さて、続きです。
前回までで、
「ストーリーの理解」を終え、自分の出ているシーン、自分のセリフのチェックが済んでいる状態です。
超絶重要回
です。
前回までで、
①ストーリーの理解、を終え、
②、③自分の出ているシーン、自分のセリフのチェックが済んでいる状態です。
まあ、②、③は作業なので。
大事なのは①ですね。
ここで、
・自分のキャラクターの役割
・自分のキャラクターの感情の移り変わり
・自分のキャラクターの性格、固執するファクター
などは抑えておかねばなりません。
で、このあとの流れは、
④自分のセリフの料理の準備
(イントネーションチェック)
⑤相手のセリフの料理
(反応点)
⑥自分のセリフの料理
(演技プラン)
となります。
恐らく、なんとなく台本を読んでいる人は、ここから、
「自分の出る」最初のシーンを開き、自分のセリフをごもごもと読んで憶えて行くのでしょう。
はっきりいいます。
時間の無駄です。
歴史の年号だけ覚えるのと一緒ですね。
セリフは、覚えようとして覚えると、
必ず失敗します!
これからの、
④〜⑥
をやっているうちに、
勝手に入っちゃう
のが正解。
ではやっていきましょう。
④自分のセリフの料理の準備(イントネーションチェック)
僕は「全てのプロの声優さん」は舞台俳優を出来るが、「全ての舞台俳優」が声優は出来ない。
そう思っています。
もちろん出来る人もいます。
これは必要十分条件の話。
「声優は舞台俳優は出来るが、かと言って舞台俳優が全て声優が出来るとは限らない」
というやつですね。
それは、
・プロの声優さんがもれなくやっている内容が、本来「舞台の台本読み」でもやらなくてはいけない初手である。
・でも、舞台は誰にも教わらない事が多いので、やらない人が多い。
・結果、声優さんの方が、プラン作りが早い。
という話なわけです。
結構「声優? はあ? 舞台立ちゃ俺達のほうが上だし」
と、思っている役者は多いと思います。
でも、
俳優がアニメ声当てて下手な事は多いけど、
声優が舞台に出て下手な事は余り無いですよね?
自分のセリフさえ憶えてしまえば稽古は出来ると思っている役者もどきは多いです。
しかし、残念ながらそうは行きません。
プランの無い暗記君が太刀打ちできるほど俳優は甘くない。
逆に言えばプランがあれば、台本は持ちながらでも稽古は出来ます。
稽古初日で
「プランが無い」のに「暗記だけをしている」人は、俳優を辞めたほうが良いでしょう。
それは、設計図無しで、精密機械を組み立てているようなものなのですから
これからやるのは、「演技プラン作り」の為の前段階の作業です。
「自分のセリフの料理の準備」と書きましたが、当然、シーンの意味、そのシーンの他の人のセリフを読みながら分析して下さいね。
おっと、その前に。
『演技プラン』とは何かという話を簡単に
を、しておかねばですね。
間違えなければ大丈夫です。
例えば、以下みたいなのは間違い。
「私の演技プランを説明します。『全体的には、悲しみを携えた少女だけど、時にはそれが苦しみに見えたり、怖さに見えたりする。そんな少女』というのが演技プランです。」
とか、ならないようにしましょうね。
【正しい演技プラン】とは、
どのセリフに反応するか。
どの言葉で動き出すか。
誰のセリフ中に扉を見るか。
どこで呼吸するか。
どの単語を聞いて顔をしかめるか。
全てをそれの集合体で構築して、
結果、感情の流れが綺麗に見えればOK
これらの具体案が、
『演技プラン』
です。
大丈夫かな?
−−−−−−
例えば、自分がAと言う役だったとして、
B「君はどこから来たんだ?」
A「私は去年、横浜から来たわ。」
であれば、「横浜」を○で囲みます。
そうすると自然と、
A「私は去年、横浜から来たわ」
という読みになってきます。
B「君はいつ、来たんだ?」
なら、
A「私は去年、横浜から来たわ」
となります。
−−−−−−
例えば、
長い説明セリフもそう。
真一 はい、静かに、静かに!(ガヤ止まる)はい、まあ、わかってもらえたと思うが(フィルムを取り出す)我々生きている人間と幽霊は一見同じ世界に存在していると思われるが、実はこのように重なっている別の世界に存在しているんだな。だから幽霊と我々は互いに物理的にどうこう出来ない訳だ……。はい、君たちの中で幽霊に会ったことのない生徒はいないだろうけど、幽霊というのは大きく分けて3種類に分かれる。一つは「守護型」。君たちの祖父母さんや、ご両親が死後出てきた場合このパターンが多い。「守護型」は、幽体実現化の原動力が主に「愛情による執着や心配」によるところが大きい。そしてこの守護型は、「自分がいなくても大丈夫」「自分がいることが彼のためにならない」などと納得することが主に消滅条件となる。で次、二つ目は「認知型」の幽霊。自分の事を知ってほしい、ここに居ることをわかってほしいという感情がMAXボルテージで死ぬとこういう形になる、と言われている。トンネルや高速道路などで亡くなった人はこういう分類になることが多いね。ほら、ああいうところって寂しいじゃない? ちなみにこの「認知型幽霊」には二つのパターンがあって「個別認知型幽霊」と「汎用認知型幽霊」に別れるんだが……(話の途中でチャイムの音がなる。)
(『ノスタルジアの贖罪』より)
普通にこの文字の羅列はとても憶えづらいし、憶えたところで、お客さんに「すっ」と入って行かなくてはいけませんね。
これを分析して。
真一 はい、静かに、静かに!(ガヤ止まる)はい、まあ、わかってもらえたと思うが(フィルムを取り出す)我々生きている人間と幽霊は一見同じ世界に存在していると思われるが、実はこのように重なっている別の世界に存在しているんだな。だから幽霊と我々は互いに物理的にどうこう出来ない訳だ……。はい、君たちの中で幽霊に会ったことのない生徒はいないだろうけど、幽霊というのは大きく分けて3種類に分かれる。一つは「守護型」。君たちの祖父母さんや、ご両親が死後出てきた場合このパターンが多い。「守護型」は、幽体実現化の原動力が主に「愛情による執着や心配」によるところが大きい。そしてこの守護型は、「自分がいなくても大丈夫」「自分がいることが彼のためにならない」などと納得することが主に消滅条件となる。で次、二つ目は「 認知型」の幽霊。自分の事を知ってほしい、ここに居ることをしいという感情がMAXボルテージで死ぬとこういう形になる、と言われている。トンネルや高速道路などで亡くなった人はこういう分類になることが多いね。ほら、ああいうところって寂しいじゃない? ちなみにこの「認知型幽霊」には二つのパターンがあって「個別認知型幽霊」と「汎用認知型幽霊」に別れるんだが……(話の途中でチャイムの音がなる。)
と、このように○をつけます。
この○をつけたところを立たせて、お客さんに内容を説明する。
そうすれば、お客さんは聞きやすい訳です。
聞きやすい、というのは、
「ぼーっとなんとなく芝居を観てる人」
にも、内容がすっと入ってくる
という意味。
「一言も聞き逃すまい!!」と、かじりついて芝居を観てる人なんて少ないんですから、
こちら側が、嫌でも、勝手に、自動的に、
内容を理解させられる説得力を持たねばなりません。
更には自分が説明している内容を整理出来るので、早く頭にも入ります。
一石二鳥ですね。
これはプロのアナウンサー、ナレーターの技術です。
そしてこれが、セリフを喋って良い「最低条件」です。
果たして、小劇場の舞台俳優さんのなかに、
「プロのアナウンサー、ナレーターの技術を学んで来てます」
という人はどれくらいいるでしょうか?
気持ち入れて、とか、感情を考えて、とか、良い声質で、とかは、二の次です。後回し。
まず
「概ねコレが出来てから」
考える事です。
これには文書読解力が必要です。
上記の長ゼリフは、芝居の最初のシーンなので前後の繋がりもクソもありませんが、
−−−−−−
例えば
「お前、本当にふざけんなよ!」
というセリフがあったとして、パッと見で多くの人は
A「お前、本当にふざけんなよ!」
と喋ってしまいます。
これがファーストインプレッション
「ふざけんなよ!」という強めの単語に引っ張られてしまうわけですね。
芝居においては、この
「ファーストインプレッション」で喋るのがとても危険です。
このAに「ふざけんなよ」と言わせた相手が、普段そんな事をする様な人間ではなく、このAのセリフが「驚き、反射」に近かった場合は、
A「お前、本当にふざけんなよ!」
で良いでしょう。
しかし、こいつが、何度も何度もAを怒らせているような奴で、このAのセリフが「驚き、反射」では無く「怒り、恨み」だった場合は
A「お前、本当にふざけんなよ!」
あるいは
A「お前、本当にふざけんなよ!」
となりますよね。
ファーストインプレッションで喋ると、ここにたどり着けないで、凝り固まってしまいます。
しかも、演出家もここを指摘する能力が無いと、そのまま本番です。
細かいニュアンスが溢れたセリフは、死んだセリフです。
一つでもセリフを殺した役者は、俳優ではありません。
良いですか?
この
イントネーションチェックは、絶対にやりましょう。絶対に。
ぶっちゃければ、
「上手い役者、下手な役者の差は、8割ここで決まる」
と言ってもいい。
セリフの入りは早くなります。
稽古開始前に演技プランを決められるようになります。
明確な意図が見えるので、演出家から信頼されます。
何ステージあろうと、立ち位置は5センチズレる事なく、手や表情の動きのタイミングは一秒とズレる事なく、本番が出来ます。
ところで、良く。
「素読みしろ」
「棒読みで読んでみろ」
とかいう指導がありますね。
あれの意味は、これの矯正です。
ファーストインプレッションで読んで、イントネーションが違うけど、もうコビリついちゃって、それ以外の、イントネーションで読めなくなっちゃったから、無理矢理とってみろ、という事なんでしょうけど、、、。
この「やり方と意味」を知っていれば、
「素読みや棒読みなんて必要ありません」
だって、
ハナからイントネーションミスしない
んだから。
非常にまどろっこしいんですよ。
やらされる方も、
「なんで棒読みすんだよ。意味わかんねえ」
と思いながら読んでる。
時間の無駄です。
僕は、稽古場で良く
「大事な(立たせる)単語はどれとどれとどれ?」
と聞きます。
大抵「うまいな」と思う俳優は、読解力があり、95%はイントネーションをミスりません。
一方下手だなあと思う俳優は、読解力が無いため、「どれとどれとどれ?」と聞くと、全然違う答えを言う……ならまだしも、口籠ったり、「わかりません」とか言います。
僕が
「え?!! わからなくて台詞読んでんの?!!?」
となるのは致し方ない事です。
単語、文章のチェック
それは、
「初見」であったり、「テーマ」であったり、「大事な固有名詞」であったり、「文脈」であったり、理由は様々です。
が、読解力があれば、
「どのように読めばお客さんが気持ち良いか」
が分かります。
そして、これは次の項目になりますが、
役者さんたちの中で
「もっと動いて」
と言われた事のある人は多いと思いますが、これの対処、と言うか、このチェックを怠らなければ、ハナからこんな事は言われません。
その準備でもあります。
では、次回はこの次の段階。
相手のセリフの料理に入ります。
お楽しみに