静まり返った台所に、一人の男の影が・・・・・
そんな文章から始まる物語です。
一人の男がおもむろに、1個の洋梨を手に取り
「おお~、これは食べ頃に完熟しているな」
「今すぐ食べなくては、熟し過ぎてしまうな」
そう言いながら、手に取った洋梨を包丁で皮を剥こうと
今まさに包丁を取りに行こうとした、その時!
「いや、待てよ」
「かねてから考えていた食べ方をしてみようじゃないか」と
電光石火の如く、目にも留まらぬ速さで台所に移動し
まるで雪のような真っ白な俎板を取り出し、その上に
手にしていた洋梨を置いたのでありました。
まずは、半分に切ってと、包丁の刃を入れ掛かった時に
このまま真っ直ぐに包丁を入れると、種まで切れてしまう
手加減をしながら包丁の刃を入れると、種と芯が綺麗に
取れるのではないかと、芯に届く絶妙な位置まで刃を入れて
実をぐるっと一周させて、手でパカッと実を半分に開いたら
ほぉ~ら、見てごらん状態で上手く行きました。
芯の付いていない方の実の中身を、柔らかく優しい手つきで
スプーンを使いほじくり出して、透明な、どこまでも透明な
ガラスの蓋つきの容器に、実を移してもう半分の実も・・・・
芯を手で引っ張ると、ポロンと綺麗に芯が取れて
絶妙なタイミングまで追熟を行っていたことがわかる
実と芯が分離する、包丁いらず手間いらず、調理も早く
すすむすすむのすすむ君、あっという間に実をすべて
容器に移してひと段落・・・・・・
しかし、手がやたらとベトベトする
もしやもしやの最高糖度に達しているのではと、果汁を
ひと舐め、むむ、二舐め、「こっ、これは」と、叫びながら
別室に置いてある糖度計を取りに走り、いつものように
慎重に果汁を測定プレートに垂らして、レンズを覗くと
オウマイゴッ! 糖度が約17度を示しているではありませんか
これだもの、手が異常にベタベタするのも当たり前です。
測定史上最高値をマーク、これから追熟が終わって行く
洋梨、即ち、地産・地消の天然無農薬栽培のラフランスを眺め
男の顔が綻んだことは、言うまでもないことであります。
透明のガラスの容器に入れられた、ラフランスの実は
蓋をされて-18℃のフリザーの中に入れましたとさ。
おわり