しわがよってないか確認して、
仕切りの横から出ている手に差し出す。
それからしばらく衣擦れの音が続き、妙に烏丸が女性であり、仕切り一枚しか挟んでないことを余計に意識させられる。
しかし、
漆はなにか特別な感情を抱くことはなかった。
それは簡単なことである。
漆は感情の起伏に乏しい。
気にしなければ、落ち着いていると思われたりするのだが、
その感情の乏しさは、特に命、生死の感覚にこそ顕著に現れるといえる。
先ほどのように女性の裸を見れば驚きはするし、困惑こそするが、
性的な興奮は一切感じない。
それもそうである。
性欲や性行為とは結局子孫繁栄のための行為であり、子孫どうこうなどに興味のない漆にとって性欲は無意味なものでしかないのだ。
まあ普通ならば、女性の裸など見てしまえば、誰でも驚くし困惑するだろう。
漆自身も大いに驚いていたことだし、それは異常なことではない。
しかし、烏丸のその体は通常とは言いがたかった。
烏丸は来年から高校生になるわけだが、
あまりにもその容姿は整いすぎていた。
本人曰く、
『動きにくいし、無駄に大きな胸なんて邪魔なだけだし、おなかへこんでるのはいいけど、そこまでいいものでもない』
らしい。
これは全国の発育に悩む女子全てを敵にまわすことになる台詞だろうと、そのとき思ったものである。