ちょっとあいちゃいましたが続きましょう。



脚本構成の話ね。

前回までは、前段階の話です。
今回からが本題。

①脚本を書く

ま、そりゃそうだ。

出来れば、少し頭が整理しやすくなるために、登場人物(スタメン)を書いておきましょう。

以下は僕の方法ですが、

この段階で、頭の中で、ストーリーを3つに分けておきましょう。

こっからこうなって、ここまでが一幕。
で、こうなって、ここのネタバラしまでで二幕。
そこから、ラストの盛り上がり、オチまでで三幕。

これやらないと、
第一場
第二場
第三場
第十場
とかなっちゃうんですよね。

それでも、場面が整理出来ていれば良いですけど、、、

当然、場面的には
1ページしかないものもあったり、
逆にワンシチュエーションで20ページに渡るシーンもある。

それらを並列で「第○場」と書くのは、読む俳優さんたちにとっても読み辛い。

大きいくくりのどのシーンのどの位置の話か。
それらを整理して、読みやすくする。

1-1
1-2
1-3
2-1
2-2
2-3
2-4
3-1
3-2
みたいな形にしておく事をおすすめします。

そして、

出来れば、
『ラストシーンの絵』
『ラストシーンの本当にラストのセリフ(演出でも可)』

これは確定させておいたほうが良いでしょう。

『ラストシーンのラスト』は、そのお芝居の着地点。
脚本兼演出家さんの場合は演出でもいいので、決めておくと良いでしょう。とても楽になります。

さて、

これらが頭の中に無いと、脚本に手をつけちゃ駄目です。

だって、終わりが決まってない話を見切り発車なんて、意味分かんないですから。

でも、実は結構居るんです。
見切り発車の人。

伏線張るのが下手な人や、要らない台詞が多い人は、確実にコレ。

ラストまでしっかりと決まっていれば、
メッセージに直結する台詞も書けるし、
ミスリードの方法も決まっているし、
オチのヒントも決まっている。

だから、これを決めて書けば、必要なのは、
『時間』のみ
です。

バンバン書いて行きましょう。

途中思いついた伏線などは、気にせずにガンガン入れて行って大丈夫です。


②タイミング興味

まずは、
『ミクロ的なタイミング興味』

のお話

6割〜7割くらい書けたタイミングで、一度この「タイミング興味」の整理に入ります。


タイミング興味とは、

『お客さんが、この時に何に興味を持って観ているか』

ですね。

これは超絶重要です。

頭を空っぽにして、1から新鮮に読みつつ、

「ここでは、こういう設定でこの主人公の人が○○をする話ね」

「なぜ、この人が○○と言う行動をしているのか。これは謎1。後、✕✕と言う知らない単語出てきたけど、説明されてない」

みたいな感じで、『興味』を明確にしていきます。

で、、、。

その興味を
『忘れないように』
して、
『確認できるように』
して、
『解決する』

流れを作ります。

例えば、
『宿命のブラッドバーン』の場合は、

『ヴァンパイアの3つの秘密』
や、
『ヴァンパイアを追い求める人間の取る行動の2つ』

などは、セリフ上で何回も出てきます。

お客さんの興味としての
『ルール』を
忘れないように、
覚えて、
確認してもらうためです。

例えば、
『ノスタルジアの贖罪』では、

ありあ(有馬愛)に振られて一人で村を出た真一サイドの視点
真一はありあ(有馬愛)と一緒に村を出た、という桜サイドの視点

が矛盾して描かれます。
ボンヤリみてると、「なんか矛盾してる?」くらいにしか印象が残りません。

そこで、
桜「ねぇ、おかしくない? 真一は愛に振られたって言ってたわよね。私達は、あんたは愛と一緒に出ていったと思ってたのよ?」

と言う、
『お客さんの疑問の再確認』
『そこ、疑問に持ってて良いところですよ』
と言うポイントを用意します。

これが、
お客さんの集中を2時間持たせるための、
『タイミング興味』
と言う作業です。


しくじっていると、
・AがBを裏切った理由
と、Aの心理に興味を持っているのに、
・Bの出自の話
をしてしまっていたりします。

「いや、それ、今興味ないんだけど」

ってなるやつです。

お客さんにが興味を持っていないキャラクターの恋愛話とかになったりとかね。

これらはミクロ的な視点ですが、マクロ的な視点でしくじっている場合もありますので、こちらも調整しておきましょう。

マクロ的タイミング興味

まぁ、こちらは脚本初心者にありがちなパターンですが。

先程までの説明の
もっと引いてみた話です。

脚本家の中には、『物語のすべての設定資料』が入っています。

『この世界では、実はこの職業は少ない』
とか、
『この世界の常識では、一夫多妻制も可』
とか、
『世界が滅ぼうとしている』
とかね。

これらを『自分の視点だけで、知っていて当然のようにストーリーを進める』と、お客さんに無限の??が浮かびます。

例えば①
『医者が希少な世界』で、

A「私、実は医者なんです」
B「え?! えええ?! 医者?!」
A「はい。隠していてスミマセン」

みたいなやり取りがあったときに、
『医者が希少』の情報がお客さんに説明されていないと、

(そんなに収入良いの?)
(医者って、もしかして希少なの?)
(そんなになるの難しいの?)

など、疑問の可能性が複数化します。

で、40分とか、1時間とか後に、当然の様に
「貴重なお医者さんなんだから」
とか台詞が出てきて、
(あ、そっちだったか)
となったりします。

特別な狙いがなかったとしたら、この流れは、
「自分の知っている設定は、お客さんも知っている」
と誤認して書いている事になります。

C「なんであんなに驚いているの」
D「この国では、医者はとても貴重なんだ」

みたいなやり取りが必要になってくるわけですね。

これは、主人公達の設定も同様です。

例えば②
主人公が旅をしている話とかで、その途中のドラマとかを描いているのに、
『そもそも、この人なんの為に旅してるの?』
とか、
『世界を救う、って言ってるけど、何が原因で世界がピンチなの?』
とか、
『主人公達のパーティーに、一緒に居る理由が明かされてないオマケがいるけど、そもそも何者?』
とか、
『この人、凄い魔法みたいな技使うけど、それ、何種類使えるの? 何か消費とかしないの? どうなったら使えるの? そもそもみんな使えるモノなの?』
とか、
『何か、ドラえもんみたいに、色んな便利なアイテムや能力が出てくるけど、無限なの? 有限なの? 制限や説明がチートじゃない?』
とか、

こう言うのが多いと、お客さんは速攻興味を失います。


アニメ『回復術士のやり直し』
とかは、この典型ですね。

回復術士はヒールしか使えない。
でも、ヒールを強化さてアレンジしたら、
『加速のヒール』
とか、
『相手を消滅させるヒール』
とか、挙句の果てに
『このクソみたいな世界をヒールして、時間を巻き戻す』
とか。

『はい。チート。無敵。なんでも出来る。』

ってなるわけですな。


『コードギアス』
みたいに、

ギアスをかけるには、目を見なくてはいけない。
逆に目を見てしまうと、間違ってかかることもある。

みたいな制限設定を説明するのが大事なわけです。


『回復術士』とは違う例を出しましょう。
能力の設定の話。

小劇場では結構散見されます。


主人公の能力が『加熱する』だとします。
ものを温める。温度を上げる、と言う微妙な能力で頑張ってきた主人公が、

『陽動作戦のために、俺が民衆のデモを加熱する!!』

とか言い出すと、

・え? それとこれとは話違くない?
・それ両方『加熱』で伝わるの、一部の言語だけじゃない?
・それ出てきた瞬間にチートなんですけど??
・『君の俺への好意を加熱させよう』とか出来るって事でしょ?
・『モノを物理的に温める能力』
が、急に
『誰かの心理を操作する能力』
になってんですけど??

みたいな??


『俺の能力は、何かを奪う能力だ!』
とか言ってて、
『視力』とか、
『憎しみ』とか、
『癌細胞』とかを奪い始めたりしたら、終わりなやつです。

『世界』を奪って、
『反抗心』『反逆心』を奪って、
『自分の寿命』を奪えば、
もう万事解決じゃん。

みたいな、ね。


まとめ。


作家の能力とは、
『脳内の妄想を、伝わる形に具現化する』
ことです。

『脳内に妄想が存在する』
のレベルは、誰でも居ます。
と言うか、ほぼ全員でしょう。

なので、こういう、
『脳内の妄想を、伝わる形に具現化』出来ないなら、それは、『脚本家としての能力が無い』事になるので、それが出来るようになるトレーニングを積む必要があります。


この、
『タイミング興味』
さえ、パーフェクトに修整出来れば、かなり高得点に仕上がります。

しかし、
『そもそも、何が興味なのかわからない』
『何が非常識なのかわからない』
だと、話になりません。



脚本を書くのも、

・相手(観客)への思いやり
・常識
・理論力

を養いましょうね。