アルケゴス・キャピタル・マネジメントの
投資失敗が報道されて、1ヶ月が経とうとしている。
この投資失敗がここまで大事になるとは
誰も思わなかっただろう。
ことの経緯はこうだ。
アルケゴスは韓国出身の元ヘッジファンド運用者、
ビル・ホワン氏の私的な資産運用会社。
この会社が米バイアコムCBSに多額の投資をしていた。
この株式を担保にして、複数の金融機関が
デリバティブ取引の与信を供与していたのだ。
3月下旬、バイアコムは株価好調を受けて、
増資を発表した。
この増資に市場は反応し、バイアコムの株価は急落。
増資発表から2日間で2割安となったのである。
アルケゴスとの取引でバイアコム株を担保にしていた
金融機関は追加担保の差し入れを要求。
アルケゴスはそうした要求に応じれなかったため、
金融機関はアルケゴスとの取引解消を図り、
同社との取引で抱えた銘柄の株式を処分。
結果、複数の金融機関が多額の損失を被った。
クレディ・スイス ▲5,200億円
野村HD ▲2,200億円
モルガン・スタンレー ▲1,000億円
三菱UFJ証券HD ▲330億円
みずほFG ▲100億円
報道された金融機関の損失額だ。
この一連の報道で、驚いたことは、
たった一社の増資計画を発端にして、
複数の金融機関が多額の損失を被った事実である。
アルケゴスのような私的資産運用会社は、
ファミリーオフィスと呼ばれ、
証券取引委員会の厳しい規制の対象外だったらしい。
リーマンショックの後、
ヘッジファンドは規制対象として
登録が必須となり、持ち高、
金融機関との取引、財務内容の開示など
義務を負うことになったのである。
多くのヘッジファンドは、
ファミリーオフィスへと業態転換を行い、
規制を逃れた。
ファミリーオフィスが規制から外れ、
金融当局の規制から逃れていたこと。
これが問題の大きな第1点だ。
次に、規制を逃れたことにより、
アルケゴスは、レバレッジの効いた取引を拡大して、
過大なリスクテイクを行っていた。
金融機関に多額の損失が生じることになった。
これが大きな2点目の問題だ。
足元では、他の金融機関の損失に関する報道はない。
リーマンの時のような事態にはなっていない。
ただ、アルケゴス問題は、当局の規制のあり方、
金融機関側のリスク管理のあり方に、
大きな課題を提示したと言わざるを得ない。