グレース・ド・モナコ、グエン・ロビンズ共著 『モナコ公国グレース公妃の花の本』 | 実以のブログ

グレース・ド・モナコ、グエン・ロビンズ共著 『モナコ公国グレース公妃の花の本』

木幡和枝訳 1982年4月中央公論社
表紙の写真はこちら
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この本が出た年の9月、主著者モナコのグレース公妃は交通事故で亡くなりました。よりによって運転中に脳の病気が起きるなんて、前半生にハリウッドでアカデミー賞に輝き、高貴な身分の人と結ばれて~妃と呼ばれる位につくどちらか一つでも大変なのを一人で両方という栄華を極めた反動?で悲運に見舞われたのかなと思いました。この本を買ったのはその訃報の前か後か、記憶が定かではありません。4,800円とまだ社会人ではなかった私には高価で公妃のファンでもなかったのになぜこの本を入手したのか?それも不思議です(笑)。父が女優時代の公妃をわりと好きだったらしいので、ああいう女性になることを期待して買ってくれたのかもしれません

なぜこの本を久しぶりにひっぱりだしたかと申しますと先月のブログでも書きましたがこの春は例年よりもスズランの花を見る機会にめぐまれたからです。このブログの写真は4月25日に用事があって行った神田へ行った時、書店街に近いあるマンションの植え込みで咲いていたものです。数年前、
神田で働いていたころに見つけていたスズラン、あれからオリンピックやら
いろいろありましたが、今も同じ場所で咲き続けてくれていてラッキー。

グレース公妃もスズランを愛し、この本の第16章にレーニエ大公との結婚式のブーケにドイツスズランを選んだと書き、その時の写真も載っています。
ドイツスズランですから上記の写真のものより花も草丈も大きいようですが、
写真でみるとバラなど他の花も入れず、スズランだけなので細かな花が点々としている感じでウェディングブーケにしてはやや寂しい感じもします。
スズランはてっぺんまで咲いてしまうと最初に開いた下の花はしぼみかけて
しまうものですから、もしかすると生花ではなく造花なのかなという気もするのですが、モノクロの写真なので定かにはわかりません。
第1章の初めに上質のコットンのように見える白いレース風の生地に可憐な花柄を散らしたドレスの公妃の写真と共にある言葉。
 
 花と、生活の一部となって融け込んできた花の楽しさについて書いてみました。専門家による専門家のための本ではなく、むしろ、この本を通して花が与えてくれる歓びと満足をみなさまにお届けできれば。というのが私の願いです。
 
花の伝説、美術、文学、バレエや音楽、アートフラワーや貝細工の花、織物刺繍、陶器などさまざまな分野に登場する花について豊富な図版と共に解説しています。ポプリと香料、食べ物と飲み物まで…思えば、ローズマリーという植物を初めて知ったのはこの本の「薬草」の章です。ローズマリーの現物を見たのはそれよりずいぶん後だったように思います。この章によれば「頭から悪魔を追い出すには一本のマリーゴールドがあればよい」「マリーゴールドの花弁を煎じた液ですすぐのも、髪を清潔につややかにします」とのこと。マリーゴールドが庭にいっぱい生えているという方は試してもいいのではないでしょうか。
 
とくに眼の不自由な人びとのために設計された「香りの庭園」についての
章にはスイセン、ジャスミン、ライラック、ジンチョウゲ、ユリ、タイサンボクなどが紹介されています。
 
「バラ」の章はシートン卿夫人がグレース公妃の庭を訪ねて来た時の
「あら、私の庭には妃殿下がいらっしゃるのにこちらの庭には私がおりませんわ」という言葉で始まります。つまり公妃の名をつけたピンクのバラ「グレース・ド・モナコ」がシートン卿夫人の庭にあるのに、「レディー・シートン」という名のバラがモナコの宮殿にないということ。セレブの方々の間でのみ成立する会話ですね。このグレース・ド・モナコの写真は第1章に載っています。私は後年鎌倉文学館のバラ園でこの現物も見ました。 ちなみに上の写真はやはり神田のビルの前に咲いていた短く仕立てられたバラですがグレース・ド・モナコではありません。念のため(笑)。
 
もしかするとハリウッドの映画より情熱を注いだではないかと思われる公妃の
押し花画やその制作中の写真も掲載されています。公妃は押し花の良い材料が見つかることを期待して、いつも小さな折りたたみの持って出かけたのだとか。
 
今回、拾い再読?をして気づいたのですが、「詩」の章に日本でマンガの
題になったエミリー・ディキンソンの詩もシェークスピアやワーズワースと共に紹介されています。この本によればシェークスピアにはスミレが18回、マリーゴールドが5回登場するとか。どちらも日本でもよく見かける花ですがそう聞くとなんだかありがたいような…。公妃は「学校に行っている頃からシェークスピアのソネットが大好きで、旅行に行くときには必ず1冊持つように心がけています」とのこと。また「ポプリと香料」の章の最後では「これまでに出会ったなかで顔の色艶が一番美しいと思った女性は、もう80歳もかなり越された
ベイトマン卿夫人です」とあります。毎年冬をモンテカルロで過ごすベイトマン
卿夫人の秘訣は毎日顔の手入れにバラ水を使うこと。バラ水っていわゆる
ローズウォーターとして売られているものでいいのでしょうか? 赤いバラの花びらが手に入るなら自宅で作るレシピも書かれていますが、ともあれ
スキンケアはシンプルなのがいいってことですね。
 
「私の好きな庭」の章ではモナコの観光名所として知られる異国風庭園(サボテン公園)を紹介。人の背丈よりも大きいにょきにょきしたサボテンが林立する中を楽し気に散策したり、日本の100円ショップにもありそうな小さなサボテンがずらりと並んでいるのを身をかがめて眺める公妃の写真があります。
夫君の曽祖父アルベール1世がサボテンをコレクションし始めたとのこと。
 
日本の文化と日本人に好感を持ち、日本の読者のために特別に前文を
書き加えてくださったグレース公妃。もしももう少し長く生きられたら
日本の70年代にサボテンが巨大化して暴れるお話が作られたことを
この本の改訂版に書いてくださったでしょうか?(『ウルトラマンA』第12話)
 
巻末に索引もありますから、花のブログを書く時などに引用
しても面白いかもしれません。