『教会で死んだ男』(早川書房クリスティ文庫62)より…表題作 宇野 輝雄訳 2003年刊 | 実以のブログ

『教会で死んだ男』(早川書房クリスティ文庫62)より…表題作 宇野 輝雄訳 2003年刊

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この本の表題作ですが、最後に掲載されています。
ロンドンパディントン駅からかなり鉄道に乗ったところにあるチッピング・クレグホーン村がが舞台。牧師の妻、バンチ・ハーモン夫人が花壇で育てた菊を花びんに生けているところから始まります。「ユリの花があればいいんだけど」「こんなもしゃもしゃした菊にはもう倦きたわ」と思いつつ…

 

もしゃもしゃした菊ってこんな感じかな? この写真は上野東照宮のダリア祭りの時、咲いていたクジャクソウです。

この部分を読んで宗旨はちがうけど子供の頃住んでいた寺の庭にもやはりもちょっともしゃもしゃした草丈の低い黄色や紫の菊があったのを想い出しました。あれもおそらくは仏前に供える目的で育てていたのでしょう。育てるというより半自生で幼い私が摘んで遊んでも怒られもしませんでした。それから黄色い芯を白い細長い花びらが取り囲んでいる、マーガレットみたいだけど

マーガレットのように花も葉も繊細ではない、今まで調べた限りではシャスターデージーである可能性が一番高いキク科の花も西側の庭いっぱいに咲いていました。

 

これは今年の夏に撮った白いユリ。品種にもよるでしょうけどもしゃもしゃした、つまり花の小さい菊よりユリよりもずっと育てるのに手間がかかります。。
 


ともあれ、菊の花瓶を抱えたバンチは日光を浴びて宝石のように輝くステンドグラスのある祭壇のそばに、45歳ぐらいの男が倒れているのに気づきます。男は銃で撃たれて瀕死…バンチはに村の医師グリフィス先生を呼びますが、手当もむなしく男は息をひきとります。「たのみます」という言葉を遺して…

 

身元の確認にやってきたのはエクルズ夫妻。死者は夫人の弟で最近、拳銃をもったまま失踪、自殺したのだろうといいますが、違和感を感じたバンチ。
亡くなった男が発見時に口にした「サンクチュアリ」という言葉の口調が
夫のハーモン牧師と同じ。つまり男は牧師と同じような博識で教育のある
男でないかと…エクルズ夫妻には品がなく、しかも死者の名前をまちがえている…


死んだ男の背広に縫い込まれていたものを持ってバンチはミス・マープルの元へ。甥のレイモンドのロンドンのアパートに滞在中だったミス・マープルはバンチにくれぐれも身辺に注意するように言います。相手は目的のためには人殺しもいとわない何者か…

 

ミス・マープルが洗礼式の名づけ親だったバンチ・ハーモンは弟子、あるいは2代目?


被害者がチッピング・クレグホーンにやってきて撃たれたのは愛する者のため。ラストでバンチはまたまた菊の花を生けながら死者の願いをかなえようと心に決めるのです。

のどかな村の牧師館の日常から始まりますが、ミュージックホールの踊り子からアジアの王族、古代インドの国王のエメラルドまでからんだミステリーです。瀕死の男の言葉から始まる点は『なぜエヴァンズに頼まなかったのか』に。静かな日常にいきなり死体が現れる点は『書斎の死体』に似ていますが、

あれほど真相は陰惨ではないので、安心してお読みください。