高校時代から付き合っていた恋人と結婚式を前にして、彼女が何故死を選んだのか・・・。佐々木の話によると、彼女の部屋からも遺書らしきものは見つからなかったという。
葬儀の時に妹が口にしたことを思い出す。姉を失った悲しみとは裏腹に、死を選んだ姉への怒りから迸った言葉だというのも理解できる気がするのだ。自ら命を絶つというからにはそれなりの理由があるはずだ。佐々木はその理由がわからないと言っているが、彼は本当に思い当たることは無いのだろうか・・・。
佐々木は別れ際に、彼女の自殺の原因がいまさらわかったところでどうしようもない。そして、できるなら彼女のことは忘れたいと美紗子に言った。佐々木の言葉にショックを隠せない美紗子であったが、血の気を失った佐々木が哀れに思えた。さらに佐々木は言ったのだ。君も彼女の自殺の原因を興味本位に探ろうなどと思わないで忘れた方がいいと・・・。
佐々木に対して美佐子はふつふつとした怒りが湧き上がってきていた。もし、彼が青ざめて血の気の無い顔をしていなかったら横面を引っぱたいていただろう。
愛する人を失った悲しみは深く、それが自殺となれば残された者にとっては深い傷となって残るに違いない。果たして彼は、愛していた人と共に過ごした日々を、そんな簡単に忘れ去ることができるのだろうか。
こんなことなら、会わなければ良かったと美紗子は後悔した。向こうから会いたいといってきたのに、この後味の悪さときたら・・・。考えれば考えるほど矛盾だらけでイライラしてくる。
彼女の電話からは自殺を匂わせるようなものはまったく感じられなかった。
誰にでも死にたいと一度ぐらいは思うことはあるだろうが、ほとんどの場合一時的な感情で、実際に実行しようとはしないものだ。そこまで彼女を追い込んだものが何だったのか美紗子にはまったくわからない。確かに佐々木の言うとおり彼女がなぜ死を選んだのかを知ったところでどうなるというのだろう。そう思ってもなぜかどうしても心に引っかかってしまう。彼女が死ぬ前日に電話がかかってこなかったら、単なる同僚として彼女の死を受け止めることができたかもしれないのに・・・。
社内では彼女の自殺に付いて色々な憶測を呼んだが、その原因について美紗子も含め誰一人として確かな答えは得られなかった。そんな中、美紗子は同期で一番親しかったという理由で、彼女のロッカーの整理をするようにと黒もやしこと田中に頼まれた。美紗子は週末に整理することにして、日曜日に彼女の家族に届けようと考えていた。
葬儀から二週間後、仕事を終え帰宅すると荷物が届いた。美紗子は差出人の名前を見て息が止まりそうになった。なぜこんなものを・・・。
届いたのは箱に入った真新しいパソコンだった。箱の中に白い封筒を見つけた美紗子の手は震えていた。裏には綺麗な女性らしい字で河内幸子の名前が書かれてある。
葬儀の時に妹が口にしたことを思い出す。姉を失った悲しみとは裏腹に、死を選んだ姉への怒りから迸った言葉だというのも理解できる気がするのだ。自ら命を絶つというからにはそれなりの理由があるはずだ。佐々木はその理由がわからないと言っているが、彼は本当に思い当たることは無いのだろうか・・・。
佐々木は別れ際に、彼女の自殺の原因がいまさらわかったところでどうしようもない。そして、できるなら彼女のことは忘れたいと美紗子に言った。佐々木の言葉にショックを隠せない美紗子であったが、血の気を失った佐々木が哀れに思えた。さらに佐々木は言ったのだ。君も彼女の自殺の原因を興味本位に探ろうなどと思わないで忘れた方がいいと・・・。
佐々木に対して美佐子はふつふつとした怒りが湧き上がってきていた。もし、彼が青ざめて血の気の無い顔をしていなかったら横面を引っぱたいていただろう。
愛する人を失った悲しみは深く、それが自殺となれば残された者にとっては深い傷となって残るに違いない。果たして彼は、愛していた人と共に過ごした日々を、そんな簡単に忘れ去ることができるのだろうか。
こんなことなら、会わなければ良かったと美紗子は後悔した。向こうから会いたいといってきたのに、この後味の悪さときたら・・・。考えれば考えるほど矛盾だらけでイライラしてくる。
彼女の電話からは自殺を匂わせるようなものはまったく感じられなかった。
誰にでも死にたいと一度ぐらいは思うことはあるだろうが、ほとんどの場合一時的な感情で、実際に実行しようとはしないものだ。そこまで彼女を追い込んだものが何だったのか美紗子にはまったくわからない。確かに佐々木の言うとおり彼女がなぜ死を選んだのかを知ったところでどうなるというのだろう。そう思ってもなぜかどうしても心に引っかかってしまう。彼女が死ぬ前日に電話がかかってこなかったら、単なる同僚として彼女の死を受け止めることができたかもしれないのに・・・。
社内では彼女の自殺に付いて色々な憶測を呼んだが、その原因について美紗子も含め誰一人として確かな答えは得られなかった。そんな中、美紗子は同期で一番親しかったという理由で、彼女のロッカーの整理をするようにと黒もやしこと田中に頼まれた。美紗子は週末に整理することにして、日曜日に彼女の家族に届けようと考えていた。
葬儀から二週間後、仕事を終え帰宅すると荷物が届いた。美紗子は差出人の名前を見て息が止まりそうになった。なぜこんなものを・・・。
届いたのは箱に入った真新しいパソコンだった。箱の中に白い封筒を見つけた美紗子の手は震えていた。裏には綺麗な女性らしい字で河内幸子の名前が書かれてある。
この手紙を貴女が読んでいる頃、私はもうこの世にはいないと思います。生きていたら一笑して冗談で片付けられていたかもしれませんが、これは現実で冗談でも嘘でもないのです。こんなことを書かなくても今貴方が読んでいるとしたら事実だとわかっていますね。
これを貴女に託そうと思います。パソコンの中にはある秘密が隠してあります。パスワードを入力しない限りファイルは開けないことはお分かりだと思います。もしものことがあれば貴女がパスワードを入力して秘密を暴露してください。
なぜ私が貴女にこれを託すのか・・・と、きっと不思議に思っていることでしょう。これを託すとしたら誰だろうと考えていると、不思議と頭の中で一番に貴女のことが浮かんできた。結婚式の招待状の一番上にあなたの名前を見たからかもしれないけれど、直感というものはとても大事だと私は考えている。神の啓示と言ったら大げさに聞こえるかもしれませんが、そう思えばそう思うほど自分の直感は正しいと思えた。
貴女はおそらく戸惑っていることでしょう。わけのわからないものを託されるなんて私が貴女の立場だったら同じ気持ちだったでしょうね。できるなら永久に開かれないことを願っていますが、もしもの時は貴女がファイルを開き、貴女が一番と思う最良の方法で活用してもらいたいと思っています。
もうひとつ貴女に頼みたいことがあります。私のロッカーの私物は家族の元に届けてほしいのですが、黒い小さなバックは貴女が持っていてください。そのバックはあなたが窮地に立たされた時に、貴女を助けてくれるアイテムになるはずです。それだけでなくパスワードを示すヒントでもあるので、失くさないようにくれぐれも注意してください。
下の番号を暗記して、この手紙を焼いてください。
これを貴女に託そうと思います。パソコンの中にはある秘密が隠してあります。パスワードを入力しない限りファイルは開けないことはお分かりだと思います。もしものことがあれば貴女がパスワードを入力して秘密を暴露してください。
なぜ私が貴女にこれを託すのか・・・と、きっと不思議に思っていることでしょう。これを託すとしたら誰だろうと考えていると、不思議と頭の中で一番に貴女のことが浮かんできた。結婚式の招待状の一番上にあなたの名前を見たからかもしれないけれど、直感というものはとても大事だと私は考えている。神の啓示と言ったら大げさに聞こえるかもしれませんが、そう思えばそう思うほど自分の直感は正しいと思えた。
貴女はおそらく戸惑っていることでしょう。わけのわからないものを託されるなんて私が貴女の立場だったら同じ気持ちだったでしょうね。できるなら永久に開かれないことを願っていますが、もしもの時は貴女がファイルを開き、貴女が一番と思う最良の方法で活用してもらいたいと思っています。
もうひとつ貴女に頼みたいことがあります。私のロッカーの私物は家族の元に届けてほしいのですが、黒い小さなバックは貴女が持っていてください。そのバックはあなたが窮地に立たされた時に、貴女を助けてくれるアイテムになるはずです。それだけでなくパスワードを示すヒントでもあるので、失くさないようにくれぐれも注意してください。
下の番号を暗記して、この手紙を焼いてください。
暗記する理由はいずれわかるはずです。
****PS

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貴女のパソコン用のパスワードは******です。このパソコンは貴女のものです。私のパスワードはファイルを開く時に必要ですが、それ以外はあなたのパスワードで自由に使ってください。
幸子直筆の手紙をキッチンで燃やしてから美紗子はパソコンを開いた。起動して自分のパスワードを入力する。なぜ彼女の願いを受け入れようとしているのか自分での良くわからなかった。彼女の言う秘密とは一体どういうものなのかはわからないし、その秘密が何を齎すのかもわからないのに・・・。
手紙の文面からも彼女の自殺の理由はわからない。ただ、秘密が何であるのかがわかればおのずと答えに辿り着けるに違いない。
いずれにしても彼女のロッカーを整理してしまわなければならない。何が起こるかはわからないが、とりあえず彼女の望みを叶えるしかなさそうだ。
家族の元に届けるのは気が重かった。できるなら幸子の家族や婚約者とは関わりたくないだけでなく、彼女に関わる全てから距離をとり、一刻も早く過去のものにして何事も無かったのだと思いたかった。
幸子直筆の手紙をキッチンで燃やしてから美紗子はパソコンを開いた。起動して自分のパスワードを入力する。なぜ彼女の願いを受け入れようとしているのか自分での良くわからなかった。彼女の言う秘密とは一体どういうものなのかはわからないし、その秘密が何を齎すのかもわからないのに・・・。
手紙の文面からも彼女の自殺の理由はわからない。ただ、秘密が何であるのかがわかればおのずと答えに辿り着けるに違いない。
いずれにしても彼女のロッカーを整理してしまわなければならない。何が起こるかはわからないが、とりあえず彼女の望みを叶えるしかなさそうだ。
家族の元に届けるのは気が重かった。できるなら幸子の家族や婚約者とは関わりたくないだけでなく、彼女に関わる全てから距離をとり、一刻も早く過去のものにして何事も無かったのだと思いたかった。

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