血を吸う魔鳥を追い払う力を持っていた(6月1日)/赤ん坊の揺りかごに小枝を載せる習慣ができた(古代ローマ)

【花言葉】
 『希望』

【民俗学的なこと】
◆[5月祭]:他の野花とともに小枝を折って家に持って帰って戸口・教会の内外を飾る/5月の女神をサンザシの枝で飾る/メイポールの周りを踊る時にサンザシの緑の飾りを手に持つ/メイポールそのものがサンザシからなる(これはアイルランド)
◆[美顔の朝露]:メイデイの夜明けにサンザシから取った朝露に効果があるといわれた
◆[魔除け・厄除け]:キリストの伝説から/亡霊の(or)亡霊になると危惧される死体にサンザシの杭で穴を開ける/ヴァルプルギスの夜に枝をドアに挿した/呪われた牛乳をサンザシの槌で叩く/家畜小屋の扉に牛の数だけサンザシの枝を挿す
◆[深い安らかな眠り]:安らぎをもたらすサンザシへの信仰から=“眠りイバラ”/眠りの魔法にかかると“サンザシで刺される”という(北ゲルマン)/いばら姫の糸車の紬もサンザシ製
◆[病気から解放される]:サンザシの垣を這いくぐるとよい(全ヨーロッパの風習:~18世紀)/リンボク(Blackthorn)とブラックベリー(Blackberry)にも同じまじないがある(どちらもトゲがある)
◆[貞操と処女性のシンボル]:何も侵入させない生垣から(中世キリスト教)
◆[お産を軽くする]:妊婦が棘を3本折り取って袋に入れて左側に持ち歩く/産婆が棘を持ち歩いて妊婦にそれでやさしく触る(アルゴイ地方)
◆[死のイメージ][墓に植える]:花の香りが死の甘い香りを連想させた/北ゲルマン族は死者を火葬する際にサンザシを好んで用いた(よく燃えるから)
◆[魔女の木]:5月祭の女王が魔女へと逆転されたことから/空飛ぶ魔女はサンザシの木で休む/サンザシの先端を折って新鮮な葉を食べた/魔女はサンザシの木陰にうずくまって秘法を操ったという
◆[妖精の木]:木を切れば祟りがある(牛・子供が死ぬ,記憶を失う)/5月1日・夏至・11月1日に木の下に座っていれば妖精の国へさらわれる/サンザシの花は妖精が好む
◆[生垣の木]:バラ科として当然/魔女の語源は「藪に隠れる者」
◆[天気占い]:初夏に花が異常に多い/多雨の夏の後に実が異常にたくさんつくのは厳しい冬の印
◆[エンドウの収穫を占う]:聖母マリアのお潔めの日(2月2日)にサンザシが耳飾りをつける年は/エンドウの豊作

【特徴と利用法】
◇実は甘酸っぱい/春咲きの花木/熟したら集める(9~10月)
◇生(or)調理して使用する/丸ごと乾燥させたものを煎じ薬・成分抽出液・チンキにする
◇花は5~6月/葉は5~9月
◆[斧の柄][打穀用のから竿][工具の柄][熊手の歯][糸巻き棒]:サンザシの固い材はこれらを作るのに適している
◆[箱][串][散歩用の杖]:材が固い/木目が美しい/磨きが効くことから
◆[薪]:熱度は薪のうちでは最も高い/この木を焼いた木炭は「ふいごを使わずとも銑鉄を溶かす」と俗に言われた
◆[体罰]:棘の多い枝を領主は用いた
◆[獣医学]:家禽の強壮餌に/乾燥したサンザシの実・ナナカマドの実・ニワトコの実から(特に冬の)鶏の良質の添加餌が得られる
◆[豚の肥育]:果実を飼料に混ぜた

【料理】
◆[新石器時代の農夫の食事に]:栄養たっぷりのサクサクした赤い実を秋に収穫した/柔らかい葉も春に食べた
◆[飢饉時に]:果実を生でも乾燥させても食べた/パンの練り粉に挽いた
◆[サラダ]:新鮮な葉は薬味が効いたナッツのような味がする/添え物として用いる/四旬節明けに春野菜として中世の人々は食していたと思われる
◆[スープ]:薬味に葉を使う
◆[料理の色づけに]:料理をいったん作ってから花の色素で色付け(ワインで花を煮出して「色素」を作って羽毛の刷毛で塗る)し、それから本物の小枝・花輪で飾る(中世料理)
◆[果実酒]:発酵させる

【症状と薬効】
◇加温性ハーブ
◇末梢血行促進/心拍/血糖値/冠動脈流量の安定作用がある
[循環器機能不全][あらゆる心臓疾患]:内服する/ヤドリギなどと合わせることが多い/毒性は比較的少ない(心臓に作用する多くの薬用植物と比べて)
[喉][水腫][腎臓病]:煎じ汁を服用する/木を薄く剥いで茶に煎じる(これはサセックス)
[強壮][水腫][結石]:実の粉を酒に入れる
[とげ抜き]:煎じ汁を布/スポンジに浸して患部に当てる
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Rowan
[学名]Sorbus aucuparia
バラ科
15m以上(大きくなると)
[樹皮]:光沢あり/縦の裂/銀黒色
[葉]:互生/葉柄あり/鋸歯のついた9~19枚の羽状複葉
[花期]:5~6月
[花]:両性花/大きな直立した散形花序/白っぽい花/昆虫で受粉
[果実]:8~9月/赤く熟する

【分布・育て方】
◆ヨーロッパの中部~西部に分布/北極圏にまで広がる(アイスランドに唯一の木)
◆林縁・伐採地・標高2400mまでの場所
◆平べったい/遠くまで伸びる根でどんな土壌でも栄養・支えを見つける
◆実の果肉の中にある種は、鳥の腸管を傷つくことなく通過し、糞と一緒に排出されて新たにナナカマドを蒔く

【伝承など】
◆[ドルイドの呪術]:ナナカマドであらゆる種類の魔法をかけた/精霊が答えなければ「ナナカマドの鞭に皮を剥いだばかりの血のしたたる雄牛の皮を張って強要した」という/ナナカマドの鞭で大地の妖精に「どこに隠れた鉱脈があるか」を教えさせた/戦場の背後にてナナカマドで巨大な火を焚いて呪文を唱えた
◆[ケルト文明]:神託の場・民会の場にナナカマドを植えた/島ケルトの暦では1月21日~2月17日がナナカマドに当てられた/冬の病気(リウマチ・痛風・壊血病)を追い払うのに使った/生命の木として“実を食べれば年中飢えない”と言われた(特にスコットランド)
◇スコットランドでは聖なる木とみなされた

【花言葉】
 『思慮分別』『解毒剤と慈悲』

【民俗学的なこと】
◆[聖母マリア清めの祝日]:2月2日/松明にナナカマドを使う/この日に必要な“9種の材“のうち1つ
◆[魔物除け]:納屋・家畜小屋の門・家のドア・煙突に枝を挿す(ヴァルプルギスの夜)/家畜に葉の冠を載せる(5月1日)/枝を角に縛り付ける(同)/夜道にはナナカマドの杖・木から作ったペンダントを御守りに持っていく/赤い実に赤い糸を通すと“魔女も怯えて近づかない”
◆[海の魔女に対して]:船の船首にナナカマドの材を付ける
◆[家畜叩き]:若い家畜の最初の放牧(or)5月1日に/ナナカマドの鞭で叩いて「春の植物の生長力を与える」/その日の朝一番に枝を切り出してから使う
◆[ナナカマドの日](5月3日):この日は聖十字架発見の日/乳牛の尾に十字架を結びつけて乳量の増加を祈る
◆[家畜の安産のまじない]:実を家畜に与えた
◆[魔術に]:死者の魂を死体の中に留める・呪縛するために、ナナカマドの杭を死体に打ち込む
◆[墓地に植える]:イチイとともに死を象徴する木として/(ウェールズでは)イチイの代わりに植えた
◆[雷神の木]:トールが釣りをしていた時に足を滑らせて濁流に呑み込まれそうになった時、ナナカマドの枝を掴んで助かったという伝説から
◆[家畜に]:角の生えた家畜の餌として枝を与える/トールも彼の車を牽く雄山羊にナナカマドを与えていることから
◆[雷除け]:枝・枝製の冠を小屋の梁・煙突に挿した(古代ゲルマン)/後にはナナカマドで作った十字架に置き換えられた
◆[揺りかご]:ナナカマドで作る(古代ゲルマン)
◆[バターの攪拌棒]:ミルクへの呪いを退ける(ケルト・ゲルマン全域)
◆[魔法の腕輪]:腕・脚が魔法で縛られて動けなくなった時に、ナナカマドの枝で作った輪をはめる
◆[特別な犁]:ビルヴィス(畑の中を歩く穀物畑の妖精:元々は神だったのがキリスト教下で悪魔化されたらしい)の害を防ぐために、聖金曜日の日の出前に切り取ったナナカマドで作った犁で畑を起こすとよい(他には畑の4隅に十字架を埋めるのも良い)
◇ビルヴィスは「足首に結んだ鎌で穀物を刈り取って荒らす悪魔(or)魔女,痩せて背が高い,顔は醜い,聖ヨハネの日(6月24日)・ヴァルプルギスの夜(5月1日のイブ)・聖霊降臨祭の日(復活祭から50日目)の日の出前に出現する」とされる
◆[占い棒]:ハシバミの枝だけでなくナナカマドの枝でも作れた
◆[中世に遺った魔術]:他の木(特に広場のボダイジュ)の叉に「余所者」として生えたナナカマドを、
①7年(or)9年後の特別な祝日(中世では被昇天の祝日:8月15日)に厳かに伐る
②ルーン文字(or)他の魔法の印を刻む
③血(or)黄土で赤くする
④この枝に触れると魔法を解く・健康をもたらす・子供に祝福を与えられる

【特徴と利用法】
◇木は質が固い/火にくべても燃えにくい
◆[支柱][各種農具][たが][水車の滑車][煙突の横梁][家具]:硬く厚い木材を利用する
◆[鳥の餌]:人間は実を囮にして捕まえた(ラテン語名も“鳥の囮として最適”という意味からきている)/たいていはクロウタドリとツグミ/トリモチとして
◆[獣医学]:病気の山羊に良い薬となる(トールの伝承との関連)
◆[染料]:樹皮/木綿を茶色・赤に染色
◆[皮なめし][皮を黒く染める]:樹皮を用いる

【料理】
◆[ジャム][ゼリー][ピューレ]:実を煮ると毒性が破壊されて(リンゴ酸・ビタミンなど)他の作用物質の働きが顕著に
◆[砂糖漬け]:古くは作られた
◆[マルチパン]:すり潰した葉で微かな香りを付ける
◆[果実酒]:近世地中海地域で農民が(依然として)飲んでいた
◆[薬草ビール]:ナナカマドの葉/ガーベルブレッター(?)/オークの樹皮をともに発酵させた「健康ビール」

【症状と薬効】
◆生の実を大量に食べれば下痢・嘔吐を引き起こす/実際にはひどく苦いのでほんの少量でも吐き出してしまう
[壊血病]:実はレモンより多くのビタミンCがある/1晩だけ酢水に漬けてふやかすと多少は口当たりが良くなる
[膀胱・腎臓の刺激][血の浄化][老廃物を取り除く]:1.小さじ1杯の実に1カップの冷水を注ぐ/2.短時間沸騰させて漉す/3.甘くはしない
[よい便通]:毎日ほんの少し実を噛む
[下痢止め]:ジャム・ゼリーの作用
[下痢][胃の変調][うがい薬]:葉のお茶を服用/乾燥した葉から作る煎じ汁で
[咳][気管支炎][肺炎]:花が効く
[子供向け咳止め]:モウズイカの花2/フキタンポポの花2/ナナカマドの花1/ニワトコの花1の混合物。(これを)1.大さじ1杯をカップ1杯の牛乳で短時間煮る/2.浸出して漉す/3.蜂蜜で甘くする