※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]English-ivy
[学名]Hedera-helix
ウゴキ科
常緑木本植物/双子葉植物
高さ30mにも伸びる
[茎]:木質となって時には直径30cmになる
[葉]:沢のある濃緑色/長さ10cm/3~5裂し全縁/花柄の葉だけ裂刻せずに卵形
[花期]:9~10月/濃い葉で保持帯の樹冠を覆ってしまう/枝が十分に光を受けるようになると花を咲かせる状態となる
[花]:緑がかった黄色/散形花序/花柄・幼条に灰白色の星状毛を有する
[果実]:2~4月に熟す

【分布・育て方】
 ヨーロッパ・北アフリカに幅広く分布

【伝承など】
◆[古代ギリシア]:「踊り狂って死んだニンフのキッソスを、優雅な踊りと突然の死に感動したディオニュソスが変身させたので、嬉しそうに優雅に巻き付く植物となった」という神話から“キッソス”と呼ぶ
◆[古代ローマ]:酒神バッカスは「常に陽気に歌い踊るニンフに取り巻かれ、月桂樹とキヅタの冠を戴く不死の神」とされた
◆[実際には]:キヅタには幻覚的な作用物質はない/「踊り狂った」に結びつけられたキヅタは未知の幻覚剤の隠語である可能性もあるという
◆[ケルトにて]:常緑の木ゆえに冬の神に捧げられた/ヤドリギ・セイヨウヒイラギ・キヅタで冬の神・冬の女神・両者の結び付きを表現する

【花言葉】
 『愛着と永遠の友情』『貞節と夫婦愛』

【民俗学的なこと】
◆[酔いを防ぐ]:この呪術力を信じられて、葉の搾り汁を酒に入れて飲む
◆[居酒屋にて]:正面にキヅタの輪を飾る/“Bush”と呼ぶ(古代ローマ期ブリタニアから現代まで)
◆[ワインの杯の材料に]:水で薄められたワインを見破れるとして(古代ローマ)/漏斗で酒を濾すと純粋の酒と割り水とを分離できるとされた
◆[雌牛へのまじない]:乳量が少なくなると首にキヅタの輪を巻く
◆[豚に掛ける]:農夫は飼っている豚の首にキヅタの枝を掛ける
◆[雷除け][魔物除け]:一般の家の壁にキヅタを這わせる
◆[裕福さの象徴]:キヅタが茂る家
◆[破産・災難の前兆]:急に枯れた場合
◆[永遠の友情・愛徴][霊魂の不滅][永遠の生][葬儀の植物として]:常緑であり強靱ゆえにこれらを象徴する/ゆえに古くは葬儀に使われた(ローズマリー・ゲッケイジュなどと共に)
◆[豊穣さ][気まぐれ]:どちらも女性を代表する要素として、これをキヅタが象徴するとされた
◆[恋占い]:
①大晦日の夜に青い葉を器の水に浸す
②十二夜(Twelfth-night)まで放っておく
③それから葉を調べる
④青ければ恋人はその年中無病息災/葉に黒いシミがあれば恋人は病気になる/一面に黒いシミが覆っていれば恋人は年内に死ぬ

【特徴と利用法】
◇古い建物・廃墟には付き物
◇太くなったキヅタはとぐろを巻くウワバミのように蛇行して、墓地では時には石碑さえも割り、崩れかけた石壁でもゆうに支える力がある
◇花は蜂蜜のように甘いが同時に腐敗臭も放つ/蜜蜂だけでなくフンバエも引き寄せる
◇葉は必要に応じて摘む/煎じ薬・成分抽出液・軟膏・湿布薬・チンキにする・酢に漬けてふやかす
◆[毒になる]:人間や多くの動物(馬など)には強い毒/特に若葉と実/ひどいアレルギーを引き起こす
◆[餌になる]:クロウタドリ・ツグミなど。サンザシの実が冬・春に無い間は小鳥にとって貴重な餌になるという
◆[洗濯洗剤]:バルサムのように匂う新鮮な葉の粉末を炭酸ナトリウムと共に煮る
◆[燻蒸剤として]:樹脂を(レバノンにて)

【症状と薬効】
◇抗細菌性のハーブ
◇解熱/鎮痙/血管収縮/下剤作用がある
◇過剰摂取は禁物
◇レバノンでは歯の封印剤・催淫剤として、葉を刻みつけて得られる樹脂を用いた
◇軟膏としての使用はビンゲンのヒルデガルド(12世紀)も指摘している/もちろん毒性も
[痛風][リウマチ][百日咳][気管支炎]:内服する
[堕胎]:中世の民間医は用いた
[皮膚の発疹][腫れ][関節痛][神経痛][歯痛][火傷][イボ][とびひ][疥癬]:外用薬として
[眼病][生傷][火傷][吹き出物]:葉を1日1晩浸した水がよい
[風邪の鼻血止め]:葉の汁
[足のマメ]:酢に浸した葉をマメに縛る(オックスフォードシャー)
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[英名]Black-Alder
[和名]セイヨウヤマハンノキ
[学名]Alnus-glutinosa
カバノキ科
大型の低木~高木/耐寒性
30mまで
[樹皮]:初期は平滑で暗緑色に輝いている/後に赤褐色/裂有り
[葉]:互生/倒卵片/先端に刻み目あり
[花期]:3~4月
[花]:雌雄同株
(雌花)赤い柱頭を持つ尾状花序/(雄花)赤い葯を持つ尾状花序
[果実]:淡褐色の堅果があるきゅう果
[種子]:風で飛ぶだけでなく(浮き輪の役割を果たす空気の詰まった細胞層によって)水を伝って拡散することができる

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◎セイヨウハンノキ(A.incana):

◆中部ヨーロッパ山地にある川辺・水辺の草地に生える
◆荒れ地・山腹の処女地の土地改良に好んで植えられる

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【分布・育て方】
◆全ヨーロッパに分布
◆川辺/池/沼/標高700mまでに生育
◆根はできる限り水に触れていようとする
◆日向(or)半日陰/湿り気がある(or)濡れた/肥沃な土地を好む

【伝承など】
◆[妖精との関連]:不気味な沼地(まだ人間の手が入っていない空間)に生えることから、エルフの王・鬼火・救済されない魂・さ迷い続ける水の精・沼男・コボルトがウヨウヨいるイメージと結びつく。「長く穂のように垂れる緑色の雄花は、緑色の肌をしている妖精を隠すため」とも言われる
◆[血の木]:切り口が血の赤色に変色することから「木を切り倒す時に木が血を流す」という言い伝えがうまれた
◆[生死を掌る女神とその木]:ハンノキ女(アルレ・イルレ・エルゼと呼ばれる魔女)が住んでいて、道に迷った旅人を深みに引き込もうとする。彼女はハンノキにおいて、死の女神(=カラスの女神モリガン)として機能する。一方で木の精・水の精でもあり、人々にとって危険な存在である水とも共生できる
◇ハンノキ(とそこにある沼地)はケルト以前から、死の場所・女神の花婿に選ばれた若い男が生贄にされる所だった
◆[死の女神に仕える](ケルト):ハンノキの精はブラン(神託を語る・死をもたらす戦士・死の同行者)とされた。ブランは(テウタテスのように)西にある“死者たちの島”を支配し、薬缶を持った神・過去を未来に帰らせるとされた。晩に薬缶に投げ込まれた死者は、翌朝には再びあの世の人として生き返る
◇死者たちの島といっても、古代の信仰ではマイナスイメージはない(アーサー王が最後に向かうアヴァロンも西の島だという)
◇西の方角は日が沈む方向はキリスト教以前から冥界があるとされた/キリスト教もこれを継承している(教会設計の基本プランはは東向きの十字架形)
◆[薬缶は女神の持ち物](アトリビュート):あらゆる生物を産み、再び呼び戻す女神(=大地母神)の胎だとされた。(この中で)シャーマン・勇士はドロドロに煮られ細かく切り刻まれ、その後に女神は骨を組み合わせて新たに生き返らせる
◇ハンノキがある湿地・沼は「生命が消滅・再生する女神の薬缶」であった(だから生贄は甦ると信じられた)
◇ゲルマンの刑法にある「沼地に沈めて処刑する」も、多分これと関連している
◇「再生可能な生命」という考え方は童話の中にも残っている

【民俗学的なこと】
◆[切り倒すのを忌む]:元々は女神の木=神聖な木なのだから(アイルランド人)
◇オーク/ハンノキ/リンゴ/シラカバ/ハシバミ/セイヨウヒイラギ/ヤナギは“7種の神聖な木”
◆[消滅・断念・新生]:ハンノキの意味/伝承から生まれた
◆[追放を意味する]:氏族から追放された人間は4本のハンノキの棒で頭を痛めつけられる(フランク族の法)/ハンノキの材を頭上で折る(これも追放の意味)/家族との断絶を意味した
◆[農場を閉める時に][荒廃した農地に]:4本のハンノキの棒を折ってバラバラに投げる
◆[妖精が見える]:ミッドサマー・イブ(6月24日)の深夜に木陰に立っていると、妖精王が廷臣を率いて通るのが見える
◇妖精はかつての土着の神々が矮小化された存在である
◆[地名]:エアランゲン・エーラードルフはハンノキに関係している
◆[リウマチ予防]:湿気に強いことからまじないに使われた/木片をチョッキのポケットに入れる

【特徴と利用法】
◇樹皮・葉をハーブとして利用
◇小枝・(2~3年物の)樹皮は生のまま縦に剥ぐ/採取によるダメージを最小限にするにはコピスを行うとよい/乾燥させたものを煎じ薬・粉末にする
◇葉は夏に摘み取る/生で使用
◇根に小さな菌類が付着しており、その助けで空中の窒素を地中に固定できる(代わりに菌類に対して炭水化物を供給する)。この共生によって水に接していても損なわることがなくなる
◆[休閑地を肥沃にする]:繊細に広がる根に共生する菌類の働き
◆[岸辺を浸蝕から守る]:豊かな根が補強する役割を果たす/土の流出を防ぐ
◆[造船材][湿地の民家の土台][給水管][水飲み場の桶][泉の囲い][橋桁][水門溝][ヴェネツィアの支柱の半分]:材は水中でも腐らない/水分を充分に吸い込んでいっそう堅くなる
◆[耐久性のある台所用品][搾乳桶][木靴][靴の木型]:我が子に新しい靴を作ろうとする父親はまず、よいハンノキ探しから始めた
◆[染料]:様々な部分(特に樹皮)を利用/若芽から赤色“aidine-red”が取れる/銅を触媒にして黒色になる/枝からは茶色/花からは緑色
◆[漁網の耐久性向上]:樹皮の煎じ汁で着色する
◆[黒インク]:実から作る/長持ちする
◆[皮なめし]:樹皮を使う
◆[麦芽製造の燃料]:燃料としては良くないが、炎には煙が少ないので使われた
◆[レンガ作り]:若いハンノキを炉に入れると、煉瓦は磨いた鉄のような銀色になる
◆[蚊退治]:粘着性の若い枝を用いた(~18世紀)/鶏小屋・部屋に置いた

【症状と薬効】
◇収斂・強壮性のハーブ
◇傷んだ組織の治癒促進作用がある
[リウマチ]:樹皮を内服薬に用いる
[喉・口内・歯周の感染症][疥癬]:樹皮/葉の煎じ汁が外用薬として有効
[喉の炎症時のうがい剤]:ハンノキの樹皮1・ワレモコウの根1・タチアオイの根1の混合物で。(用法)1.小さじ山盛り1杯につき1カップの冷水を注ぐ/2.加熱して5分間煮出す/3.漉してからうがいする
[リウマチ][炎症性疾患]:葉から作る湿布薬を用いる
※『(メモ書き)に関する注意』も必ず参照してください。ハーブティーはともかくとして人体に関わる安易な利用には注意してください


[和名]ドイツトウヒ/オウシュウトウヒ
[英名]Commom-Spruce
[学名]Picea-abies
マツ科/常緑高木
30~40m(高いと60mにもなる)
[幹]:円柱形/径2mになる
[樹皮]:赤味を帯びる・平滑/年を経ると灰褐色・鱗状
[葉]:光沢のある暗緑色/長さ1~2cm/7年ごとに更新
[花期]:5~6月
[花]:雌雄同株/(雌花)長さ4~4.5cmで紫赤色/(雄花)長さ2~2.5cmで紫紅色
[球果]:円柱形/長さ8~16cm・径3~4cm/9~10月に褐色に熟する

【分布・育て方】
◆ヨーロッパ北部~中央部に広く分布する
◆中級山岳地帯と山林(標高2000mまで)/平地にあるものは植林による
◆トウヒ属(エゾマツ・ハリモミなども含む)は-60℃の冬の気温でも生き延びることができる
◆素晴らしく高い・尖った樹冠が特徴

【伝承・歴史など】
◆[古代地中海世界]:ギリシアではトウヒを海の神ポセイドンに捧げた(長くて良質のマストとなるから)/ローマでは死の祭礼・悲痛のイメージと結びつけた
◆[中世後期以降に広まる]:ドイツの地名には“フィヒテ”はほとんど現れない/これはトウヒが植林によって増えた(16世紀~)ことの反映である
◇ハルツ地方では中世初期に25%を占める(残りはブナ)だったが現在は大部分がトウヒとなっている
◇ミュンヘンの平野はもともとは広葉樹に覆われていた(現在はほとんどがトウヒの森)
◆[トウヒの拡大のプロセス]:針葉樹がすでに存在していた地域では、放牧や炭焼きなどの生業で木々のまばらになった地面・皆伐の跡・放棄された農地に、最初はシラカバ・ポプラが生えて森を作る。その後に下に生えてきた針葉樹が伸びて、森を自然に楽々と占拠した。それはいつもトウヒだった
◇アルプスの山麓では、人間の介入によって森が疎らになった結果、トウヒが自然の推移の中で大きく拡大した(16世紀~)
◇広葉樹の森に、強力な更新力・移動力に恵まれたトウヒがアルプスから侵入し、広大な面積の(しかも同年齢の)トウヒだけでできた森が生まれた
◇中世後期に起きた気候の悪化も、トウヒの拡大に寄与したという
◆[トウヒだけの林]:さらに近世において単一樹の植林によって形成された(その悪影響は以下のとおり)
◇光が差さないので木の下の方の枝は枯死している/地面も荒涼としている/ここで唯一育つ潅木はエルダー(セイヨウニワトコ)
◇散った針葉がゆっくりと朽ちて、土壌をひどく酸性にしている
◇トウヒは根張りが浅いから、嵐がトウヒだけの林を吹き抜けると木々は一面になぎ倒されてしまう
◇鳥たちが雛を返す可能性は全く失われているので、トウヒ林は驚くほど静まり返っている
◇害虫を捕食する鳥たちが消えているので、大量発生した害虫は農薬散布でしか防げない

【民俗学的なこと】
◇針葉樹の習俗はモミ・マツ・トウヒで互いに重なり合っていることが多い
◆[護り木として]:古代のゲルマン人は崇拝していた/物を庇護する女性的要素を与えられていた
◆[地母神に]:アルテミス(or)イシス女神にヨモギ(Artemisia-vulgaris)とともに捧げられた
◆[クリスマスツリー]:幼木を用いる/芳香を持ち誠実・清純・健康のシンボルとして
◆[5月祭]:若者は森の中に行って、高くて申し分ないトウヒを見つけて、倒してから幹をほとんど先端まで剥ぐ
◇尖端の2・3の枝分かれは残しておく
◇蝋燭・色とりどりのリボン・花飾りを娘たちの手伝いで飾り付ける
◆[孤独の木]:伝説・メルヘンにおいて/トウヒで厚く覆われた不気味な森は『赤ずきん』『ヘンゼルとグレーテル』の舞台になっている(※おそらく女性的要素が魔女へと変容したのだろう)
◆[クラバウターマン]:トウヒ製のマストに住む船の精
◆[人の病気・傷を引き受けてくれる]:痛風の人は日が昇る前に数滴の血(or)切り取った髪を、トウヒの割り木に差し込んでワックスで閉じる。そこでトウヒに「おはようございます、母なるトウヒよ。私はひどい痛風です。私はあなたと今年近づきになります。あなたはそれを永久に持っていて下さい」と語りかける

【特徴と利用法】
◇属名Piceaはラテン語pix(瀝青・ピッチの意味)に由来する/樹脂質であることにちなんでいる
◆[防風・防雪林]:下枝が下垂し枯れ落ちない特徴から
◆[建築][土木][船][木枠][家具][楽器][マッチの軸木][製紙]:材を利用する
◆[タール][樹脂]:地面に残された切り株(樹脂を含有する)を炭焼窯で乾留すると得られる
◇かつては樹脂を薬局で薬品として売っていた

【症状と薬効】
◇モミとほぼ同じ治癒特性を持つ
[咳][インフルエンザ][風邪]:蜜がよく効く
[壊血病]:トウヒの針葉・若芽でかつては治療した
[リウマチ][痛風][腰痛]:トウヒの樹皮の煎じ汁を他の成分とともに貼り薬にする
[血行促進][痰切り][咳止め][慢性の皮膚病]:薬浴が効く/慢性の皮膚病の苦痛を和らげてくれる