職もなくウロウロしていた時に、街角の掲示板に求人広告が張り出されいた。
採用条件は、求人している職の経験者であって、○○の免許を所持していることが
条件として書かれ、募集定員は1名 1時間の労働賃金が1000円と示され
雇用期間は3ヶ月、雇い入れは直ぐにでもと書いてある。
職のない時に天の助けと喜び、しかもその職は得意であり、免許書も所持している
時給1000円の価値ならば文句なしだ、早速にその事業所の窓口を訪れて
受付係に雇い入れてくれるように話し、契約書にサインしようとしたその時
突然に入り口から入って来た男が、あの私は、1時間950円で働きますから
どうか僕を雇って下さいと、サインしようとしているその横で、後から来たのに
図々しくも受付係に対して雇うように言い始めた。
受付係が950円なら貴方に決めますと言い出したので、慌ててしまい
私は、900円で良いですから働かせてくださいと、思わず言ってしまった。
するとその男は、さらに焦った顔をして、はっ、八百円で良いですと言いだした。
受付係は目を丸くしながら返事に戸惑い呆然としていたが、八百円で良いんですねと
恐る恐る確認の言葉を掛けた、その男は勝ち誇ったかのように満面の笑みを浮かべて
どうだと言うよな顔を私に見せた、その顔にもの凄く腹が立って、後先も考えずに
じゃ私は、時給750円で良いから雇って下さいと、受付係に言ってしまった。
すると男は、700円と言い出し、後に引き下がれない私は、680円670円と
市場とは全く違う逆競り状態になり、とうとう、法定最低労働賃金まで値を下げて
両者は睨み合い、じゃんケンポンで決着を付ける羽目に、幸いジャンケンに勝ち
受付係は、ようやく決まりましたねとニンマリと笑みを浮かべて、書類を差し出し
私はニヤニヤしながら書面にサインを終えて、雇い入れてが決まり手放しで喜んだ
の、だが、時給1000と言う数字は、いつ、どこに消えたのだろうか
なぜ、あの男はあのタイミングで入って来たのか、なにか狐に摘まれたような
あの男と受付係が組んだ罠に填り、すっかりと騙されたようなそんな気持になり
まあ、だけど、職のない無職よりも、3ヶ月間、最低賃金で働ける職場にありつき
その喜びと相殺しながら、平常心に戻りつつ、免許があったって、なくたって
どうせ結局は、フリーターと同じ労働者であって、世の中の騙しに完全に乗せられ
強欲な経営者達に上手く使われるだけの、使い捨ての将棋の駒の歩のような
存在であり続けるのだろうと、受付係の所に行き、バーカ、働く訳ないだろと
吐き捨てて飛び出してやった。
数日後、その事業所の前を通りかかった時に、又あの男が入り口付近で
ウロウロと中の様子をうかがいながら、居るところを目撃した。
そうか、やっぱりな、その時インチキであったことを確信したのでした。