秋には枯れ葉が踊い賑やかだった森も
雪が深々と降りながら白いクッションで覆われ
林道を歩く足音は柔らかく耳に響く
風もなく静寂に包まれた森を歩き行けば
眠りに付いた木々達は人には聞こえない
静かな寝息を立てながら
春の雪解けの頃に鳴らす小川の目覚ましが
起こしてくれる時を待ちながら
秋の終わりの北風に落ち残る広葉樹の葉
それが眠りながら灯す鼻提灯に見えて
木々の無邪気な顔を見た気がして
ふと微笑を浮かべてしまう
森はいつ歩いても楽しい
冬の森は雪に埋もれ掛けている
切り株をベンチにして
切り株の上に積もった雪を
手でサッと払い
軽くふうと息を吐き
腰を掛ける
灰色の雲から次々と舞い降りる雪を見上げ
数限りなく無数に落ちてくる
雪を眺めているだけで楽しい
落ちてくる雪の結晶の一つだけに
しっかりと焦点を合わせ追いながら
地上に辿り着くまで見ていると
先に落ちて積もる雪の結晶と手を繋ぐ
そんな瞬間が温かい
大地を真綿で包みながら
笹や小さな植物を守っているのだろう
森の静けさは不思議な時間を連れてくる
深々と降り積もる雪の音の催眠術に
頬を赤く染める寒さより
何故か温かさを感じさせては
眠れ眠れと優しく子守歌を歌い
なんともネロとパトラッシュ迄も連れてくる
音のない寂しさは音を探し
耳を澄ましながら雪の降る音を聞く
頬を冷たく濡らす雪は雫となって伝い
涙を流れる涙を隠す
目線の奥にある開けた場所
雪原を横断するように
小さな足跡は緩やかなカーブを描き
森の奥へと続いている
キツネが付けた跡なのか
確かに居ただろう姿を追いながら
時を戻し小動物の影を追うのも
全ては自分一人の時間がある
そんな静けさの御陰なのだろう
森の中で一時を過ごし
松の枝は雪を乗せ
重そうに頭を垂れ眠っている