大阪社長と車での出張は、夜食をとってから遠方へ出発するのがパターンだった。
前回書いたキャバレーの話の後、ガソリンスタンドへ。
「◯◯◯◯円分入れて」と店員さんに社長が言った。
何で満タンじゃないの、と思った。
車内では、いつも社長の大好きなパイプオルガンやチェンバロの演奏曲かクラシック。
教養がないからなのか、私はなぜか強烈に嫌だった。
岡山までの長旅。
なので、この日の為に社長が違う選曲でカセットテープを作って来てくれた。
いつもの曲じゃない!と、すごく嬉しかった。
曲は1979年のジンギスカンという曲。
私にはなんだか戦いが始まるような、ワクワクした曲からのスタートだった。
そして出発。
そうだ、この車。座っているだけで私には戦いだった。
何で今日この車なんだと思った。
乗り物も大好きだった大阪社長。ハーレー、ローバーミニクーパー、リンカーンを所有していた。車はわからない私。
社長との会話で名前を知る。
ある日の東京出張で初めてリンカーンを事務所前で
見た時は、何かを張り切ってレンタルしてきたのかと思った。
笑福亭鶴瓶さん似の冷静で物静かな社長には、私のイメージでは
リンカーンは想像できなかった。
社長は事の経緯や、基礎をしっかり考える人。
成金ではない。社長なりの思い入れがある。
今日は岡山までミニクーパーとかいう車。
ほんとに助手席で長時間の移動は、
飛び降りたくなるほど身体が疲れ、恰幅がいい社長とは狭い。
私にはアラレちゃんに出てくるようなイメージのこの車。
飛ばすといつか部品がバラバラに崩れて行くんじゃないかと思うほど長距離は辛く、何で今日リンカーンじゃないんだ、と思った。
車で行く出張には理由がある。
サーバー機を到着後すぐに設定する為に、機器本体を車に積んでいる。
そして社長が言った。
「今日実験したい事があるんやで。
いくらで岡山まで行けるか試したいねん」と。
私の耳が聞き間違えじゃなければ、ガソリンスタンドの店員さんに2000円と言った気がする。
そんな無防備なとモヤモヤした。
しかも途中から下道でと、訳のわからない事も言っていた。
いつも出発後、助手席の者は到着まで睡眠をとる事になっている。
私はもうさっさと寝る事にした。
その後。「・・んや〜。・・・なんや。おっなんや」みたいな。
・・・どうやら岡山に入ったようだ。社長の声がする。
到着したと思い体勢を起こして目を開けると、
暗い広い四車線くらいの道路のド真ん中で斜めに私達の車が停車していた。
どうしたんですか?!と聞いた。「うん、大丈夫やで車がな、止まっただけ」と。
何でですか?!と聞くと、「ガソリンやな」。
ほら!ほらほらだから心配だった。2000円分って。
何の挑戦かわからないけど、こうなるよ!社長、と思った。
暗い中で車ひとつ通らない。けれど、どうやらスタンド近くまでは来ていた。
ホッとした。
助手席から見ていると、社長はスタンドに向かい帰って来る。
大丈夫ですか!?と聞くと「閉まってるわ」。
私はガソリンスタンドは24時間営業だとずっと思っていた。
実家の前のスタンドですら子供の頃から24時間営業だったからだ。
そんな無知な私でも2000円はないわと。ちなみに私は免許はない。
母が車で通勤していたので、私でも知っているJAFが到着。
JAFの人を初めて見て感動した。スーパーマンに思えた。
その後、再度流れているジンギスカンなどを聞きながら無事に目的地到着。
社長の実験は、岡山に入っていたので車は止まったが成功だった
そして、次はリンカーンでの事。
〜続く〜
※社長の当時の実験。この記事を書き終わり1日経った今、今さらながら
・・・やっと訳に気がついた。