今月の二部の伊左衛門・玉三郎様には、芸の最高峰を見せていただきました。

 

 

 

何といっても「神田祭」

お二人の絶妙な踊り、表情、距離感、空気感。

脂ののった、壮年の鳶頭、芸者の二人の大人の色気が、まったくいやらしさなく、みなの憧れの的の息を呑む美しさ。美男美女でもう動く錦絵です。凄いとしかいいようがない。

どうしてこんなことが可能なのだろう、どうして他の方にはできないのか。

この二人の相性、芸に対する付き合い方、プライベートにおけるお互いの距離感もふくめて、グレートコンジャンクションが起こっているというかんじです。

理由を考えるときりがないが、はっきりとは私の能では理解できない。

 

しかし、群を抜いて素晴らしく、人間の肉体が作り出す瞬間々々が昇華して芸術としてオーラを放つ。さらにこの場合は研ぎ澄まされたようなものではなく、愛に包まれたような遠くまで伝播していく温かいオーラ。

 

コロナ続きで殺伐とした日常をすっかり忘れさせてくれる。

夢のような世界。でもその一瞬一瞬に、そんな甘いものではない、このお二人の一生をかけて追及してきた芸の凄みも見え隠れする。

 

この二人の芸は開いてすぐの6日に見に行った時から圧倒されるもので、久しぶりに芸に感動する涙があふれてきました。さすがです。千穐楽でもほんと同じで名残惜しくて惜しくて。

三部の中村屋の日々進化していくのとはまた違う、安定して素晴らしいものを披露する「うまい!」と心から唸れる歌舞伎の最高峰です。

 

お染久松のほうも、また全く違う仁左衛門さんと玉三郎さんの魅力でいっぱいです。

掛け声もかけられない歌舞伎で、七三や早桶の上で見得を切る仁左衛門さんの体の隅々まで隙のない、江戸時代の浮世絵に忠実といってもいいぐらいの型。 それに凄みと渋みが加わって、悪いオーラ満載で逆に声を掛ける好きさえない気が満ちていて、声がかからなくて完成させている。ただただ凄い。

 

玉三郎さんのお六の強請も、詐欺もするけれど、情があり、からっと悪い人ではない感じが素晴らしい。

 

この二つの演目、特に「神田祭」で終わる趣向は、久しぶりに歌舞伎座で夢の時間過ごしたな~と心から思える素敵な時間でした。

 

再来月の東姫桜文章が今から楽しみでたまりません!