【君の声.42】キュヒョンの車を見送り、家へ入ると一気に体の力が抜けた。「さむ…」冷え切った体を温めるため、湯船にお湯を張り、上着を脱いだ。その時彼に借りたDVDの事を思い出し、バッグから取り出した。無造作に貼られたポストイット。そこに書かれた彼の名前。 #SJで妄想
【君の声.43】彼の名前をそっと指でなぞる。(金鐘雲…さん…)彼の本名だった。名前の後に続く、電話番号。何の躊躇いもなく教えてくれてたのには驚いた。「アイドルなのにいいのかな…?」少し不安になるものの、DVDを返すためだと自分に言い聞かせ、またバッグに押し込んだ。 #SJで妄想
【君の声.44】あの日から2日が経った。彼に借りたDVDも見終わり、昨晩思い切って電話をしてみた。そしてちょうど予定も合ったので、今日の夜に会う事になったのだ。昼間は授業があるため大学に出向く。昨日は緊張で眠れなかったし、授業に出ているだけで気が紛れた。#SJで妄想
【君の声.45】昼休み、中庭のベンチに座り大きく深呼吸をした。家から作って来たサンドイッチを頬張る。風は少し冷たくてマフラーの温もりが心地良かった。『1人ですか?』「キュヒョンっ」いつのまにか後ろに立っていたようで、上から見下ろすようにクスクスと笑っている。 #SJで妄想
【君の声.46】頬が冷たくなり、咳が出る。『…雨に濡れた後…大大大でした?』「んー?」『咳、してるから。』キュヒョンは少し俯いた。「大大大だよー、これはあたしの不注意。」落ち込んだ表情のキュヒョンの肩をポンと叩く。するとタイミング良くキュヒョンの携帯がなった。 #SJで妄想
【君の声.47】『…はい、今から行きます。』電話を切ると、キュヒョンはいつもの表情に戻っていた。『じゃ、そろそろ行きますね。』「またね。」キュヒョンは何か言いたそうな顔をしていたが行ってしまった。時計を見るとまだ13時で、彼との待ち合わせまでまだ少し時間があった。 #SJで妄想
【君の声.48】授業も終わり大学を出て駅に向かう。朝より咳が酷くなって来て、何となく体が熱い。(うー何でこんな日に限って…)マフラーに顔をうずめ、待ち合わせ場所近くのカフェに入った。ホットココアを頼み、席を取る。コートを脱ぎココアを一口飲むと、少し寒さが和らいだ。 #SJで妄想
【君の声.49】時間を潰すためにノートを取り出し、韓国語の勉強をする。好きな歌を聴きながら歌詞を書き出すのだ。シャッフルにして聴いていたはずなのに、タイミング良く彼の歌が流れて来た。(やっぱり…好き…なんだよなあ。)自然と耳から離れなくなる彼の声が印象的だった。 #SJで妄想
【君の声.50】ふと気が付くと待ち合わせ時間が迫っていた。飲み終わったカップを捨て、コートを羽織りマフラーをぐるぐる巻きする。「よしっ」小さな声で気合を入れ、バッグと彼に返すDVDが入った紙袋を手に取る。カフェを出るとさっきよりも冷たい風が、容赦なく頬を撫でた。 #SJで妄想
【君の声.51】待ち合わせ場所に行くと、まだ彼の姿は見えなかった。コンコンと絶え間なく出る咳が気になって仕方がない。(風邪…うつしたらやだな…)そんな事を考えていると、携帯が震えているのに気づく。画面を見ると彼からの着信だった。「もしもし…?」『あ、もう着いてる?』 #SJで妄想
【君の声.52】「はい、着きましたっ」『俺ももう着くんだけど…咳大丈夫?』「えっ?」彼からの予想もしなかった言葉に驚き顔を上げると、彼はすぐ目の前に立っていた。『そこに居たから。』彼の指差した方向には、黒い車が止まっていた。「あの、えっ、と、風邪ひいちゃって…」 #SJで妄想
【君の声.53】『…あんだけ雨に濡れたら嫌でも風邪引くだろ。』そう言ってあたしの顔を覗き込んだ。『顔赤い。』恥ずかしさのあまり後ろに一歩下がる。「あの、これ借りてたDVD…」話題を変えようと持って来た紙袋を手渡した。「ありがとうございました!本当に面白くって!」 #SJで妄想
【君の声.54】「『ラストの台詞が印象的!』」「え?」彼と全く同じ事を言い、言葉が重なった。彼は驚いた表情を見せながらもクスクスと楽しそうに笑った。『…合うよ、映画の趣味。』眉を八の字に下げ、優しく笑う彼。何だかくすぐったくて、でもやっぱり嬉しかった。 #SJで妄想
【君の声.55】記憶があるのはそこまでだった。窓から射し込む光が眩しくて目が覚めた。(…あたま…痛い…)熱が高いのか頭が割れそうなほど痛く、体がずっしりと重い。ガンガンと脈打つように痛い頭を押さえ、ゆっくりと記憶を辿った。(あたしいつ帰って来たんだっけ…?) #SJで妄想
【君の声.56】体と同じくらい重い瞼を開けると、そこには見慣れない天井があった。ハッキリとしない頭でも、ここが自分の家でない事くらいは分かる。起き上がろうと自分にかけられていたタオルケットをよけると、前にも嗅いだ事のある匂いがふんわりと漂った。 #SJで妄想
【君の声.57】(あ、この匂い…)そう思った瞬間、部屋のドアが開く音がした。カチャ。ドアの方を向くと部屋に入って来た彼と目が合った。『あ、起きた。』黒のVネックのTシャツにスウェット姿の彼は、お風呂上りなのか髪は濡れたままで、頬が少し赤かった。『気分は?』 #SJで妄想
【君の声.58】「まだ頭が痛くて…あの、あたし何でここにいるんですか?」彼がパタンとドアを閉める。『倒れたんだよ、昨日。』「え?」『待ち合わせ場所で。熱もあったみたいだし。送ろうにも家どこか知らないから、とりあえずここに連れて来た。』「そうだったんですか…」 #SJで妄想
【君の声.59】『熱計って。』彼から体温計を受け取り、脇に挟む。座っているだけで視線の先がグルグルと回っていて、段々と気分が悪くなって来た。ピピピと体温計が鳴り『見せて。』と彼があたしのすぐそばのベッドサイドに腰を掛けた。『うわ、相変わらず高いな。』 #SJで妄想
【君の声.60】『もう少し寝れば良くなるかも。』彼はふわっと優しく笑い、横になるように促した。タオルケットを丁寧に掛けてくれた彼は、あたしがベッドに入ったのを確認して、PCに向かった。熱のせいなのか、彼の優しさのせいなのか、ドキドキと心臓の音がうるさい。 #SJで妄想
【君の声.61】グラグラと揺れる視線の先は、彼の背中から離れなかった。タオルケットから漂うあの甘い香りは、彼の匂いなのかもしれない。甘くて妖艶で、あたしを虜にして行く。ゆっくりと目を閉じると、聴き覚えのある歌が聴こえる。彼の歌だ。何度も繰り返し聴いたあの曲だ。 #SJで妄想
【君の声.62】彼の声が心地良い。「好き、なんです。」気が付けば、視線の先の彼の背中に向かって言っていた。「きっと…ファンの1人だと言われてしまえばそれまでだけど…」熱のある頭ではここまでが限界だった。彼がくるりと振り返り、驚いた表情であたしを見ていた。 #SJで妄想
【君の声.63】彼は立ち上がり、ベッドで寝ているあたしの横に座った。恥ずかしさと戸惑いで泣きそうになる。『…声だけ?』「え?どういう『好きなのは…声だけ?』黒髪の隙間から覗く切れ長の目が、少し疑わしげに聞いてくる。「あ…あのっ」それでも彼は視線を外さない。 #SJで妄想
【君の声.64】彼の目を見て、心を決めた。そして思い切って自分の思いを伝えた。「分からないんです…だけど…ずっとイェソンさんの声が耳に残るんです。どの曲を聴いても。映画館で会った後も、電車の中で助けて貰った後も、初めてここに来た後も…」理由もなく涙が溢れた。 #SJで妄想
【君の声.65】どう伝えたらいいのか分からず焦る気持ちと、ただのファンだと言われたくない気持ちが入り混じる。『…キュヒョンの声は?』「キュヒョン…ですか?」予想もしていなかった言葉に拍子抜けだった。『うん、キュヒョン。』「えっと、キュヒョンは特に…」 #SJで妄想
【君の声.66】「何か違うって言うか…」返事に困っていると、彼はまた驚いた表情を見せ、その後はずかしそうに俯き、前髪を触った。そして『うん、ありがとう。嬉しいよ。素直に。』そう言って彼は今までで一番優しい顔で笑った。その片方だけ上がる口角があたしの胸を締め付ける。 #SJで妄想
【君の声.67】彼の声が、今自分だけに向けられている。それが心地良くて仕方ない。『何か…ちょっと待ってて。』そう言って彼は部屋を出て行った。5分も経たずに戻って来た彼の手には、大きなマグカップが2つあった。『はい。』手渡されたマグカップの中身はホットココアだった。 #SJで妄想
【君の声.68】思わず顔が緩む。ココアを一口飲むと彼が不思議そうに聞いた。『何か変だった?』「あ、違うんです。あたしココアが大好きで、前に来た時もココアを淹れて貰ったから…」『ああ、女の子はそういうのが好きなのかなって。』また彼が恥ずかしそうに俯いた。 #SJで妄想