えー。
リコリス・リコイル 6話
感想

今回は、厳し目に行きます。

あんまり、ギミックや設定をこね回した事ない脚本家なのかな??

話の展開は、とても良い。
キャラクター達も最高。
設定も最高。

それは、ここまでのリコリコで、十分に解っている。

今期のリコリス・リコイルは、
毎週楽しみにする、最高の作品である。

これだけは先に言っておく。

だから、まぁ、今回の僕の話は、、、

えーっと。

「ちょっと、『これでいいや』感が拭えなかった。」

のだ。

例えるなら、

「物理のテストを、感覚で雰囲気で解いてる感じ」

だ。

だから。

「理論と公式に当てはめた質問に窮する」

って感じ。

逆に、意図があるなら、なんでこうしたのか聞きたい。

もしも、ちゃんと納得の行く説明がされたなら、キチンと謝ろう。

ただ、

多分、僕の意見の方が、的を得ていると思う。

この第6話は戦犯だ。

リコリス・リコイルの
錦木千束というキャラクターの設定(おいたちとかじゃなく、能力の設定)をズタボロにした回だろう。

とは言っておく。

僕自身、千束の設定(能力)が、この話のせいで、よく分かんなくなっちゃった。


解らない人にもわかりやすく説明しよう。



【本編】

リコリス達が各地で襲われ、安全のためにも、千束の家に住み込むたきな。

そして家事分担を二人で、という。


千束は「つまんない」
とこぼす。

たきな「つ、つまらない? じゃ、じゃあ、ジャンケンとか?」

話それるけど、
ここの、千束の「つまらない」に対して、「千束がつまるようにとり計らおうとするたきな」
というのは、めっちゃ可愛く魅力的ですね。



んで、ジャンケンするも、



全敗するたきな。


のちほど、、、

リコリコの面々に、このことを相談する。


たきな「勝てないんですよ。家事の分担をジャンケンで決めてるのですが、一回も千束に勝てませんね」



みずき「最初はグー、でやってるでしょ?」
ミカ「それじゃ千束には勝てない」
たきな「え?」


ミカ「千束が、相手の服や筋肉の動きで次の行動を予測しているのは知ってるだろう」
みずき「グーから始めちゃうと次の手を変えるかどうかは読まれちゃう。
変えずにグーだと当然パーを出されるし、変えるとわかれば千束はチョキを出せば絶対負けないでしょ? つまり、アイコになるできる確率が3割。」



ミカ「勝つ確率は0だ。」
みずき「千束にジャンケンで勝つには、最初はグーをやめて、最初の勝負で勝つしかない。アイコになったらもう(次は)勝てないし、アイコから始めたら一生勝てないよ〜」



引くたきな。


この後、敵とのバトルになり、目を封じられるが、、、
「目を封じられると、超人的な能力を発揮出来ずにやられる」
と言う千束の弱点を提示したのは良い。





提示するなら、絶対にこの回だ。

ジャンケンに勝つのは、千束の超人的な目の能力によるものなので、スッと入って来やすい。

これはパーフェクト。


まぁ、あんだけ、真島に顔面ボッコボコに殴られてたのに、腫れ一つ、傷一つ無いのは流石にどうかと思うけど。

リアリティを忘れないリコリコの監督らしくない。

ちょっと膨らまして、赤い斜線入れとくだけで
、感情移入度は段違いだった、とだけは言っておきたい。

防御力高っ!!
と、つっこみましたよ。一応。

だって、擦り傷はちゃんと表現してるのに、

敵のボスに顔面をグーで、体が吹っ飛ぶほど、思いっきり、しかも数発ぶん殴られて、それは、

「イテテ(無傷)」
は、無いぜ。

まあ、話は反れだけど、これは些細な問題。

んで、ラスト。



千束「たきな〜二人でいれば安心だし、しばらく、同棲続けないと」
たきな「ではジャンケンで、千束が勝ったら続けましょう」



千束「良いね〜くひひ。よーし行くよ〜、最初は、、、」
たきな「ジャンケン!」
千束「うええ?!」





たきな「ぽん!!」
千束「うわぁぁ!!」



そして、ようやく勝つたきな。

はい。


えー、、、

このジャンケンの話。
僕からすれば、

「設定を横暴に使った、素人臭い、くそユル話」

だった。

まず、誤解してほしくないのは、

・千束の超人的な目の能力
これは、良いです。

ここで
「そんな奴居ねえよ」
って所に行くやつは、作品を見る資格はない。

僕はダークファンタジーの脚本をよく書くが、
現実にはあり得ない事ばかりである。

それを、「この世界観では当然なんです」
とするのが、「設定」だ。

んで、
「その設定なら、そうなるのも当たり前なのか(現実にはあり得ないけど)」

と、いかに持っていくかが、【説明】(脚本)だったり、【演出・表現】(監督)だったりする。

「その設定なら、そうなるのも当たり前なのか」

こうするのが仕事。
これを覚えておいて貰いたい。

で、僕は、そう思えなかった
って話だ。



まず、千束のこの目の能力は、「設定」なので、問題無い。

・その能力で、ジャンケンに勝つ

これも良いでしょう。

服や筋肉の動きで、次の手を変えるか変えないかまで読めるなら、こういうことになる。

と、ここまでは、

「設定を上手く使った、ストーリー展開」

の域である。


では、何が問題なのか。

視聴者の皆様は観ていて引っかからなかったですかね、

じゃあ、問題点をまとめますね。

①アイコになったら次は勝つ。

ここ!!
ここがまず、まずい。

千束の、
相手の手が変わるかどうかが解る
ということと
最初はグー
には、相関関係が実は無い。

あるように見えるけど。


じゃあさ、「最初はグー」
の後、手を体の後ろに引いて、
「ジャンケンポン」
の出す瞬間まで、手を後ろに隠せば、問題無い。

「そんな、細かいこと突っ込むなよ〜」
とお思いかもしれないが、、、
「突っ込まれないようにする」
のが、僕ら脚本家の仕事だ。

「アイコから始めたら、無敵。一生勝てない」
に対して、あっさり論破出来るのは、脚本の展開ミスだ。
設定のミス、ではない。脚本の展開ミス。


例えばね、


実際にジャンケンしてみるとわかるけど、

「最初はグー」
の後は、まぁ、大体みんな、拳を握ったグーのまま次のジャンケンに挑む。

だから、ミカが

ミカ「これは千束のトラップだ。最初はグー、のあとは大抵の人間はそのグーを握ったまま、次のジャンケンに入る。千束はそこを見逃さない。」

みたいな説明が入ると、どうだろう?

納得できるよね。

(※1 ここからは、脚本の詰将棋です。僕はよくやりますが。これをやっておけば、脚本が突っ込まれないようになる。)

その後たきなは、

たきな「じゃあ、拳をにぎらなければ?? 最初はグーの後、手を開いておけば」

とか言いそう。
すると、こんか会話が出るだろう。

みずき「あ、それおんなじ事だから」
たきな「え?」
ミカ「ジャンケンを出す前の手の形が、グーからパーに変わっただけだ。今度は千束は、『パーからの変更か否か』を読み取るだろう。」

てな話。

これで、たきなが
「ぐぬぬ」

となって、一件落着、、、



じゃないのよ!!



とすると、この脚本の詰将棋のせいで、新たな問題が発生する。

それがこれ。


②そもそも、最初はグーは必要ない説

つまり、千束の能力は、
「超人的な目の能力で、服や筋肉の動きで相手の次の動きを読める」
だ。

冷静に考えれば、

ジャ~ンケ〜ン、
ってやってる時の相手の手の形さえ認識出来れば、次の出す手を読むのは可能

なのだ。

つまりね。

本作のラスト

たきな「ジャーンケーン!」


ほら、ここ。
この、たきなの、拳を観て、
「次の動きを読めば良いじゃん!!」

としか、1000%思わない。

「え? 今読めよ!!」
と。

アイコにしたときと、なんか条件違います?

千束「うわぁぁ!!」

うわぁぁ、じゃねえわ。

これまでの千束だったら、
ここのたきなの右手を見て、瞬時に手を読めるでしょう。

これは、
「アイコに拘って、本質を忘れた脚本家のミス」
です。

アイコだろうとなんだろうど、
直前のたきなの手はグーなんだから。

ここに、
「アイコにする」という必然性が瓦解する。

僕が先述したような、ミカの(仮)台詞
ミカ「これは千束のトラップだ。最初はグー、のあとは大抵の人間はそのグーを握ったまま、次のジャンケンに入る。千束はそこを見逃さない。」
これが入ってようやくギリギリ成立するかどうか。

すると、詰将棋の次の手。

たきな「そもそも、手を出す直前の手の形さえ見えれば、アイコにしなくても千束なら勝てるのでは?」

「、、、あ、、、。」
このセリフは、脚本家のセリフ。

千束の能力は、そういうこと。

アイコなら次は勝てる、なら、極めて限定的な能力になってしまう。

「グーを出した時の人間の思考」
が、絡んでたり
「そもそも、そんな瞬間には解らない」
とかね。

でも、千束は思考を読むわけではないし、
拳銃を避けられるのだから、ジャンケンを瞬時に把握するなんて楽勝だろう。

そもそも、ここで、こういう細かい設定を加えすぎると、その納得できる説明のために数倍蛇足になっていくものだ。

だから、千束の設定は単純で良い

それが正解。

だから、「服や筋肉の動きで、次の相手の行動が読める」

これで良い。

で、あれば、

「最初はグーからジャンケンしたら、アイコになる。だからジャンケンに勝つ」

は、ナンセンスなのだ。

「『最初はグー』、後、手をそのまま固定したまま『ジャンケンポン』に移行しなくてはならない」

ってルールがあるならまだしも。

それを納得させるための、先述の(僕創作の)ミカのセリフ

ミカ「これは千束のトラップだ。最初はグー、のあとは大抵の人間はそのグーを握ったまま、次のジャンケンに入る。千束はそこを見逃さない。」

これが入ると、視聴者さんも、
「なるほど」
となるのだから、不思議だ。

まあ、その後に先述した、
「そもそも」
が来てしまうのだが。


えっとわかりやすく言うね。

つまり、

『千束の能力からすれば、そもそも、最初はグーだろうが、最初からジャンケンしようが、無敵

なのだ。

さらに言えば、

③なんで、限定的に「変えるか変えないか」しかわからなくした??

手を変えるかどうかはわかる。

でも、グーからパーか、グーからチョキかは
解らない。

はぁ??

いや、観てるこっちからすれば、
千束だったら、
「どの指が動いて、どの指が動かないか(チョキになるか、パーになるか)くらいわかるだろ」

と、思ってしまう。

なんで??

「変えるか変えないか」はわかるのに、
そこまでわかるのに、
相手の服や筋肉の動きで、拳銃やマシンガンを避けられるのに。

なんで、そこだけ解んないの??

まじで、
説明出来ますか??

千束の能力は、めっちゃ超人的なんだから、
「全部解る」で良いのに。

余計な制限つけると、(なんでそこに制限あるかの)説明が必用になってしまう。
(でも、当然説明はない)

意図がわからなかった。

脚本家のね。




僕も脚本家だから、批判だけはしない。
解決策を用意してあるが、それはこのあとにしよう。


先にもう一点。

④たきなが千束に勝った、勝ち方

これまでの話の展開はあるが、

百歩譲って、
作品通りに

「千束に『最初はグー』をさせずに、いきなりのジャンケンなら、千束とはフェアな勝負になる」

が成立したとしよう。

たきなは、
「さーいしょーは、、、」
という千束を遮って、無理やり
「ジャ~ンケーン!」
とねじこむ。

で、千束がパーを出し、たきなはチョキを出す。

はい。ここ。

「たきなは、千束がパーを出すことをどこで解ったのか?」

もちろん、その、設定も説明もない。

例えばぼくならここで、千束は焦るとパーを出す。みたいな伏線を張れないかな?

と考えるわけです。

僕「焦るとパー、ってなんだよww」
となりますわな。

僕「じゃあ、『とっさの時には、手を広げる』みたいなので代用できないかな? とっさの時に、手を広げて、顔を隠す、とか?」

僕「いや、みんなそうだしな。そんなの、伏線にならないよな。」

んで、
僕「うーん。困った」

となる。

このラストのたきな。

つまり、
「100%負ける相手の能力を封じて、フェアな勝負を挑んで、33%でたまたま勝った」

だとしたら、それはもう
「ご都合主義」
だ。

もちろん、偶然の勝負で勝って、ひとしおに喜ぶたきなは、めっちゃ尊く可愛い。

声優さんの演技も絶妙だ。

でも、

「やっぱり、ご都合主義の域を出ない」
のだ。

だって、たきな的には、ここで、千束との同棲は解消する(かどうかはわからないけど)わけで、

やっぱり、たきなが、ここで、1/3の
運否天賦の勝負を挑んではならないと思う。

たきなが、裏をかいて100%千束に勝つ勝負

にしなくてはならない。

その方が、千束は悔しいだろうし、たきなは嬉しいだろうし、二人の関係値の展開がより鮮明に見える。

つまり、

たきなが千束相手に出来たのはせいぜい、勝率0%を勝率33%にしたのが関の山

ではなく、

たきなならば、超人的な千束相手でも、勝率0%を勝率100%に出来る。

の方が、

「二人の関係が対等に見える」

わけだ。

そこが、尊く映るわけだな。

でなければ、いつまでもたきなは、千束のオマケになってしまう。
 

誤解してたらスミマセンだけど、
この、

「対等になっていく二人の関係値」
「相棒、かけがえのない存在になっていく二人の関係値」
って、結構、リコリス・リコイルのネックなテーマだと思うんだけど。

違いました??


折角、今回、その、精密なスナイプで千束を助けるという描写があったのに。

勿体ない!!!!



じゃあ、ここから、僕ならこうする。

の話。
簡単だ。

本作の6話の、矛盾やご都合主義を取っ払って、なおかつ、千束とたきなの関係値をより良く見せるには。

まず、

・千束は、「能力的には、『最初はグー』が無くてもジャンケンは無敵」

これで良い。

別にアイコは、作品のギミックとして機能してない。



だから、始めの描写で、普通にジャンケンして、全敗する。


んで、喫茶リコリコの面々との会話。

たきな「勝てないんですよ、家事の分担を(云々)」
みずき「そりゃあ、勝てないでしょうね」
たきな「え?」
ミカ「千束が、相手の服や筋肉の動きで次の行動を予測しているのは知ってるだろう?」
みずき「千束は、あんた(たきな)が、ジャンケンを出す直前の手を筋肉を見てるのさ。ジャ~ンケーン、でこう(グーの形)なってたなら、千束には、たきなが、グーから手を変えるか変えないか、変えるなら(一本ずつ指を開きながら)どの指を動かすのかなんてバレバレさ。」
ミカ「千束相手にジャンケンを提案した時点で、たきな、君の負けだ」
(⇧このセリフ、伏線として重要)

これで良い。

まず、③の限定的な制限は、これで問題無い。
千束は、どの手が出るか、まで読めて良い。



そして、最後のジャンケン。

こうします。


千束「たきな〜二人でいれば安心だし、しばらく、同棲続けないと」

たきな「ではジャンケンで、千束が勝ったら続けましょう」

千束「良いね〜くひひ。よーし行くよ〜。
ジャ〜ンケ〜ン……」

(出す前の準備動作で、たきなの右手がグーになってるのを確認する千束)

(ニヤリとする千束)

(口元だけニヤリとするたきなの口元のアップ)

千束「ポン!」

(お互い手の平アップ。千束はパー。たきなはチョキ)

(少し引きの絵。千束は驚いている顔。たきなは、直前でグーのまま右手を垂れ、そして左手でチョキを出している)

千束「うええ?!」

たきな「やったー!!」


どうです?


完全に最強無敵の千束を手玉に取り、
わざと握り拳の右手を見せて千束の注意を引き付ける。千束は必ずパーを出す。
そして左手のチョキで勝つ。
たきなは、作戦により100%必勝です。

変な、

運否天賦の勝負もなく
変なご都合主義もなく
謎の限定的な能力制限もなく
アイコのどの時点のどの筋肉を確認してるかの疑問も無く

設定をパーフェクトに活かした提案でした。

更に言えば、ラストの千束の「最初はグー」を遮って、たきなは「ジャーンケーン!」とやるわけですが、

既に前半でみずきに
「千束に勝つなら、最初はグーをやめて、いきなりジャンケンするしかない」
って言われてるので

たきなが、
「ジャンケンで千束が勝ったら同棲続けましょう」
と言ってる時点で、
視聴者は、
「最初はグーをしないでやるんだな」
と解っている
んで、まんま。方法は、たきなが押し切っただけ。

これじゃあ駄目ですよ。脚本としては。

でも、すでに、伏線は張ってある。

そう。ミカの
「千束相手にジャンケンを提案した時点で、たきな、君の負けだ」

これを振っておいて、
なおかつ、ラスト、千束にジャンケンを提案する。

無策の(に見える)たきな。
視聴者「千束無敵だけど、たきな多分勝っちゃうんでしょ? やり方は知らんけど」
たきな「ジャーンケーン
視聴者「あ、千束ニヤリした。え!ほら! たきなもニヤリした! え?!」
たきな「ポン!」
視聴者「ほら! たきな勝った! え? でもどうやって!!?? ドキドキ」

視聴者「……。うわぁ。なるほど!!」

と、僕ならこういう心理に動かします。
 

ま、


僕ならこうするって話の域を出ませんが。

もちろんこの先、

「作品全体を観てみたら、あの6話のアレは正しかった」

ってならないとも言い切れません。

でも、それには、

たきなが千束に100%必勝で無かった方が良い、なにか(タイミング的に、対等に映らせたくない何か、とかね)

や、

千束の能力が限定的だった理由(後になんか弱点が出てきて、たきな「だからあのとき、ジャンケン手の変更しか読めなかったのか」みたいな伏線となっている、とかね)

色々必要になって来てしまうので、、、。

まぁ、多分。

これで良い。
と、思って書いて、
良いでしょ!?
って、なってるんだろうけど。

ま、

普通の一般視聴者は、ここまで気にして観てないでしょうし。
大丈夫ですよ。

こんな事に文句を言う人も、ほとんどマニアか評論家か、辛口YouTuberか、僕みたいな人間だけでしょうし。

まぁ。

5話まで、ほぼパーフェクトクラスで良かっただけに。
展開、演出はパーフェクトなだけに。


惜しいなぁ。


と、思っちゃいました。

ってか、不思議でしたね。

誰も疑問に思わなかったんだぁ、、、。
って。


「千束の能力なら、アイコからなら、ジャンケン必勝」


この杜撰な設定、誰が決めたんだ、チクショー!!