【1706】敦賀原発

 

新聞の記事です。敦賀原発が活断層の認定で再稼働が難しそうとのものです。

 

 

 

その争点の図です。①と②が争点です。2号機の真下にあるK断層が活断層かどうかというものです。この場合の活断層と言うのは過去12万年の間に動いたことがあるというものです。

 

しかし、私から言わせるとあまりにも局所的な議論です。もっと大きく見れば、すぐ横に「浦底断層」というのがあり、活断層との表示があります。原子炉の直下ではないものの、ここが動いたら能登地震と同じ程度の被害がでます。直下ではないものの、原発がそれに耐えるかは甚だ疑問です。能登では4mもの隆起が生じたのです。

 

 

 

浦底断層です。

 

神戸の例です。六甲山の麓には断層がいくつもあり、1995年には1000年に1回の大地震が起こりました。

 

 

六甲山の標高は900mです。しかし、下記記事のように100万年前には山はなく、1000年に1回の地震で1mずつ隆起し、1000回の地震で1000mの標高になったのです。神戸地震が1000回起こっていたのです。こんなことが浦底断層でも起こっているに違いありません。断層地形で山が出来ているのです。原子炉直下に小さな断層が10万年ないとしても、それより遙かに強い地震と隆起がすぐ近くで1000年ごとに起こっているのです。その方がよほど危険です。

 

 

あの神戸地震が1000回も起こることで神戸の背後の六甲山はできたのです。

 

 

敦賀原発の裏の山は120mですが、浦底断層起因の何十回もの巨大地震で出来上がったのです。

 

断層でできた谷間のようなところに建っているのです。近くの「もんじゅ」には地滑り地形も見えるようです。

 

 

10万年単位での安全性を見るのなら、日本には地震とは比較にはならない大災害があります。カルデラ噴火です。ほぼ1万年間隔で日本のどこかで起こっており、広範囲で生物が死に絶えるような破壊的な被害が出ます。一番最近のカルデラ噴火は7300年前の「鬼界カルデラ噴火」です。この時は火砕流で九州の縄文人が全滅し、復活には1000年かかったと言われています。

 

 

その時の被害です。火砕流が直接襲ったのは九州南部ですが、分厚い降灰は広い範囲に及び、植物も死に絶えました。今ある原発の多くも10cm程度の降灰に見舞われます。

 

10cmというとたいしたことはないように感じますが、都市も含めてそこら中が灰に覆われるのです。2cm程度で車はスリップして坂を上れないと言われています。雨が降るとドロドロになりとても動けません。イオンを含むので送電線はショートして停電します。こんな状態で、原発を正常に動かすことはとてもできません。電気も無い、車も動かない、ヘリコプターも飛ばないという状態でお手上げになります。都市部はパニックで原発のことを考える余裕もありません。

 

下記は御嶽山の噴火の際の自衛隊のビデオです。10cm程度の降灰で足を取られて身動きできなくなるのがよくわかります。これが全面に起こるのです。

 

 

鬼界カルデラは7300年前です。そろそろ次の噴火が起こっても不思議はないのです。10万年単位での直下の断層を問題にするのならば、活断層地震、カルデラ噴火などは1000年から1万年で起こり大被害がでるので議論するまでもなくアウトです。直下の断層が10万年動かないということで、原発は10万年単位で安全を見ていると言いたいのでしょうが、全く片手落ちです。原発の基準は細かい一部の危険性のみを取り上げており、大きな基本的な問題をスルーしているのです。ちょっと考えただけでも世界で一番危険な日本では原発は無理なのはわかります。「1万年に1回10cmの火山灰に覆われていないこと」という基準を入れたら、殆どの原発は即座に不適格になります。1000年に1回と言われる直下型地震が神戸、能登と2回も起き、6000年から1万年と言われるカルデラ噴火の最後のものから既に7300年経っているのです。2016年の熊本地震も、その前は744年で1000年ぶりだったようです。熊本地震では1.5mの段差も出来ました。六甲山も、敦賀原発の横の山もこんな段差の積み重ねでできたのです。

 

 

 

鹿児島県では火砕流によるシラス台地が何10mもの厚さであるのです。こんなものが原発を襲ったらひとたまりもありません。

 

この火砕流をもたらした姶良カルデラ噴火の想像図です。下は桜島です。川内原発は10分で火砕流の底です。

 

カルデラ噴火の歴史です。頻繁に起こっています。

 

カルデラの例です

 

コロナで専門家の無責任さに呆れましたが、原子力でも同じだと思います。

 

以前に北海道の泊原発が40cmの降灰の対策を求められたことがあります。その時の回答が下記です。7日間非常用電源が動くから大丈夫というものです。40cmの降灰で周りのインフラがどうなっているか想像はつかないのでしょうか。例え1週間持ったとしても、その後のガソリン補給は道路が使えるとは思えません。そこら中が40cmの灰ですので、札幌も大パニックで誰も泊のことを考える余裕もありません。避難命令が出て街は空っぽになる筈です。原発職員も本来は逃げ出さないといけません。空港も閉鎖でヘリコプターも飛びません。原発内の移動さえできないのです。従業員は建物に閉じ込められたままです。雪の40cmとは全く異なります。能登地震では3ヶ月経ってもまだ水も出ないのです。道路も1ヶ月かかりました。大規模火山噴火に比べると被害の範囲は狭いのにこの有様です。火山活動が1週間で収まるとは思えません。最初の噴火で停電しても、火山活動が収まるまで復旧活動にはかかれません。あっという間に1月は経つと思います。この報告書では降灰の影響について、原発の設備が重さや粉塵に耐えられるか、30ページにわたって評価していますが、外部インフラについては下記の数行です。いくら原発施設が耐えられても、中で働く従業員が活動できるのか、いや生き延びられるのか、外部インフラがどんな状態になるのか何も検討していません。外部の送電線も灰の重さで切れたり、灰に含まれる導電成分でショートしたりでズタズタになると思います。それが1週間で解消するでしょうか。鉄塔の碍子の灰を洗い流そうにも水はありませんし、そもそも40cmの灰に覆われて山奥にはたどり着けません。地域全体が40cmの灰で覆われた場合、1週間でインフラが回復するとはとても思えません。それどころか、噴火は長く続き、復旧など手がつけられません。規制委員会はどんな判定を下したのでしょうか。

 

 

原子力規制委員会のこの日の議事録を読んでみました。降灰については設備の対策に時間を取っていますが、外部インフラの影響は非常用電源が7日間持つという、北海道電力の説明だけで規制委員会の方は何の質問もしていません。これで通ってしまったのでしょうか。

予想通りと言えば予想通りでした。

 

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○更田委員 それでは、降下火砕物による設備影響評価について説明をお願いします。

○北海道電力(笹田) それでは、北海道電力の笹田のほうから説明をさせていただきま す。 資料2-3、泊発電所3号機降下火砕物(火山灰)による設備影響評価についてということ で説明させていただきます。

 

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28ページに参りまして、このページまでは直接的なそれぞれ個別の設備への影響を評価 しましたが、28ページでは、発電所外で火山によっていろいろと影響が出たというときに、 その発電所外での影響が発電所に影響を及ぼすか、間接的に影響を及ぼすかということを 評価しております。具体的には、送電網が損傷して、長期間外部電源が喪失したという場 合についての評価を行っております。 泊発電所におきましては、非常用ディーゼル発電機2台が7日間定格負荷運転できるだけ の燃料を貯蔵しておりまして、このことから、原子炉の停止ですとか、冷却ですとか、あ と使用済み燃料ピットの冷却は、問題なく可能であるというふうに確認しております。デ ィーゼル発電機の燃料系につきましては、補足説明資料の14のほうでまとめております。 72 ここでは割愛させていただきます。 以上の評価を29ページのほうでまとめております。 説明は以上でございます。

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(設備の議論が続く)

 

○更田委員 ほかにありますか。 では、以上で火山灰(終了)

(外部インフラの質疑応答は何もなし。)

 

 

ネットに出ていた火山灰被害です。10cmでも屋根には26台の乗用車が載っているのと同じだそうです。40cmなら全ての家屋はぺしゃんこです。街がそんな状態の時に、インフラが1週間で回復するのでしょうか?誰でも想像できますが、質問一つも出なかったのです。原子力規制委員会もコロナ委員会と同じで、微細なことばかり取り上げて、大局的に見ていないなと思います。そもそも40cmもの降灰ががあったとき、社会がどうなるかを何も考えず、原発の施設ばかりを見ているのです。

 

 

 

 

 

追加

2018年には関西電力の福井県の原発に対し、大山の噴火で30cmの火山灰が降った事実があると原子力規制委員会で指摘されました。当然敦賀原発も同じです。この指摘に対する対応がどうなったかは追い切れていません。再稼働しているので何らかの回答をした筈です。泊と同じ、「非常用電源が7日間持つ」だったら、呆れます。何とか調べたいと思います。

 

 

 

追加

その後の対応を見つけました。指摘が2018年でしたが、2021年5月に対応策が認可されたとの記事です。

 

 

その内容です。降灰の想定は10cmから27cmに変更されました。その対応策は設備の補強と、電源車の格納建屋を強い構造の建屋に変えたというものです。もうあきれるようなものですが、これで審査を通っているのです。

 

その電源車です。結局、対応の小手先だけの変更です。周り一帯が20cm以上の灰に覆われたときに、社会インフラがどんな危機的状態になっているかの分析は何もありません。原発施設の若干の補強だけでした。社会は壊滅状態で、原発どころではないに違いありません。もし、そんな危機を本当に想定するのであれば、原発は即廃棄する以外に手は無いと思います。結局、原発が稼働している間にそんな噴火は無いだろうという期待なのです。そんな津波はないだろうと思っていた福島と同じです。想定に挙げる以上は真剣な対応策が必要です。こんな小手先の対応でごまかしてはいけません。降灰が10cmから25cmになったのに、対応策は「屋根溶接補強」、「フィルタの取り替え」、「電源車格納場所の変更」だけなのです。25cmで社会がどんなになっているか想像できないのでしょうか。住宅の屋根には車60台分の重さが加わり全て潰れ、道路にはドロドロになった灰がたまり、取り除くことも、捨て場も見つからない状態なのです。人々は行き場を失い、水も食料も無く、死者も膨大だと思います。火山噴火も何週間も続くかもしれません。ハッキリ言って地獄です。そんな状態で原発だけが上記の3対策で生き残るとは到底思えません。関電が「社会インフラは責任外」と逃げたとしても、委員会は自ら判断する責任があります。

 

追加

大山の噴火記録を調べました。

地質調査研究報告 第68巻 第1号 2017年 (gsj.jp)

噴火には名前が付いています。委員会が問題にしたのは「DNP」です。確かに京都で30cmとなっています。しかし、これ以外にも「DKP」は海が中心ですが、福井県の原発も20cmの線上にあります。DKPの風向きが少し変わっていたら50cmだったのです。風向きが逆だった「DMP」では島根原発が50cmに近い降灰です。新基準は50cmであるべきでした。

 

年代です。1-2万年の周期で大爆発しているようです。最後のは2万年前なので、そろそろ起こってもおかしくはありません。

 

正直、原発稼働中に大山が大爆発する可能性は極めて低いと思います。しかし、それならそうと正面から説明すべきです。爆発が起こっても、原発は上記3つの対策で大丈夫などと誤魔化すのは無責任の極みです。コロナでマスク、手洗い、人流制限で防げるとした専門家と同じです。

尚、これは大山の通常爆発の例です。日本にはこれを遙かにしのぐカルデラ噴火があるのです。

 

更に追加

 

日本の活断層の分布です。日本が折れ曲がっている中部山岳地帯から鈴鹿、伊吹山系辺りに集中しています。敦賀はそのど真ん中です。

 

最近の大きな直下型地震では複数の断層が連動して大きなエネルギーになったと言われています。敦賀の浦底断層も伊吹、鈴鹿の断層に繋がらないかと心配です。


 

更なる追加

しつこいですが、浦底断層の基礎データです。推定が入っていますが、5千年に1回、3mほど動くというもののようです。原子炉の直下が10万年動かないということに拘っているのに、敷地のすぐ横の断層はこんなに動いているのです。整合性が全くありません。