さて。
舞台俳優のやり方③

ですね。




台本のストーリーを理解し
台本のメッセージを理解し
自分のキャラクターの役割を理解し

ようやく役作りへ
②、③作業として、自分のシーンと、自分のセリフをチェックし


④単純な「正しい日本語 ≒ 自然と入って来る日本語」としてのイントネーションをチェックし

と、ここまで。

声優さんと、俳優さんの仕事はここからが違います。

ということはつまり、

ここまでは、声優さんも、俳優さんもやらなくてはいけない。

しかし、特に④は、舞台俳優はやらない人が多い。

これが、前述した、

「声優に舞台やらせたら上手いけど、舞台俳優に声優やらせたら下手」

の原因。

という訳です。


じゃあ、本題。

声優さんの技術の話は本題では無いので、知りたい人は、別途ご連絡下さい。


俳優の仕事の話です。

因みに、これは、声優さんでは、100%使いません。

つまり、

舞台上での所作の話

ということですね。




そして、とにかくパターンが無限にあるの「例えば」を沢山だして説明したいと思います。

【例題】ってやつですね。
沢山、例題をやっいるうちに、解って来るかと。


因みに、流れとしては、
⑤相手のセリフの料理
(反応点)
⑥自分のセリフの料理
(演技プラン)

ですが。
同時にしか説明出来ないので、
ここは⑤、⑥
みたいに注釈を入れます。



基本的には「あなた」「A」だと思ってください。


B「本当に身勝手で、卑怯な奴だよ、Cって野郎はよ!」
A「テメエ もう一回言ってみろ!

というやり取りがあったとします。
Aのステータスとして
「Cは本当はそんなヤツじゃない事を知っている。Cの親友」
としましょう。


ここでAであるあなたがチェックすることは
『C=卑怯という言葉に反応する』
つまり、
『Cは卑怯、という言葉が聞こえて、認識し、瞬間に感情が動き、息を吸い、「テメエ!」』
となる、ということです。

(これがここの⑤相手のセリフの料理です。)


この語順で有れば、「C」という単語が聞こえたら、認識→感情の動き→呼吸
で、「テメエ!」で良いでしょう。
※語順が「Cは卑怯な奴だよ!」だったら、認識タイミングは、「卑怯」になります。
この語順「卑怯な奴だよ、Cって野郎は」なので、認識タイミングは「C」になります。

はい、ここまでがこのやり取りの⑤です。
じゃあ、以下は⑥ですね。



上の
認識→感情の動き→呼吸→「テメエ!」
これを、
「って野郎はよ!」
の間に行います。



では。

B「本当に身勝手で、卑怯な奴だよ、Cって野郎は! 俺はずっと思ってたんだよ。なあ、みんなもそう思うだろ。」
A「テメエ もう一回言ってみろ!」

だったらどうでしょう?
「Cという単語を認識して、反応してしまったら」

B「本当に身勝手で、卑怯な奴だよ、Cって野郎は! 俺はずっ…」
A「テメエ もう一回言ってみろ!」

と、バッチリ食ってしまいますね。

しかし、反応しなくてはいけないポイントは同じ。「C」という単語が聞こえたら
ですよね?

そこで、
「『Cを馬鹿にされた怒り』を、このタイミングで表すには、どうしたら良いかしら??」
と、考えます。

例えば、

B「本当に身勝手で、卑怯な奴だよ、Cって野郎は!」
A(ハッとする。怒りを堪えて歯をギリギリやる)
B「俺はずっと思ってたんだよ。なあ、みんなもそう思うだろ。」
A「(怒りが溢れ出るように)テメエ、もう一回言ってみろ」

とすれば成立しますね。

B「本当に身勝手で、卑怯な奴だよ、Cって野郎は!」
A(ブチギレて、足早に歩き出す)
B「俺はずっと思ってたんだよ。なあ、みんなもそう思うだろ。」
A「(前のセリフの間に近寄る。Bの言い終わりで、Bを振り向かせて胸ぐらを掴み)テメエ、もう一回言ってみろ!!」

でもいいでしょう。

上の2つは、全く違うプランになります。
が、どちらも正しいですよね。

これの良し悪しを、、、
ではなく、
良し、より良し、

演出家が判断する訳です。


良く、
「芝居に正解は無い!」
って、聞いた事ありません?

それは、こういう事ですね。

でも、勘違いしてはならない。

「芝居に正解は無い」
「芝居は何をやっても良い」
と考えてしまう素人が多い。

だから、僕はあえてこう言い換えます。


「芝居には、不正解が確実にある。その不正解以外は全て正解」

です。

んで、

・その不正解をしない為の
・ひとまず一番、王道な正解を持っていく為の

手順を紹介しているわけです。

だから、このブログにあるところまでやれれば、演出家から「修正点」はあれど、「ダメ出し」は無くなります。


これを、理解しないまま、準備しないまま、
準備したと勘違いした、ただの暗記くんが稽古場に来ると、どうなるか。

心の中を表現すると、

「俺の次のセリフは、
『テメエ、もう一度言ってみろ』
だよな。で、
『……なぁ、みんなもそう思うだろ?』
のあとだから、、、」

B「なぁ、みんなもそう……」
「(きた!ここだ)」
B「思うだろ?」
「テメエ、もう一度言ってみろ!」
(↑Bのセリフ終わりで急に怒り始める)

なんて事になります。
これで、
演出家に『違う!』
と言われて、
言い方、怒り方をあれこれ変えるんですね。

これは、日本語で書かれているものを、そのまま暗記して、その書かれていた日本語を、音として口に出してるだけ
です。芝居ではない。


Aの気持ちが動く瞬間。湧いた感情。
そして、
発する言葉。⑤からくる動き。

この①と②の距離があればあるほど、暗記くんは太刀打ち出来なくなっていくのです。


そして、
・Aのセリフの属性は1つなので、これで終わりです
(この、「属性」は後で説明しますので、今は流して大丈夫です。)
−−−−−−

これで何が言いたいか解ったかと思います。
「セリフの長さ」
「セリフの順番」
はルールです。
足しても引いてもいけません。

基本的には「自分のセリフ」の前にはどこかに必ず、「そのセリフを言いたくなるキッカケ」が存在します。

そこで反応し、心を動かし、呼吸をして、ベストタイミングでセリフを出す。

この繰り返しです。
次に行きましょう
ちょっと応用編です。

B「酢豚にパインが好きなんて、まっとうな人じゃないよ」
A「もういい!私、帰る!」(Aは去る)

と台本にあったとします。
酢豚とパインはどうでもいいんですけど。まあ、Aは「酢豚にパイン無しなんてイカれてるぜ!」 という感じで良いでしょう。

ここで問題なのは、(Aは去る)の部分。

「もういい! 私、帰る!」
と言い切ってから、くるりと翻して去るのは、普通は気持ち悪いですよね。
(もちろん、成立する方法は沢山あります。例えば、まあ、基本線は「私、帰る!」と言い切った後に、もう一回「走り去る」決意、をする方向ですかね。)

普通は
「もういい!」
で、バンッ!と立ち上がって
「私、帰る!」
と言いながら、舞台袖に向かうパターンでしょう。

・このAのセリフも、属性は1つなのでこれで終わりです。
(これも後で説明しますので、まだ流して大丈夫です。)

では、これが、

B「酢豚にパインが好きなんて、まっとうな人じゃないよ」
A「もういい!私、帰る!これだけは言っておくけど、あなた達とは建設的な議論は出来ないと言う事が理解出来たわ。じゃあね。」(Aは去る)

だと、どうでしょう。

もちろん、全てを言い切ってから去り始めたら、気持ち悪いですよね。

ここで、先程から出ている属性の話ですが、

・このAのセリフは属性は3つです。
この属性が複数出てきた場合は、『動作、表情、セリフスピード、間』駆使する(変更する)チャンスポイントです。

『属性が変わる』というのは凄い細かく分けて
『感情が変わる』
という意味です。



気持ちが変わるのだから、
『何かをみる』
『何かにきづく』
『何かを思い出す』
『何かが気になる』
などの技を用いて、
セリフもスピード、間、声色などを変えて、
『属性変化』をお客さんに伝えます。

この『属性変化』は
『伝えなくてはならない』『表現しなくてはならない』ものです。

「やってもやらなくてもいいもの」
ではありません。

−−−−−−
『桜花と風の追憶』のセリフの例えですが

「ただいまー、ってあれ?随分にぎやかじゃん。ん? こちらは?」

(帰ってきた茜が、にぎやかな家に驚き、そこにいる可愛い女のコに気が付き、知り合いに「だれ?」と尋ねる、と言うセリフです。)

ちなみに、このセリフの属性は4つです。

「ただいまー   /  ってあれ? 随分にぎやかじゃん。  /   ん?   /    こちらは?」

『帰宅の挨拶』 / 『なんか賑やかな事に気がつき、感想がもれる』 /   『女のコに気がつく』 /  『疑問を尋ねる』 

という流れです。
つまり、そして、この『/』の部分で必ず芝居の変化があるわけです。

場合によっては、こんな一行のセリフでも、芝居を3回チェンジしないといけない事も出てきます。

「この属性チェンジポイントのチェック」は必ずやりましょう

「属性」という呼び方は僕のオリジナルですので、人によっては「ピナクル(感情が変わる瞬間)」とか、普通に「感情の変化」とかいう人も居るでしょうけど、

とっても大切な事なので、あえてキャッチーに、という戦略です。


このセリフは属性はいくつ?
と、僕が稽古場で聞いた時に、
一つの感情でふわっと喋ったりしてると
「え?いや、あれ?」
と、なります。

さっきみたいな、こんな大切そうでもないくせに、かなり消費カロリーの高いセリフが紛れ込んでいたりするものですから、気をつけましょう。
 −−−−−−

例えを戻して、
先程のセリフは属性は3つと言いましたが、

A「もういい!私、帰る! / これだけは言っておくけど、あなた達とは建設的な議論は出来ないと言う事が理解出来たわ。  /   じゃあね。」(Aは去る)

『/』ここでセリフの属性が変化します。

『帰りたい』/『捨て台詞を言いたい』/『再び帰りたい』
という気持ちの変化ですね。

『帰りたい』から『捨て台詞を言いたい』
への変化は、
まあ、ありがちなのは
・早歩きで去ろうとしているところから、止まる
・早歩きで去ろうとしているところから、スピードが遅くなる

とかですかね。

僕なら
A「もういい!私、帰る! 
  (早歩きで去ろうとする)
/ (スピードが遅くなる)これだけは言っておくけど、(止まる)
(振り返る)
あなた達とは建設的な議論は出来ないと言う事が理解出来たわ。
 / (再び去る気持ちになる)じゃあね。」(Aは去る)

とするのが気持ちが良いかもしれませんね。

では追加。

A「もういい!私、帰る!これだけは言っておくけど、あなた達とは建設的な議論は出来ないと言う事が理解出来たわ。  じゃあね。」(Aは去ろうとするが、入り口で入って来たCとぶつかる)

というト書きがあったらどうでしょう?
全力早歩きで真正面からぶつかったら危ないですよね。

『気持ちの流れは出来ている。属性変化ポイントも解っている。これで上手くぶつかれる様にするには?』

と考えるわけです。

『じゃあね』

の時に、ハケ口ギリギリにいれば解決しますよね。

振り向いた時にCが入ってくれば、等速直線運動をしているのはCだけなので危険はありません。

Aの出口までの距離が近ければ、「もういい!私、帰る!」で、目的ポイントまでたどり着き、目的ポイントで振り返れば良いです。
しかし、距離が長いと
「もういい!私、帰る! (スタスタスタスタ、、、)これだけは(Bに振り返る)、、、」
と、変な間が出来てしまいます。

半身で振り向きながら進みながら捨て台詞なのか、ふり向いて少し後ずさりながら捨て台詞なのか、振り向かずに距離を稼いで「理解出来たわ」だけ振り向くのか。

なんでも良いです。
目的と段取りに沿ったプランであれば、
成立してれば、なんでも良いんです。

上手い役者さんは、
『段取り』(この場合は、目的ポイントで振り向いている)を狙って、探って見た結果、動きと気持ちがバラバラになってしまうことがありますが、
「無理がありましたねww」
「駄目だ、キモチ悪かった、今のww」
と、反省がわかり易い。

『目的ポイントに、こう言う感じで行って見ようと思ったけど、この感情でこの動きだと無理があった』

ということを理解して失敗しているからです。

段取り、属性変化、感情を理解して、着地点が解っていて、チャレンジしてみて失敗した俳優さんには、
『演出家は絶対にダメ出しを出しません』
同じ方向を向いているので、
『ナイスチャレンジ!』
『流石に無理があったねww』
『あそこ、先に動いてみたらどうかな?上手く行かないかな?』
とか、前向きな話になる訳です。

つまり。



これを全てにおいて整理してしまえば、

余程の解釈ミスがない限りは

「駄目出しを受けることはまずありません」


自分の出ているシーンの。

『相手のセリフ』
『自分のセリフ』
の全てにおいて、

反応する言葉、
それまでの感情
無視する言葉、
その時の感情、
興味
振り向かなくてはいけない単語(つまりその前に別のところを向いていなくてはならない)
目を逸らさなくてはいけない単語(つまりその前にどこかで見ておかなくてはいけない)

これをバッチリやっておけば、

あら不思議。

反応する相手の言葉をチェックして、
属性変化をチェックして、
動きや表情を考えて、
プランを整理し終わった頃には、、、??

セリフ?
勝手に覚えてますよ。
相手のセリフも一緒に。

動き?
90%はもう決まってます。

「動いて」なんて言われる事はありません。

そして、この形でセリフを入れた人は、

人のセリフを食ったり、
毎回同じところを忘れたり。

そういう事が少ないんです。

これが
『台本が読める』
ということです。

頑張って、台本が読める様になってくださいね。

コレが出来れば、イコール、『プランニングが出来る役者』と言っても過言ではありません。

演技の養成所とやらで1年、2年。
無駄にしなくて済みます。

「感情を開放しろ!!」とか
「トラウマを吐き出せ!!」とか
「役になりきれ!!」とか
「泣くときは悲しい事を思い出せ!!」とか?

馬鹿馬鹿しい。

正しく学んで、
理解してしまえば、
演技なんて2週間で上手くなります。
(この場合の『上手く』のラインは、どの舞台の現場、映像の現場に言っても、駄目だしゼロ、くらいです。と言うか、映像の現場、ドラマや映画では、NGはあっても、駄目だしはゼロが当たり前なので。)

そっから食えるか食えないかは、
パーソナルと運の問題ですけどね。

暗記だけしてませんか?

演出家の駄目だし待ちをして、方向指示をして貰ってませんか?

「もっと動いて」と言われて困ってませんか?

「人のセリフ中なに突っ立ってんだ」と言われて困ってませんか?

「リズムで喋ってる」と言われていませんか?

「内容が入って来ない」と言われてませんか?

結構いますよ。
そんな、役者もどきが。

上記一つでも言われる人は、
認識して下さい。
厳しい事を言いますが、

その人は
「役者、俳優ではありません」
更に、
「俳優の卵でもありません」
と言うか、
「まだ、スタートラインにさえ立っておりません」

アルファベットも単語も知らないのに
英語の文章を読んでいる様なものです。


はい、
ここまで書いた事は、全て家で、机の前で出来ます。

これをキチンとやれば
受けている様な「ダメ出し」は全て解決します。

最後に言えば、
これをやる時間を俳優さんたちにあげる義務があるからこそ、

3ヶ月以上前に台本を必ず上げている訳です。

まぁ、これで、渡して2ヶ月後に
「読んでません」
とかいう輩がたまに居ます。

「台本の分析には時間がかかる」

これは、理解してくださいね。