德川家斉と回想する『ハプスブルグ展』
『ハプスブルグ展』を見た翌日、録画しておいた
德川家斉についての歴史番組を視ました。
実以の脳内の座敷。襖が開いて衣冠束帯の額の広い男が現れ、床の間の前に座る。
実以: これはこれは徳川家斉公、お初にお目にかかります。私、あまり大奥が舞台のドラマとか視ませんので…。
家斉: 今年は国営放送の日曜夜八時のドラマがおそく始まったと聞くが、余があの時間の主役になるわけには行かぬかのう。
実以: もう少し、夜更けの、子供は視ない刻限にお出まし頂きたく存じます。
家斉: 余の子ら一人一人の運命を一回一話完結で語るだけでも一年以上放送できるであろうに。
実以: 生れたばかりで養子に出されたり、幼稚園に行く年頃なのに婚約させられたり、あなたの若様や姫様たちは幸せでしたか?
家斉: そのあたりは…図書館で調べるがよい。
実以: そういえば、この間視た歴史番組では、あなたはただの色好み将軍ではなくてお子様たちを、あちらこちらの大名に養子に出したり、嫁がせる徳川ファミリー計画で支配を安定させようとしたとか…これはヨーロッパのハプスブルグ家と同じ政策だとか歴史学者の先生がおっしゃっていましたね。
家斉: そうじゃ、切実な政策じゃ。
実以: 国営放送の番組で学者先生が妙にほめはじめた人は―しばらくするとドラマの主役になったりしますわねえ…真田幸村についてももし大坂の陣の時にお宅のご先祖殺害が成功したら、その後の歴史が変わったかもって話がどんどん大きくなるから首をかしげていたら…。
家斉: そうじゃ、言うなれば…余は史上最も生産性の高い征夷大将軍じゃ。
実以: 御一人で若年人口を50人も増やしたヒーロー?
家斉: であるからの、そなたの時代、この国は生まれる子供が少なくて困っておるのであろ、全ての男に余に見習えとは言わぬが、余裕のある者は側室を持つことを認めてはどうじゃ。そうすればその、どこの誰が不倫したとか言って大騒ぎをせずとも済む。
実以:そりゃ、どこの芸能人夫婦の夫の方が若い女に手を出したなんて、奥様は御怒りでしょうけど、しょせんは家庭内の話ですから、人手や時間を使って
報道しなくていいと思いますけどね。
家斉: 男ばかりではいかんと言うのであれば、女も望む者は夫を一人と決めずともよいとしよう。さすれば、効率的に子供を増やせるのではあるまいか?
実以: 子供、つまり人間を生産性を上げて効率的に世に送り出すなんて…(身震いする)自分の子供のことを図書館で調べろなんていう父親なんて。
家斉: 余が生きていた頃は子供が生まれて成人するということがとても難しい、奇跡のようなことであったのじゃ。それだけはわかってほしい。
実以: 21世紀だって楽なことではありませんわ。ところで先日、先程お話の出たハプスブルグ家の財宝の展覧会を見て参りました。
床の間に女帝マリア・テレジアの肖像が現れる
実以: そのハプスブルグの女帝です。その国では女も征夷大将軍のような地位につくことができたのです。16人お子様を生んで、ヨーロッパのあちらこちらの国の王と結婚させたのだとか。
家斉: 16人! そういう側室が余にもいたらのう…
実以: そのように効率的に世に送り出された子供たちの全てが幸せになれたわけではなくて、他国に嫁いだ末の娘は打ち首になりました。乱暴なたとえですが大政奉還のようなことが起きたのです。

