美紗子は久しぶりに中学時代の女友だちと会う。彼女とは四年ぶりの再会になるので会うのが楽しみだ。
彼女はしっかりとした考えを持ち、目標を達成する為の努力を惜しまないまじめな性格で、すでにどの職業に付くか決めていた。際立って勉強ができるわけではなかったが、自分の将来について何の目標も持たない美紗子より成績が良かった。しっかりとした将来の目標に向かって努力する人間は違うのだと、将来の目標を持たない美紗子は彼女にちょっとしたジェラシーを感じてしまう。
「元気だった?」
「ええ、相変わらずよ。美紗子はどうなのよ。確か高藤デパートで働いているのよね」
「お客様に頭下げるだけならまだしも、上司にも気を使って疲れるわ・・・」
「こっちも同じよ。気を使ってばかりで気苦労が絶えないしね」
「昌子とは同じ年なのに、あの頃からあなたはずっと大人びてた。ちっとも変わらないわね」
「それってどういう意味よ。私は老けてるって事?」
「う~ん。ちょっとニュアンスが違うんだけどな~。見た目は昔も今も変わらないって言う意味よ」
「もしかして永遠に年を取らないでずっと生き続ける吸血鬼ってかい!」
「そ、それよ」
四年前に偶然再会してから、ふたりはメールで定期的にお互いに近況報告するようになった。だがその間一度も会った事がなかった。こうしていると四年間の空白などなかったかのようだ。
「四年ぶりに会った旧友をからかうなんてひどいんじゃない?メールを交換し合っているって言うのに、再会してから四年も会ってなかったなんておかしなものね」
「だから、久しぶりに会いましょうというメールが来た時には、ほんとに驚いたわ・・・」
「ちょっと気になった事があるのよ。本当はこんなことするべきじゃないのだけど・・・」
「実は、私もあなたに連絡しようとしてたところなのよ。でも、あなたの話を先に聞きたいわ」
「あなたが働いている高藤デパートの女性が自殺したでしょう?彼女のこと知っているかと思って・・・」
「河内幸子の事ね」
「ええ・・・」昌子はわずかに顔を顰めた。
「彼女のことをどうして知っているの?」
「特に親しかったわけではないのだけど、彼女が自殺するなんて信じられなくて、とても強い人だと思ってたから・・・」
「そうでしょうね。私もいまだに信じられないわ・・・。彼女とは同期だったけど、付き合いは最初の頃だけで特別親しかったわけじゃない。でも、私が知っている彼女はそんなに弱い人ではなかったはずよ」
「自殺の原因は知っている?」
昌子は美紗子が首を振るのを見てやはりという顔をした。
「彼女が自殺したことを社内では色々噂が流れたけど、誰も真相は分からない」
「自殺なんて最低だけど、よほど思いつめていたのね」
「彼女が結婚することになっていたことは知っている?」
「え?彼女が結婚?」昌子は意外そうな顔をした。
「彼女は結婚を控えていたのよ。それに彼女が自殺する前日に結婚式に招待するという電話があった」
「まさか、信じられないわ。本当のことなの?結婚しようとしていた人が自殺するなんて・・・・」
「そう思うのは当然でしょうね。だったら何故彼女は自殺を?あなたは彼女が何故自殺したのか分かる?」
「確信はないけど、思い当たることはあるわ・・・」
「だったら、これと何か関連があるのかしら・・・」美紗子は黒いバックをテーブルの上に置いた。
「これは?」
昌子はバックを不思議そうに見た。このバックにどんな意味があるのかと・・。
「彼女が私に預けたバックよ。といっても、彼女が亡くなった後にだけど・・・」
「どういうこと?」
「この中に答えがあると思っているの・・・。会社にあるロッカーの中にこのバックがあるから、自分に持っていてほしいと頼まれた。彼女が亡くなってしばらくして送られてきたものの中に手紙が入っていたの。手紙の内容は詳しくは話せないけど、この黒いバックが、自殺の謎を解くアイテムだと書かれてあったの」
「それは、彼女のダイイング・メッセージって事?」
「そうだと思うわ・・・・。このバックの中にあるものであなたに見てもらいものがあるの」
彼女はしっかりとした考えを持ち、目標を達成する為の努力を惜しまないまじめな性格で、すでにどの職業に付くか決めていた。際立って勉強ができるわけではなかったが、自分の将来について何の目標も持たない美紗子より成績が良かった。しっかりとした将来の目標に向かって努力する人間は違うのだと、将来の目標を持たない美紗子は彼女にちょっとしたジェラシーを感じてしまう。
「元気だった?」
「ええ、相変わらずよ。美紗子はどうなのよ。確か高藤デパートで働いているのよね」
「お客様に頭下げるだけならまだしも、上司にも気を使って疲れるわ・・・」
「こっちも同じよ。気を使ってばかりで気苦労が絶えないしね」
「昌子とは同じ年なのに、あの頃からあなたはずっと大人びてた。ちっとも変わらないわね」
「それってどういう意味よ。私は老けてるって事?」
「う~ん。ちょっとニュアンスが違うんだけどな~。見た目は昔も今も変わらないって言う意味よ」
「もしかして永遠に年を取らないでずっと生き続ける吸血鬼ってかい!」
「そ、それよ」
四年前に偶然再会してから、ふたりはメールで定期的にお互いに近況報告するようになった。だがその間一度も会った事がなかった。こうしていると四年間の空白などなかったかのようだ。
「四年ぶりに会った旧友をからかうなんてひどいんじゃない?メールを交換し合っているって言うのに、再会してから四年も会ってなかったなんておかしなものね」
「だから、久しぶりに会いましょうというメールが来た時には、ほんとに驚いたわ・・・」
「ちょっと気になった事があるのよ。本当はこんなことするべきじゃないのだけど・・・」
「実は、私もあなたに連絡しようとしてたところなのよ。でも、あなたの話を先に聞きたいわ」
「あなたが働いている高藤デパートの女性が自殺したでしょう?彼女のこと知っているかと思って・・・」
「河内幸子の事ね」
「ええ・・・」昌子はわずかに顔を顰めた。
「彼女のことをどうして知っているの?」
「特に親しかったわけではないのだけど、彼女が自殺するなんて信じられなくて、とても強い人だと思ってたから・・・」
「そうでしょうね。私もいまだに信じられないわ・・・。彼女とは同期だったけど、付き合いは最初の頃だけで特別親しかったわけじゃない。でも、私が知っている彼女はそんなに弱い人ではなかったはずよ」
「自殺の原因は知っている?」
昌子は美紗子が首を振るのを見てやはりという顔をした。
「彼女が自殺したことを社内では色々噂が流れたけど、誰も真相は分からない」
「自殺なんて最低だけど、よほど思いつめていたのね」
「彼女が結婚することになっていたことは知っている?」
「え?彼女が結婚?」昌子は意外そうな顔をした。
「彼女は結婚を控えていたのよ。それに彼女が自殺する前日に結婚式に招待するという電話があった」
「まさか、信じられないわ。本当のことなの?結婚しようとしていた人が自殺するなんて・・・・」
「そう思うのは当然でしょうね。だったら何故彼女は自殺を?あなたは彼女が何故自殺したのか分かる?」
「確信はないけど、思い当たることはあるわ・・・」
「だったら、これと何か関連があるのかしら・・・」美紗子は黒いバックをテーブルの上に置いた。
「これは?」
昌子はバックを不思議そうに見た。このバックにどんな意味があるのかと・・。
「彼女が私に預けたバックよ。といっても、彼女が亡くなった後にだけど・・・」
「どういうこと?」
「この中に答えがあると思っているの・・・。会社にあるロッカーの中にこのバックがあるから、自分に持っていてほしいと頼まれた。彼女が亡くなってしばらくして送られてきたものの中に手紙が入っていたの。手紙の内容は詳しくは話せないけど、この黒いバックが、自殺の謎を解くアイテムだと書かれてあったの」
「それは、彼女のダイイング・メッセージって事?」
「そうだと思うわ・・・・。このバックの中にあるものであなたに見てもらいものがあるの」
美紗子が黒いバックから取り出したのはある病院の診察券だった。その診察券は昌子には見慣れたものだった。昌子から会おうという連絡をもらった美紗子は偶然とは面白いと思った。なぜなら彼女はその病院で働く看護師だからだ。河内幸子は昌子が勤めている病院の患者だった。
「確かにうちの病院のものよ」
「彼女はここに通っていたのね」
「彼女がこの病院に来たあの時の日の事は忘れられないわ・・・。あれは確か二年ほど前だったと思うけど、その時の印象があまりにも強烈だったから良く覚えているの・・・。」
「何があったの?」
「病院の屋上で自殺を図ろうとした女性がいて院内は大騒ぎになった。その時にその女性を説得したのが彼女だった。後で分かった事なんだけど、自殺しようとしたのは彼女の妹だったのよ」
「なんですって?」
美紗子は葬儀の時に、姉の自殺に過剰な反応を示していた彼女のことを思い出す。妹の自殺を思いと止めさせた張本人が、今度は自ら飛び降り自殺を図った。妹はおそらくそれに対してなおの事怒りを感じていただろう。
「自殺を止める事ができたのだけど、残念な事に彼女の妹は流産してしまった」
「妹は妊娠していたの?彼女はまだ独身のはずだけど・・・」
「そのようね・・・。。流産した妹はもう錯乱状態で、もう大声で毒舌を姉に向けて吐くから鎮静剤を打たなきゃならなかった。彼女の意向で妹の自殺騒ぎの事は両親には伏せ、むろん妊娠していた事も隠そうとした」
「ご両親のことを考えたらそうせざるを得ないわね。それで、自殺の理由は何だったのかしら・・・」
「男が原因じゃないかしら、別れるとか言われてショックだったんでしょう。幸子さん、子供の父親は誰か聞きだそうとしたんだけど、妹は相手が誰かも頑として言わなかった。彼女は何か感づいていたようだけど・・・。偶然聞こえちゃったのよね・・・」
「何を?」
「様子を見に病室へ行ったんだけど、相手はお姉さんもよく知っている人よって・・・。その時ドア越しに、妹の表情が見えたんだけど薄ら笑いを浮かべてた。なんかぞっとしたわ・・・。その薄ら笑いがとても憎しみが込められているみたいで背筋が寒くなるほどだった」
「いったい相手って誰なのかしらね」
昌子は首を竦めながら言った。「それについては私も興味があるけど、それっていけないことよね。偶然とはいえ、盗み聞きは良くないわね。患者さんのプライバシーを侵害しているみたいで、ずっと後味が悪かったわ・・・」
「それでその日の事をよく覚えていたのね。故意にやったことじゃないし、気にする事はないわ・・・。それにしても、そんなことがあったなんて、幸子さんも気の毒ね」
「自殺しようとしている妹を必死で止めた彼女が自殺するなんて皮肉なものね」
確かに昌子の言う通りだが、彼女が何故自殺したのか益々分からなくなってくる。だが、妹の自殺未遂と幸子の自殺の原因とは、まったく無関係なのかしら・・・。まさかとは思うけど、妹の相手はもしかして・・・。美紗子がそんな事を考えていると昌子は思い出したように言った。
「そうそう、やっと思い出したわ。なんか心に引っかかってずっともやもやしていたんだけど、多分相手は既婚者ね。妹が入院中一度だけ男性と一緒にいるところを見たわ・・・。どう見ても所帯持ちって感じだった」
不倫をしていたということなのか・・・。美紗子の予想は残念ながらというか、幸か不幸か外れ、妹の相手は別にいるという事になる。美紗子は幸子の婚約者が妹の相手かもしれないと漠然と考えていたのだ。そうなると相手は、いったい誰?
幸子がわざわざ黒いバックを預けたことにはかならず意味がある。それに、その中にこの診察券を入れたのも何か理由があるはずだが、考えれば考えるほど幸子の意図が分からなくなる。いたい、彼女は私にどうしてほしいのだろうか・・・。
美紗子は昌子と別れてからもずっと考え続けた。幸子の妹に会って話を聞けば分かる事だが、まったくの赤の他人である美紗子に打ち明けるとは到底思えない。それは幸子の妹の傷口をこじ開けて塩をこすり付けるようなものだ。幸子はこんな残酷な仕打ちを妹にしたいのだろうか・・・。美紗子は思いたくなかった。幸子がそんな女性であるはずがないと信じたかった。
「確かにうちの病院のものよ」
「彼女はここに通っていたのね」
「彼女がこの病院に来たあの時の日の事は忘れられないわ・・・。あれは確か二年ほど前だったと思うけど、その時の印象があまりにも強烈だったから良く覚えているの・・・。」
「何があったの?」
「病院の屋上で自殺を図ろうとした女性がいて院内は大騒ぎになった。その時にその女性を説得したのが彼女だった。後で分かった事なんだけど、自殺しようとしたのは彼女の妹だったのよ」
「なんですって?」
美紗子は葬儀の時に、姉の自殺に過剰な反応を示していた彼女のことを思い出す。妹の自殺を思いと止めさせた張本人が、今度は自ら飛び降り自殺を図った。妹はおそらくそれに対してなおの事怒りを感じていただろう。
「自殺を止める事ができたのだけど、残念な事に彼女の妹は流産してしまった」
「妹は妊娠していたの?彼女はまだ独身のはずだけど・・・」
「そのようね・・・。。流産した妹はもう錯乱状態で、もう大声で毒舌を姉に向けて吐くから鎮静剤を打たなきゃならなかった。彼女の意向で妹の自殺騒ぎの事は両親には伏せ、むろん妊娠していた事も隠そうとした」
「ご両親のことを考えたらそうせざるを得ないわね。それで、自殺の理由は何だったのかしら・・・」
「男が原因じゃないかしら、別れるとか言われてショックだったんでしょう。幸子さん、子供の父親は誰か聞きだそうとしたんだけど、妹は相手が誰かも頑として言わなかった。彼女は何か感づいていたようだけど・・・。偶然聞こえちゃったのよね・・・」
「何を?」
「様子を見に病室へ行ったんだけど、相手はお姉さんもよく知っている人よって・・・。その時ドア越しに、妹の表情が見えたんだけど薄ら笑いを浮かべてた。なんかぞっとしたわ・・・。その薄ら笑いがとても憎しみが込められているみたいで背筋が寒くなるほどだった」
「いったい相手って誰なのかしらね」
昌子は首を竦めながら言った。「それについては私も興味があるけど、それっていけないことよね。偶然とはいえ、盗み聞きは良くないわね。患者さんのプライバシーを侵害しているみたいで、ずっと後味が悪かったわ・・・」
「それでその日の事をよく覚えていたのね。故意にやったことじゃないし、気にする事はないわ・・・。それにしても、そんなことがあったなんて、幸子さんも気の毒ね」
「自殺しようとしている妹を必死で止めた彼女が自殺するなんて皮肉なものね」
確かに昌子の言う通りだが、彼女が何故自殺したのか益々分からなくなってくる。だが、妹の自殺未遂と幸子の自殺の原因とは、まったく無関係なのかしら・・・。まさかとは思うけど、妹の相手はもしかして・・・。美紗子がそんな事を考えていると昌子は思い出したように言った。
「そうそう、やっと思い出したわ。なんか心に引っかかってずっともやもやしていたんだけど、多分相手は既婚者ね。妹が入院中一度だけ男性と一緒にいるところを見たわ・・・。どう見ても所帯持ちって感じだった」
不倫をしていたということなのか・・・。美紗子の予想は残念ながらというか、幸か不幸か外れ、妹の相手は別にいるという事になる。美紗子は幸子の婚約者が妹の相手かもしれないと漠然と考えていたのだ。そうなると相手は、いったい誰?
幸子がわざわざ黒いバックを預けたことにはかならず意味がある。それに、その中にこの診察券を入れたのも何か理由があるはずだが、考えれば考えるほど幸子の意図が分からなくなる。いたい、彼女は私にどうしてほしいのだろうか・・・。
美紗子は昌子と別れてからもずっと考え続けた。幸子の妹に会って話を聞けば分かる事だが、まったくの赤の他人である美紗子に打ち明けるとは到底思えない。それは幸子の妹の傷口をこじ開けて塩をこすり付けるようなものだ。幸子はこんな残酷な仕打ちを妹にしたいのだろうか・・・。美紗子は思いたくなかった。幸子がそんな女性であるはずがないと信じたかった。
