『中世の社会と経済』から [ 7 ]
○村民の経済的地位
(1)村民の土地からの収益
◆ [ 穀物の種類 ] :
村民の日常食・作物の大きな部分をオート麦・大麦・小麦・ライ麦の混合が占めた/小麦以外の穀類は(大半を)食糧・家畜飼料のために栽培した
◆ [ 小麦だけは別 ] :
イングランドのほとんどの地方で栽培されていた/動産課税の対象となっていた/小麦は(そのかなりが)隷農の家計で現金の必要性に備えて栽培された換金作物という扱いだった
【 領主直営地の方が肥えていた 】
◆ [ 領主は良い土地を占有していた ] :
村民が小麦を栽培する能力は領主より劣っていた/定住初期に土地を直営地と農民保有地に分けるにあたって(いつも)領主有利に設定されていた
◆ [ さらに領主を優位にする要素 ] :
その後の歴史の中でより農民の耕作が不利(=領主に有利)となる要素が存在していた
◇ [ 施肥の強制 ] :
領主は保有農の家畜による施肥を直営地に行うよう強制させた/(加えて)放牧入会地の優越的利用権を持っていた
◇ [ 直営地賃貸 ] :
領主が直営地を賃貸に出すにあたって劣等地から順に処分していったと考えられる(13世紀後半 : ただし11・12世紀の状況は分からない)
◇ [ 賃貸された直営地についての記録 ] (13世紀) :
『活力のない土地』『オート麦の土地』とされている/農民の有する劣等地は増加していた/そこでは高い比率で雑穀を栽培せざるを得なかった
【 直営地の収穫率の問題 】
◆ [ 収穫率の良くないケースもある ] :
直営地の収穫率は農民保有地よりも高いのが普通/しかし保有農の賦役によって犁耕・播種が行われた所(13世紀にはそのような直営地は僅かだったが)では作業効率よく組織されず不本意な態度で行われたため
◆ [ 収穫率が最悪な直営地のケース ] :
直営地の耕地が保有農の地条の間に散在していた・保有農の犁で耕された・保有農の種子で播種されたマナーの場合/(最低水準まで低下すると)直営地の収穫率≒農民保有地のそれにまで低迷した
◆ [ 上記2パターンは例外でしかない ] :
多数の直営地で収穫率は高かった/(その理由)1.直営地の耕地は農民保有地から離れていて別個に耕作された/2.マナーの常雇い労働力によって犁耕・播種を行った/3.領主の有利な条件(上記【 領主直営地の方が肥えていた 】)が作用していた
☆ [ ウィンチェスタ司教領の直営地の収穫率 ] :
4倍(13世紀初頭)/3~4倍(13世紀末)/保有農の土地はそれ以下と考えるのが当然
(2)村民の負担
【 負担一覧 】
◇ [ 貨幣地代 ] :
土地保有に伴う
◇ [ 教会上納金 ] [ 古い時代の奉仕義務の初期の金納化 ] :
これらは貨幣地代類似の諸負担/もちろん貨幣地代に上乗せ
◇ [ 豚放牧料 ] [ 家畜放牧料 ] [ 領主放牧地の使用料 ] :
追加して手に入れた土地の様々な借地料(ファーム)として
◇ [ 死亡税 ] [ 新規の保有農の登記一時金 ] :
1回限りの納付が求められた
◇ [ 人頭税 ] [ 結婚など様々な承認料 ] :
隷農身分に特有の人格的なもの
◇ [ マナー裁判所の罰金 ] :
理屈の上では刑罰/実際には日常的な賦課金化するほど規則的=明らかに不可避なものだった
◇ [ 動産税 ] (タリジ) :
各年に課せられる重い税/地代そのものとほとんど同じ
◇ [ 賦役の貨幣給付 ] :
賦役を金納化するようになってからのこと/最終的には地代と合体した(賦役が労働で取り立てられていた場所でも隷農は貨幣を支払っていた点に注意)
◆ [ 賦役労働の代替措置 ] :
(賦役を履行する代わりに)金銭を支払って直営地で自分の代わりを勤めさせることが可能だった/自分の保有地で代わりを勤めさせる人物を確保することでも構わなかった/保有地1ヴァーギト(30エーカー)の保有農・半ヴァーギトの保有地しかない保有農ともにこれは認められていた
◇ [ 教会1/10税 ] :
マナーの外への諸義務として
◇ [ 王室の臨時税 ] :
同上
【 保有農の負担の重さ 】
◆ [ 全生産高の50%近くかそれ以上 ] (平均して) :
半ヴァーギトの保有地(これは中位規模だった)での負担率/彼らは上層身分(ジェントルマン)の財産に掛かる諸負担よりもはるかに高い固定支出に耐えなければならなかった
◆ [ 1/2は領主の通常の分け前という常識 ] :
土地が分益条件で自由に保有された時の領主の取り分は収益の1/2となっていた/大陸の分益小作もこれと同じに設定されている/慣習的保有農が(ほとんどの奉仕義務から免れて)貨幣地代負担だけで新しく土地を保有する場合(13世紀)の地代も収益の1/2だった
△ [ 貨幣地代のみの事例 ] :
16エーカーからなる各ボヴェイトはそれぞれ1ポンドの貨幣地代だった(リンカーン州のハキュンビ・マナー)
◆ [ 徴収が強制的である ] :
諸給付は原則固定だった/作柄や保有農の個人的事情で軽減されることはなかった/保有農の必要分は義務による負担を果たした残りでやりくりしなければならなかった
◆ [ 経済変動へ対処する仕方 ] :
マナー領主と農民ではもちろん異なっている/マナー毎によって違うし同一村落内の村民によっても違っていた/マナーの諸負担は隷農に重くのしかかるが自由保有農には軽微だったことから対処する仕方も全く違っていた
◇ [ マナー領主に有利な状況下 ] (収益が押し上げられた) :
保有農は抑圧された(窮乏に追い込まれた場合もある)
◇ [ 収穫減・価格低下期にて ] :
領主は直営地の縮小を余儀なくされた/農民は播種量・販売高を増加させるしかなかった
◇ [ 収穫増・価格上昇期にて ] :
利益志向型の直営地所有者は活動を活発化させたこと/このために隷農への販売・作付の増加抑制圧力は軽減された
(3)村民の貧富を決める要素
【 土地保有規模以外の要素で豊かになる 】
◆ [ 経済状態は家族の状況で決まる ] :
個々の家族の貧富の決定には土地面積は重要ではない場合もある/「健康で勤勉な両親+使い甲斐あるたくさんの息子・娘」の家族は子供のいない夫婦(特に彼らが年老いた・怠惰だった・老衰していた場合)と比べてずっと上手く暮らした
◆ [ 土地持ちなのに貧しい ] :
大きな保有地(例 : 完全ヴァーギト)の保有農でも貧困のために裁判所の科料・死亡税の支払いを免除された者たちがいた
◆ [ 土地は少ないが豊か ] :
慣習的土地保有として小保有地しか持っていないのに(勤勉・活力・家族労働によって)追加の土地を借り受けられた・獲得できた者たちがいた
△ [ 投資の活発な人物の例 ] :
課税対象の動産を持っていなかったので2s.の税を免除された人物のケース/その少し前に自分の保有地に対して30£以上を支払っていた
△ [ 家系図が残っている家族 ] :
昔は貧困だったのが勤勉・利益追求に熱心な先祖たちによって富が築かれた村民たちのもの
◆ [ これらは偶然要因でしかない ] :
中世の農民社会全体を捉えるには(たいていは)家族保有地の規模の違いが基準として最重要だった
【 土地保有規模の現実 】
◆ [ 1ボヴェイト=1/2ヴァーギト ] :
(定義)犂隊に1頭の牡牛(もしくは馬)と結び付けられた単位のこと/共同耕地において共同で犂耕する土地への持ち分の土地
◆ [ 負担割当の単位として ] :
保有地から領主へと支払われる給付・領主に対する負担もヴァーギト・ボヴェイト当りで割り振られていた
◆ [ マナー調査書での記載 ] :
たいていの慣習的土地保有・若干の自由土地保有(13世紀)について/(原則)1・1/2・1/4ヴァーギト(もしくは)1・1/2ボヴェイトのいずれか規模で記載されている/ただしこれは遠い過去のある時点の数字であることに注意
◆ [ 実態は乖離している ] :
実際に村民が所有・耕作した保有地はかなり不揃いとなっていた/たいていの村落では大方の村民が慣習的土地保有の一部(or)全体を小作に出す(or)賃貸していた/これによって不揃いな部分・端数の地片を保有していた
◆ [ 領主は細分化を食い止められない ] :
村民の土地市場での取引活動・断片的な開拓での保有地追加・相続や婚姻による保有地再分割によって保有地は細分化していく
【 理論的な区分 】
◆ [ 代表的な生活状態の中農 ] :
中農は慣習的土地保有農のだいたい30%台を占めていた(13世紀の諸所領にて)/富裕な『小屋住み農』(1/4ヴァーギト保有)・完全に1人立ちの『隷農』(完全ヴァーギト保有)に対してその中間(半ヴァーギト前後の土地保有)の村民集団のこと/その生活は自活分の所得を(やっと)家族に供給しうるだけの土地を占有している状態だった
◆ [ 自活分の所得とは ] :
家族が(定職に依存して)賃金を求める必要の無い程度に大きいこと。しかし家族が「全面的に地代収入で暮らせる」「全面的(or)主として雇用労働でその土地を経営できる」ほどには大きくない
◇ [ 栄養状態の計算 ] :
半ヴァーギトの保有地は5人家族に対して普通の年で1人あたり2,000kcal/日を供給できる(※これはまずまず心身を維持する程度だった……と記述されているがこれでは少なすぎると思われる)
◇ [ その前提条件 ] :
必需品の購入に依存しない程度が高い/家族労働を用いて経営している/領主に対する強制支出の比重が半分以上を占めている
◆ [ 保有農が大きな所得を得られるケース ] :
強制支出の比率が低い(=保有農が貨幣地代で土地を保有してしかもその地代が古くから固定されている場所)/〔例〕ピーターバラ修道院のリンカーン州の所領,ダラム司教領
◆ [ 中農の土地保有規模が小さいケース ] :
自由土地保有が多数存在した+強制支出が(比較的)低額な諸地域にて/ここでは中農とは1/4ヴァーギト程度(他の地方では零細保有地とされるような小屋住の保有地)を保有する農民から成り立っていたようだ/〔例〕デインロー地方,ケント州
◆ [ 中農は中世イングランド農村の代表 ] :
(中世イングランドの古くから定住が行われた地方では)自由保有農はその数はごく僅かしかいない/牧畜経営が行われた地域はそもそも少ない/手工業村落はごく疎らだった(以上は13世紀の状況)
(4)零細な土地の保有農
【 定義として微妙な人々の集団 】
◆ [ ほとんど無保有 ] :
経済的地位が最低な人々のこと/(保有地の規模だけで判断すると)彼らは居住する小屋以外にほとんど所有しない村民だった/ただし彼らの一部は下僕である(=厳密な零細保有農ではない)
◆ [ 1/4ヴァーギトの慣習的保有農 ] :
マナー文書で『ファーリング』と記された人々のこと/零細保有民の集団だが彼らの生活が「中位の村民に到底及ばない」とは限らない
【 零細保有農の生活 】
◆ [ 数はきわめて多い ] :
(普通は)中農の集団よりも多数暮らしていた/(しばしば)村民の過半数を占めていた
◆ [ 保有地以外で所得を補う ] :
生活条件としては保有地は家族全体を(最低水準で)扶養するにも不十分だった/そこで(一般的には)他の方法で所得を補わねばならない
◆ [ 手工業活動とその他の副業 ] :
零細な保有地を持つ小商人・手工業者は農業経営が優勢な村落にも存在した
◇ [ 皮革製造・木製品製造 ] :
(その地域が仕事に適しているという条件下で)村落全体にも活力を与えた
◇ [ 鍛冶屋・大工・タイル職人・製粉業の下僕・行商人 ] :
かなり大きな村落は(ほとんど全てが)有していた
◇ [ 女性の紡ぎ手 ] :
ほとんどの村落に存在する
◇ [ 縮絨工・織布工 ] :
若干数が村落によっては活動していた(13世紀)/やがて織布工・その他の織物工が急成長してきた毛織物工業地域に急増した(14世紀)
◇ [ ビール醸造 ] :
これを副業として所得を増やした家族もいた/女醸造人は(大概の)村で多数存在した
◇ [ 共同体の被雇用者として ] :
村の羊飼い・牧夫/これで零細保有農は職を得た
◇ [ 非農業的仕事 ] :
荷馬車屋・建築労働者・季節的な石工として所得を補った
◇ [ 小商人として ]
【 農業での雇用機会 】
◆ [ 常雇いの直営地労働者 ] :
『ファムリ』として/マナー直営地がある村落(もしくはそれに隣接する村落)では村民の多数は直営地で雇われて働いていた/広大な直営地ではマナー役人+ファムリで30人近くになった
◆「季節労働者の存在とその仕事」 :
直営地では季節的な仕事のためにかなり多数の人々が使用されていた
◇ [ 脱穀・籾摺り ] :
(一部~全部が)雇用労働者の季節労働によってまかなわれた
◇ [ 建築 ] :
領主の農場建築物を建てる
◇ [ 屋根を葺く ]
◇ [ 建築資材を運ぶ ]
◇ [ 賦役 ] :
これを雇用労働で補う場合もある/溝を作る・堤防を築くなど
◆ [ 富農が雇用労働を用いる場合もある ] :
ただし収穫期の雇用労働力を領主にきちんと供給できるのが前提だった/このため(裁判所記録に記載されている)マナーの命令・村落の法規の命令には「農民の雇用主による競合する要求を退ける」ことが数多く定められている
◆ [ 富農が雇う住み込み労働者=下僕 ] :
『セルヴィエンテース』として(1381年)/1ヴァーギト(30エーカー)規模の保有地を持つ保有農は(ごく普通に)手伝い人の労働力が必要だった/慣習的保有農が課せられた賦役に対応するにはどうしても雇用労働が必須だった(彼らを代わりに賦役へと送り出せるから)
【 生活水準についての結論 】
◆ [ 生活は可能 ] :
農村(13世紀)に数多く存在した上記のような雇用機会のおかげで零細保有農はきわめて小さな保有地でも生活を維持できた
◆ [ ただし通常は労働力過剰だった ] :
〔計算例〕ケタリング・マナー(ピーターバラ修道院)は約50人の零細保有農を抱えていた(これは多数の村落においてごく普通の規模である : 13世紀)/このマナーの直営地300エーカー+1ヴァーギト以上の少数の保有地が提供する雇用機会では余剰労働力の吸収には不十分だった
◆ [ 若い労働者は出稼ぎに出る ] :
数百人の〈garciones〉(未婚の若い男)たちが毎年職探しに別の地方へと出ていく(人口稠密地域にて)
◆ [ 零細保有農の経済的地位はおおむね最低である ] :
中世村落では(農作業の性質上と年中行事のために)雇用労働は断続的=その場その場のものでしかない/だから年間所得を日当の250倍(日・祝日が110日として)で計算するのは無意味である
(5)富農(クラーク)
【 富農の経営 】
◆ [ 消費支出はそれほど大きくない ] :
支出は(奢侈品の消費よりも)土地の購入に向けられた
◆ [ 富農の保有地面積 ] :
最低1ヴァーギトから/2ヴァーギト以上のかなり富裕な農民はごく少ない(しかし集団全体として占める面積は大きい)
◇ [ 農民にとっての土地とは ] :
生産要素/所有にふさわしい価値/社会的身分の尺度/家族繁栄の基礎/所有者の資質の発揮・伸張,として捉えられていた
◆ [ 富農が新しく獲得した保有地にて ] :
貧困な村民が奉公人・労働者として雇われる/市場に出回る農産物の大部分はこれらの保有地から出荷されていた(自家消費されないから)
◆ [ 富農は又貸しを行って地代収入を得た ] :
こうした保有地の一部について(13世紀)/それらは分益小作(or)1年か2年の定期借地を条件としている
◇ [ 又貸しが好都合なケース ] :
大規模な農民保有地が複数の村落に広範に散在する/その保有地に(同じ保有者の)零細な土地を伴った居住可能な家屋が多数存在している
◇ [ 又貸しするケースは様々 ] :
富農だけとは限らない/寡婦・病人・老人などの保有地でも上記の条件で行った(自力で耕作できないから)
◇ [ 又貸しした保有地の運営について ] :
そこで働く小作人(=保有農の保有農)は賦役を行っていた場合もある(=富農による『もう1つのマナー』の形成)/その保有地の一部は当の富農が耕作した+残りの部分が貨幣地代により貸し出された(若干の賦役も生み出された)/巨大な保有地(自由人が持つ,3~4ヴァーギトを超える)にこのような『小マナー』が存在していたようだ
【 富農は金貸しも行う 】
◆ [ 農民はファイナンスを利用できた ] :
彼らは土地購入(あるいは他の類似取引)する際には多額の金銭(購入した土地の登記一時金,購入代金)が必要となるはず/ところが大した遅滞もなしに調達していた(富農でないにもかかわらず)
◆ [ 資金提供者としての富農 ] :
金銭を必要とする村民が隣人の富農の資力に頼っていた/〔例〕土地購入時の買い手の支払いを保証する保証人として(しばしば)富農が登場する・購入のための金銭を担保付で前貸ししている(イングランドの農村にて : 13世紀)
◆ [ イングランド農村に専業の金貸しは少ない ] :
同時代のヨーロッパ他地域では職業的金貸業が見られる/〔例〕ドイツ農村の〈Wucher〉・フランス農村の〈usurier〉/イングランドではユダヤ人金融業者(1290年のイングランド追放まで活動した)・イタリア人金融業者(それ以後に現れる)は農村での貸付業務を行っていなかった
◇ [ 教区司祭も金貸しを行う ] :
マナー裁判所記録の金銭債務訴訟にて確認できる/少額の金銭貸付を(道楽半分に)一部の教区司祭は行っていた/この彼らを除けば債権者リストには職業的高利貸しは存在しない
◆ [ 共同体での富農の存在感は極めて大きい ] :
金融活動まで手を広げていた富農は(地域において)勢力・影響力はかなり大きかった/村落共同体の一員として・隣人の雇用主として・隣人への土地の貸し手として・土地購入資金の出し手として(=いろんな形で他人の保有地に利害関係を持っている)
(6)貧富の分布
【 ドゥームズデイ・ブックから 】(1086年)
◇ [ 最下層 ] (約10%) :
零細保有農/全く無保有の人々(cottarii,cotsetti,servi)
◇ [ 零細保有農 ] (約20%) :
様々な部類の人々が含まれる(Bordarii)
◆ [ 各保有地の規則性・規模の画一性はあまりない ] :
この時点では同じように土地を保有する慣習的ヴァーギト保有農(villani)は存在しない/(逆に)隷農が画一的土地保有とされる規模の数倍を保有している(例・完全ヴァーギト,多数の半ヴァーギト,ヴァーギトの数倍)事例が見られる
◆ [ 土地の現実の保有者を示すもの ] :
『ドゥームズデイ・ブック』の価値(と作成者の意図)は「土地の現実の保有者が誰なのか」を示している点にある/土地保有の単位に関心は無く土地占拠の不平等性をそのまま記録したようだ
【 12・13世紀にて 】
◆ [ 社会階層が分化し始めている ] (12世紀の記録文書にて) :
「大きな一団を形成する零細保有農-中農(1/4~1ヴァーギトの保有)-少数の富裕な村民」という社会階層の分化が出現している/〔その後13世紀に起こった現象〕土地需給の逼迫+平均的な保有規模の後退+零細保有農の増加
◆ [ 富裕な村民層の数の増減は確認不能 ] (13世紀) :
2ヴァーギト以上を有する村民はどこにでも存在するが(その彼らが)増加したのか減少したのかは分からない/大土地所有者・教会が(執拗に)小土地所有者と富裕な自由土地保有の農民から土地を買い入れている/しかしこのような自由土地保有農はどこにでも存在するからこうした買い入れで減少したとも言い切れない
【 14・15世紀にて 】
◆ [ 農民の全般的な経済的上昇の時期 ] :
富農層が間違いなく増大していた/(一方で)貧困な農村労働者の数も間違いなく減少していた/中世後期には平均保有地規模は増加している
◆ [ 中農も増加する ] :
多くの村落において中農的存在(=準ヴァーギト保有農の集団)の中から何人かが富農層(クラーク)に加わる/(一方で)下層集団から上昇してきて中農にとなった数は上昇・離脱した農民よりもはるかに多かった
◆ [ 富農は損をしやすい時代だった ] :
中世後期の経済変動は(数ヴァーギトを保有する富農に)損失を与える可能性が高かった/彼らは土地獲得の大いなる機会から利益を得ることができる/(一方で)賃金高騰は明らかにマイナス要因・土地を小作に出していれば地代(=小作料)下落の影響も受ける
◆ [ 中農は利益を得やすい時代だった ] (一般論として) :
土地の価値が低下したので新たに入手できる可能性が増えていた/(一方で)賃金高騰は幾らかのマイナス要因・食物価格の若干の低下でも損害を受けている/トータルの損得は彼らの経営スタイルによって決まるが大多数は利益を得られたようだ
◇ [ 中農の経営スタイルを決める要素 ] :
牧羊・穀物栽培の比重/雇用労働の割合/小作に出した土地の規模
◆ [ 零細保有農・小屋住み農は明らかに上昇した ] :
マナー領主は(黒死病によって発生した)大量の無主地を彼らに再貸付しようとした/賃金高騰は明らかにプラス要因/食物価格の安定化(or)低下も同様に利益を得た