第57話 ( 第二章 -最終話- ) | 紫苑の扉

紫苑の扉

主にストーリーと詩を書いています。
あるがままに、そのままに・・・。
徒然に気ままに

 彼女の話をどこまで信じていいいのか、千春には分からなかった。もし、真実であれば彼女だけでなく自分たちにも危険が及ぶことにもなりかねない。しかし、このまま放っておくわけにもいかない。ともかく神尾刑事に会って相談してみなくては・・・。千春は仕事を早めに切り上げ、神尾に連絡を入れて会いに行くことにした。
 張り込みで睡眠不足ぎみの神尾は、待ち合わせの喫茶店の前に来ると、髪をかきむしって頭を振る。福山千春が大事な話があるから会いたいと電話してきた。声の調子からかなり深刻な話だと予想できた。疲れと寝不足で頭がすっきりしない神尾は息を吸い込んで深呼吸する。
 三姉妹から呼び出されるのは今回で何度目だろうか・・・。その度に難問を持ち込んでくる彼女たちだが、今では多少のことでは驚かなくなってきている。慣れとは恐ろしいものだ。しかし、いくら慣れているとはいえ、今度ばかりは度肝を抜かれることになろうとは思いもよらない神尾であった。
 二人はできるだけ人目につきにくく、話が回りに聞こえないような隅の席を選んで座っている。しかし、それは危惧と言うもので、誰も二人に関心を示すことはなかったけれど・・・。
 千春は頭を抱え込んでいる神尾を前にして申し訳なさそうに言った。
「隠していたのは悪かったけど、そのことと今回のことが関わっているかもしれないなんて想像できなくって・・・」
 何だってこうもややこしいことになるのか、神尾は頭がずきずきしてきた。テーブルに肘を付いて頭を抱えたまま言った。
「そういうことがあったなら警察に届けるべきだろう?君たちはどこまで・・・。ああ・・・。頭が痛いよ。まったく・・・」
 福山千夏よ。君の妹たちは何度となく危険にさらされていたというのに、どうしてそうも呑気に構えていられる?信じられんよ。妹は君や千秋さんには黙っていてほしいだとよ。いじらしいんだか、呆れていいのか・・・。
「その女性の正体は明かせないとは、それが最も重要なことだろうに・・・。いったい誰を守れというのかい?」
「彼女の家族や関係者のことを考えると、今は正体を明かすわけにはいかないと言うの・・・。だから・・・」
 神尾は苛立たしげに、靴の踵を鳴らしながら唇を噛み締める。
「先に延ばせばもっと複雑に、もっとややこしくなるかもしれない。三年前の事件もほかの事件を含め、すべてに関わる重要なことを掴んでいるという、その彼女を君は信じられるのか?」
「すべて信じているというわけじゃないけど、少なくとも彼女には殺意はなかったってことだけは真実だと・・・」
「君は人が良すぎて困る。それに、君は善人ではあるが危険人物の一人とも言えるがな・・・」神尾は苦笑いを浮かべる。
「それって、どういう意味です?」
「福山千夏大先生の妹だからという意味だ」
「はぁ?」
*-腕力はあれども女を口説く手腕は無し・・・。神尾はよほど千夏が怖いらしい。好い男の中の男ではあるが、なぜか福山姉妹にはいつもたじたじである。まあ、わからなくもない・・・。*-

 

 千夏はハウスの仕事場でクシャミをする。別に寒いというわけでもないが、風邪でも引いたかしら?まさか、誰か私の噂でもしている?なんだか仕事がはかどらないわ・・・。千夏は背伸びをして肩を揉み解す。
 なんとなく落ち着かない日々が続いている。その原因があのファイルだけではないことは分かっている。それを重々分かりながら、そのことを考えまいとしている。正直言って、そのことを考えると堂々巡りで埒が明かない。行動に移せば何かしら解決の糸口がつかめるかもしれないのに、考えてばかりでひとつも前に進めないでいる。
 三日前、相場のいるフラワーショップへ出かけた。店には友美が店番をしているだけで相場の姿はなかった。落胆の思いを隠して友美と何気ない会話を交わした。彼女の話では、相場はここ最近出かけることが多くなり、店は全て友美に任せているらしい。友美はどうやら相場の行動を危ぶんでいる様子。友美に隠し事をしているということだろうか・・・。連絡をし合っているのかと友美に聞かれて言葉を濁すしかない千夏だった。友美は千夏に向かってショックな言葉を口にした。
「相場さんは最近、頻繁に浅井由香里さんと会っているみたいなの・・・。もちろん仕事がらみだとは思うけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 動揺するなんて、まるで彼を信じていないみたいじゃないの・・・。もしかしたら彼の心は私から離れていっているということ?千夏はそれを否定するように首を振った。編集者の浅井の妹だからといって、勘ぐるなんてどうかしているのではないか。でも、なぜ浅井由香里なのか・・・。未亡人であっても美人だからなのか・・・。貧相な考えばかりが浮かんでくる。
 あれから何度も電話しようとしたが、結局のところ電話に触れることもできなかった。以前の自分だったら迷わずに電話をかけていただろうし、待つと決めればその決心が少しもぐらつきはしなかったのに・・・。
 *-大人気ないと思われたくなくて大人の態度を気取ってみたり、意地を張ったりする。得てして、そういうものは時には邪魔になるものだ。立派な大人も素直に自分の気持ちを表に出すことも必要では?*- 

 

 

 
 表向きは何事もないように見えるが、木の葉が色を変えて散りゆくように、時は刻々と過ぎて移り行く。
 待つのは嫌いではないがこの時ばかりは長く感じられて落ち着かない。約束の時間が過ぎても彼はまだ現れない。時計を見ると一時間はすでに過ぎている。彼は多忙で会う時間もなかなか作れないと理解しているつもりだが、理性よりも感情の方が強く働いてしまう。連絡くらいできたでしょうにとつい思ってしまう。千秋は溜息を吐いた。
 さらに一時間が過ぎた。テーブルには飲みかけの水の入ったコップがひとつあるだけで席は空いている。しばらくしてそのコップも店員が片付けてしまった。その席はきれいに片付けられ空席となった。その頃になってようやく彼が現れた。店内のどこを探しても彼女の姿はない。彼は息荒いまま、彼女の座っていたテーブルに手を付いた。落胆の色を深く滲ませた表情を浮かべて・・・。

 

 

 *―二人の今後を暗示するかのような・・・。違うとも取れるシチュエーション・・・。二人の関係がここで終わるとは思いたくないが、何事も思い通りにいかないのが世の常。妹たちはいろいろと問題を抱えているようで、兄としては心配でこの世からまだ旅立てない。私の心中をお察しください―*  
                             
 独り言 by *― 福山直也 ―*

 

 

 さて、これからどうなるのでしょう。
 物語の中で起きる様々な事件の解決は?
 そして、物語の結末や如何に・・・。

 

 

☆ 次回から、第三章に入ります。お楽しみに  

 

 

 

                                     紫苑

 

 

 

 

 

 

 

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