【君の声.1】夏の終わりが近づき、街並みが段々と秋めいてきた。カフェで少し勉強して時間をつぶし、映画館へと向かう。人気のある映画のようだが、こうも遅い時間になるとさすがに人もまばらで、隣の人を気にせず席に着けた。証明が落とされ、暗くなる館内に少し緊張する。 #SJで妄想
【君の声.2】ふと気が付くとスクリーンにはエンドロールが流れていた。重い瞼をゆっくりと開け、意識がはっきりしてくるとその様子に驚いた。隣の人にもたれて眠ってしまっていたのだ。「すみませんっ、」パッと顔を上げ体を離す。『いや、気持ち良さそうに寝てたから…』 #SJで妄想
【君の声.3】耳にまとわりつく甘いハスキーボイス。聞き覚えのある声に、心臓が異常に早く脈を打つ。「あの…」その人の顔を見た瞬間、体中の血が全身に駆け巡るような感覚に襲われた。切れ長の目、黒い髪、首から顎に掛けてのライン。全てがあたしの頭の中のイメージと一致した。 #SJで妄想
【君の声.4】体にビリビリと電気が走る。お礼も言いたし謝りたいのに、彼から目が離せず言葉にならない。『これ、面白かったから…また観たら?』そう言って彼は立ち上がり、デニムのシワを伸ばす。彼の言葉にハッと我に返り、急いで言葉を続けた。「あの…本当にごめんなさい…」 #SJで妄想
【君の声.5】アタフタしていると、彼はクスクスと笑い、何も言わずに会釈をして館内を出て行った。彼の姿が見えなくなった瞬間、体の力が抜け、なだれ込むように椅子に座り込んだ。「…本物だった…」今まであたしの目の前に居たのはあのSuperJuniorのイェソンだった。 #SJで妄想
【君の声.6】次の日大学のカフェテラスで、後ろから声を掛けられた。『ヌナ、また溜息ついてますよ。』「きゅひょな!」久々に姿を見た彼は、ためらいもなくアイスティーのカップと教科書をテーブルに置き、隣の椅子に座った。『昨日電話したのに繋がりませんでしたね。』 #SJで妄想
【君の声.7】「あー…充電切れちゃってて。」彼の顔に疑いの色が見える。「今日仕事じゃなかったの?」『…授業に出るから、ヌナに連絡しようとしたんですよ。』そう言ってアイスティーを一口飲んだ。彼の名前はキュヒョン。彼もSuperJuniorのメンバーだった。 #SJで妄想
【君の声.8】留学して来た初日、あたしが日本人だと気付くと頼りない日本語で話し掛けてくれた。今じゃ事ある度に手助けしてくれる。『何か…上の空ですね。』キュヒョンの言葉に顔が熱くなり、顔を隠す。昨日の出来事がまだ頭の中で整理出来ていなかった。「ちょっとね…」 #SJで妄想
【君の声.9】この後も授業のあるキュヒョンと別れ、帰路に付く。電車に乗ると凄い人だった。満員電車は身長の低いあたしにはツライ。段々と息苦しくなって来る。(…気持ち悪い…)足元を見つめる視線がグラグラと揺れる。次の瞬間、電車が大きく揺れ、バランスを崩した。 #SJで妄想
【君の声.10】『大丈夫か?』何かにぶつかった拍子に、頭の上からあの声が降り注いで来た。『すみません、降ります。』その声の主に手を引かれ、人が通る程の隙間もない程混んだ電車を降りた。グルグルと回る視界の中で、彼の後ろ姿だけはハッキリと浮かび上がっていた。#SJで妄想
【君の声.11】まだ眩暈が続いているが、椅子に座っていると段々と気分が落ち着いてきた。『ん。』ペットボトルの水が差し出される。「ありがとうございます…」ペットボトルを受け取り蓋を開けようとするが、力が入らない。するとあたしの手から取り上げ、パキッと蓋を開けてくれた。#SJで妄想
【君の声.12】『…昨日の子?』彼からの思い掛けない言葉に驚き、彼を見上げた。「…気付いてたんですか?」『一度会った人の顔は忘れないから。落ち着いた?』「はい…あの、本当に、すみませんっ」思わず日本語で謝ってしまい、泣きそうになるのを必死に堪える。#SJで妄想
【君の声.13】『日本人?』「はい、今留学中で…」驚いた表情で彼が聞いて来る。『ふぅん。』そっけなく返事をしたかと思うと、時計を見て慌てて携帯を確認した。『悪い、仕事があるから。1人で帰れる?』「あ、大丈夫です。ありがとうございます。」立ち上がりお礼を言った。 #SJで妄想
【君の声.14】そして彼はまた優しく笑って手を上げ、ホームに入って来た電車に乗り行ってしまった。電車を見送った後も、手に残る感覚が消えずにあたしをドキドキさせる。彼は住む世界が違うし、きっとあたしの事も彼の記憶には残らない。だけどあたしの中では違った。 #SJで妄想
【君の声.15】留学して来てキュヒョンと出会い、SuperJuniorと言うグループを知った。彼らの曲を聴いたのも、たまたまTVで放送されていた番組を見たからだった。その時画面に写るキュヒョンより、あの甘いハスキーボイスの持ち主に釘付けになったのだ。 #SJで妄想
【君の声.16】あの声が、あの視線が、あたしの癒しになり、辛い時には必ず彼の歌声に助けてもらった。その声の持ち主が昨日も今日も目の前にいたのだ。(また会いたいな…)手には彼からもらったペットボトルのミネラルウォーター。そっと鞄にしまい、いろんな感情も抑え込んだ。 #SJで妄想
【君の声.17】あの日から2週間が経った。『ヌナ。』「きゃあっ」『そんなに驚かなくても。』駅で電車を待っていると、後ろからキュヒョンにイヤホンを引っ張られた。「ビックリするじゃないっ」『何度も声掛けましたよ?』黒い帽子を目深に被ったキュヒョンがクスクスと笑う。 #SJで妄想
【君の声.18】そのままキュヒョンと一緒に電車に乗り込んだ。いくら帽子をかぶっていると言っても、分かる人には分かる。同じ車両内にいる若い女の子達が、チラチラとキュヒョンを見ていた。「ねえ…視線が痛いんだけど。」『いつもの事です。』「あたし…関係ないのに…」 #SJで妄想
【君の声.19】『電車から降りるまで、アイドル気分が味わえますよ。』とキュヒョンは笑いをこらえながら、あたしを見た。目的の駅に着き「お疲れ様ー、またねー。」『ヌナ、時間ありますか?』「え?うん、用事はないけど…」『じゃ、ちょっと付き合ってください。』 #SJで妄想
【君の声.20】スタスタと歩いて行くキュヒョンについて行くと、彼は大きな書店へと入って行った。『探しているのがあるんです。』そう言って手に取って中身をみてを繰り返し、本を選んでいた。その間携帯を見ながら時間を潰す。『決めました、行きましょう。』 #SJで妄想
【君の声.21】レジを済ませ外に出る。「あれ?雨降りそう。」『本当ですね、行きますか?』さっきまで晴れていた空は一気に雲が厚くなり、今にも雨が降りだしそうだった。「わ、ポツポツ来たかも…」『え?』次の瞬間、大粒の雨が降りだし、歩いているあたし達に容赦なく降り注いだ。 #SJで妄想