2019年の観劇より―国立劇場10月公演『通し狂言天竺徳兵衛韓話』(てんじくとくべえいこくばなし
青春時代にはいわゆる伝統芸能にあまり興味のなかった私は40を過ぎて通信制大学のレポートを書く必要から始めて歌舞伎を劇場で観た時、自分の心持ちが特撮番組を視ている時のものに似ていると感じました。
歌舞伎と特撮には共通するものがあるのではないか?
円谷英二の前世は四世鶴屋南北だったのではないか…スピリチュアルを信奉してはいないのですが、なんと申しましょうか? 常人には考えも及ばない仕掛けを考えて舞台で、映像で人々を魅了した点が似ているように思うのです。
そんなわけでこれまで『盟三五大切』『絵本合法衢』『桜姫東文章』などを観ました。歌舞伎鑑賞の前にはいつも図書館で関連書籍などを読んで予習するのですが、今回は観に行く気力が出るかどうか自分でもわからず…
直前になって空席などを調べてみたら休日の昼の部に幸運にも2800円で
2回最前列(端ではありますが)が取れました。
公演サイト
https://www.ntj.jac.go.jp/kabuki/2019/kabuki_10.html
通しで上演されるのは20年ぶりとのこと。重い腰を上げて観て本当によかったです。チケットが安く取れたのに気をよくして公演プログラムと上演台本を
買ってしまいました。
序幕『北野天満宮鳥居前の場』『同別当所広間の場』ではこのお話の2枚目である佐々木桂之介がその恋人銀杏の前に横恋慕する山名時五郎氏連の謀略によって追い詰められます。美女をめぐる美男と敵役の争いは歌舞伎の定番ですが、佐々木家の家臣石割源吾が山名より先に桂之介が主君足利義政より預かった宝剣『浪切丸』を盗んでいるのです。
南北の芝居はこんなふうにあらすじや人間関係を文で書こうとすると
ややこしくて面倒になるのですが、 実際に上演を観ると不思議に
難解には感じられず、すっと受け入れることができるのです。
『盟三五大切』を観た時もそう感じました。 これは私に限っての
ことかもしれませんが、鑑賞中に眠くなることもありません。なので
今まで歌舞伎に縁のなかった方が初めて見る場合、南北はお勧めです。
いくらか血なまぐさかったり、愛憎がドロドロするのが苦手でなければ。
二幕目『吉岡宗観の場』。罪を得て家老吉岡宗観の屋敷に蟄居する桂之介ら
の前で5年前に漂流して天竺へ行ってきたという船頭徳兵衛が異国の
話を語ります。いよいよヒーローの登場。ダークヒーローなのですが。
この徳兵衛の語りのシーンがこのお芝居の見せ場の一つ。実在する
沖縄やハワイの観光名所が語られて客席を沸かせます。その後、
徳兵衛は屋敷の主の宗観の顔に死相が出ていると指摘。
紛失した浪切丸が見つからないことに絶望して自害しようとする桂之介を
宗観はとめて『浪切丸』は自分が詮議するといい、彼と銀杏の前を
逃がします。そして将軍の使者としてやってきた梅津掃部と山名時五郎の
前で責任を取って自害、そして徳兵衛に向かい、実は父親であると
語ります。宗観は元は明の国王の臣下木曽官(もくそかん)で正体を
隠して義政に仕え、蝦蟇の妖術で謀反を起こそうとしていたのです。
この術に必要だったのは名高き名剣『浪切丸』と蛙千匹の血。
庭の筧に隠していた刀を渡し、徳兵衛に妖術を授けます。その
妖術で出現した蝦蟇に乗って屋敷をつぶし、追手を翻弄する徳兵衛。この
この場面で登場する巨大な蝦蟇がこのお芝居の目玉。確かに巨大ですが、ぴょこん、ぴょこんした動きにはかわいらしさを感じました。
それにしても三歳の時に置き去りにした親の宗観から徳兵衛がいきなり謀反の野望を受け継ぐのは不思議ですが、そこが歌舞伎なのですね。
クライマックスの舞台は梅津掃部の館。この場のヒロインは掃部の側室葛城。葛城が摘んだ花の中から蛇が這い出しますがそれは彼女が巳の年月日時が揃った生まれのため。
掃部が佐々木家の世継ぎを匿い、蝦蟇仙人に帰依しているのではという疑いをただしに将軍から使わされた細川修理之助政元。座頭徳市が現れ、木琴をかなでながら歌いますが、正体が天竺徳兵衛であることを見抜かれて逃げます。
二幕目『吉岡宗観の場』。罪を得て家老吉岡宗観の屋敷に蟄居する桂之介ら
の前で5年前に漂流して天竺へ行ってきたという船頭徳兵衛が異国の
話を語ります。いよいよヒーローの登場。ダークヒーローなのですが。
この徳兵衛の語りのシーンがこのお芝居の見せ場の一つ。実在する
沖縄やハワイの観光名所が語られて客席を沸かせます。その後、
徳兵衛は屋敷の主の宗観の顔に死相が出ていると指摘。
紛失した浪切丸が見つからないことに絶望して自害しようとする桂之介を
宗観はとめて『浪切丸』は自分が詮議するといい、彼と銀杏の前を
逃がします。そして将軍の使者としてやってきた梅津掃部と山名時五郎の
前で責任を取って自害、そして徳兵衛に向かい、実は父親であると
語ります。宗観は元は明の国王の臣下木曽官(もくそかん)で正体を
隠して義政に仕え、蝦蟇の妖術で謀反を起こそうとしていたのです。
この術に必要だったのは名高き名剣『浪切丸』と蛙千匹の血。
庭の筧に隠していた刀を渡し、徳兵衛に妖術を授けます。その
妖術で出現した蝦蟇に乗って屋敷をつぶし、追手を翻弄する徳兵衛。この
この場面で登場する巨大な蝦蟇がこのお芝居の目玉。確かに大きいのですが、ぴょこん、ぴょこんした動きにはかわいらしさを感じました。
それにしても三歳の時に置き去りにした親の宗観から徳兵衛がいきなり謀反の野望を受け継ぐのは不思議ですが、そこが歌舞伎なのですね。
クライマックスの舞台は梅津掃部の館。この場のヒロインは掃部の側室葛城。葛城が摘んだ花の中から蛇が這い出しますがそれは彼女が巳の年月日時が揃った生まれのため。掃部が佐々木家の世継ぎを匿い、蝦蟇仙人に帰依しているのではという疑いをただしに将軍から使わされた細川修理之助政元。座頭徳市が現れ、木琴をかなでながら歌いますが、正体が天竺徳兵衛であることを見抜かれて逃げます。
そこへ将軍の使と名乗って斯波左衛門義照がやってきました。互いに偽物だと疑いあう政元と義照。梅津の奥座敷で側室葛城はなぜか斯波に恋するかのような態度を取り、小指を切ります。そしてその血に驚いた斯波に斬りかかり、斯波に殺されます。
斯波の正体は天竺徳兵衛。正体を表して名乗りをあげ、呪文を唱えますが
巳の年月が揃った女、葛城の血を浴びてしまったため妖術は使えなくなって
おり、『浪切丸』を奪い返されてしまいます。それでも降参せず、今は逃げるが再来するという徳兵衛。
吉岡屋敷で天竺の話をする徳兵衛の着物がアイヌ風だったり、宗観が
息子に授ける呪文に「南無さったるまぐんたりぎや」「はらいそ」などキリシタンを思わせる言葉が入っていたり江戸の人々が考えた異国情緒、ごちゃまぜの
魅力たっぷりの歌舞伎です。テレビドラマにするとしたら特撮が必要ですね。
最後に勝つ正義の味方は山名と吉岡の陰謀を見抜き、側室の命を
犠牲にして刀を取り返した梅津なのですが、観客の心をとらえる
主人公はまぎれもなく天竺徳兵衛。寛永年間に長崎からマカオ、
ベトナムなどへ渡ってきた実在の人物がモデルとのこと。異文化への怖れとあこがれから生まれたヒーローですね。
今年は元気が出ない時、「南無さったるまぐんたりぎや」と唱えてみようかしら(笑)

