【9/29 追記】 誤記部分など訂正、また一部追記しました

 

現在公開中の映画

『アリスとテレスのまぼろし工場』

 

 

私は結構気に入ってリピートしてますチョキ

 

 

 

2週目入プレは睦実カード

 

このカードは1週目の五実カードとセットにしてこそ意味があるグッ

なんちっててへぺろ

 

自分は2セットになったけど(笑)

 

 

ただ

映画館での客入りを見ている限りあまり人気は出ていない感じですねえタラー

 

人により受け止めが大きく変わる作品だと思うので

「爆発的ヒットにはならないだろうなあ」

とは思っていたけど

 

想像してたよりも映画館では空席が目立って

ちょっと残念、というか淋しいですねえ。。ショボーン

 

レビューサイトの点数も伸びなくて

映画.comでは今のところ3.6点
 

そうなるだろうな と初見の時に思った通りで

この作品は少なくとも万人が喜ぶというタイプの映画ではないと感じるし


低い点数の人の意見は概ね全体設定や演出やキャラクターなどにしっくりきていない様子ですかね?
私から見て岡田磨里監督の作家性が色濃く出ていると思われる部分が合わない人には合わない…

って感じかなあ と

 

でも逆に言えば刺さる人には多分めっちゃブッ刺さるし

こういうのが面白いと感じる人には受けがいい

人を選ぶ作品だと思うのです

 

前回の記事でも触れたけど

簡単な内容で且つエモさを感じるような作品が好みの人には多分合わない

 

全体にドロドローっとしてますしねえ滝汗

 

 

物語の好き嫌いは別として

アニメのビジュアルとしては最高レベルの芸術的な描写を見せてくれるので

それを映画館の大スクリーンで楽しむだけでも見る価値アリとは思うけど

 

この映像と

そして閉鎖空間に囲まれるような演出の音響は

映画館でこそ味わえる醍醐味だし

 

 

とにかくこの作品は物語の中で起きていることの因果関係とか

登場人物の心情とか

私の場合初見では色々とわかりづらくて

 

でもひとつひとつの描写や言葉をつなぎ合わせて考えて

それらから自分なりの解釈が生まれるごとにのめり込んでいった、

って感じです

 

私の場合はさらにもっと深く知りたくて

小説版にも手を出してしまったてへぺろww

 

 

私は映画を3回鑑賞した後で購入して読んでみました

230ページほどなのでサクッと読みやすい

 

この作品は岡田監督がインタビューの中で語っておられたのですが

尺の関係で、出来上がっていた脚本からカットを余儀なくされ悩んだそうなのですが

出来上がってきた映像を見て

「この表情ひとつあれば説明シーンをいれなくても大丈夫かも!」

と判断して最終稿からカットした部分もあるとのことで

 

確かに映画を観てると説明的なセリフなどが無く進んでいく場面も少なからずあるように感じて

 

そういった映画を観てるだけではわかりづらいような部分も

小説版には文章だけで表現するために映画では出てこないセリフや場面描写が語られている部分もあったりして

 

小説版を読んでから再度映画館で鑑賞したときには

またさらに理解が進んだり納得したりというところも多くありました

 

もちろん映画本編だけを見て理解出来る人はそれで十分なのでしょうが

私のような、理解するまでに時間の掛かるタイプの者には

小説版はある意味ガイドブック的な感じでありがたく感じましたOK

 

まあ小説版を読んでも謎なところは多分にある物語なので

これを読めばすべてわかるというわけではないですけど(笑)

 

 

 

みたいに

わかりづらいところを自分なりに解釈していくことも楽しみになるような

そんな奥深い魅力のある作品だと私は思うのです

 

だからこの作品はリピート鑑賞が楽しくなるんですよねえ

私の場合は、ですけど

 

感動を貰いに観に行くというよりは

考察を重ねる楽しみで観に行く みたいな

 

 

 

ということで今回は

現時点で私なりに解釈している

もしくは思うところのある点について少しまとめておきたいと思います

 

自分的にもここらで少し映画を観て感じたことを整理しておきたいので

 

とはいえすべてを書き出すと長くなりすぎるので

主だったところだけに絞って

 

解釈などについて書いていくうえではどうしても核心ネタバレは避けられないのと

あと、この作品は自分なりに解釈するところも楽しみの要素だと思うので

ネタバレや他人の考察は勘弁という方は

ここで記事を閉じてくださいませ

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

 

まず、この物語の設定の一番の要となる

製鉄工場が爆発事故を起こして見伏市の時の流れが止まってしまってから

登場人物達は物語の中でどれほどの年月を見伏の街に閉じ込められているのか

 

そのことを考えないと登場人物達の気持ちやセリフの意味に理解が追い付かず

キャラクターへの感情移入も出来ない危うさをもった物語だと思うのです、

この作品は

 

その割にはまぼろし世界での経過年月についての直接的な言及は劇中では出てこないし

 

映画を観ていると季節も変わらず登場人物は似たような同じ日々をただ過ごしているように見えてしまうため、見ているこちらは現実世界での時の流れの感覚で大して時が流れていないように捉えてしまいがちなのですが

 

 

映画の中で手掛かりとして提示されるのは現実世界との時間のズレが具体性をもって描写されてる場面で

 

それは

五実が貨車に乗せられて見伏の世界にやってきた時の年齢と

現実世界の正宗が見えた時の彼の年齢

 

とは言え、まぼろし世界の年月の経過を考察する上では、現実世界の正宗の年齢から推察する以外に手掛かりが無いように思います

 

劇中で出てきた現実世界の正宗は白髪交じりだったので

年の頃は40歳は過ぎているように見える

 

仮に40歳だったとして、まぼろし世界の正宗は14歳なので

劇中冒頭の工場爆発事故によって見伏がまぼろし世界になってからラストで現実世界の正宗が盆祭りの出店のところを歩いていたときまでに26年は経っていることになる

 

26年間も(現実世界の正宗の年齢がもっと上ならそれ以上)彼らはまぼろし世界に閉じ込められている・・・

 

少し似たような状況として我々の現実世界で起きたコロナ禍での外出自粛要請期間を物差しに考えれば、それがどれほどのものか

 

そのことをまず踏まえて本作を観ると

彼らの色々な場面での言葉や態度に納得がいくように思うのです

 

 

 

 

次に物語上の重要な設定で

まぼろし世界では変化することが許されず

その掟に反した者はひび割れが出来て消滅してしまう という出来事

 

 

「なにも変えてはいけない」

という決め事は劇中で何度も言われて

変化しないように全員が自分確認表を書くことを義務付けられている世界だし

 

実際に前半で園部が消えてしまったことでそのルールのもっともらしさを裏付けているように見えたけど

 

じゃ、後半で新田と原がカップルになったのになぜ消えないのか?

それも変化では?

正宗と睦実の関係性も然り

 

なんか矛盾してないか?

と、最初に観た時はとても不思議だったのです

 

でも2回目を観たときに気が付いたひらめき電球

 

「なにも変えてはいけない」というルールの元になったことは佐上が言い始めたことで

 

 

その根拠は別にまぼろし世界を科学的・論理的に分析して導き出した答えなどではなく

あくまで佐上がまぼろし世界の発生理由を自分の解釈で言い始めた「神様のバチ」説を元に、市民が決めたルールでしかないんですよね

 

だから「変化は悪」のルールは実は誤りで

別にまぼろし世界で変化すること自体は消える理由にはならない

だからこそラストの展開につながるわけで

 

それではなぜ園部は消えたのか?

仙波も消えてしまったし

正宗の父の昭宗も消えてしまったし

 

これについては小説版の中でヒントになる言葉が語られてました

(映画の中でも語っていたか覚えてない 汗)

【9/29追記 もう1回映画を観てきたけど、下記のセリフは映画では出てませんでした】

 

消えてしまった昭宗がノートに書き残した日記を正宗が読んでいたシーン

 

昭宗はその中で

「この希望のない世界になんの意味があるのだろうか」

と書き残していて

そして昭宗は消えてしまった

 

つまり生きる希望を無くしてしまうことが

その人のまぼろし世界からの消滅のトリガーになっているのだろうな、と

 

そういうことであれば園部も仙波も消えた理由に説明が付くし

 

結局劇中で最初から「なにも変えてはいけない」とまぼろし世界のルールを言われ続けたために

観客側の自分もすっかり騙されていた

ってことですね( ̄▽ ̄;)

 

どうやらシナリオ的にわざと観客自身をもミスリードして誤情報を信用させる作りになっているのではないかと

 

 

そういえば劇中ではアリストテレスの

「希望とは目覚めている者が見る夢だ」

という言葉をわざわざ引用していることも、この世界での掟につなげている訳か と

 

わかってしまえば起きていることは別にファンタジー世界だけの理屈という訳でもなく至ってシンプル、

 と言うか当たり前のことで

 

現実世界で起きてしまう不幸な自死という行為が、まぼろし世界においてはその人がある日突然消えてしまうという設定で描かれている

ということだったのですね

 

どんな過酷な状況に置かれても「希望」を持つことが生きていくうえでの強い力になるということを、

この物語ではメッセージとして伝えたかったのでしょう

 

ラストでの睦実のそれまでは見せなかった晴れやかな表情と言葉からもそのことを感じました

 

 

ところでそのように希望を無くした人間がまぼろし世界では消えていく という設定を考えると

 

佐上が言っていたことも実はあながち間違ってはいなかったんですね

 

「変わることなくいればいつかは元の世界に戻れる」

という論法は一見宗教集団的思想のようにも見えるけど

その説法のおかげで何も知らない市民は「いつかは元の世界に戻れる」という「希望」を持つことにはつながっていたようなので

 

これもコロナ禍の社会で起きていたことのメタファーであり風刺なんだろうな、きっと

 

「変化は悪」という実は間違ったルールを観客自身も信じ込ませるような作りになっているのも、多分そのような風刺的メタファーからの作者の思いが込められているのかな?と思ったりします

 

 

 

最後に取り上げたいのは

やはり五実と睦実について、 ですね

 

 

前回の記事で書き忘れたのですが

この二人の声を演じている

五実(沙希)役 : 久野美咲さん

睦実役 : 上田麗奈さん

の演技が、今作では超絶光ってますよね拍手拍手拍手

 

その実在感たるや本当にスゴイキラキラ

 

久野さん演じる五実は岡田磨里監督が最初から久野さんの声を想像してあて書きで脚本を書いたというだけあって

あの純真で動物的なはしゃぎ声や魂からの叫び声などは

久野さんだから演じられたと言って過言ではないくらいの凄みを感じるし

 

上田さん演じる睦実は、特にすべての事情を理解してから2回目以降で様々な場面での睦実の言葉を聴いていると、その声から感じられるその時々の感情の重さに圧倒されます

 

本当に凄い!

この作品のように難しい物語だからこそ、

声の演技のプロの声優さんが演じることの価値が際立っている作品でもあると率直に思います

 

この物語においては五実と睦実だけが他の登場人物とは違う異質で特別な存在なので

五実と睦実にお二人の声が乗ることで強烈に生っぽく且つ美しい映像に最後の要が吹き込まれたように感じる

 

そんな印象を私は持ちました

 

 

 

で、この物語のキーパーソンである五実について

 

物語を読み解いていくために、劇中に出てきた五実のその時点での年齢を推察してみると

 

まずラストの方で出てくる五実は

特にウエディングドレスを着て立っている時の姿や背格好から

恐らくは睦実達と同年齢までに成長していると見ることが出来て

 

脚本・シナリオ的にもこの時の五実は睦実と同年齢に設定して正宗との三角関係観を演出していると考えられるので

 

そうするとこの時の五実は睦実と同年齢で14歳

 

 

五実がまぼろし世界の見伏にやって来てからこの時までに現実世界の年月で何年経過していたのかについては小説版に書かれていて

 

五実(沙希)が現実世界に戻ったときに世間で大騒ぎになり

「幼い頃に行方不明になった少女が、十年の時を経て戻ってきた」

と書かれていることから

五実がまぼろし世界にいた年月は10年間

 

そうすると、五実が盆祭りで迷子になってまぼろし世界の見伏にやってきた時の年齢は4歳ということになる

 

 

正宗が睦実に連れられて製鉄所の第5高炉にやってきて、初めて五実と出会った時の彼女の年齢は

 

これは具体的な説明が一切無いので背格好などから想像するしかないけど

ラストの方で出てくる時の姿よりはいくぶん小さいように感じるので、

女子の成長度合いから考えると10歳くらいか?

 

 

なぜこんなに面倒臭く五実の年齢を考えたのかというと

その年月の流れから劇中では直接言及していない色々なことが見えてくるからです

 

 

~ここからはさらに本作の核心のネタバレ要素について触れます~

 

 

小説版によると睦実が五実の世話を始めたのは五実がこの世界に来てからしばらく時が経ってからで、それが具体的にいつなのかについては明かされていないのですが

【9/29追記:ここが小説版と映画で少し違ってました。映画では沙希(五実)が見伏に来てすぐの頃に睦実が引き合わされている描写になってます】

五実と睦実が出会ってからの、映画には出てこない重要な経緯が小説版には書かれています

 

そこに書かれている内容を要約すると

 

五実が第5高炉で初めて睦実に出会った当初は

五実は睦実に母親の面影を感じ取ったのか物凄くなついてきた

 

しかし睦実はそんな五実の反応と名札の写真から、五実は違う世界での自分の娘である可能性を悟り

「この子に近付けば好きになってしまう。そうなったらここに彼女を閉じ込めておく罪悪感に自分が潰されてしまう」

そして

「ここから出ることが出来ないのに何かを期待してしまうと彼女自身が苦しむ」

と考えて五実に対しては最低限の世話しかせずに無視を続けた

 

そうするうちに五実は睦実に対して期待するのをやめ、話しかけても答えてもらえないため言葉を発しなくなり、そのうち言葉自体を発することを忘れていった

 

という経緯が明かされているのです

 

五実が元々喋れていた言葉をも忘れてしまうほどの長い年月なので

それほどの長い年月を睦実は一人で強烈な罪悪感を抱え込んだまま五実の世話をしていたということがわかります

 

 

睦実は正宗を五実に会わせた時まですでにそんな辛く長い日々を過ごしてきていた

 

そして五実は佐上と昭宗、昭宗消失後は時宗によって完全に第5高炉に閉じ込められ

正宗と会うまでは彼らと睦実以外に接触した人間はいなかった

 

それらのことを踏まえて劇中での睦実の態度・言葉や

 

五実が正宗に対して異様に喜々として接しようとする振る舞いを見れば

 

それらの態度や言葉・感情などにすべて納得がいく

というか

感情を揺さぶられて涙がこぼれてもおかしくないくらいのシーンだと感じるのです

 

 

少し横道に逸れるけど

睦実が正宗を五実に会わせた時

五実の入浴の世話を手伝うように正宗に依頼、というか半ば強制的に指示をしてました

 

劇中では正宗が五実を風呂に入れるシーンは出てこないけど、

小説版では実際に正宗が五実の体を洗ってあげる描写が出てきます

 

映画でそれを出すと幼女の入浴シーンということでさすがに問題になるだろうから全カットしたのでしょうけど、実際に正宗が入浴の手伝いをしていたというのは結構重要な要素だと私は感じていて

 

正宗が性的な意味ではなく純粋に一人の人間として五実のことを大切に感じるようになったのは、睦実と共にそのような入浴の手伝いまでしてあげるような関係があったからこそ余計に

という部分はあるんだろうなと私は思います

 

 

睦実と五実の関係性についてさらに見ていくと

上記で睦実は五実に対して一切会話をしなかったという小説版でのエピソードをあげたように

劇中でもよく見ていれば最初の頃は睦実は五実に対して言葉をしゃべることなく威嚇するような、まるで動物を相手にしているような態度をとっていることがわかります

 

その関係性に明らかな変化が見られたのは、

佐上が市民を集めて今の見伏がまぼろしの世界であることを説明し

その場で初めて五実を「神の子」の存在として市民たちに説明した場面から

 

この期に及んで佐上がまだ五実のことを「神の子」と呼び

五実の存在をもってこのまぼろし世界の安定をはかろうとする態度に

睦実が

「いい加減にしろよ、おっさん! まぼろしの世界だからってさ、ちょっとは現実見なよ!」

と啖呵を切ったあたりが

彼女が五実に対しての態度を変化させるターニングポイントだったように思います

 

それ以降の睦実の五実に対する態度・振る舞いは

正宗が「五実の母親っぽくて」と言うほどで

それまでは五実に対して一切言葉をかけない態度だった睦実が

慈愛を感じさせる優しい接し方に変化しています

 

彼女なりに一人で背負い込んできた五実に対する罪悪感から少しだけ解放されて

素の睦実自身として五実のことを見ることが出来るようになった

 

そんな変化が劇中で描かれているように感じるのです

 

 

 

他にもラストでの睦実の五実に対する思いや言葉など

あげていけば色々とあるのですが

ここまであげたように、この物語で私が一番感情を揺さぶられるのは

このような五実と睦実の関係性が変化していく流れで

 

「恋する衝動が世界を壊す」

という触れ込みのセカイ系(男女の恋愛関係が世界の命運を左右するファンタジー)物語ではあるけど

なぜか私の場合はこの作品での恋愛物語にはさほど感情は動かなくて

 

もっぱら五実と睦実の関係性

特に自分を押し殺して現実世界での自分の娘である五実と接しなければならなかった睦実の感情のほうに、深く感情が揺さぶられるのです

 

そこら辺の感情移入ポイントはもちろん観る人によって違うでしょうけど

私の場合はそんな感じ

 

だからラストで五実を無事に現実世界へ送り出した後で

睦実がそれまで見せたことが無い晴れやかな笑顔を見せたときの印象は

正宗との恋が成就したというよりは

五実に対しての罪悪感から完全に開放された素の14歳の彼女の姿として映って

 

そっちのほうに私は感動してしまうのです

 

 

以上、とりとめもなく

超絶長ーい感想・考察記事になってしまいましたアセアセ

 

最後まで読んでいただけた方には心から感謝です!