戯曲?アルバイトの面接(ウルトラゾーン風)完結編
ヴァルドン: (メイファンに)メイファンさん、私の知っている限りアンドロメダ座あたりから地球に来る女性には、こちらの主任さんのような、劇団の書類選考に落ちそうな方はあまりみかけないのですが?
メイファン: そうなんです。父の研究室のファイルに入っているアンドロメダ星雲人の女性は皆、ひらひらしたドレスが似合うような感じの、もっとかわいいというか?
ヴァルドン: この国の言葉でいう容姿端麗ですね。
メイファン:それからたいてい大きな宝石のついたヘアーバンドとかペンダントとかステッキとかを持っているんです。
ヴァルドン: それで何か気にいらないことがあると宝石から光を出して攻撃したりしますよね・
メイファン: 私も不思議に思って長岡主任の髪の毛と写真を父に送って分析してもらいました。確かに一般の地球人とちがうところがあるけど、アンドロメダの血は四分の一だけだからルックスはおそらく御祖父さんの方に似てしまったのだろうと父は言っていました。
ヴァルドン: 主任のおばあさんはもっとメリハリのついた体型だったのでしょうか?
たとえばこの方のような。(キミエが置いていった演劇史の本の表紙の女優を見る)
メイファン: 主任は何も超能力はないって言っているけど、社長や部長や課長が主任と話をした後、必ずうなり声をあげて頭を抱えています。
ヴァルドン: 近づく者全てに頭痛を起こさせる―それは超能力かもしれませんな。
キミエ、子機を持って再び登場。
キミエ: それではヴァルドンさん、今日はお疲れ様でした。検討した上で後日、採用かどうかのご連絡をさしあげます。
ヴァルドン: ありがとうございました。
ヴァルドン、テレポーテーションで退場。キミエ、電話をかける。
キミエ:ああもしもし、社長ですか? 今面接終わりました。すごい語学力の持ち主ですね。
それに巨大ヒーローと戦った伯父さんとちがって優しい、いい人です。ただ、やはりうちの客層にはああいう人の接客は向かないのではないでしょうか? お年を召した方も多いので眼から出す光線で本を動かしたり、領収証なんか発行したりしたら腰をぬかしたり、卒倒されてしまう方もいるかもしれません。あの方にはもっといい働き口があるのではないでしょうか。
ナレーション: その夜、ジェレミー・ヴァルドンは祖父のサイラスにメールを送った。
ヴァルドン:(声のみ) 御祖父ちゃん、元気ですか? 今日、面接を一件受けました。もしそこに採用されたら上司になる女性は御祖母さんがアンドロメダ53星雲から来たとのことで我々の立場にも理解があるようでした。ただ短いスカートとか正義の組織のびったりした制服が似合うスラリとしたスタイルとか、ケガをした人に自分のスカーフでさっと手当してあげられる手際の良さを持った女性に対して強烈なコンプレックスを抱えているようで、こういう人の下で働くのは気が進みません。これからも就活がんばります。いつかきっと、御祖父ちゃんを登用してくれたセリカ王国のヒースク王のような人がぼくの実力を認めてくれると信じています。
ナレーション: ジェレミー・ヴァルドンはフォルモサ書房には採用されなかった。しかし藤堂社長の紹介で聖ミカエル大学言語学研究所に迎えられ、現在は民族言語と古代セリカ文字の研究にいそしんでいる。
―とりあえず完―
作中に登場する個人名、団体名はすべて架空のものです。古代文字、演劇史に関する学説も創作です。(筆者)
参考文献
川村花菱 『松井須磨子―芸術座盛衰記』(青蛙房・1968初版・2006新装版)
斎藤美奈子『紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』(筑摩書房2001)
渡辺保 『明治演劇史』(講談社・2012)
円谷プロダクション監修『ウルトラヒロインズ』(角川書店・2013)