4 憲法規範の特質 | sumiko1004のブログ

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4 憲法規範の特質


以上述べてきたところのまとめを兼ねて、近代憲法の特質を箇条的に列挙すると、次のようになる。


自由の基礎法

近代憲法は、何よりもまず、自由の基礎法である。それは、自由の法秩序であり、自由主義の所産である。もちろん、憲法は国家権力の組織を定め、それぞれの機関に国家作用を授権するが、この組織規範・授権規範は憲法の中核をなすものではない。それは、より基本的な規範、すなわち自由の規範である人権規範に奉仕するものとして存在する。


このような自由の観念は、自然権の思想に基づく。この自然権を実定化した人権規範は、憲法の中核を構成する「根本規範」であり、この根本規範を支える核心的価値が人間の人格不可侵の原則(個人の尊厳の原理)である。


制限規範


憲法が自由の基礎法であるということは、同時に憲法が国家権力を制限する基礎法であることを意味する。そして、このことは、近代憲法の二つの構成要素である権利章典と統治機構の関係を考えるうえで、とくに重要である。


本来、近代憲法は、人間が自然権をもっていることを前提として、それを実定化するという形で制定された。そして、そこでの実定化の主体は国民であり、国民が憲法制定権力の保持者となる。したがって、自然権思想と憲法制定権力の思想とは不可分の関係にあるのである。また、国民の憲法制定権力は、実定憲法においては、「国民主権」として制度化されることになるので、人権規範は主権原理とも不可分一体であることになる。


最高法規


憲法は最高法規であり、国法秩序において最も強い形式的効力をもつ。日本国憲法98条が、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と定めているのは、その趣旨を明らかにしたものである。


もっとも、憲法が最高法規であることは、憲法の改正に法律の改正の場合よりも困難な手続が要求されている硬性憲法であれば、論理上当然である。したがって、形式的効力の点で憲法が国法秩序において最上位にあることを「形式的最高法規性」と呼ぶならば、それは硬性憲法であることから派生するものであって、とくに憲法の本質的な特性として挙げるには及ばないということになろう。


最高法規としての憲法の本質は、憲法が実質的に法律と異なるという点に求められなければならない。つまり、憲法が最高法規であるのは、その内容が、人間の権利・自由を国家権力から不可侵のものとして保障する規範を中心として構成されているからである。これは、「自由の基礎法」であることが憲法の最高法規性の実質的根拠であること、この「実質的最高法規性」は、形式的最高法規性の基礎をなし、憲法の最高法規性を真に支えるものであること、を意味する。


日本国憲法第十章「最高法規」の冒頭にあって、基本的人権が永久不可侵であることを宣言した97条は、硬性憲法の建前(96条)、そこから当然に出てくる憲法の形式的最高法規性(98条)の実質的な根拠を明らかにした規定である。


このように、憲法の実質的最高法規性を重視する立場は、憲法規範を一つの価値秩序ととらえ、「個人の尊重」の原理とそれに基づく人権の体系を憲法の根本規範と考えるので、憲法規範の価値序列を当然に認めることになる。この考えが、人権規定の解釈においてどのような役割を果たすかについては、後に述べることにする。