イングランド王妃の影武者?
英国の女流劇作家キャリル・チャーチルの「トップ・ガールズ」という戯曲の
第1幕では人材派遣会社で専務になったヒロイン、マーリーンの昇進祝いのディナー
パーティに女性探検家のイザベラ・バードや女であることを隠して教皇になったヨアンナや鎌倉時代の歌人の後深草院二条など歴史や芸術で名を知られた各時代の女性たちがやってきていわゆるガールズトークを繰り広げます。不肖、私もそれに見習って、私の頭の「茶の間」にやってくる各時代の女性たちとの会話の一部を戯曲風に書いてみたいと思うのです。今までこのブログではお話しておりませんでしたが、私の頭の中の茶の間?には歴史上の人物か、物語の登場人物らしき人があらわれておしゃべりをしていくことがあるのです。どうなることやら。まずは前回の日記の最後に現れたヨーロッパ宮廷衣装の婦人のお話をきいてみましょう。
ヨーロッパ宮廷衣装の婦人: わらわはイングランド王妃キャサリン・オブ・アラゴン…
のそのう、そなたの国の言葉でいえば影武者のキャサリン・オブ・カネゴンじゃ。
美以: 王妃に影武者がいたんですか?
カネゴン王妃:その『薔薇の冠』を読んでそちにもわかったであろう。我が主君キャサリン王妃の立場がどれほど危ういものであったか。危難の折には王妃の身代わりとなるのが我がつとめ、ゆえに王妃に似た装いも、いくらか尊大な立ち居ふるまいもゆるされておる。
美以: 王妃の替え玉なら影武者じゃなくて、「影王妃」というべきでございましょうか?
カネゴン王妃:キャサリン様のお命をねらう者は数知れず、「影王妃」はわらわばかりではない。
美以: きっとキャサリン・オブ・ヒバゴンとか、キャサリン・オブ・ザイゴンとかガスケゴンとか、怪獣図鑑をひもとけばいくらでも影王妃があらわれそうですね。キャサリン・オブ・モエヨドラゴンなんていう影王妃はきっと中国武術の心得があって、ヘンリー王やアン・ブーリンの送ってくる刺客をみんな返り討ちにしてしまうんでしょうね。
王妃:ドラゴンは存じておるがヒバゴンとは何じゃ?
美以: 昭和40年代に広島県と島根県の境にある比婆山連峰付近で出没したと言われる謎の類人猿です。
王妃:全くつまらんことをよくおぼえておるのう。そちは。
美以:カネゴンもヒバゴンも小学生の時読んだ雑誌で知ったの
です。カネゴンについても、がま口型の財布のような口をしていてお金を食べる怪獣だというのだけは存じておりますが、カネゴンが出てくるドラマが放送されたのは私が物心つく前でしたから、どんなお話に出てくるかは知らないのです。
カネゴン王妃: ところで、ステラよ。
美以: (あたりを見回して)ステラって誰?
王妃「忘れたか、そちが畏れ多くもキャサリン王妃と同じ宗旨の学校に2年ばかり通っておった頃、なぜだかそういう英語名で呼ばれておったではないか。
美以:そんな時代もありましたね。ちなみに私に容姿性格がよく似ていたらしい遠縁のおばさんはマルチン・ルターが、さらにその妹はヘンリー8世王が始めた宗旨の信者です。こうしてみると私の家系は結構チューダー王朝と縁が深い、かも、しれませんねえ。基本的にうちの宗旨は浄土宗ですが。
カネゴン王妃: そちに親戚呼ばわりされたらチューダー王家も迷惑じゃ。(嘆息をついて)全く日本人というのは宗教的にめちゃくちゃじゃ。キャサリン王妃様が何のためにあれほど苦労されたかのかわからん。ところでそちはさっきから、キャサリン王妃やイザベル女王を武田信玄や上杉謙信にたとえたりしておるようじゃが、まあこの二人はそちの国では尊敬されている英雄であろうが、我が主君とその母君にくらべたら、いささかスケールが小さいのではあるまいか。
その時、鎧を着て、白い布で頭を包んだ女が、カネゴン王妃の隣に現れる。