先月のブログで少し触れたのですが
私のスーパーカブのエンジンをキタコ製88ccに換装してみました
88cc Newスタンダードボアアップkitという
シリンダーヘッドもセットで交換するタイプです
それまでは同じキタコの85ccのシリンダー・ピストンだけのボアアップ仕様で乗ってました
その85ccキット組み込みのときの写真
この85ccキットではシリンダーヘッドはノーマルをそのまま使うのですが
私の場合は元々のレストアのときにキャブレターをPZ19、
そのキャブ口径(19mm)に合わせるためにインマニを22mm口径のものに交換したので、
インマニの口径に合わせてヘッドのインテークポートだけは拡大加工してあります
元の小さなポートを黒いマーキングまで拡大中
22mm径に拡大した50cc用ノーマルシリンダーヘッドのインテークポート
その加工済みヘッドと85ccボアアップ、
キャブはPZ19の組み合わせという仕様でした
この仕様で、それまでの元のノーブランド75cc仕様の時と比べると格段にトルクが上がって、
私のカブの乗り方ではさほど不満無く走っていたのですが
やはり慣れてしまうと
「もうちょい坂道を余裕で走れんものか?」
・・・ と (;^_^A
「やっぱあれかなあ
ヘッドが50cc用のままだと本来の80ccクラスのパワーは出てないのかなあ?」
などと余計な欲が出てきてしまったのです(汗)
もう一押しヘッド交換の決断に至らしめたのが
あれこれ悩んでいた頃に
狙っていたキタコのSTDボアアップキットが、ちょうど12月から仕様変更という名目での実質値上げの情報が飛び込んできて
メーカー曰く「性能が向上」
どこにも価格アップとは書いとらんけど
なんのことはない
実質の値上げ
しかも1万円以上も
その値上げされたキットがコレ ↓
私が買ったモデルチェンジ前の同内容のキットが3万円台後半だったので
すごい値上げでしょ?
値上げ自体が悪いと言ってるのではないです
こんなに値上げするのに値上げについては一言も触れずに「性能向上のための仕様変更」などとうそぶいてしれーっとステルス値上げするキタコも
これでどういう企業かよーくわかったけど
ブツブツ…
ヘッド交換のボアアップはいずれ体験してみたかったけど
1万以上も値上がりするんだったら今しかないか、
と
そんな事情もあって85cc仕様から88ccSTDボアアップキットに換装する決断をしたのでした
・・・
さんざんキタコの値上げに文句をつけといて
なぜにキタコのキットを選んだのかと言うと
値上げされる前のその時点ではヘッドまで交換する88ccキットとしては最安だったからで
値上げされてしまった現行仕様ではキタコを選択する理由は私的には特にありませんね
他社製品も検討していたと思います
というわけで
これが88ccNew STDボアアップキットの中身
とにかくシリンダーヘッドがボア径に合わせたものになれば
今までのノーマルヘッド(とは言えINポートは拡大加工してあるけど)よりはパワー出るはず!
という期待の仕様なのです
早速エンジンをバラしていきます
腰上だけなので超簡単
これまでお疲れさんのヘッドとシリンダー
そしてピストンです
外したピストンを見て
カーボンの付き方と焼け方に
「へえーーっ」 っとなりました
随分とムラのある焼け方
これはピストンヘッドの温度分布にかなりムラがありますね
写真で上側がインレット側、下側がエキゾースト側です
燃焼室内での混合気と火炎の拡がり方が目に見えるような焼け方をしてる
…と感じました
ピストンヘッドの写真で上側半分 インレット側が黒くカーボンですすけているのは、インレットバルブから入ってきた混合気が直接ピストンヘッドに当たるため、その部分がガソリンの気化熱によって冷やされるからだと思います
写真で下半分の方には、混合気はシリンダーヘッドとシリンダー壁に沿って流れてからビストンヘッドに届くのでさほど冷却されず
したがって下半分のエキゾースト側のほうにはカーボンが付着せず焼けている
そんな感じでしょう
少なくとも車両メーカーの純正エンジンでこんなムラのある焼け方をするケースは無いはずです
やはり85ccにボアアップに対し50cc用のノーマル燃焼室では、熱的なこととか結構無理していることがこのピストンヘッドの焼け方から見てもよくわかります
こんなにも燃焼室の径が違うのだから当然と言えば当然
燃焼室の拡大に伴ってバルブが大幅にデカくなるので
この組み替えの段階では見ただけでもう期待しかなかったです
(あとで失望することになるのだけど)
88ccキットのピストンとの比較
燃焼室が大きくなることでフラットヘッドのピストンでは圧縮が下がるので
それに対応したピストンヘッド形状になっていて
この違いを見てもワクワク
・・・だったのです
まあこの時点では期待度120%で
早速組み立てていきました
このキットではヘッドにバルブは組み込み済みだけどロッカーアーム関連部品は付属していないので、ロッカーアームとロッカーアームシャフトは元のヘッドから移植します
これは値上げ後の新キットも同様
ちなみに私はハイカム付きのキットにしたので
これまではノンプランドのハイカムを入れてたけどカムも新品になります
ヘッドの機械加工や仕上げはさすが日本メーカー品
バリなど無くキレイな仕上げで、ここら辺は中華製とは明らかにクオリティが違います
なので今回はバルブはすり合わせも不要と考えて分解せずそのまま組みました
ということで
バルブクリアランスは簡単に出来る今のうちに
ピストンをコンロッドに取り付けて
シリンダーにIN
この状態で確認してみたんだけど
このピストンは上死点でもシリンダー上面ツラ位置までは来ない仕様になってました
なぜそうしてんだろ
謎だ。。。
ともあれ
新品のヘッドを合体
キャブレターはキタコの推奨ではPC20なのだけど
とりあえず19でも大差ないんじゃね?
って思って、
これまでのPZ19をそのまま使ってみることに
マフラーの方だけは少しばかり加工しました
今付けてるマフラーはアウスト(アウトスタンディング)のモナカマフラーなのだけど
このマフラーはノーマルのままだとデフューザーの抜けがやたら悪くて
これまでの85cc仕様では穴を追加して開けてあったのです
で
バルブ系が大きくなってEXポートも大きくなったから
出口ももう少し広げておいたほうがいいよな?
と思って
さらに大きい穴をいくつか追加で開けて、抜けを良くしておきました
まあ弊害として少し排気音は大きくなるのだけど
デフューザー無しよりはこれでもマシだし
この穴拡大追加デフューザーの有りと無しで乗り比べたけど、抜けに関しては体感的に有意差を感じなかったので、
とりあえず穴の追加加工自体は的を得ていたはず
というわけで完成後、慣らしをして
ある程度回せるようになってからもう一度キャブのセッティングを煮詰めて
走ってみたのだけど
あれ?
全然パワーアップしてない
てか
肝心の上り坂では明らかにこれまでの85cc仕様のときよりもトルクダウンしてる
おまけにパワーは同等より少し落ちてるのに
燃費が大幅に悪くなった
これまでの85ccではコンスタントに65km/L以上で
条件のいいときは70km/Lも走ってくれてたのが
88ccにしてからはどうやっても56~57km/L
差にして10km/L近く、15%も悪化してしまった
こ ん な ハ ズ で は 。 。 。
実はエンジンを組み替えて最初にキックをした時から
「あれ?」
とは感じていたのです
85ccキット仕様と比べてキックがとても軽い
組み間違いとかではないです
要するに圧縮があまり高くない
これまでの85ccはとてもキックが重くて
てゆーか踏みごたえがあって
クランクの位置によってはそのままではキックが下りないほどに圧縮が高かったのですが
88ccキット仕様だと本当に軽い踏み下ろしで
クランクがどの状態だろうと軽々踏み下ろせてしまう
それほどに圧縮が違うのです
もちろん圧縮の差だけでパワーや燃費が違うというわけではないにしても
少なくともこれまで使っていた85ccボアアップ + ノーマルヘッドのINポート拡大 + PZ19キャブレター という仕様は
もしかするとかなりベストマッチの組み合わせだったのかも知れない
。。。。。
うーん、、、
やっちまったか?
でも、せっかく期待のヘッド交換までしたんだから
やっぱメーカー推奨の組み合わせで本来のパワーは引き出してみないと何とも言えないか
というわけで
沼にハマっていきます
ズブズブと。。。
もう半ばヤケクソで
禁断の(?) ケーヒンPC20キャブレターを追加お買い上げ
キタコからはスーパーカブ用のPC20キットも販売されてるけど
マニホールドは今使ってるミニモトのがすでに口径22mmの、本来はPC20用のマニホールドなので
わざわざマニホールドまでセットの高いキットを買うのもバカバカしいので
カブ用PC20キャブレター単体を購入
で付け替えようとしてみたけど
あらら
エアクリケースに届かない
なるほど
このためにキットでは延長パイプがセットになってるのか
よく調べもせずに手を出してるからこーゆーコトになるw
おまけにマニホールドの仕様差なのかどうかわからんけど
スロットルケーブルがフレームに押されて
このままじゃダメだよなあ
さらにオーバーフローパイプもタペットカバーにすでに干渉してるし
とにかくエアクリボックスに届かないとダメなので延長ジョイントは必須
あと、スロットルケーブルとオーバーフローパイプのそれぞれの干渉はキャブレター本体がもう少し前へズレてくれればなんとか行けそうだから、
そこはインシュレーターを厚くしてやれば何とかなるか
というわけで
急遽追加で部品手配
(またまたお金が余計に掛かる)
まずはキタコのPC20キャブレターキットにも同梱されている延長ジョイント
「ジョイントファンネル」という便利グッズを取り付け
干渉部分の対応はインシュレーターの厚いものを探したけど見つからなかったので
これまで使ってるのと同じインシュレーターをもう一つ追加購入して2枚重ね作戦
実はこのインシュレーター、
モノはいいのだけど口径が20mmほどしかなくて
PC20の口径は実測で22mm、
マニホールドも内径22mmで
このインシュレーターだけが小さかったので
(PZ19で使ってた時はそれでもキャブの口径より大きいので問題無かった)
上の写真はキャブとマニホールドの口径に合わせて拡大加工した後です
で、このインシュレーターを2枚重ねて取り付けて
ジョイントファンネルのおかげでエアクリボックスとも無事に接続出来て
干渉していたオーバーフローパイプのところも逃げれた
まあインシュレーター厚み分だけ前へズレたのだから当たり前だけど
ところで延長ジョイントなんて使わなくてもノーマルエアクリーナーボックスを外してパワーフィルターにすればいいじゃん
的なやり方もあるのだけど
私の場合は自分の使用目的に照らしてノーマルのエアクリボックス使用は必須と考えています
よく言われる「パワーフィルターだと雨の時が」
とかそういう理由ではなく
ノーマルエアクリボックスを使うとエアクリーナーからキャブレターまでの吸気管長が稼げているので、低中回転域での吸気慣性効果による充填効率のアップが期待出来るからです
カブのノーマルエアクリボックスとエアクリーナーパイプは、その部分が実用車としてよく考えられた構造になっているので
もちろん最高速を求めたいだけの人にはパワーフィルター一択で問題ないのですが
ところでPC20にして良かった点のひとつとして
ネジ位置の関係で、キャブを外さなくても下からフロートチャンバーが外せる
そのおかげで
簡単にジェット交換が出来る
これだけは本当に助かる
セッティングの都度いちいちキャブを外すのは地味にメンドーなので
とは言え
一度セッティングが出てしまったらもうイジることもないんですけどね(;^_^A
ちなみにセッティング結果は
MJ #98
SJ #35(PC20標準のまま)
ジェットニードル 3段目(真ん中)
となりました
MJ(メインジェット)は#95でも問題無く走れたけど
#98の方がアクセルのつきが元気いいので、今のところ#98にしてます
このセッティングとSTDボアアップキットのビッグバルブの組み合わせでは
スロットルをスナップしたときのエンジンのつきが
もはやカブエンジンのそれでは無いですね
ブイーンブイーン
が
ブンッ ブンッ
ってなるw
そこだけは確かに違う
(そこだけ というのがクセ者)
ということでキャブも推奨のPC20にしたし
さて、パワーは上がったのか?
もうすでにボアアップ組み込みから1,000km以上走行して
近場のツーリングなどで山登りもしつつ、いつもの散歩コースなども含めての総合的な性能評価ですが
88ccキット + PC20キャブレターにすると
確かに85ccの時よりはパワーは上がりました
「パワーは」 というのがミソで
私が本当は欲しかった上り坂での余裕
つまりトルクの方は
実は元の仕様の85ccに比べてさほど上がってません
少しは余裕が出て今まで苦しかった急な上り坂での苦しさは和らいだものの
劇的に とはなってません
回転馬力で急坂を上っていく みたいな感じ
私はまったく興味が無いので試してないけど
最高速的には85ccのときよりも上がってはいるのでしょう
…多分、、、
いっぱい吸っていっぱい出せるようになったので
回転馬力自体はそりゃ上がるよね
って感じ
ただしそのために燃費は当然悪化します
PC20でセッティングが出てからの燃費は52~54km/Lくらい
50キロ台の燃費ならそんなに悪くないじゃん
と思われるかも知れないですが
85ccの時の私のカブではコンスタントに65km/L以上
普通に走って67km/Lくらいで
良い時は70km/Lだったこと
しかもそれだけ走るのに上り坂のトルクでは88ccキットと大差なく
日常的な乗り方(さほど飛ばさない)でもパワー的な差があまり感じられないことを考えると
リッター当たり15km近くも燃費が悪い88ccキット+PC20キャブの組み合わせは
日常使いにはあまりにコスパが悪すぎる
というのが私の率直な感想です
まあそもそもエンジンのトルクはほぼ排気量で決まるものなので
上り坂の余裕を求めてヘッド交換ということ自体が理屈から考えてズレまくってた
という今回のイタズラの反省です
それにしてもそれほどパワーが上がるわけでもないのに、なぜこれほどまでに燃費が悪くなるのか
逆に言うとなぜ85ccキットの燃費は良かったのか?
まず85ccの時はPZ19で十分なパワーが出ていて
メインジェットも#82でいけてたので、
#98を使うPC20とはそもそも吸わせてるガソリンの流量が全然違います
だから単純に流すガソリン量が増えたので燃費が悪化した
という因果関係は確かです
実は88ccにして当初PZ19で走らせていた時もセッティング結果は#82か#85のどちらかという感じだったので、シリンダーヘッドの違い自体はジェットの番手にはさほど影響してない感じに思えました
ただPZ19のままでは88ccキットは85ccキットよりもパワーダウンしてしまうので
やむなくキャブの口径を上げたわけで
ではなぜ同じキャブだと88ccではパワーダウンしてしまうのか?
やはり先にも触れた、圧縮の差は大きいのかも知れないです
それと
燃焼室形状の差を考えてみると
これはあくまで私が想像で書いたイメージ図ですが
燃焼室をボア径に最適化させた88ccキットは見た目的にも無理のない燃焼室形状にはなっているものの、ピストンがシリンダーTOPまでいかない設定にして余計に圧縮比を抑えていることに加えて、
燃焼室の表面積がまるで違うということも見逃せないポイントかと
これは図解にするまでもなく当たり前なのですが
ノーマルヘッドを流用する85ccキットと比べてボア適正化した88ccキットは当然燃焼室の表面積が大きくなるので、そこでの熱損失も85ccキットに比べてかなり大きいはずで
圧縮比が高くないことプラス熱損失が大きいことから
せっかくガスをたくさん吸い込んで燃やしても、シリンダーヘッド・シリンダー・ビストンから逃げていく熱量が多いので、その点でノーマルヘッド流用の85ccキットに対して分が悪い
そしてこれも当たり前だけど、バルブが大きくなったことでバルブオーバーラップで逃げていく混合気も特に低中回転では多いので
そんな理由がいくつか重なって、私が感じたように日常走行では85ccキットと88ccキットではパフォーマンス的にさほど差が出ないということなのかな?と思います
もちろん88ccキットは悪いことばかりではなく
特にバルブが大きくなっているので、回転のピーク上限はノーマルヘッドの比ではなく
だから回せばパワーは出る
という屁理屈はあくまで私の個人的な推論でしかないのですが
自分なりに色々いじってみての感想としては
最高速やエンジンをぶん回した時のパワーを求めたいなら88ccNew STDボアアップキットへの換装はアリ
でもそれほど飛ばすわけでもなく、のんびり散歩でゆとりのトルクが欲しい というなら
85ccキットの方が安いし燃費もいいので
88ccキットよりも遥かにコスパが良い
(ただしノーマルヘッドでもポート加工はした上での話ですが)
という結論でした
さて、この88ccキット仕様
自分の使い方的には燃費が悪くなっただけでまるでムダでしかないのだけど
せっかく換装したエンジンだし
どーしたものか。。。