「その3」からの続きで飛行機を作っていきます
(前回の記事はコチラ ↓)
前回でバルサ組み立てキットの機体が生地完成まで進みました
当り前ですがバルサ生地のままでは飛ばすことは出来ないので、機体表面を覆う「カバーリング」という処置を機体全面に施します
ラジコン飛行機のカバーリングには、紙や絹、または薄いファイバークロスなどの生地を特殊な溶剤で全面に貼ってその上から塗装する手法と、ポリエステル製のフィルムを貼る「フィルム貼り」という方法があって、今回の機体のような小型のスポーツ機であればフィルム貼り仕上げが主流です。
このフイルム貼りには大きく3つの役割があると思っていて
1つ目は機体表面の保護
とても柔らかく少しのことでもダメージを受けるバルサを守る表皮となります
また特に今回の私の機体のようにエンジンで飛ばす場合は、エンジン排油から機体のバルサを守ってくれる重要な役目もあります
2つ目は加飾、つまり機体のカラーリングデザイン
ラジコン飛行機の場合は美しさとかカッコ良さだけでなく、遠くを飛んでいても機体の表裏や姿勢が一目で識別できるような記号性のようなデザインも求められます
(実機を模して作るスケール機という機体ではこれは出来ませんが)
そして3つ目は機体の強度アップです
上記の1と2は紙貼り塗装仕上げでも実現しますが、この「強度アップ」はポリエステルフィルムでなければ実現出来ない機能です
フィルム表面の物性的強度はもちろんのこと、引っ張り強度がとてつもなく強いので、フィルムが機体の表皮となることで軽いけど強靭な構造が実現出来ます
などなど
そんな大切な役割を持ったフィルム貼りなのですが
全体にシワ無くきれいに貼るのは実はかなり難易度が高くて
…私は苦手です
大まかに言うとこのラジコン用のフィルムは100~120℃くらいの熱をかけながら引っ張ると伸びて、引っ張らずに熱すると収縮し、
同時に裏面に塗布されている接着剤が過熱すると接着する仕組みになっていて
それらの特性を利用しながら機体表面の3次曲面に馴染ませて貼っていくのですが
これがなかなかに難しい
私の場合、毎度やったとこ勝負です
まずデザインを考えます
…と言っても私の場合、無からデザインを考える創造力が絶望的に無いので
メーカーの完成機体のデザインを真似ることしか考えつかない(;^_^A
メーカー公式HPに掲載されているこの機体のデザインをじっくり観察
このデザイン自体は結構自分好みだし、パッと見では色分けも少な目で比較的再現しやすそうなデザインに見えるものの
まず胴体後部上側の黒ラインは、これは多分PCデータ出力をカッティングマシンで裁断したもので貼ってるはずで、手切りでも出来ないことはないけどまんま再現は結構手間が掛かりそう
そして胴体前側の黒ラインは位置的にエンジンカウルのところまでかかっていて、そうするとフイルム貼りとカウリング塗装をピッタリ合わせる必要があるので、これも簡素化のためのアレンジが必要
機体の下面の写真が一切無いけど、主翼前縁を見る限りでは少なくとも主翼の下面はこのグリーンが主体になってる可能性が高い
そのようなことから
基本的なカラーはこの完成写真に似せる方向で
ただし同じように再現するのが難易度高い部分は適当に折り合いをつけて簡略化して
というデザインを頭の中でイメージして
(デザイン図なんて面倒なので私は描かないのです 笑)
で、必要な色のフィルムを用意して早速貼っていくのですが
飛行機にフィルムを重ね貼りしていくときには、後々はがれにくくする、またオイル等がしみ込むのを防ぐために、貼り付け順序のセオリーみたいなものがあります
要はこういうことで
必ずこの通りでなければならない ということは無いものの
基本はこのセオリー通りに貼っていきます
→ということは、今回のように数種類のフィルムを重ね貼りするデザインの場合は、貼っていく順番が結構考えないといけないのです
頭の体操状態です(^_^;)
前置き説明が長くなりました
それでは貼っていきます
フィルム貼りの実工程は地味に工程が多いので、途中を端折って要所要所をご紹介します
最初は胴体から始めました
大きなフィルムの裏側に必要なサイズを下書きして切り出します
セオリー通りに貼っていくことを考えると、胴体で一番最初に貼るのはこの胴体下側部分になります
寸法で切り出したフィルムを機体に当てがってるところです
この部分はカタログ写真には写っていないのでどんなデザインが正解かわからないけど、今回は下面はすべてこのイメージカラーのグリーンで統一することにしました
で、あーでもないこーでもないとアイロンを当ててw
こーなります
次に側面を重ね貼りするのですが
次のカラーとの色分け部なども計算に入れると結構厳密な寸法でフィルムをシートから切り出す必要があるので、まずは型紙を作成して合わせ込みをしています
なのでここで胴体の上に置いてるのはその型紙です
型紙の合わせ込みが終わったら、型紙通りにフィルムを切り出します
左右対称で2枚を切り出しました
胴体にかぶせて
ちなみにここはメインカラーのホワイトです
貼ります
途中作業をすっ飛ばしてますが
前側や主翼取り付け座面部などの端部折り込みにはかなり手間が掛かってます
片側1枚貼るのに40~50分以上は掛かっただろうか
反対側の面も貼ります
次に胴体前側の上の部分を貼るのですが
色分け部分の形(R形状)を決めるために型紙を作ってみて、その型紙でフィルムを切り出してます
ここに貼るフィルムです
左右側面につなげて貼りました
同様に型紙で形状出しをしてコクピット前側部分の黒フイルムを貼り付け
次に胴体後ろ側 背中部分の色分け
カタログ写真ではここのラインがデザインされた形になっているけど
あまり難しい形にしたくないのでコクピット部分から後ろの方まで直線でつなぐデザインにします
その位置出しのためにマスキングテープでラインを作ります
そのマスキングテープに沿って細く切り出した黒のフィルムを貼っていきます
こうなります
その黒ラインの上に次はシルバーのストライプを貼ります
このようなストライプでフィルムを貼る時は、私の場合は必ずマスキングテープで貼り位置をガイドしてラインが曲がらないようにしています
左右貼ってこんな感じになりました
背中部分は1枚で背中の頂点のところから貼っていって左右のストライプにそれぞれぴったり位置が合うようにフィルムを切り出さなければならないので、ここも綿密に型紙で寸法合わせを行っています
型紙を元に切り出したグリーンのフィルム
貼ります
前方向から見た感じ
コクピット後ろ部分、キャノピーが被る部分には黒フィルムを重ね貼りしました
ここはカタログ写真通り
胴体前側を貼っていきます
やはり型紙で形状出ししてグリーンを貼り付け
その前側はシルバー
このシルバーだけフィルムの種類が違っていて、裏面の糊が過熱しないでも粘着力のあるタイプ(他のはすべて熱を入れなければサラサラなタイプ)です
要は普通のステッカーみたいなものなんですが、正確に位置を合わせて貼ろうとするとこのような粘着タイプの方が置いてからズラせない分、結構大変だったりします
なおこのタイプは常温でも粘着性はあるのですが、アイロンで加熱プレスすることで本接着されるようになってます(オラカバWETというタイプのフィルム)
そうして貼り付けたシルバーのフィルム
最後に一番前に黒フィルムを重ねて
同時に後ろから伸ばしてきたストライプにつなげて
カタログモデルのデザインに似せつつ少しアレンジしたデザインになりました
次に尾翼関係を貼っていきます
垂直尾翼のデザインはカタログ写真を参考に、4色の貼り分けです
垂直尾翼とラダーにつながるように切り出すため、最初に原寸で色分けの型紙を書いておいて、一色ずつそれに合わせてフィルムを切り出していきました
ということで黒とシルバーまで貼ったところ
最後にグリーンを重ねてこんなデザインです
ラダーは下半分が胴体から続くホワイトで
その上に垂直尾翼から続く色を重ねていきます
直線が曲がらないようにスケールを当てて、そのラインに合わせて位置ガイド用のマスキングテープを貼って次々重ね貼りしていきました
上側の色分け完成
ラダーの下端は胴体からのグリーンが続くので、マスキングテープで位置出しをして
下端のグリーンを重ね貼り
ラダー部分までの側面全体の色分けの流れはこんな感じになりました
次に水平尾翼
まず下面を貼ります
下面は全面グリーンです
平らな面に貼るので簡単そうに見えて
このように前縁と翼端の小さな3次曲面に馴染ませながら貼るので、貼る面積は小さいけどなかなかに手間が掛かります
下面貼り終えたところ
フイルムは熱を入れると収縮するので、その特性を利用してシワをなくしていくのですが
このような薄い一枚構造のものに貼ってむやみに熱を掛け過ぎると、フィルムが必要以上に収縮してフィルムを貼った側に反り返ってきます
その加減の見極めが実に難しい。。。
過去にはそれで貼ったフィルムを剥がして一からやり直し、
なんてことが何回もありました
今回はたまたま反らずに貼ることが出来た(フゥー)
上面側は翼端にはグリーン
グリーンの内側は全面ホワイトを貼るのですが
グリーンの部分に端末を上から重ねて貼った後で色分け部を正確にきれいにカットするのは困難なので、最初から正確に寸法出しして切り出したものを貼ることにしました
そのためホワイトのフィルムの裏面にカット線を正確に書き込みしてから切り出しました
そうやって切り出したホワイトのフィルム
貼り終えたところ
次はエレベータ(昇降舵)
まずは下面、全面にグリーンを貼って
これも特に中央部の凹み形状など、簡単そうに見えてなかなかに手強かった
上面は水平尾翼からつながるように外側にグリーン
ホワイトの部分を貼って、水平尾翼とのセットでこうなりました
ちなみにエレベータ上面側を貼り終えた段階で水平尾翼とつながるように、ホワイトとグリーンの境目部分にシルバーのストライプを上から重ね貼りしました
カタログ写真では水平尾翼・エレベータとも上面は白一色なのですが
それではなんか味気ないので、この色分けはオリジナルのアレンジです
下面はグリーン一色だけでは味気ないのと、飛行中の姿勢の視認性をあげるために
ホワイトの太いストライプを入れることにしました
ラジコン飛行機では視認性向上のためよくやるデザインです
これでようやく胴体と尾翼関係のフィルム貼りが終わりました
まだ主翼が残っています(;^_^A
主翼も貼り付け順序のセオリーで下面から始めます
最初に中央部の主翼取り付けビスの台座部分から
こういうとこのフチの部分もシワ無く貼るのがなかなか大変。。
主翼下面も全面グリーンです
左右1枚で貼る技術は持ってないので、片翼ずつ貼っていきます
基本的な貼り方は
まずある程度引っ張った状態で四隅と長辺の何ヵ所かを仮止めして
次に主翼中央部分を動かない程度まで加熱接着して
それから翼端にフィルムを強く引っ張りながら翼端の曲面形状に貼り込んでいって
翼端がある程度固まってきたら今度は前縁部分を強く引っ張りながら曲面に合わせて貼っていって
翼端と前縁が固まったところで主翼の角の部分の三次曲面部を最大の力でフィルムを引っ張って伸ばしたり加熱収縮させたりしつつ曲面に馴染ませて
それらが決まってから後縁など他の部分の貼り付け処理を行い
外周部がひと通り固まったら全面に熱を入れていってシワ取りをして
最後にリブ部分への貼り付けをする
…と、
文章で書くと大体こんな手順で貼ってます
そうやって片翼の下面が貼り終え
もう片側も貼ります
下面は最後に貼るストライプを除いては色分けはしないので、これで完了
次に上面です
上面はなるべくカタログ写真のデザインに倣って色分けしていきます
最初に後ろの方をホワイトで
こんな感じ
反対側も
次に重ねる黒フィルムのガイドとしてマスキングテープで位置出しをして
黒フィルムを貼ります
全部終わってから考えたけど
これだけ細いストライプ状で色分けするんだったら、こんな風にいちいち貼り分けするんじゃなく単純に上から重ね貼りすればよかったな、と
余計な手間が掛かった上に貼り分けのため小さなシワはどうしても残るという
これは失敗例の貼り方です
黒の前側にシルバーを位置出しして貼り付け
最後に前側はグリーンを貼り付け
左右貼り終えた状態
エルロンに貼っていきます
エルロンは主翼と同じ色で上面がホワイト1色
下面がグリーン1色としました
ただの板が2枚のようですが
これで左右エルロンの表と裏です
こういうのもフィルムの収縮で簡単に反りが出てしまうので、しわ取り加熱の加減に結構気を使う
エルロンのフィルムが貼れたので、主翼に取り付けるためにいよいよヒンジを差し込んで接着します
で、シートヒンジという屈曲性のある硬質の紙のような板材をエルロンに切り込んである溝に差し込んで瞬間接着剤で接着固定するのですが
普通はその接着だけで終わりなのですが、私は接着だけでは心配なので
必ず穴明けして爪楊枝を差し込んで物理的に抜けないように追加処置してます
こんな面倒な、しかもせっかく貼ったフィルムに穴を開けてまで仕様書に無い追加加工をする理由は
以前に飛行を重ねるうちに接着がはがれて動翼が外れかかったことがあるためです
万一飛行中に動翼の一部でも外れたら
それは即墜落事故につながるので
リスクを出来る限り排除するための予防処置です
爪楊枝は瞬間接着剤を流し込んで接着して、飛び出た部分は切り落したうえで表面を平らに削って仕上げ
主翼側にヒンジを差し込んだら主翼側も爪楊枝固定します
これでヒンジが抜けるトラブルは完全に防げます
エルロンを取り付けたので最後に下面には水平尾翼と同じようにホワイトのストライプを重ね貼りして
これで機体へのフィルム貼りはすべて完成です
ここまでくればあともう一息
…のようだけど
まだカウリングとキャノピーが登場してないです(;^_^A
他にもエンジンの取り付けやサーボメカ積みリンケージなど
まだまだ完成までやることは山ほどあります
てゆーか、これでようやく一般的な「完成機」を買って箱を開けたときとほぼ同じような状態で
つまり見方を変えればこれがようやくスタートラインと言うことも出来る。。
というわけで次に続きます<(__)>
次回「その5」の記事はこちらです ↓